アイテム番号: SCP-2699-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-2699-JPは操作可能な排気ダクトがつけられた特別ヒト型収容室に、拘束したままトリプトファンと財団の科学部門によって開発されたセロトニン症候群の症状を抑える薬剤と栄養剤を点滴された状態で収容されます。
衛生管理のため、SCP-2699-JPは三日に一度水洗浄が行われます、また、その際同時に枯死したSCP-2699-JP-Aを刈り取ってください。
説明: SCP-2699-JPは収容時点(2016/11/7)で15歳の日本人男性、西村 ██氏です。身体機能に異常な点は見受けられません。
SCP-2699-JP-AはSCP-2699-JPの体表面の9割以上を覆うように生息する複数の種類の植物です。現在、植物の種類ごとにSCP-2699-JP-A-1から-34までのSCP-2699-JP-Aが確認されています。SCP-2699-JP-Aの詳細なリストについては、SCP-2699-JP-A記録を参照してください。また、現在確認されているSCP-2699-JP-Aはすべて在来種のものです。SCP-2699-JP-Aの根の部分はSCP-2699-JPの皮下組織と完全に融合しており、神経系に深く干渉していますが、外部から強引にSCP-2699-JP-Aを引き抜こうとしない限りSCP-2699-JP-AによってSCP-2699-JPが痛みを感じることはありません。しかし、一度に発生するSCP-2699-JP-Aは約16kg程度になることや、排泄や食事が困難となること、汗や食物、排泄物が植物に付着し不衛生となることなどが理由でSCP-2699-JPはストレスを抱きます。
SCP-2699-JP-Aの多くは一年生植物ですが、通常より速い速度で発芽から枯死のサイクルを繰り返し、またそれに伴い通常より光合成の活動が活発になります。サイクルの速度と光合成の活発さは脳内におけるセロトニン分泌量により指数関数的に減少します。現在確認されている中で最も速い発芽から枯死までの周期は約80分でした。また、SCP-2699-JPから刈り取るか枯死した場合SCP-2699-JP-Aの異常性が喪失するため、SCP-2699-JP-AがSCP-2699-JPに及ぼしている影響については不明です。
収容当初SCP-2699-JPはうつの症状を見せており、これを原因としたセロトニン分泌量の減少により、SCP-2699-JP-Aの発芽から枯死が約2時間の周期で発生していました。原因は上記の理由に加えて収容環境へのストレスであると判断されましたが、ストレス軽減のため標準的なヒト型収容室で収容した場合、SCP-2699-JP-Aの光合成による酸素放出を主な原因とした低脅威度の収容違反が懸念されるため、収容室の変更は見送られました。
新たに提案され、現在適用されている特別収容プロトコルはトリプトファンと財団の科学部門によって開発されたセロトニン症候群の症状を抑える薬剤と栄養剤をSCP-2699-JPを拘束した上で点滴することを主軸とするものです。現在、SCP-2699-JP-Aの発芽から枯死までの周期を約15日間に抑えることに成功しています。このプロトコルの副次的な効果として、対象は多幸感及び意識の混濁により、収容状況に対して疑問を持っていません。
発見経緯: ██県██市では以前より、毎日異常な量の花を処分している施設があるとして財団の目を引いていました。2016/11/6の財団のエージェントによる潜入調査により、施設が要注意団体″みどりのだいちプロジェクト″が所有しているものだということが明らかになりました。翌日に機動部隊による襲撃を行いましたが、施設は無人であり、SCP-2699-JPとごく僅かな資料のみが発見されました。以下の資料は回収された資料のうちSCP-2699-JPと関連するとみられる資料の全文です。
皆さんも知っての通り、地球は現在地球温暖化という深刻な問題を抱えています。国単位で二酸化炭素排出量を減らす試みを行っていますが、それでも大気中の二酸化炭素の濃度が増すのを抑えることにとどまっており、根本的な解決にはいまだ至っていません。このまま人間がこの問題に対して適切な対応策を出さないでいれば、大きな生態系の乱れが発生するでしょう。この大きな問題を解決する為に始まったのが本計画なのです。
今回、私たちみどりのだいちプロジェクトの研究員である西村さんのお子さんを被験者として試験を行うことが叶いました。学校で環境問題について興味を持ったということですので、西村くんも私たちの仲間です。皆さんも親切にしてくださいね。
本計画は植物開発特化部との一大プロジェクトのほんの一部です。人間が生きる上で、二酸化炭素の排出は避けられません。私たちもその恩恵を受けて今こうやってプロジェクトを進めています。今はまだ酸素を増やして二酸化炭素濃度を抑えるにとどまっていますが、プロジェクトが完遂し、人類が光合成できるようになれば、地球温暖化という大きな問題を解決できるでしょう。
どうか我々の計画が環境保全と、新しい仲間の加入に繋がりますように。
みどりのだいちプロジェクト
生物開発本部 ヒト科生物開発特化部リーダー クニマエ
試験協力者
西村 ██… セロトニンで生長が阻害されるという問題点はありましたが、西村くんが協力的なおかげで効率よく光合成を行うことができています。ただ、ちょっと頑張りすぎているような気がしますね。もう少し幸せになってくれないと花の処理に困ります。今後の課題ですね。
施設の襲撃が予想されます。実験の成果物はまとめて撤収する予定ですが、彼は放棄します。彼を回収しようにも、移転中に発生する花の処理が難しく、最悪それが原因で財団に捕捉される可能性があるためです。彼のことは残念ですが、彼から得られたデータは次の実験に役立つはずです。彼もそれを望んでいるでしょう。
補遺1: インタビューログ
対象: SCP-2699-JP
インタビュアー: 座布田研究員
付記: SCP-2699-JPは薬剤を点滴されたままインタビューに応じている。但しインタビューを行うために、薬剤は対象の意識が混濁しない濃度のものと自白作用のあるものを混ぜて使用している。
<録音開始>
座布田研究員: では、あなたがここに来る前のことを教えてください。
SCP-2699-JP: はい。えっと、ここに来る前は僕はお父さんの仕事場にいました。
座布田研究員: あなたの体に花が咲くようになったのも、その仕事場が原因ですか?
[対象は沈黙する。目の焦点が合っていないため、薬剤の作用の影響と思われる]
座布田研究員: 返答をお願いします。
SCP-2699-JP: あ、はい。そうです。最近、地球温暖化ですごい大変なことになってるので、それを解決するためにこうなりました。
座布田研究員: 自分の意志でなることを決めましたか?
SCP-2699-JP: そうですね。花は好きですし、それに囲まれて生きていけるっていいことだなと思って。それが温暖化の解決になるなら素晴らしいと思って。でも、それを後悔した時もありました。
座布田研究員: それは何故ですか?
SCP-2699-JP: 花が邪魔でご飯とか食べにくいですし、トイレもしにくい。お風呂も入れないんです。だからそれでお父さんに相談したこともあるんですけど、お前の責任だろうって言われて。
座布田研究員: なるほど、ではその後はどうしましたか?
SCP-2699-JP: 部屋で動かないようにしていました、もう何もやる気が出なかったですし。貴方達に捕まる前にはお父さんには動くなと言われましたし、僕もその頃は花を気にしていて、動く気力はありませんでした。
座布田研究員: では、今の体調はどうですか?
SCP-2699-JP: おかげさまですごくいいです、ありがとうございます。
座布田研究員: わかりました、それではこれでインタビューを終了します。ご協力ありがとうございます。
[対象は沈黙している]
座布田研究員: 西村さん?
SCP-2699-JP: 花、やっぱり綺麗ですね。
[SCP-2699-JP-Aは汗の水分で腐敗していることに加え、半数が枯死している]
座布田研究員: ええ、とっても。
<録音終了>
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