SCP-2707-JP
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過去の事象現場から回収されたヒガンバナのサンプル。

アイテム番号: SCP-2707-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-2707-JPの影響を受けたと推定される遺体の報告を受けた場合、その収容ならびに異常性の隠蔽活動が行われます。この際の手順は標準遺体処理カバープロトコルαを流用するものとしますが、不測の事態があれば暫時的なオペレーションが企画・発動されます。

回収された遺体は火葬・粉骨後、発見地点付近の墓地管理施設に無縁者として預けられます。

説明: SCP-2707-JPは主に日本国内で秋頃に発生する、ヒト遺体頭部の異常な開裂事象です。発見年となった2002年から2021年現在までに財団が確認した発生例は、北海道で2件、本州で36件、九州・沖縄で6件、四国で1件、そのほか国内島嶼部で2件、台湾島で1件、韓国沿岸部で1件の計49件が存在します。

SCP-2707-JPは以下のフェーズに従い進行します。

  1. 出芽期: 条件を満たしたヒト遺体がランダムに標的に選ばれます。この際遺体が満たすべき条件は以下に列挙するとおりですが、条件をすべて満たしていても標的に選ばれない場合がほとんどです。
    • 頭部が存在し、胴体から離脱していない。
    • 遺体が影響領域内に空気に曝露するかたちで存在する。
    • 医学的死から3日以上に渡って他者に発見されていない。
    • 遺体を引き取る意思のある人物が存在しない。
  2. 育蕾期: 影響遺体周辺に急速にヒガンバナ (Lycoris radiata) が発生、生育します。この際、生育可能な土壌の有無や、土壌の栄養性は考慮されません。ある事例においては、コンクリートを貫通する形で根が生育していることが確認されました。ヒガンバナの生育とともに、影響遺体の頭蓋骨に裂け目が生じ始めます。
  3. 開花期: 影響遺体の本格的な開裂が始まります。影響遺体の頭蓋骨は前述の裂け目にそって肉体とともに開き、ヒガンバナの花弁に類似した形態をとります。遺体周辺のヒガンバナが同様に開花し始め、遺体全体が花弁に覆われます。

出芽期から開花期完了までの時間には事例ごとに差があるものの、おおむね24時間以内に終了します。事象終了後、影響遺体および発生したヒガンバナは異常性を失い、通常のプロセスを経てゆっくりと腐敗/枯れていきます。異様に変形した頭蓋骨はそのまま残されます。

なおプロセス途中で他者が遺体を発見した場合、変形および周辺植物の成長はその時点で停止します — ただし、これは直接的に付近 (~30m) で目視した場合に限り、遠距離からの観察や監視カメラを介した観測などでは停止は発生しません。直接的観測から離れれば再び数十分ほどの間隔をおいて変形・成長が再開しますが、発見された遺体が適切な措置1を実施され始めるとプロセスは減速し、最終的には恒久的な停止へ移行します。

補遺.2707-JP: 蒐集院記録
SCP-2707-JPに関する文献捜索のなかで、蒐集院の資料のなかに複数例この現象について記述したと思われるものが発見されました。最古の文献は飛鳥時代前後のものと推測されており、研究者からはヒガンバナと死を結びつける文化の形成にSCP-2707-JPが影響を与えた可能性が提唱されています。歴史・文化部門 日本民俗課の下での調査活動が進行中です。

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回収資料の一つに付随する挿絵。平安時代頃に不詳の画家によって描かれたと考えられる。

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