SCP-2709-JP
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アイテム番号: SCP-2709-JP

オブジェクトクラス: Keter Neutralized

特別収容プロトコル: SCP-2709-JPは無力化されています。旧特別収容プロトコルについては下記折りたたみを参照してください。

説明: SCP-2709-JPは北海道[編集済]市内にて確認されている、ピスティファージ実体1と思しき人型存在です。機器によるピスティファージクラスの測定の試みは全て失敗していますが、クラスⅠ、もしくはそのクラス基準を満たさない存在である可能性が一部の研究員から指摘されています。SCP-2709-JPの外見は老年のモンゴロイド男性のものであり、外見上は通常の人間男性との差異は見られません。

SCP-2709-JPは、本報告書の作成時点で確認されている限り、その場からの消失と別の地点での再出現を繰り返しています。これは過去のSCP-2709-JPの発言から、SCP-2709-JPによって完全な制御下にあるSCP-2709-JP自身の能力であると推測されています。SCP-2709-JPはこの能力を用いて北海道[編集済]市内の個人経営の飲食店内に出現します──特にラーメン店や定食屋などの比較的低廉な価格で食事が提供される店舗に出現する頻度が高いことが判明しています。現在、SCP-2709-JPの保持する能力に対する調査と検証が試みられています。

また、SCP-2709-JPによる食品の摂食を起点とする認識災害効果がこれまでの観察により確認されています。この効果は飲食サービスの提供元にのみ作用します。影響に曝露した人物はSCP-2709-JPの摂食の様子を"いい食べっぷり"と認識し、SCP-2709-JPに対して強い好感を抱くようになります。その結果として飲食サービスを無償で提供するようになります2。前もってSCP-2709-JPの異常性に関する情報を獲得していた場合、この効果を無効化することが可能です。

SCP-2709-JPは多くの場合において、飲食店内に出現した直後に無銭飲食を行い、飲食サービスにより提供された食品を消費した後にその場から消失します。消失後のSCP-2709-JPを追跡する試みは全て失敗に終わっています。


補遺2709-JP.1: 発見

SCP-2709-JPはSNS上にて「無銭飲食をしている人物がいた」という投稿が複数確認されたことを契機として発見されました。該当の投稿は全て北海道[編集済]市内に在住しているユーザーによって行われたものであり、このことから北海道[編集済]市とSCP-2709-JPの間に関連性があることが示唆されました。

これを受けた財団は[編集済]市内の個人経営飲食店にエージェントを潜入させ3、SCP-2709-JPとの接触を図りました。この結果として、2019/02/19に潜入エージェントのうちの一人がSCP-2709-JPと接触することに成功しました。

以下は、その際に記録された映像の一部抜粋です。

映像記録2709-JP.1
Record 2019/02/19


話者:

  • SCP-2709-JP
  • エージェント・荒井

接触地点: ラーメン屋[編集済]


<記録開始>

[SCP-2709-JPが店舗に入店する]

エージェント・荒井: いらっしゃいませ。食券は入り口側に……

[エージェント・荒井が入店したSCP-2709-JPに気が付く。小型端末を操作し、財団にSCP-2709-JPと接触したことを通知する]

SCP-2709-JP: どうもどうもお兄さん!いやー今日もしばれるなぁ……鼻がもげそうだよもう。

エージェント・荒井: あー、ですよねえ。お席までどうぞ!

[SCP-2709-JPは食券を購入しないまま、カウンター席に着席する]

SCP-2709-JP: ここはあったけえなあ!嬉しいなあお兄さん。ありがとうよお。

エージェント・荒井: いえいえ、ごゆっくりどうぞ。

[エージェント・荒井がSCP-2709-JPに飲料水を提供する]

SCP-2709-JP: ああ……お兄さんちょっといいかなあ、この水ってタダかなあ?

エージェント・荒井: ええ、もちろん。お冷ですからね。なにか?

SCP-2709-JP: いや、いやあ、なんか癖が抜けてなくてねえ。安かったりタダだったりがありがたくて、そればっかりになっちゃってねえ。

エージェント・荒井: なるほど。まあタダはなんでも嬉しいですからね。僕も……

[エージェント・荒井の発言を無視してSCP-2709-JPが話を続ける]

SCP-2709-JP: 昔はいっぱり俺の周りにも人間がいてさあ、米だのお酒田の、餅なんかも持ってきてくれてなあ。祭りも楽しかったなあ。子供たちなんかがいっぱい来て、俺んちで遊んでさあ。

エージェント・荒井: へえ、お孫さんとかですか?お話聞かせてくれますか?

SCP-2709-JP: いやあ、もうでも誰もいなくてねえ。俺んちがなんか、わだつみや4の野郎が暴れてぶっ壊されて、流されてよお。子供も大人もみんな、いなくなっちまってよお。

エージェント・荒井: ……はい。

SCP-2709-JP: でもよ、俺は不思議と生きててよお。情けなくて、情けなくて……住んでたトカプチ5からふらふら歩いて、明るいところに来たらラーメン食わしてくれてよお。ありがたいばかり、ありがたいばかりです。

エージェント・荒井: なるほど。

SCP-2709-JP: それからよお、みんなに食わしてもらって、どっかの優しい定食屋さんじゃさあ、「お客様は神様」って言ってくれてさあ?またタダで食わしてもらって、あれのお陰で俺も生きていけるんだあ。

エージェント・荒井: ……ですがそれは、店側からしたら迷惑に感じる人もいるんじゃないですかね。

SCP-2709-JP: なんで?

エージェント・荒井: だって無銭飲食されれば店の売り上げに影響が出るんです。みんなにも生活というものがありますし、店だって維持費とか……

[エージェント・荒井の発言をSCP-2709-JPが遮る]

SCP-2709-JP: でもねえ、みんな優しくてねえ……

エージェント・荒井: そうですか。

SCP-2709-JP: みんな優しいからねえ、嬉しくてねえ……。ああ、ああ、そうだ。忘れてた。

エージェント・荒井: なんでしょう。

SCP-2709-JP: ラーメン、豚骨ラーメン。最初に食わしてもらったやつがとんこつなんだあ。大好きなんだあ。畜生の骨を煮込んだ汁でも、けがれていても。俺は好きなんだあ。ありがたいんだあ。

エージェント・荒井: そうだ、忘れてました。食券。レジの近くに券売機がありますのでそちらで。

SCP-2709-JP: 食券ってなんですか?もしかしてお金かかる?困ったなあ。

エージェント・荒井: そうですけど、じゃあおうちの誰かに来てもらって……。

SCP-2709-JP: 俺、今、お金持ってねえんだあ。 [沈黙] お前は優しくしてくれないのかな。

エージェント・荒井: ……すみませんが、お金は頂戴したいです。

SCP-2709-JP: そうかあ、そうかあ……。

<記録終了>


終了報告書: 記録後、SCP-2709-JPは複数回に渡り飲料水の再注文を行いました。その後、歩いて店外へと移動し、消失しました。現在に至るまで、当該店舗にSCP-2709-JPが再出現した記録は存在していません。依然として警戒態勢は維持されます。


補遺2709-JP.2: 財団による対応

財団はSCP-2709-JPへの対策として、北海道[編集済]市内の個人経営飲食店の店主らに対し、限定的な情報開示を行いました。この結果として、SCP-2709-JPの異常性の抑制に成功したことが個人経営飲食店に潜入した財団エージェントからの報告により確認されています。なお、情報開示以降、SCP-2709-JPは出現頻度を減らしていきました。

補遺2709-JP.3: Neutralized指定経緯

限定的情報開示を行ってから3ヶ月が経過した2019/05/29以降、SCP-2709-JPの出現が確認されなくなりました。これを受けた財団は別地点への出現を考慮し、北海道全域の網羅的調査を実施しました。その結果、最後にSCP-2709-JPが出現した地点が十勝市南部にある[編集済]神社の付近であることが明らかになりました。

以下は現地に設置されていた監視カメラ映像の転写です。

映像記録2709-JP.2
Record 2019/05/29


<記録開始>

[SCP-2709-JPが神社の参道を歩いている。その足取りは覚束無いものである]

SCP-2709-JP: ご飯、ご飯食べてえなあ。

SCP-2709-JP: ここ最近何も食えてねえなあ。豚骨ラーメン、食べてえなあ。

SCP-2709-JP: 店に行っても恵んでくれねえし、皆俺のこと嫌いになっちまったのかなあ。悲しいなあ、悲しいなあ。

SCP-2709-JP: もう俺のこと、誰も覚えないんだなあ。

[SCP-2709-JPが転倒する]

SCP-2709-JP: もう欲張らねえ。欲張らねえから、残飯でも分けて貰えねえかなあ。

SCP-2709-JP: ああもう、身体も動かねえや。俺もここまでかあ。

[SCP-2709-JPが不明瞭な発言を繰り返す]

SCP-2709-JP: ……俺、死んじまうのかなあ。一人で死ぬのは嫌だなあ、寂しいなあ。誰か、傍にいてくれねえかなあ。

SCP-2709-JP: せめて、せめて最期くらい皆と過ごしたかったなあ。皆で遊んで騒いで食べて、祭りもしたかったなあ……。

SCP-2709-JP: 腹、減ったなあ。

[数分後、SCP-2709-JPが消失する]

<記録終了>


終了報告書: 当記録から1年が経過した2020/05/30時点まで。SCP-2709-JPの出現は確認されていません。この事実を受けた財団はSCP-2709-JPが無力化されたものと判断し、Neutralizedクラスに指定しました。

SCP-2709-JPの無力化原因について、調査が行われています。

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