アイテム番号: SCP-2724-JP
オブジェクトクラス: Keter
@everyone 現在、D-272417は定期実験に投入された他のDクラス人員へ過剰な暴行を加えるなど、数々の問題行動が見られます。しかしこれらの行動を制止した場合に他の担当職員にその矛先が向けられる恐れ、並びにこれら問題行動の黙認がSCP-2724-JP-Lの成長と更なる2724-JP特定感情群の誘発に効果的であるとの観点から、D-272417の問題行動に対しては一貫して黙認の姿勢をとるべきと見なされている事に留意してください。
特別収容プロトコル: SCP-2724-JP-Lの個体数を維持するため、SCP-2724-JP-Aによる産卵プロセスを管理してください。仮にSCP-2724-JP-Lの個体数が15体を越えた場合、潜在的に財団によるコントロールが可能な限界を超過する事が懸念されます。
現在、D-272417がSCP-2724-JP-Lの宿主として収容されています。彼は潜在的に機動部隊み-X("空蝉の極悪人")の一員であると見なされ、本報告書へのアクセス並びに質問の書き込みが許可されています。D-272417はSCP-2724-JP-Aへと変化した時点で正式に機動部隊み-Xへと配属され、新たな宿主の選定が行われます。
質問: 随分と良い待遇だな。
回答: 我々としても不本意なのですが、SCP-2724-JPが世界中に放たれてしまった以上、まだ手元にいる貴方がたと良好な関係を築いて機動部隊に招き入れ、抑止力とする他無いのです。
説明: SCP-2724-JPは、霊素生命体の1種です。当該オブジェクトには「幼虫期」と「成虫期」の2つのライフサイクルが存在し、人間もしくは一部の人型アノマリーとの共生関係を築く事が知られています。以下、幼虫期の個体をSCP-2724-JP-L、成虫期の個体をSCP-2724-JP-Aと呼称します。
SCP-2724-JPと人間ないし人型アノマリー(以下、"宿主")との共生関係は、SCP-2724-JP-Aによる "産卵プロセス" によって開始されます。本プロセスはSCP-2724-JP-A個体が宿主となる対象の頭部に2秒間掌をかざす事によって完了し、以降宿主の体内には1体のSCP-2724-JP-L個体が確認されます。この際SCP-2724-JP-Aは「自身は極めて不道徳な人物である/悪人である」との主観的認識を強固に有する対象のみに産卵プロセスを実行する事が知られており、この条件を満たさない人物がプロセスの対象となる事はありません。
質問: 何故博士たちは選ばれない?
回答: 我々が制作者ではないので、明確に言い切る事はできません。しかし "マナによる慈善財団"、そして "悪人正機説" 。これらの言葉がキーワードになるでしょう。
Re: 回答: 分かるように言え。それと、お前らは悪人ではないとでも?
回答: 我々には、守るべき対象と使命があります。故に、我々は「空蝉の極悪人」にはなれない。少なくとも、SCP-2724-JPは我々を "悪人" とは見なさないのだと結論付けています。
SCP-2724-JP-Lは外見上セミ科(Cicadidae)の幼虫に酷似した霊素生命体であり、ハルトマン霊体撮影機によって宿主の胸腔内部に存在を観察可能です。SCP-2724-JP-Lは宿主が自由意思により「2724-JP特定感情群」1の何れかに属する感情に基づく行動を選択した際に成長し、宿主に対して段階的に様々な異常性を付与します。
SCP-2724-JP-Lが宿主に付与する異常性は以下の通りです。
段階 | 発現時期 | 付与される異常性 |
---|---|---|
第1段階 | 共生開始後2~5ヶ月 | 痛覚の消失 |
第2段階 | 共生開始後6~10ヶ月 | 恐怖心の消失 |
第3段階 | 共生開始後11~12ヶ月 | 身体への異常な耐久力の付与 |
質問: 俺は今第1段階か。
回答: はい。
質問: 第2段階で親父が夢に出なくなった。恐怖が消えたらしいぞ。
回答: すると、我々の事も怖くはないのでしょう。
@everyone 管理体制を強化し、D-272417の取り扱いに細心の注意を払ってください。
そしてこれらの段階を終えたSCP-2724-JP-Lは、やがて「羽化プロセス」へと移行します。本プロセスに於いてSCP-2724-JP-Lは宿主の身体を霊素生命体的構造へと変換して宿主との融合を行い、宿主と一体化する形でSCP-2724-JP-Aへと変化します。この際外見は宿主のものから大きく変化し、外骨格並びにセミ科昆虫に類似した頭部と羽を備えた人型となります。また、SCP-2724-JP-Aの人格は宿主のものが引き継がれることが確認されています。
SCP-2724-JP-Aは基本的には霊素生命体でありながらも、一時的にその身体部位を物質化する事で物体への物理的干渉が可能である他、以下の異常性を有します。
任意に複眼部からの、レーザー光に類似した3.8MWの指向性エネルギーの照射を行う |
前腕部の外骨格を鉤爪状に変形させ、接触した物体に対して瞬間的に30MPaの圧力を発生させる |
半径9.7m以内の任意座標への瞬間的な転移を行う2 |
補遺1: SCP-████-JPの回収作業中に発見された、マナによる慈善財団が集会に使用していたと思われる施設にて内部捜査が行われた際、復元に成功した電子メールの一部にSCP-2724-JPとの関連が疑われる内容が発見されました。以下はその内容です。
████ 様
この度我々は、遥々中国の██省より、██寺の大袖住職様からの贈り物を頂きました。大袖住職様は中国浄土教の開祖である曇鸞大師の言葉を引用し、
蟪姑春秋を識らず伊虫あに朱陽の節を知らんや
と語られました。これは、「セミは春も秋も知らない。ならば、自身が体験している夏というものも、知っているとは言えないだろう。」という意味です。
現在、虐待や苛めといった社会問題が存在します。これらは被害者の心に大きな影を落とし、彼らの中には「人にいたわられる」という経験を受けられないまま生き続ける人々もいます。そうなれば、彼らは「人を傷つける」という事の本質も、知らないままなのではないでしょうか?
私たちは、彼らに身を包み守るその術と、より高みの視点から愛と悪意の双方のある世界を見渡せる羽を授けたいのです。
さて、日本で曇鸞大師を七高僧の一人としている浄土真宗では「悪人正機説」というものがあります。その環境から悪人として振る舞う以外の術を持たなかった人々こそが、真っ先に救われるべきなのではないでしょうか。3我々は大袖住職様からの慈悲に満ちた御言葉と贈り物についての説明を受けて、直ちにその贈り物、悪人正機の羽虫たちを各地に輸送し人々の元と解き放ちました。
「根っからの悪人なんていないのだと結論付けられるその日まで。」と微笑んでいた、大袖住職様の御顔が今も思い出されます。
財団の認知している限りでは「██寺の大袖住職」なる人物は実在せず、当該人物は虚偽の肩書きを自称していたものと考えられています。
補遺2: 現在、最低でも███体以上のSCP-2724-JP個体群が未収容の状態であると考えられており、産卵プロセスによって今後も個体数は指数関数的に増大していくものと見られます。この状況を受けての緊急措置として、機動部隊み-X("空蝉の極悪人")が創設されました。当該部隊は財団所属の元DクラスであるSCP-2724-JP-A群によって構成され、対外的な抑止力並びに実働戦力として運用されます。
@D-272417 羽化プロセスを完了した場合、こちらを押下して下さい。機動部隊を管轄する担当者に切り替わります。