SCP-2726-A: ママーーーーーッ あと5分だけ寝かせてよーー
プラサード博士: 都合の悪い時間だったかな?
SCP-2726-A: ぶっちゃけ幽霊には時間とか関係ないよ。調子はどう?
プラサード博士: いつも通りさ。少なくとも仕事は暇だよ。
気分はどうかな?
SCP-2726-A: どーもゴーストランドにはプロザックが無いらしいんだ。だからまぁ、相変わらず落ち込んでる。今まさにそう。
そうは言っても、私が死んだのは多分あれのせいだから、文句は言えないよね。
幽霊が自殺できるかなんて分かんないし。2回死んだら生き返っちゃったりすんの?
プラサード博士: それはどうも私の専門分野じゃないな。
SCP-2726-A: あーあ、緑色のバケモンが私のゴーストハウスに乱入して口からレーザーをぶっ放して即死々させてくれないかなーっと
そういや今日は18日じゃない
プラサード博士: ああ。
SCP-2726-A: 私が作られてからちょうど2ヶ月だ、イェーイ
プラサード博士: 君が死んだのは5月14日だと思ったが?
SCP-2726-A: まーね、でもみんながこれをセットアップするのに4日かかった。驚くかもだけど、死んだ友達をインターネット上に複製するってすごく手間がかかるぜ。
トウモロコシの神に生贄を捧げなきゃいけないみたいだけど、トウモロコシがゲロマズなだけあって、そいつがもう大分アレな奴らしいし。
プラサード博士: 複製?
SCP-2726-A: ほら、ブラックミラーのエピソードにあったじゃん。女の子が死んだカレシにそっくりのロボを手に入れてさ、そいつのソーシャルメディア投稿を全部ダウンロードしてそれっぽく動いてもらう話。
ただ、私の場合はロボットじゃなくて幽霊だけどね。
プラサード博士: ああ、それなら理に適う。
SCP-2726-A: ところであのうんこミラーが超駄作だって話はしたっけ?
今からあの番組について思いっきりお気持ち表明したい。
プラサード博士: お構いなくどうぞ。
SCP-2726-A: だってさー、各エピソードの脚本家チームにバンクシーを招待するかどうかをコイントスで決めてるとか、1話ごとに設定を切り替えなければどれだけ世界観に幅が出るかとかはともかく、あれの製作スタッフはテクノロジーが実際できる事の範囲を全然分かってないんだもん。
世の中は変な魔法のインターネットオタクと付き合いのある人間ばっかりじゃないから、フェアな批評じゃないかもね。でもさー、アレだよ、私から見るとあの番組の半分はめっちゃ平凡だよ。
「ワーオ、このディストピアじゃ誰もが常にジョギングしなきゃいけなくてリアリティ番組は薄っぺらで酷い世界なんだね、こわーい」とかなんとか。
もうさ、人にDownvoteしてポップコーン地獄に堕とすことができたり、ウェブサイトの投稿をハッキングすると現実世界の奴らが爆死したりするエピソードが来たら教えてよ。多分それなら私も興味が湧くと思うから。
言いたい事が上手く伝わってないかもね。だから文芸評論には手を出したくないんだ。
プラサード博士: なかなか的を射ているよ。ただ、君が現実で起こり得ると考えているシナリオの具体的な例を挙げてもらえれば、もっと伝わりやすくなるだろう。
SCP-2726-A: 取調べごくろーさま、お巡りさん。
プラサード博士: 今のは私が悪いのかい?
SCP-2726-A: うん。悪い子。 *巻いた新聞で叩く*
プラサード博士: *私はホログラムなのですり抜ける*
SCP-2726-A: ホログラム新聞でーす。
プラサード博士: だとすると、「イテッ」。
SCP-2726-A: ところで何の話だっけか? 脱線した気がする。
プラサード博士: どうして君が████████幽霊になったかの話から、ブラック・ミラーに関する文句に話題が移った。
SCP-2726-A: あー、そうだっけ。とりあえず謎は1つ解けたでしょ。
プラサード博士: 君の投稿を非常に発見しにくい理由に心当たりは?
SCP-2726-A: うん、いつ訊かれるかと思ってた。
都市伝説によくあるじゃない。インターネットに薄気味悪い何かが転がってて、でもそれが具体的に何処なのかは誰も知らなくて、ある時偶然出くわすまでは謎のままってやつ。
プラサード博士: 何の話をしているのかは分かる気がするよ。
SCP-2726-A: まぁそれは間違いなくどちゃクソクールなんだけど、近頃じゃなかなかそうはいかない。
1日目 ヤベーのが発生する
2日目 誰かがヤベーのを見つけて口コミで広まる
3日目 GoogleとTwitterでトレンドになる
4日目 BuzzFeedが“自殺した女の子の友達が彼女を復活させた驚きの方法”とかいう記事を書く
5日目 FBEが“デジタルゴーストを知った10代の少年たちの反応”とかいう動画を撮る
そんな感じ。
インターネットがインターネットを台無しにしたせいでもう素敵な物は手に入らない。
みんなは私がどう感じたかを理解してた。ありがたいことに魔法はマジで存在するから、みんなが私のためにこれを準備して、人々がたまに遭遇するけど重大ニュースにはならない不思議体験に私を変えてくれたんだ。
プラサード博士: 君の友達はとんでもなく親切だったらしい。
SCP-2726-A: うん、今や私はクリーピーパスタ。情動不安ともおさらば。
プラサード博士: もしかしたら私は“みんな”について既に知っているかな?
SCP-2726-A: どうだろ、アンタ個人が具体的に知ってるかは知らないけど、アンタが用務員なのはお互い分かってるし、多分そーじゃないかなー
プラサード博士: 私と弟を混同しているようだね。
SCP-2726-A: 嘘つくの下手すぎだろ笑 用務員ってのは、アンタが魔法のあれこれを掃除して回ってる奴らの一員だって意味。どうせ政府の一部門かなんかでしょ。
プラサード博士: それは君にとって明白な事かい?
SCP-2726-A: ようやく理解したって意味。
でもどうだっていい。私はクールに落ち着き払ったインターネット人格を固く保ってる(私は全部のキー入力で感情を完璧に制御してるよ)から、アンタたちに対してキレる方法が文字通りの意味で分からない。変な感じ。
時々、生きてた頃の私だったらどう反応しただろうって疑問に思う。
みんなは“ゲーマーズ・アゲインスト・ウィード”を名乗って、大抵はインターネット上で魔法を使って色々やってる。
プラサード博士: ああ。彼らの話なら聞いたことがある。
SCP-2726-A: まぁそうだと思ってた。
みんなからも挨拶があって、私からアンタに“バーカ”って言ってほしいってさ
プラサード博士: 光栄だね。
ついでにもう1つ訊いていいかな?
SCP-2726-A: 私は本当に黙り方を知らないんだ。だって、アンタが話しかけ続ける限り、私は反応し続けなきゃいけないでしょ。
だからその手の質問への答えはいつでもイエスだけど、答えたくない時は嘘つくからね。
プラサード博士: もし君のような幽霊が必要になったら、何処に行けば手に入る?
SCP-2726-A: はい?
プラサード博士: そんなに驚くような質問かな? 君は私たちの仕事に見当を付けていたじゃないか。
SCP-2726-A: いや、ごく当たり前の事だからとっくに知ってるかなーって。
プラサード博士: 残念ながら知らない。
SCP-2726-A: あっそう。普通に年間180ユーロ程度で借りられるよ。やり方さえ知ってればほとんど何にでも突っ込めるけど、ある程度情報を刷り込まなきゃ全然動かない。
さもなきゃ、考えられる限り最もありふれた人間っぽく行動して、地球上のどんな物より不安を煽るだろうね。
時間切れになると、幽霊はあの世かどっかの元居た場所に帰って、憑りついてた物は機能しなくなる。正直かなり良いサービスだよ、面倒は無いしイカしてる。
たまに死体が後に残るのはちょっとイケてないけど。
プラサード博士: ふむ。かなりためになる話だった。
何処に行けば幽霊を借りられるんだい? それについての話は無かったね。
SCP-2726-A: 正直に言うけどさ。
理由はさておき、アンタたちが魂を借りたとして、それをどう使うつもりなのか私はマジで知りたくない。
多分こういう気持ちのいい事じゃないと思う。
だから教えてあげない。
プラサード博士: ダメ元で訊いてみたまでだよ。
SCP-2726-A: はいはい、そーですねー。 *ベシベシ*
プラサード博士: やめてくれ。
まぁしかし、それで君の気が済むなら続けても構わない。今日はこれで時間切れだ。また明日会えるかい?
SCP-2726-A: この新聞はアンタ専用に取っとくけど、それでいいと思うよ。じゃーね。