SCP-2728-JP
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アイテム番号: SCP-2728-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-2728-JPは封鎖されます。一般人のSCP-2728-JPへの侵入を防ぐため、警備員を最低1人配置してください。現在、SCP-2728-JPに関する実験はレベル3/2728-JPクリアランスを保持する職員1名以上の承認を得た上で行ってください。

また、SCP-2728-JP-1は低脅威度物品収容ロッカーに収容されます。

説明: SCP-2728-JPは東京都渋谷区上原█丁目██の家屋に位置する1室に当てられた指定です。SCP-2728-JPは回収以前は家屋に居住していた成人男性である町戸 浩司氏1が所有しており、標準的な書斎の内装となっています。家具の様子やなどからSCP-2728-JPは書斎として使用されていたと推測されていますが、異常性を発現していない状態で侵入した場合は棚や書見台の引き出しの中は全て空の状態です。

SCP-2728-JP-1は「Don't disturb」と記されている紙製のドアノブプレートです。SCP-2728-JPは破壊耐性を有していませんが、回収当日から劣化の兆候を見せていないことが判明しています。

SCP-2728-JPは入口のドアノブにSCP-2728-JP-1をかけた状態でSCP-2728-JPに侵入することによって異常性が発現します。異常性が発現するとSCP-2728-JPの内部に様々な物品が出現します。以下は出現する物品の一例です。

出現する物品 備考
安楽椅子に座った状態の白骨遺体 町戸 浩司氏とみられる。死亡推定時期を割り出す試みには失敗している。
「色付く雑踏」と題された本 棚に出現。7歳の主人公が初めて東京に転居し、昔の場所との差異について語るという内容の小説。
「落城」と題された本 棚に出現。13歳の主人公が過去に友人と作った秘密基地を壊されてしまうという内容の小説。
軟式球と文房具 書見台の引き出しの中に出現。
「監獄」と題された本 棚に出現。主人公が警察学校に通っている最中の実体験を記した随筆。
「ネオン・アンサンブル」と題された本 棚に出現。主人公が繫華街で出会った女性と関係を深めていく中、相手の事故死と連れ子との関係を描いた小説
「クランクアップ」と題された本 棚に出現。主人公が連れ子の少年と仲を深めるも、自身との葛藤の末、家を出るという内容の小説。
異動命令書 書見台の引き出しの中に出現。国家公安委員会への配属と題されている。
「足跡」と題された本 棚に出現。事件の捜査中に事故死してしまった1人のベテラン捜査官の残した手掛かりから事件を解決するという内容の小説。

上記の例も含め、SCP-2728-JPの内部に出現する物品は、20██年現在までに発売されている全ての物品と一致していません。現在、内部に出現する物品は町戸 浩司氏の記憶や経験から形成されているのではないかと推測されています。

発見経緯: SCP-2728-JPは町戸 哲氏2が実家へと帰省した際に発見し、そのまま警察に通報。異常事例であったことからそのまま財団に捜査が移譲されました。以下のインタビューは町戸 哲氏との最初の接触時に行われたものです。

インタビュー記録2728-JP

対象: 町戸 哲氏

インタビュアー: Agt.高辻

付記: 当インタビューは渋谷警察署の取調室を借りて行われました。また、Agt.高辻はその地位を警察官と偽装しています。


<抜粋開始>

Agt.高辻: あなたのお父様である町戸 浩二氏について、お聞かせいただきたいです。

町戸 哲氏: 父さんは、寡黙な人でした。母さんがいない中、父さんは夜遅くまで一生懸命働いていましたよ。ただ、子供を可愛がるタイプというよりはとにかく見守る。そんな人だったと思います。

Agt.高辻: 思う、と濁すのは一体どうしてですか?何か理由が。

町戸 哲氏: ああ。[数秒沈黙] 私が小学6年生の頃に、父は突然家に帰らなくなってしまって。それ以来は一緒に住んでいる祖父や祖母と過ごしていたんです。もう14年も前のことですから、父について思い出せるエピソードもそれほど多くなくて。

Agt.高辻: なるほど。では、この本の内容については心当たりはありますか?

町戸 哲氏: 例の本棚に並べられている本ですよね?概ね心当たりがあります。特にあの、「クランクアップ」という本だったでしょうか。あれに出てくる息子というのは勝手に私のことなんじゃないかな、なんて考えちゃったりはしました。一度も父の内面など聞かされたことが無かったので、内容はとても意外でした。

Agt.高辻: では、逆に普段はどういったことをお話しされていたんですか?

町戸 哲氏: 世間話以外は本当に滅多にした記憶が無いですね。掛けられた言葉も学校はどうだった、とか普通のものだったと思います。あ、でも父さんはが口癖のように言っていた言葉はありましたね。

Agt.高辻: お聞かせいただいてもいいですか?

町戸 哲氏: 「秘密は守れ」とよく口にしていました。普段人に言いつけを守らせたり、なんてことはないんですけど。まあ、職業柄もあったのでしょうね。

[沈黙]

町戸 哲氏: あの、一点お願いがありまして。

Agt.高辻: もちろん、可能な提案であれば。

町戸 哲氏: 父さんのあの部屋を、もう開けないでくれませんか?

Agt.高辻: それは、どうして?

町戸 哲氏: 小さい頃は本当にバカだったので、秘密を守る、とかあんまりしっくり来てなかったんです。どうせみんな忘れてしまうのに、どうしてそんなにこだわるんだろうって。結局秘密なんて破られてしまうのに、どうして律儀に私だけ守っているんだろうって。最近まで不思議に思ってたんです。でも。

Agt.高辻: でも?

町戸 哲氏: 秘密を破られるのって、ちょっと寂しくなるんですよね。きっと父さんもその寂しさをよく知っていたんだと思います。ほら、秘密基地の話みたいなの、本棚にもあったじゃないですか。

Agt.高辻: 確かにありましたね。「落城」だったでしょうか。

町戸 哲氏: そう。きっと、嫌だったんでしょう。だから、「起こすな」「掃除をするな」なんて、律儀に。

Agt.高辻: 町戸さん。残念ながら調査をしないということはできないと思います。我々としても1人の人間の死を見過ごすわけには行かないので。ただ。

町戸 哲氏: ただ、どうなんでしょうか。

Agt.高辻: お父様の秘密は、間違いなく守られると思います。

<抜粋終了>


終了報告書: 町戸 哲氏を含めた町戸 浩司氏の関係者はCクラス記憶処理が施された後、解放されました。

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