SCP-2730-JP
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アイテム番号: SCP-2730-JP

オブジェクトクラス: Keter Neutralized

特別収容プロトコル: SCP-2730-JPは、2008/03/07以降一切確認されていないため現在はNeutralized指定されています。以前の特別収容プロトコルについてはアーカイブを参照してください。

現在もSCP-2730-JP-Aの消失先特定のための調査は続けられています。調査は打ち切られました。

説明: SCP-2730-JPは2008/03/07に広島県及び山口県にて発生した17件の住宅火災です。各火災は発生順に1から17までの識別番号が与えられています。各火災の詳細な記録については別紙を参照してください。

17件の火災全てにおいて、以下に示す一連の事象(以下、救出イベントと呼称)が発生していたことが判明しています。

1.火災が発生している住宅の住民の1人が住宅内部にまだ1人(以下、この残っている住民をSCP-2730-JP-Aと呼称)残っていることに気づく。1
2.何人かの消防士2がSCP-2730-JP-Aの救助に向かう。
3.消防士が住宅内部からSCP-2730-JP-Aを救出する。

SCP-2730-JP-Aの救助に向かった消防士は後に火傷が原因となって死亡しています。生じた火傷の深さは、通常の火災ではまず生じることでは無いと考えられる程度のものであり,このことからも何らかの異常存在の関与が疑われています。

救出イベントの最も特異である点として、イベント終了後、一定時間を経てSCP-2730-JP-A及びSCP-2730-JP-Aに関するあらゆる情報が消失するという点が挙げられます。これは住民票等の文書の他、SCP-2730-JP-Aが映った映像媒体及び写真、関係があった人物の記憶にまで影響は及びます。唯一の例外は各火災に関係していた人物の記憶ですが、これらの消失に伴い、情報の不整合等が露見していないことから、同時に大規模な現実改変が発生していたとみなされています。

SCP-2730-JPは発見当初、その発生したと推測される現実改変の規模によりKeter指定されていましたが、2008/03/07以降一切発生が確認されなかったため、現在はNeutralized指定されています。

以下は、SCP-2730-JPの存在を財団が認知した時点で唯一生存していた、SCP-2730-JP-Aの救出に向かった消防士に対するインタビュー記録の書き起こしです。

対象: 青田 ██氏
インタビュアー: エージェント・██
付記: 青田氏はSCP-2730-JP-4発生時に救助に向かった消防士であり、意識不明の重体だったが、2008/03/09に意識が回復したため急遽インタビューが行われた。インタビューを円滑に進めるため、青田氏には警察による聞き取り調査だと説明している。

<録音開始>
[重要度が低いので省略]

エージェント・██: では、インタビューを開始します。

青田氏: [荒い呼吸]よろしくお願いします。

エージェント・██: では、まず突入時の状況等について教えていただけますか?

青田氏: [5秒ほど沈黙]突入時。申し訳ないのですが、いつもよりも火事の状況がひどかったので内部の様子を確認する余裕はありませんでした。[荒い呼吸]一秒を争う事態だったので。[10秒ほど沈黙]

エージェント・██: そうですか。では、私見で構わないので、何か火災の状況が酷かった理由につい心当たり等はありますか?

青田氏: 心当たり、ですか。[5秒ほど沈黙]おそらくですが、住民の方が火事に気付くのが遅かったからだと思います。住居の構造上の問題で。あとは、心当たり、██3君がまだ中にいることが分かったのが遅かったのも[荒い呼吸]原因の1つかなと思います。

エージェント・██: 遅かった?

青田氏: ぇ。[10秒ほど沈黙]最初に██君がいないことに気づいたのが、██君のお母さんなのですが、[荒い呼吸]██君の弟が救助されていたから██君も救助されていたと思い込んでいたようで。[荒い呼吸]あと、軽いパニック状態になっていたのも遅れた原因であると思います。やはり、パニックになってしまう方は多くて。

エージェント・██: なるほど。救助されていた時に、何か気づいたことなどはありますか?どんな些細なことでもよいので。

青田氏: [荒い呼吸]気づいたこと、さっきも申し上げたように、私1人で救助に向かってあまり余裕のない状況だったので、周囲の状況とかは覚えてないですね。[5秒沈黙]

エージェント・██: 1人で?

青田氏: えぇ。住居に侵入できるところが1つしかなく、非常に狭かったので。[荒い呼吸]後、刑事さんなのでご存じだと思いますが、あの日、火事が区域内で何件も起きて[5秒ほど沈黙]割り当てられる人員の数も少なかったのも理由です。今、あの時の状況を考えれば、私1人で行ったことはたぶん最善でした。

エージェント・██: なるほど。

青田氏: [10秒ほど沈黙]もう1つだけ理由があります。[荒い呼吸]照れくさい話ですが、あの時、██君のお母さんが泣いているのを見て、私が行かなきゃ、私が助けなければ、と思ったんです。私以外誰もいなかったんです。危険な状況であることは分かってました。下手すれば死んでもおかしくない、というのも分かっていました。でも、私が行くしかないとあの時思ったんです。

エージェント・██: とても立派なことだと思いますよ。

青田氏: ありがとうございます。██君の救助はほんとに、ほんとに大変でしたが[5秒ほど沈黙]██君を救助したときに、防火服越しでしたが火の温度とは違う、生きている人の温度、温もりを感じました。たぶん、私はこのために[荒い呼吸]生きてきたんだと思います。[青田氏が激しく咳き込む]

[傍で待機していた医者からこれ以上のインタビューは危険だと判断されたためインタビューは中断]

<録音終了>
追記: 青田氏はこの2時間後に症状の急激な悪化により死亡しました。4

終了報告書: 青田氏の証言と他の火災の関係者の証言により、他の16件についても同様の事例が発生していたと推測される。これらに類似した事例は発生すること自体、極めて稀であり、やはり何らかの異常が発生していたとみるべきだろう。SCP-2730-JP-Aに関しても調査を行いたかったが、出来なかったのは非常に痛い。 -██博士

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