監督評議会命令
以下のファイルは現在不明かつ潜在的に危険な現実歪曲災害を描写しており、レベル3/2740機密情報です。
無許可のアクセスは禁止されています。
2740
アイテム番号: SCP-2740
オブジェクトクラス: Euclid
担当サイト: USINBLサイト-81
管理官: J・カーライル・アクタス
研究主任: カイル・ドーセット
部隊割り当て: N/A
家庭用ビデオカメラから回収された映像。Lee家の屋根裏部屋の内部と思われる。日付の特定は不可能。
特別収容プロトコル: SCP-2740の性質に起因し、いかなる直接的な収容方法も現時点では実行不可能です。インディアナ州█████、██通り████ █への接近を禁止し、財団の保安職員によってこれを施行します。デルタ-4B”ガス漏れ”のカバーストーリーをインディアナ州█████において流布します。
SCP-2740に割り当てられた全職員は標準的認識災害オブジェクト記憶処理措置の利用が可能です。
説明: SCP-2740の性質、外見、また潜在的存在はいずれも未確認です。SCP-2740はインディアナ州█████、██通り████ █のLee一家自宅、屋根裏部屋の入り口である梯子から約6m先の北西の角に恐らく存在していると考えられています。
屋根裏部屋に続く梯子に接近を試みた人物はその行動が不可能であると認識します。この梯子への接近、または特定のケースにおいてこの梯子を登り始めることに成功したとしても、調査を進めた結果、そうした人物が例外なく実際には接近できていなかった事実が判明しました。原因は現時点で不明です。加えて、この現象が実際に存在しているかも未確認です。これに関しての研究が進行中です。
SCP-2740に関する情報はその影響を受けた人物とのインタビューを通してのみ収集されています。SCP-2740はそれを認識した全ての人物に対して激しい恐怖感を植え付けると思われますが、この原因もまた不明です。この影響は██通り████ █の家屋へ侵入するか、あるいは第三者の説明を通してSCP-2740の異常な性質を認識すると同時に開始します。
インタビュー2740-A: Franklin Lee
以下のインタビューはSCP-2740とFranklin Lee(██通り████ █の家屋の所有者、Lee一家の家長)の発見後に行われました。
質問者: K.Dorsett博士
回答者: Franklin Lee
[ログ開始]
Dorsett博士: 貴方が初めてその違和感に気が付いたのはいつ頃のことですか?
Franklin Lee: 恐らくは…そうだな、数年前。ずっとああではなかったのだ。最初のうちは些細なものだった、そう、無視できる程度に些細な。二階のホールへ上がった時にちらりと―ほんの少し梯子の方を眺めると、あの感覚を覚えるのだ。
Dorsett博士: その感覚を説明して頂けますか?
Franklin Lee: 何かがあの上にあるという感覚だ。それそのものや何かが見えた訳ではないし、また我々の耳に届きもしない。家の中の気配が変わったのだ。そして我々はその原因が彼女にあると考えて―私は…いいや、それは今関係ないな。
Dorsett博士: Leeさん? 彼女とはどなたのことです?
Franklin Lee: 我々の長女、Oliviaのことだ。彼女は17の時に家を出た…その時はまた別の問題が起こっていて、幾つかのいざこざを経験してもいた。Oliviaは妻の姉妹と暮らすために家を出ていって、以来我々は何年も娘と話していない。もしかすると…多分、その頃からあれに気付き始めたのかもしれない。
Dorsett博士: 最初に気が付いたことは何でしたか?
Franklin Lee: 静寂、全ては本物の静寂だ。3人も子供がいる家とは思えない静けさ。分かるだろうか…私には理解できないことだが、時と共に静寂は深まっていった。やがて私は確かめるべきだと決意した。頭上に存在するものを明らかにすべきだと、彼女が残していったものを―
Dorsett博士: Leeさん?
Franklin Lee: …私は挑んだ、回数など数えられないほど。梯子を登り出し、そして瞼を開くと、私は自分のベッドに戻っているか、リビングでTVの前にいる。あの感覚は片時も消えていない。私は仕事を辞めた。ストレスを処理しきれなかったのだ。誰にも説明できはしないから、誰もが私がいかれたものと思ったろう。だがな…私は幾度か家を丸ごと取り壊そうと考え、一度は書類にサインさえしたのだ。しかし私は気付けば家に戻されていて、その会社は最早存在していなかった。
Dorsett博士: 引っ越しは考えませんでしたか?
Franklin Lee: …試さなかったと思うかね? あの梯子を登るのと同じだったよ。中ほどまで登り、頭上のドアを開け、それを感じ取る。すると…次の瞬間にはキッチンテーブルの前で座っているのだ。
[ログ終了]
このインタビュー後、Lee氏とその家族はサイト-81へ留置と検査のために移送されました。開放は彼らの精神状態に関する研究が進行するまで保留します。 Lee一家は現在までサイト-81へ移送されていません。この事実と一致しない情報は誤っていることが証明されました。これに関する研究が進行中です。
インタビュー2740-B: Yvette Lee
以下のインタビューはSCP-2740とYvette Lee(██通り████ █の家屋の共同所有者、Lee一家の女家長)の発見後に行われました。
質問者: K.Dorsett博士
回答者: Yvette Lee
[ログ開始]
Dorsett博士: 奥さん、貴方の旦那さんがどうしてSCP-2740の詳細について何も明瞭に説明できないのか、話して頂けますか?
Yvette Lee: …あの家へ入ったことはございますか、Dorsett博士?
Dorsett博士: いいえ、一度も。私の持ち場はこの移動式設―
Yvette Lee: それでしたら分かっては頂けないでしょう。私共は20年あそこに住みました。ですのに…あれについて何もできることは無かったのですよ。長らく手を尽くしました。しかし全て無意味でした。
Dorsett博士: 我々は貴方が████/██/██に屋根裏部屋へ上がったものと考えています。貴方はこれを認めますか?
Yvette Lee: い―いいえ、そんなことは、私は―
Dorsett博士: 奥さん、正直に話して頂ければすぐに済みますよ。
Yvette Lee: …夫と私は、良き親でした。けれど私共はOliviaと沢山のことで争ったのです。今思えば取るに足らないと思えることでしたが… それが家族の間に楔を打ち込んでしまい、皆が家中に蟠ったものを意識しておりました。娘は犯した過ちを認められなかったのです。娘が出て行ったその時、私はまだ楔がそこにあって、もう二度と消え去ることはないように感じられました。ある夜目覚めると娘の声を耳にしました。私は梯子へ向かい、屋根裏へと上がって、すると…
Dorsett博士: すると?
Yvette Lee: …分かりません。ですが、それはOliviaではなかったのです。
[ログ終了]
事件ログ2740-A: Lee夫妻とその実子、SCP-2740の影響を受けた近隣住民など、SCP-2740の存在を確信しながらその他の詳細に関しては認識が曖昧な人々にインタビューを行った後、有人・無人両方の手段を用い、屋根裏部屋へ侵入する試みが複数回行われました。全てのケースにおいて、関係した職員やその主張に関わらず一切の試みが実際には行われていなかった事実が追加調査で判明しました。
これらの試みは屋根裏部屋へ続く二階梯子への直接的接触、二階天井部各所への成形爆弾の設置、無人機による梯子開口部への接近、屋根を切断しての人間または無人械での接近、家屋の完全解体などを含む内容でした。上述の通り、以上の方法が実際に試みられた記録は一切存在していません。
インタビュー・ログ2740-C: Olivia Lee
以下のインタビューはLee一家の長女であるOlivia(██、█████████在住。Rebecca Feldmanと改名後造園業者として働く)の発見後に行われました。
質問者: H. Garrett博士
回答者: Rebecca Feldman(変更前氏名Olivia Lee)
[ログ開始]
Garrett博士: Feldmanさん、私がここで話したいのはご両親の自宅に関係する現象についてでして、つまり二階の―
Ms. Feldman: 屋根裏でしょう、分かってます。誰かが私を探すだろうとは思っていました。こんなにすぐとまでは思いませんけれど。
Garrett博士: この現象にお気づきだと仰るのですね?
Ms. Feldman: 私は子供だった頃に両親と別れたんです、Garrett博士。私たちは…いつも喧嘩をしていました。両親は私の選択、私の信条、私の友人たちに満足できなかったんです。そこには怒りがありました。あまりにも大きな怒りでいつか窒息してしまいそうだと思いました。あの家を離れて、私はやっと息ができるようになったと感じました。以来二度と戻っていません。けれど…時々、未だにあの感覚を覚えます。誰でも夢を見ている時なら感じられますよ。何かから逃れようとしていて、でもその何かを見ることはできないし本当に追われているのかも判らない。けれど遮二無二逃げるでしょう? まさにその感覚です。
Garrett博士: 何がご両親から離れる切っ掛けとなりましたか?
Ms. Feldman: ある晩のことです。私たちは喧嘩をして、父は酒を飲み母はその頃いっそう困窮していて… 私はずっと枕の下にナイフを忍ばせ、万一のことに備えていました。夜中に両親が私の部屋へ入ってきたので、私はその意図を知りませんでしたが、ナイフを抜き出して二人を壁まで下がらせました。一部始終に首を締め上げられているかのような気分でした。そして、私は初めてそれを聞いたんです、何かが私の頭上で動く音を。私はナイフを落として、逃げ出しました。一度も振り返りませんでした。
Garrett博士: 貴方は…貴方は屋根裏部屋の何ものかに見当が付くのではありませんか、Feldmanさん?
Ms. Feldman: あの部屋は常に謎ですよ、博士。敵意ばかりが膨れ上がる場所なのです。嫌悪が自らに返ってくるより先に… 私は屋根裏に何がいるのかを知りませんし、もしその上に何かがあるのだとしても同じです。知りたいとも思いません。
[ログ終了]
インタビューの終了後、Feldman氏はその主張の調査が進行するまで財団職員により留置されました。 現在、Olivia Leeは存在せず、かつて存在したこともないと考えられています。インタビュー・ログ2740-Cの情報に対する更なる調査が進行中です。
ページリビジョン: 15, 最終更新: 05 Feb 2023 01:05