SCP-2780
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収容前の評価中に撮影されたエバーグリーン通り618番地

アイテム番号: SCP-2780

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-2780が収容されている家屋には時間異常部門に所属する財団保安職員を居住させ、無認可のアクセスを防止します。近所住民や市当局からの不要な注目が集まるのを防ぐため、現地の保安職員は全ての隣人や通行人に対し、お互いを信頼し合っている夫婦を装う必要があります — 法的な理由から、家は保安職員らの名義で譲渡されます。全てのドア、窓、錠前は防弾・飛散防止仕様にアップグレードされています。保安職員らは年単位の職務遂行を通して、定期的な家屋のメンテナンスを続けることを奨励されています。財団は保安職員グループ間の配置転換を手配します — 財団による家屋占有が実施されている間、これは一般的な引越し/入居の活動を装って行われなければなりません。

タイムパラドックスが発生する可能性を避けるため、財団は2089年2月11日までに家屋の占有活動を停止し、売りに出さなければいけません。また、財団はこの家屋がサーラー・フルヴィアによって手頃な価格で購入されるようにしなければいけません(14,000 AND以下、近所の仲値よりやや低め)。時間軸の一貫性が保たれていることを確実にするため、家の各所に設置された記録装置が家屋内活動の監視を続行します。

現在の収容期間中、家屋の奥の寝室(SCP-2780活性ゾーン)は継続的に監視されます。SCP-2780は2016年8月6日に問題なく収容されたため、財団の現時点における当該異常事象への理解を基に考えると、財団エージェントは時間軸への影響を及ぼすことなく2091年8月6日までにサーラー・フルヴィアを捕縛し、彼女の所有するナイトスタンドを除去し、家屋の占有活動を再開できるはずです。しかしながら、サーラー・フルヴィアが少なくとも2092年8月30日までは(本稿執筆現在の時間+75年で換算)財団の如何なる介入も無く家屋に留まり続けているように思われること、並びに未知の手段で財団による収容の努力にある程度気付いている様子を見せていること1から、SCP-2780の監視は続行されます。

説明: SCP-2780は、アメリカ合衆国テネシー州ドレスデンのエバーグリーン通り618番地に位置している家屋の奥の寝室に局在している聴覚異常です。家屋の奥の寝室内にいる人物または録音機器は、その時点から正確に75年後の未来に室内で発生する物音や会話を聞き取ります。室外の人物は何ら異常な音を聞くことができません。ドアの敷居に立っている人物は、一方または両方の耳が部屋の境界線内にある場合のみ音を聞き取ります。

加えて、1本の引き出しを備えた茶色の木製ナイトスタンドが部屋の北東の隅に配置され、引き出しが西に向かって開くようになっている場合、75年後の室内にいる人物は現代に小物を転送することが可能になります。科学的見地から環境に変化を加えることにより、この詳細な配置指定は全て確認されました — 木材は茶色でさえあればどのような種類でも利用可能です(染色可)。家具は引き出しが付いた独立型の物体であり、ベッドの隣に置くことを意図した設計でなければいけません。家具は特定の角に配置して(両方の壁面から最大およそ40cmの距離まで)、特定方向に向けなければいけません(任意の報告に±4度)。これらの条件以外では転送が発生しません。類似の物体が75年後の家の同じ場所にも位置していることが示唆されているものの、未来を独立した変数として扱う実験の機会はまだ得られていません。

補遺2780-A: 回収時の説明

SCP-2780は、166地区(テネシー西部/ケンタッキー)の財団工作員が、違法薬物の売却および売却を意図した所持に関する複数の罪で起訴されたブレアナ・レナー・タッカーの公判に関する情報を入手した時に発見されました。財団の注意は、裁判所が接触したどの研究所も幾つかの物質を特定できなかったことを示唆する裁判所の文書と、全ての薬物は本質的に医薬品であり依存症や中毒のリスクは無いとするタッカー女史の主張に寄せられました。

タッカー女史の収容と、彼女の逮捕および過去の存在記録の全消去のために標準的な手段が取られました。タッカー女史は当初売っていた薬物をどのように入手したか語ることに消極的でしたが、化学的尋問によってより包括的な情報が得られました。

タッカー女史は財団に対し、エバーグリーン通り618番地の住居へ引っ越した後に奇妙な会話を聞いたことでSCP-2780を発見したと明かしました。会話が普通の音源から来ている可能性を排除した後、彼女は異常な方言や語彙への特別な注意・限定的な幻覚剤の利用・一般文化における時間旅行フィクションにありがちな設定についての知識を基にSCP-2780の異常性質を推論しました。

当時のテネシー州ドレスデンでは、地方選挙後に制定された郷土愛運動の一環として、75年後に掘り出されるタイムカプセルの埋設が行われていました。タッカー女史は彼女の住所を2090年に占めている人物に宛てて、未来の会話を聞き取ることが可能だった旨を通知し、取引を提案する内容の手紙をタイムカプセルに封入しました。ナイトスタンドから幾つかの小物を回収し、それらの紛失に関する未来の住人の文句を聞いていたタッカー女史は、この時点で既にSCP-2780の副次効果に気付いていました(彼女はこれを未来の住人であるサーラー・フルヴィアにも通知しました)。

タッカー女史はフルヴィア女史に対して、2090年に店頭で購入できる安価な市販医薬品のうち、2015年時点では遥かに高価かつ入手困難だったものについて調査を行うことを提案しました。タッカー女史は抗生物質・抗ヒスタミン薬・抗ウイルス薬・抗レトロウイルス薬・鎮痛薬・抗炎症薬などの薬品リストを手紙に添え、マーティン(近隣の町)にあるリールフット銀行支店の預金口座に自分が投資しておけば、2090年にいるフルヴィア女史は謝礼として大金が得られると示唆しました。タッカー女史は最後に、もしフルヴィア女史が時系列順にこのやり取りを続けたいなら奥の寝室に入って口頭でタッカー女史の手紙に答え、その後に事前指定した場所(家の裏庭)に行って特定の場所を掘れば次のメッセージが見つかる、それはフルヴィア女史の返答を聞いた後に自分が埋めておく物だと述べました。

タッカー女史によると、彼女はフルヴィア女史が手紙を読むまで、SCP-2780が発生している部屋で待っていました。入室したフルヴィア女史はタッカー女史に口頭で答え始め、明らかに当惑しつつも、タッカー女史の計画の中心アイデアには暫定的な同意を示しました。しかしながら、フルヴィア女史は2015年から2090年までの期間に起こった幾つかの関連情報に直面し、計画の詳細を大幅に変更する必要が生じていました。具体的には、

  • タッカー女史が推奨していたリールフット銀行の支店は既に存在しておらず、そもそもリールフット銀行株式会社そのものが消滅している。実のところ、フルヴィア女史の時代では、物理的な銀行というコンセプトはやや廃れかけていた。
  • タッカー女史が所持しているであろうアメリカドルは無価値と見做されており、おそらく違法である(フルヴィア女史は法律上の正確な扱いについてはあやふやだった)。
  • “40年代”と呼ばれる歴史上の詳細不明な2一時期において、現在アメリカ合衆国として知られる地域の国内情勢は深刻化していた。この結果、フルヴィア女史の発言によると、政府・民間を問わずほぼ全ての組織機関が破壊されるか、解体されるか、監査を受けるか、略奪されるか、もしくは全般的に信頼できなくなったため、問題の期間におけるこれらの組織での資金の扱いを信用することはほぼ不可能である。
  • しかしフルヴィア女史は、もしタッカー女史が経済危機の始まりと思われる“2041年の初頭”に資金を預けておく人物を何とかして手配し、金を3~4年間持ち続けた後、“アメリカ新生ドル(AND)”と呼ばれる民間支えの貨幣に変えて“アルカディア・ダイナミクス株式会社”に投資すれば、フルヴィア女史の時代まで投資が損なわれることは無いはずだと述べた。
  • 最後にフルヴィア女史はタッカー女史に対し、これでもまだ計画を試したいのであれば、行動を起こす頭金として使うためのレアメタルを次回のメッセージに幾らか同封するように伝えた。

タッカー女史は財団に、次の手紙は家宝であるプラチナの宝飾品を幾つか添えてカプセルに入れ、前以て決めておいた場所に埋めたと語りました。カプセルを(次回の埋設予定地点を指定するメッセージも含めて)埋めた後、彼女はナイトスタンドから医薬品の最初の“出荷”を入手しました。

タッカー女史は今日までに29個のカプセルを様々な場所に埋めています。彼女はそれぞれの埋設と引き換えに医薬品を受け取っているため、財団の時間理論学者たちは、タイムパラドックスを引き起こす恐れがあるのでカプセルの受け渡しを妨害・傍受するべきではないと強く勧告しています。2040年代の金融危機予測をどう回避するつもりかを財団に尋ねられたタッカー女史は、「さっぱり思いつかないけど、どうも何とかなっちゃうみたいなのよね。アンタたちのおかげかも。少しぐらいは助けてくれるでしょ?」と返答しました。

財団がまだSCP-2780に関して解決できていない疑問点のうち、財団の研究者たちは以下の点を重視しています。

  • 誰が、いつ、どのようにカプセルを2090年代に傍受するのか。
  • この現象が“逆転”し、未来からの音を受け取るのではなく、過去に向かって音を送信し始めるのは正確にはいつなのか。
  • 何故2090年代の財団は未だにSCP-2780の収容や対処に取り組んでいないのか。

補遺2780-B: ブレアナ・レナー・タッカーの所持品から回収された、SCP-2780経由で入手された医薬品のサンプル

  • タイガースポリンTMブランドのチゲサイクリンC硫酸塩軟膏、ADファームテック社製。局部的負傷の治療用3
  • アトラサールTMブランドの遺伝子療法粉末、GMCとADファームテック社が共同で製造。皮下脂肪の形成を防ぎ、余分なエネルギーを筋肉の生成に向ける運動補助食品。
  • パナドールTMブランドの抗生物質/抗ウイルス薬を組み合わせた経口カプセル。新連邦ヘルス・インダストリーズとADファームテック社が共同で製造。パナドールから採取されたサンプルの化学構造の顕微鏡分析はSCP-500と幾つかの類似を示すが、その同質的な化学構造の実際の機能は不明のままである。
  • ナナインTMブランドの妊孕性増強/妊婦用ビタミン大量療法系サプリメント。新連邦ヘルス・インダストリーズとADファームテック社が共同で製造。ナナインは子宮や卵巣の状態を調節している体内のナノ・アセンブラーを解放することによって授精率を改善し、子宮外妊娠を防止し、血圧を下げてエンドルフィンを放出することで肉体的ストレス症状を軽減し、新生児に必要不可欠なビタミン・栄養素・タンパク質を血流に人為的に導入する。ナナインのブリスターパック1枚を収めた箱には、臨床試験において子癇前症の可能性を85%、自然流産の可能性を82%低下させたという宣伝文句が記されていた。
  • キャストロタインTMブランドの性欲減退薬。製造元の記載無し。性的欲求や表現に関わる全てのホルモンの産生を妨げる。 箱の側面には、裁判所または会社の命令によってこの薬品を必要としている場合の価格をゼロにできるクーポンについての注意書きがある。
  • バセシンTMブランドの抗不安薬、ADファームテック社製。実験は、この薬品が脳内の不活性な神経伝達物質の一部に作用してヒトの潜在的なテレパシー能力を効果的に高め、周囲の人からどのように認識されているかをより良く理解できる状態にすることで服用者の不安や懸念を和らげている可能性を示唆している。パッケージは同社の"レヴェロンTMブランド神経安定剤との併用を推奨している。
  • 一般的な保湿ローションのチューブ数本。内容物はチゲサイクリン硫酸塩サプリメントとビタミンであり、明らかに“サルコプラズモーシス(sarcoplasmosis)”という病気に関連する掻き壊し傷の急速な治療・消毒のために作られている。ラベルのフレーズによると、開発されている中では“サルコプラズモーシス”に最も効果的な治療法であり、“眼球膜や生殖器膜への直接的な緊急塗布”を行っても安全であると述べられている。チューブ上の指示の語彙と詳細度は、医学的訓練を受けていない友人によって患者に塗布される前提を示唆しており、おそらく同一の症状に罹患した人物が複数いる非医療施設での使用を意図したものと思われる。
  • 一般的なテストステロン・サプリメントである“T”のパッケージ数個。“ディキシーランド連邦HSA”による濫用への政府警告文以外には識別マーク無し。
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