アイテム番号: SCP-2787-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-2787-JPの存在するフロアは閉鎖され、財団所有のフロント企業により管理されます。SCP-2787-JP以外の部屋は通常の用途での使用が認められています。SCP-2787-JPによって示唆される八木兵午の調査、捜索は現在段階で継続しています。
説明: SCP-2787-JPは東京都港区に存在する貸会議室です。SCP-2787-JPには毎月11日、午前1時から3時の間、複数の人型実体(以下、SCP-2787-JP-A)が出現します。司会を進行する1人(以下、SCP-2787-JP-A-1)を除き、出現するSCP-2787-JP-A個体は毎回変動します。SCP-2787-JP-Aは出現と同時にSCP-2787-JP内の物品を使用して議論を行います。この議論中、SCP-2787-JP内部への侵入は可能ですがSCP-2787-JP-A及びSCP-2787-JP-Aの使用している物品に対する干渉は成功していません。
議論の形式は討論、ディベート、ディスカッションなど複数の形態で行われます。議論の終了、もしくは午前3時になった段階でSCP-2787-JP-Aらは消失し、使用した物品は出現前の状態に回復されます。SCP-2787-JP-Aによって行われる議論は、これまでに確認された全ての例において『八木兵午は何故死ななければならなかったのか』であることが確認されています。この議論は現在確認されている全ての例において明確な結論が提示されていません。これは議論が過熱し、最終的に反対論者への否定に終始することが主な原因です。
財団の調査において、戸籍法が成立して以降、"八木兵午"と同姓同名の人物は約80人存在していることが確認されており、これらの"八木兵午"は確認できるかぎりで全員が非異常性の原因による死亡であり、アノマリーとの直接的・積極的関与は認められていません。現在"八木兵午"と同姓同名の人物で生存が確認されているのは2人であり、継続的な監視が行われています。
これまでの会議を経て判明している"八木兵午"のパーソナリティは以下の通りです。
- 男性
- 穏やかで誠実
- 親類縁者との交流が薄い
- 犬を飼っている
- 奥二重
このパーソナリティに合致する"八木兵午"は現在段階で確認されていません。
以下はSCP-2787-JP-Aらの会議に対する録音記録です。
音声記録2787-JP-08 - 日付 20██/██/██
«再生開始»
SCP-2787-JP-A-1: では今回は『八木兵午は何故死ななければならなかったのか』について意見を交わしていきたいと思います。ではまず右端の方
SCP-2787-JP-A-15: はい、私は単純に全ての罪を背負ってくれたからだと考えています。全ての罪を背負ったからこそ八木兵午は死ななければならなかったのです
SCP-2787-JP-A-1: ありがとうございます。異議のある方はいらっしゃいますでしょうか
SCP-2787-JP-A-16: はい、私は異なる意見です。八木兵午が全ての罪を背負うにはあまりにその体積が少なすぎます。よって私は、愛するものを守るためであったからだと考えます
SCP-2787-JP-A-15: それはおかしい。そうであるならば何故八木兵午の飼い犬は生きているのですか。八木兵午は万物を愛することのできる人間です。そんな人間が犬を対象に含めないはずがない
SCP-2787-JP-A-17: 意見よろしいですか?
SCP-2787-JP-A-1: はい、どうぞ
SCP-2787-JP-A-17: お二人の意見は少々観念的に寄り過ぎているように思えます。私は八木兵午の事実から推測します。八木兵午はそのたぐいまれな慈悲の心を持ちながら親類縁者とは遠く離れていました。つまり、八木兵午は酷く孤独だった。そこから私はこう提案します。八木兵午は孤独であったゆえに生贄として選ばれたのです。それが八木兵午が死ななければならなかった理由なのです
SCP-2787-JP-A-15: それのどこが事実ですか。先ほども申した通り、八木兵午には飼い犬がいました。それを孤独とおっしゃるのか
SCP-2787-JP-A-17: ここにいない人間の内面を俎上にあげるのはいかがなものでしょう、私はあくまで確認できた事実を元に可能性の高い論をあげているにすぎません
SCP-2787-JP-A-16: 詭弁です。そうであるなら八木兵午の最期を記した文章についてはいったいどう考えておられるのか。あの最後が生贄であることを選んだものだと
SCP-2787-JP-A-17: まさか、あなたはあの文章を真実だと? あきらかさまな偽史ではありませんか。まさかこの場でその成否を論じようと?
SCP-2787-JP-A-16: 偽史? あなたも結城史観に毒された口ですか? こんな場でそんなものを持ち出すなんて
SCP-2787-JP-A-1: 静粛に、静粛にお願いいたします
«再生停止»
音声記録2787-JP-17 - 日付 20██/██/██
«再生開始»
SCP-2787-JP-A-1: では今回は『八木兵午は何故死ななければならなかったのか』についてディベートを行っていきます。ではまず、「八木兵午は狂犬病に感染したため死ななければならなかった」側の方、お願いします
SCP-2787-JP-A-33: はい、私は八木兵午は狂犬病に感染したため死ななければならなかった、と考えます。理由としては主に2点あげられます。第一に、八木兵午は他者への思いやりと自己犠牲心に満ちた人物であることがあげられます。そういった性格を持つ人物が当時の閉鎖的環境下で重篤な病に感染した場合、他者への感染を恐れないことがあるでしょうか? 次に、八木兵午は親類縁者がおらず孤独であったことがあげられます。そのため、然るべき機関に頼ることをせず、重篤化してしまった可能性が考えられます。また、八木兵午の死と同時期に彼の飼い犬が死んでいることも理由の一つにあげられます。これらより、八木兵午は狂犬病に感染したために死ななければならなかったと考えます
SCP-2787-JP-A-1: ありがとうございます。では反対尋問をお願いします
SCP-2787-JP-A-34: はい、まず、八木兵午が思いやりに満ちた人間であるというのであれば、まず狂犬病に感染したと自覚した時点で、周囲に保菌している犬がいると他者に伝えるのではないでしょうか? 八木兵午ともあろうものが自分一人で死に、残る他者を思いやらないというのは考えられないように思えます。また、孤独であったことを理由に挙げておられますが、八木兵午はあくまで親類縁者との関係性が薄いだけでコミュニティとのかかわりはむしろ強いものであったとされます。それをどうお考えでしょうか。以上です。
SCP-2787-JP-A-33: コミュニティとのかかわりが強かったという事実はどこで確認されますか? エビデンスの証明責任があると考えます
SCP-2787-JP-A-1: 静粛に、まだ反駁の時間では
SCP-2787-JP-A-34: それは悪魔の証明になりますが、複数の近隣住民による八木兵午への証言は説の補強としては十分ではありませんか?
SCP-2787-JP-A-33: 近隣住民とはありますが、その中に八木兵午の友人を自称する人物がいないことを、見逃してはいませんか?
SCP-2787-JP-A-34: 友人と名乗ることが友人であると? それはあまりにも幼稚ではありませんか? これだから病死論者は
SCP-2787-JP-A-1: 静粛に、人格否定は認められません。一旦ディベートを中断します。両者は再度ディベート内容を確認したうえで臨んでください
インシデントレポート2787-JP-01 - 日付 20██/██/██
20██/██/██、SCP-2787-JP内にSCP-2787-JP-A-1のみが出現しました。以下はインシデント時の音声記録です。
«再生開始»
SCP-2787-JP-A-1: 臨時議論を開始します。本日八木兵午が誕生しました
[不明な複数人物のどよめき]
SCP-2787-JP-A-1: これを受け、今回は『八木兵午はどのように死ななければならないか』について議論を行います。提案がある方はどうぞ
不明な音声: はい、八木兵午は全身の皮を剝いたうえで塩を擦りこみ、炎天下に放置されて死ななければなりません
不明な複数の音声: 賛成!
不明な音声: はい、八木兵午は目を潰し、耳に水銀を流し込み、鼻に焼いた釘を押し込み、舌を引き抜かれたうえで全身を押し潰されて死ななければなりません
不明な複数の音声: 賛成!
不明な音声: はい、八木兵午は四肢を拘束されたうえで旅客機に吊り下げられ、5000m以上の上空で凍り付いたのち落下して死ななければなりません
不明な複数の音声: 賛成!
不明な音声: はい、八木兵午は大型の肉食動物によって生存に必要のない臓器からゆっくりと貪り食われて死ななければなりません
不明な複数の音声: 賛成!
不明な音声: はい、八木兵午は全身に傷を付けたうえで下水の中に漬け、感染症で1年以上苦しみ続けたのち死ななければなりません
不明な複数の音声: 賛成!
[同様の議論が約200提案され、全てが賛成される]
SCP-2787-JP-A-1: では、八木兵午はどのような方法を用いても死ななければならないということに賛成の方
不明な複数の音声: 賛成! 賛成! 賛成!
SCP-2787-JP-A-1: では『八木兵午は死ななければならない』事が決定しました。参加された皆様、お疲れ様でした
«再生停止»
これを受け、現在新たに誕生したとされる"八木兵午"の捜索が行われています。



