SCP-2792-JP
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誤伝達部門より通達

SCP-2792-JPの報告書は、現在貴方が閲覧しているバージョンのみ存在しています。当ファイルの翻訳や編集、複製は固く禁止されています。以上の決定は、SCP-2792-JPの異常性が連鎖的な収容違反を引き起こす可能性を排除できない為に定められた、暫定的な処置になります。

詳細は本報告書に記載されているグラティア・プロトコルの項目を参照してください。

— エリ・フォークレイ、誤伝達部門主任


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この画像はグラティア・プロトコルの一環として表示されるものであり、SCP-2792-JPと直接の関係はありません。

アイテム番号: SCP-2792-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2792-JPはサイト-88の標準人型収容セルに収容されます。最低でも1週間に1度、或いはSCP-2792-JPの要請があれば随時、財団所属の心理カウンセラーによる面談が実施されます。SCP-2792-JPが要求する嗜好品の提供は、持続的な収容に差し支えない範囲であれば、適切なプロセスを経た上で許可されます。

SCP-2792-JPの収容に関与する職員は担当カウンセラーも含め、予期しない収容違反の発生を防止する為に、当該オブジェクトの情報を記録する行為が禁止されています。同様の理由により、監視カメラや盗聴器等の音声記録による異常性の活性化が危惧されることから、SCP-2792-JPに関する情報を公共の場で発声する行為を禁じます。

説明: SCP-2792-JPは14才のアメリカ国籍を持つ少女であるアイネス・ジルガです。SCP-2792-JPは自身の異常性に起因する過度のストレスにより中程度の適応障害とパラノイアを併発しています。これらの複合的な精神的不調に関しては、SCP-2792-JPの収容後に策定されたグラティア・プロトコルが一定の成果を上げており、収容を担当する研究班からは"概ね快方に向かっている"と評価されています。

SCP-2792-JPは自身に関連する情報を何らかの媒体1を用いて記録された際に異常性を発揮します。SCP-2792-JPは両目を閉じる動作を行うことで、その視界の暗中に上記の記録を行った人物の姿を知覚します (以下、この実体をSCP-2792-JP-1と呼称)。SCP-2792-JP-1は共通して、SCP-2792-JPの情報を記録した媒体 (以下、この媒体をSCP-2792-JP-Aと呼称)を所持しています。SCP-2792-JP-1の総数は初期収容の時点で凡そ50体程でしたが、グラティア・プロトコルの制御下では基本的に残り1体のみが存在している状態だと証言されています。

SCP-2792-JPは、SCP-2792-JP-1の存在する空間を1人称視点で自由に移動することが可能であると報告しています。また、この空間内でSCP-2792-JP-1に対して行った干渉行為は、基底現実に存在しているモデルとなった人物にも同様に波及するものと推測されています。一方で、SCP-2792-JP-1それ自体は破壊や移動が不可能であり、SCP-2792-JPから如何なる接触を受けようとも一切の反応を示さないようです。

SCP-2792-JPの発見に繋がった事案では、大手ソーシャルメディアのTwitterにおいて、当該オブジェクトに対する誹謗中傷を投稿した3人の女子学生2が、原因不明の窒息によって死亡しています。その後の財団の調査で、SCP-2792-JPは自身を貶められた怒りから、その3人に対応するSCP-2792-JP-1を標的とした、顔面部への執拗な殴打や首を絞め上げる等の加害行為を認めました。本事案がSCP-2792-JPに与えた悪影響を考慮し、Dクラス職員をモデルとするSCP-2792-JP-1に危害を加える旨の実験申請は、倫理委員会の指示で無期限に凍結されています。

その他、正式に許可されたSCP-2792-JP検証実験の全記録はファイル#2792-JP 実験目録を参照してください。実験中に観察された、SCP-2792-JP-1及びSCP-2792-JP-Aの特筆すべき挙動や性質についても上記のリンクから閲覧可能です。

補遺1: 以下はSCP-2792-JPに対して、グラティア・プロトコルが及ぼした心理的影響を評価する目的で実施されたインタビューの記録です。

対象: SCP-2792-JP

インタビュアー: カーティス・ジルガ博士

付記: 財団サイト-88に所属するジルガ博士は、SCP-2792-JPの父親にあたる人物である。よって、SCP-2792-JPの収容に対する協力的な姿勢を維持させる目的で、当該オブジェクトのインタビューは全般的にジルガ博士が担当する。


<記録開始>

ジルガ博士は守衛に合図を送り、SCP-2792-JPの収容セルに入室する。

ジルガ博士: やあ、アイネス! 久しぶりだね、元気にしてたかい?

SCP-2792-JP: え、パパ?

ベッドに腰掛けていたSCP-2792-JPは、驚いたような顔をしてジルガ博士の方に顔を向ける。

ジルガ博士: 今日も今日とて、黙って部屋に入って来るのは見飽きたカウンセラーの先生だ、なんて思っていただろう? ハハハ、やっぱり家族へのサプライズって奴は、何回やっても最高だな!

SCP-2792-JP: あぁもう、パパ……。まさか、そのサプライズの為だけに、わざわざ日本から会いに来たって訳じゃないよね?3

ジルガ博士: うん? 自分の娘に会いに来るのに、他に理由が必要か? いや、なんてことはないさ。お前にこうして会えるなら、パパは世界の反対側からだって飛んでくるぞ。

SCP-2792-JPは1つ溜め息を吐いてから、突然ジルガ博士に抱き着いて大きく笑う。

SCP-2792-JP: 正直……めっちゃ嬉しい!

ジルガ博士: ハハハ、そうだろ!

ジルガ博士はSCP-2792-JPを抱き締めながら、彼女の頭を軽く撫でる。

ジルガ博士: 前に会った時よりも、随分と顔色が良くなったな。ここに来る前、先生にも少し話を聞いてきたんだが、体調の方も段々良くなっているみたいで安心したよ。

SCP-2792-JP: うん、前より多少は楽になったかな。だって、今はもう目を閉じる度に、あのムカつく奴らの顔を見ないで済むし。急に連れ去られて、この刑務所みたいな部屋に閉じ込められた時は「自分の人生もう終わり」なんて思ったりもしたけど……。先生達のお陰で、ちょっとは希望が見えてきたかも。

ジルガ博士: それを聞けて安心したよ。正直、お前をこの病院に預けるのは、半分賭けだと思っていたからな。あの時、腹を括って連れてきた判断は正しかった訳だ。

SCP-2792-JP: パパにしては珍しく、ね。

ジルガ博士はゆっくりと首を傾げて、困ったような表情で頭を何度か掻く仕草を見せる。

SCP-2792-JP: あ! 見えてきた、と言えば。ここで治療を始めてから、何でか理由は知らないんだけど、目を閉じた時にパパの姿が見えるようになったんだよね。

ジルガ博士: パパの?

SCP-2792-JPはジルガ博士から離れて、再びベッドに腰掛ける。

SCP-2792-JP: そう。ほら、こうやって目を閉じると……真剣な顔をしたパパの姿が近くに見える。先生には触っちゃ駄目って言われてるから、本当に傍で見てるだけなんだけど。いつもパソコンの前に座ってて、研究の仕事を頑張ってるんだよね。だから、そんなに寂しくなくなったよ。

ジルガ博士: ……それは不思議な話だな。まあ、そのパパの存在がお前にとって支えになっているなら、例え幻だろうとも嬉しいよ。こっちの方は相変わらず、お前と一緒に居れないせいで、毎日寂しい思いをしているけどな。

SCP-2792-JP: オーケー、知ってる。ていうか、今この状況のせいで嫌ってほど思い知らされてる。

ジルガ博士: それにパパだけじゃない。ママだって多分、そろそろお前に会いたがっていると思うぞ。

SCP-2792-JP: いや、ないない! どうせ、あの面倒な娘のお世話から解放されて本当にラッキーだわ、ってな感じで好き勝手やってるんだから!

ジルガ博士: そんなこと……否定はできないかもな。

SCP-2792-JP: ね、そうでしょ?

ジルガ博士: でもな、それはお互い様って奴だろ?

SCP-2792-JP: あはは、言えてる。

[その後も2人は暫くのあいだ、家族としての個人的な会話を続ける。]

SCP-2792-JP: ねぇ、パパ。

ジルガ博士: ん、どうした?

SCP-2792-JP: いや、別に大した話じゃないんだけど。最近ずっと、考えてたことがあるんだ。

SCP-2792-JPは俯き、少しだけ押し黙った後、ゆっくりと顔を上げる。

SCP-2792-JP: いつか、このどうしようもない悪夢みたいな病気が治って、ここから退院できたらさ。私……将来はパパと一緒の仕事がしたいんだ。誰かの笑顔に繋がるような、そんな素敵な研究を……私も大人になったらやってみたいなって。

ジルガ博士: アイネス、お前は……。

SCP-2792-JP: ううん……そうだね。これは例えば、なんだけど。私とパパの2人でさ、太陽の光を浴びるとキラキラって虹色に輝くバラなんかを開発できたら、それってかなり素敵な話じゃない? どうかな?

ジルガ博士: ……ハハ、そいつは本当に素敵な考えだな。うん。とても、とても素敵なことだ。

SCP-2792-JP: でしょ! それに、今の私には時間だけなら使い切れないほどあるし。今度カウンセラーの先生に頼んでさ、研究者になるための勉強も教えて貰っちゃおうかな!

ジルガ博士: ああ……パパも。いつかお前と働けるよう、ますます頑張らないといけないな!

SCP-2792-JP: 絶対ね! 絶対に約束だから! よし、私もパパみたいな一人前の研究者になるからね! だからパパも、あの青いバラの研究はしっかり終わらせといてよね!

<記録終了>


結論: 今回のインタビューからは、SCP-2792-JPの情緒反応に確かな改善の兆候が見られます。グラティア・プロトコルは事前に期待された効果を生み出しているものと判断されます。今後、SCP-2792-JPは扱いの容易な“模範囚”として、私達に立ち振る舞うことでしょう。収容は継続されます。— ジルガ博士

補遺2: グラティア・プロトコル要綱

グラティア・プロトコル


前提 グラティア・プロトコルは、以下に列挙するSCP-2792-JP-1及びSCP-2792-JP-Aの性質を利用することで実現しています。

  • SCP-2792-JPに関連した記録の破棄は、その記録者に対応するSCP-2792-JP-1の消滅に繋がる。
  • SCP-2792-JP-1は敵対的な行動を起こさないか、その可能性は極めて低いと判断される。
  • SCP-2792-JP-Aは、基底現実に存在する元となった媒体と相互作用している。
  • SCP-2792-JP-Aは、SCP-2792-JPの干渉によって破壊や移動が可能である。

概要 一般社会からSCP-2792-JPの存在を抹消する為に、ジルガ博士を除いた当該オブジェクトの関係者全員に記憶処理を施します。 SCP-2792-JPに関連する情報が記録された媒体は発見次第、その全てが回収された後に破棄されます。これに続いて発生する大規模なSCP-2792-JP-1の消失事象は、 SCP-2792-JPに対して"特異な精神病の寛解過程である"という形で虚偽の説明が為されます。

新たなSCP-2792-JP-1の出現が報告された場合、可能であればSCP-2792-JPの協力で当該実体の所持するSCP-2792-JP-Aを破壊します。これにより基底現実側の同媒体も破壊される為、大多数の事例で“記録の破損に伴うSCP-2792-JP-1の消失”という結果に終わります。仮に記録が残存し、SCP-2792-JP-1の消失に失敗したとしても、同媒体の破壊現象を目撃した人物によるインターネット上の投稿を財団ウェブクローラが探知し、当該実体と紐付けられた人物の所在特定と記憶処理が実行されます。

SCP-2792-JPを収容するに当ってSCiP報告書の作成は必要不可欠なプロセスではあるものの、それは同時に当該オブジェクトがSCP-2792-JP-Aを通じて、本報告書の内容を完全に把握することが可能である事実を示しています。この点を踏まえた上で、グラティア・プロトコルは本報告書を次のように取り扱うよう指示しています。

  • 本報告書はジルガ博士が単独で作成し、後に必要とされる編集作業も一任される。
  • 本報告書はその大部分を、SCP-2792-JPが読解不可能な言語である日本語4によって記述される。
  • SCP-2792-JPに対して、本報告書は"ジルガ博士が携わる、青色の色素を持つバラの研究"の内部資料であると説明される。ジルガ博士はSCP-2792-JPの質問に対して適切な返答を行う為の、植物学に関する基礎的な知識を備えている。

今後、SCP-2792-JPが何らかの要因によって日本語を習得する、または日本語の習得を強く希望する等の事態が発生した場合、SCP-2792-JP研究班は必要であればジルガ博士の承認を経てカバーストーリー「海外赴任」を適用します。その後、ジルガ博士は本報告書の記述を予備言語に指定されているポーランド語に変更します。この一連の手順に使用する予備言語は、ジルガ博士と研究班の共同で採択されています。

初期収容時のSCP-2792-JPは精神状態が非常に不安定でした。そういった懸念が顕在化し、将来的な大規模収容違反の発生が危惧されたことから、財団誤伝達部門の主導の下、より安定した収容を実現するためのグラティア・プロトコルが考案されました。当該プロトコルの発動以降、SCP-2792-JPのサイト-88への移送から現在に至るまで、人命に関わる程の重大な収容違反は1度も発生していません。

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