SCP-2798
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地球磁気圏に重ねたSCP-2798の作用領域。

アイテム番号: SCP-2798

オブジェクトクラス: Thaumiel

特別収容プロトコル: ザンベジ超深度掘削坑の跡地(サイト-2と指定)は、ベルギーのエネルギー探査会社であるエナジー・ナミュールと財団のフロント組織によって運営されます。モザンビーク政府を含む全ての潜在的観察者に対して、ザンベジにおける全ての作戦活動は天然ガス採掘活動として偽装してください。

財団が独占する技術なしにSCP-2798の測定または検出が可能だとは考えられていませんが、サイト-2のスタッフはSCP-2798の検出に繋がる兆候がないか、地質学や地震学に関わる科学誌や機関を監視してください。SCP-2798の副次効果は例外的で、財団の活動と結び付けられることがあるとは考えられていません。そのため、情報抑制資源はSCP-2798の直接観測を封じ込めることに優先的に用いてください。

少なくとも3ヶ月に1度、SCP-2798の定期的モニタリングを行ってください。全データはその収集時点で、直ちに監督司令部に送信してください。

説明: SCP-2798は1971年より存在する、地球によって生成された異常なエネルギー場です。SCP-2798は1954年に始められ1971年に完了した財団のプロジェクトの成果であり、SCP-001の封じ込めを目的として設計されています。SCP-2798はSCP-001の作用を部分的に妨げることに成功しています。しかし2005年以来、SCP-2798の強度は指数関数的に減衰しており、近い将来に完全に消失すると予想されます(補遺2798.5を参照)。

SCP-2798の主要効果は、地球とその住人に対するSCP-001の作用を妨げています。しかしその多くの副次効果は、相当数の人々に強い悪影響を及ぼしています。それでも、これらの効果は総合的に見て、SCP-001の封じ込め失敗時の悪影響よりも小さいと判断されています。

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モザンビークの沿岸から15キロメートル沖合に位置するサイト-2(ザンベジ超深度掘削坑)。

SCP-2798は、SCP-001に地球を生命を持った単一の実体として知覚させることにより、その作用を妨害すると考えられています。この知覚はSCP-001の意思に影響を与え、その作用が1点に集束することを防ぐと仮定されています。現時点では、これがどのような科学的原理に基づいているのかは不明です。

補遺2798.1 - プロジェクト・セラピスの歴史

1953年にSCP-001の発見と分類が行われた後、緊急封じ込めに関する監督司令部小委員会により、SCPに分類された複数の異常存在の利用が承認されました。これらのオブジェクトはプロジェクト・セラピスの過程で、SCP-001の地球に関する認識に干渉することで実体を封じ込める取り組みに利用されました。研究者は、惑星を包み込むエネルギー場を生成し、それを単一の意識を持った存在に見せかけるように設計することで、これを最良の形で達成できると判断しました。次のSCPオブジェクトが活用されました。

SCP-158: 化合物Z21-バイオレットの前駆化合物を生産するために承認された。当初容認された生産量は10,000立方メートルだったが、これは後に250,000立方メートルに拡張された。

SCP-1921: 異常物質が関与する化学反応の原理と、距離を隔てた場所から認知機能を変化させる性質を活用するために、化合物Z21-バイオレットの精製過程において機器の基礎的な設計が流用された。

SCP-447: 精製された大量のSCP-447-2が、効果範囲を指数関数的に拡大するための触媒として化合物Z21-バイオレットの合成時に用いられた。

SCP-310: 異常存在から生成した物質が、上部マントル内に化合物Z21-バイオレットを無期限に残存させるための超耐熱性物質として添加された。

SCP-2570: 最近死亡したミュージシャンであるジャンゴ・ラインハルト1の遺体が、その遺体に付随して生成する定常的な次元ポータルから流出する腐食性物質を利用するために封じ込め下から取り出され、特殊改造された掘削装置での使用に充当された。

SCP-1714: SCP-1714から得られた先進的な流体力学モデルが、上部マントル内での化合物Z21-バイオレットの継続的な流れを維持しSCP-2798のエネルギー場を最大化するために、その注入時に適用された。

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化合物Z21-バイオレットの精製過程

当初、SCP-158による前駆物質の抽出は家畜を用いて行われていました。しかし化合物Z21-バイオレットの開発途中の実験によって、家畜から得られた前駆物質では必要なエネルギーレベルの発生に不足していることが明らかとなりました。そのため英国政府内の秘密協力者との間に、英国領ケニアでの複数回の武力衝突の産物を前駆物質の抽出に用いる合意が取り交わされました。合意の詳細は現在も秘匿されています。

およそ1,400立方キロメートルの化合物Z21-バイオレットが異常手段によって合成されました。モザンビーク沖に完成したザンベジ超深度掘削坑(公的には最高到達深度は9,322メートルとされています)を用いて化合物Z21-バイオレットの全量が地球の上部マントルに注入され、マントル対流から発生する力によって、惑星全体に化合物の定常流が生成されました。SCP-2798の運用開始は1954年前半に宣言されました。

補遺2798.2 - SCP-2798の主要な副次効果

地球を取り巻くSCP-2798の存在によって、人間社会では多くの異常現象が記録されています。これらの現象は財団の資源によってできる限り軽減されるべきではありますが、資源割り当てはSCP-2798の持続時間を可能な限り延長する研究を優先します。

以下に、SCP-2798の副次効果として最も顕著で高頻度であるものを示します。

超越的同一性障害: この精神障害は、財団の研究者により1960年代初頭に発見されました。財団外の医療従事者はこれを科学的に認知されている解離性同一性障害と区別することができませんが、罹患者は別の個人に由来する記憶、経験、思考、感覚を定期的に共有することが特徴です。共有元の個人は、患者への影響に気付きません。

この精神障害への罹患率はSCP-2798の強度変動に追従することが証明されており、複数の型の知的実体にわたる自己認識という大規模な化学的異常作用によって、感受性の強い個人において精神障害を引き起こすと考えられています。

超越的同一性障害の患者は、非異常性の解離性同一性障害の患者と同様に主流の精神医学による処置を受けています。罹患率は平均して世界人口の0.03%程度と考えられており、症例の大部分はザンベジ超深度掘削坑から500キロメートル以内で観察されています。既知の治療法は存在しません。

組織的行動に関わる信念の減衰: 1972年から継続されている高度な数学的分析は、SCP-2798は全世界の人口に対し、大規模な協調的行動に参加する意欲に統計的に有意な作用を与えていることを示唆しています。これまでに、この作用は国民国家モデルが適用できるレベルでしか観察されていません。

投票率、政治的不安定性指標、全世界の議会における反動主義的政党の議席割合、国家に向けた暴力的行動の発生などの様々な指標を用いて、研究者はSCP-2798の強度とこれらの因子との関係を確立しています。SCP-2798の強度の一時的な増大は複数の議会選挙の結果に影響を与えたと考えられており、特に次の2事例が顕著なものです―2012年5月のギリシャ議会選挙における黄金の夜明け党の議席獲得、1979年の英国におけるジェームズ・キャラハン首相に対する不信任投票の成功。

研究者はSCP-2798の最終的な消失に伴ってこの作用が低減されることを予測していますが、この特定の作用は2010年代初頭以来、世界的な政治的景観に恒久的な影響を与えているようです。このため、この封じ込め措置の終了が社会的安定性の増加に繋がることを期待することはできません。

異常エネルギー場の他天体への伝播: SCP-2798を検出、測定するために異常手段を用いて開発された機器が、1979年に月からのエネルギー場を検出し始めました。1981年には火星、1992年には土星、2003年には33D/Koroma彗星2の周囲でも検出可能なエネルギー場が出現しました。2005年、月におけるエネルギー場が3週間以内に急速に減衰して消失したことが観測されました。現在のところ、これは測定可能なエネルギー場が完全に消失した唯一の事例です。

どのようにこれらのエネルギー場が出現したのかは不明です。これらの地球外のエネルギー場のレベルは遥かに低いため、これらはSCP-001に対してSCP-2798のような作用を及ぼさないと見られています。

月のエネルギー場の消失とSCP-2798の急激な減衰との関連は現在の研究能力において確立されていませんが、関連性の存在は強く疑われています。

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