アイテム番号: SCP-2817
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 手順-453-パルミラの実行までの間、SCP-2817-1はどの点においても標準的な財団のDクラス職員として扱い、この期間の過ごさせ方として、有害な特性を示さないSafeオブジェクトの実験に利用しても構いません。毎月末、SCP-2817-1は手順-453-パルミラ遂行のために、武装警備員1名によって3号棟の東部敷地まで護送されます。この間のSCP-2817-1はプロトコルに従ってSCPオブジェクトとして対処する/参照する/扱うことになります。SCP-2817-1は複雑性心的外傷後ストレス障害、とりわけ一般に“ストックホルム症候群”として知られるものに関連する毎週の心理カウンセリングが義務付けられています。
SCP-2817-2は、SCP-2817の財団承認バージョンである手順-453-パルミラを、SCP-2817-1が実行することによって封じ込めされます。警備員その他の職員が手順-453-パルミラに干渉することは認められません。手順-453-パルミラの終了に続き、SCP-2817-1は聞き込み調査と心理カウンセリングを受け、Dクラス棟へと護送されます。
手順-453-パルミラが行われるまでのSCP-2817-2の所在を特定し、捕獲するための努力は進行中です。SCP-2817から得られた情報は、SCP-2817-2が通常は何らかの惑星間組織に所属しており、それ故に収容が不可能であることを示唆しています。
説明: SCP-2817は、SCP-2817-1とSCP-2817-2によって創作され、定期的に行われている複雑な儀式です。
SCP-2817-1は混血の人間男性であり、本名はウィリアム・サイモン・ヒグリー、旧称D-77810です。SCP-2817-1は当初、弟のトーマス・マイケル・ヒグリーと共謀して二重殺人を犯したとして終身刑に服しており、両者ともに████年、Dクラス職員として財団に徴用されました。SCP-2817-1の弟にはD-113の番号が割り振られ、現在は既に死亡しています。SCP-2817-1が提供した情報を基に、D-113もまた、財団に徴用される以前の██年間にわたってSCP-2817に参加していたと推定されます。D-113の死亡以前、SCP-2817-1は彼と毎月交代でSCP-2817に参加していました。SCP-2817-1とSCP-2817-2は非常に密接な関係にあり、両者は非言語コミュニケーションを通じてお互いの完全な心理学的プロファイルを理解できているように思われます。
SCP-2817-2は身長3mの無毛のヒト型実体であり、濃いモーブ色の肌から常に同色の淡い光を放っています。SCP-2817-2は王冠と豪奢なローブを着用しており、骨と裁判官用の木槌で構築されていると思しき王笏の粗雑な模倣品を所持し、意のままに出現・消失する能力を有しています — 対象は自らの意思で実体化し、SCP-2817に参加しています。SCP-2817-2はSCP-2817-1から“ 絨毯大王 ”カーペット・キングという名称で呼ばれており、SCP-2817-1の主張によると“自分の罪を告白して裁きを求める”ためにSCP-2817を執り行っています。SCP-2817-2は著しく気まぐれかつ内省的で“やたらと世話が焼ける”性格であるとSCP-2817-1から述べられており、SCP-2817を観察する警備員には一貫して敵意を示し続けています。このため、SCP-2817-2に関する既知の経験的データは少なく、大部分の情報はSCP-2817-1から得られたものです。
SCP-2817-1によれば、SCP-2817はSCP-2817-2の粗雑な収容方法です。SCP-2817において、SCP-2817-1は修道士の衣服を着用し、手斧をSCP-2817-2が未知の手段で事前指定した会合場所へと持参します。SCP-2817-2は出現すると、SCP-2817-1の足元に跪きます。SCP-2817-2は続けて未知の言語で短いスピーチを暗唱し、SCP-2817-1はSCP-2817-2の肩に優しく儀式的に触れることで応答します。これに続いて、SCP-2817-2は頭を下げ、SCP-2817-1はその首を刎ねます。死体は後に消失し、翌月になると明らかに無傷のSCP-2817-2が出現して儀式は繰り返されます。儀式に続き、SCP-2817-1は財団職員に、SCP-2817-2が放免を要請したという罪状を通達します。これらは通常、本質的に虐殺または軍事行為が関与する、宇宙規模で行われた行為です。
SCP-2817は、SCP-2817-2が自身の行為を続行しないように、自ら考案した刑罰として機能しています。この有効性は不明です。
回答者: SCP-2817-1
質問者: タマル・ゲフィン博士
<記録開始 █/██/█>
ゲフィン博士: 初めてSCP-2817-2が君に接触した時のことを話してくれ。
SCP-2817-1: 俺たちがかなり幼い子供だった時期だ。多分5、6歳か? あの時分、トムと俺は切っても切れねぇ仲で、いつだってすごく親密な関係ってやつだった。あの頃の俺たちは寝室が同じだった、俺はそいつを鮮やかに思い出せる、あの寝室を。それで、親が組み立ててくれためっちゃ背の高い二段ベッドで寝てたんだ。俺はいつも上の段で、トムはいつも下の段だ。それと、真夜中にトムが、ベッドの隣に“長い脚”がどうこうって叫ぶのを何度か聞いたことも覚えてる。
ゲフィン博士: 長い脚?
SCP-2817-1: (頷く) あいつを最初に見たのはトムだった。俺と我が家のモンスターの初遭遇は多分それから1ヶ月ばかり後のことだな。それまでは、トムが描いた絵でしかあいつを見たことが無かった。
ゲフィン博士: 君の弟は、その生物に強い繋がりを感じていたか?
SCP-2817-1: そうでもない。あいつは俺たち2人のために現れたんだ。あいつは例の骨飾りが付いた王笏を持ち歩いてて、ウチの寝室にはあいつの肌と同じ色合いの敷物があったから、俺たちはあいつを“絨毯大王”と名付けた。しばらくして俺たちはあいつを怖がらなくなった — 一度も邪悪そうだったり脅すようなことをしないで、ただ少し悲しそうで孤独っぽく見えるだけだったからな。あいつは我が家の優しいモンスターだった。
ゲフィン博士: どのようにして、あれが何を求めているかを知ったんだ?
SCP-2817-1: あいつは一度も口を利いたことは無いんだが、俺たちは何となくあいつが何を、なぜ求めてるのかを理解した。これは説明できねぇな。あいつが俺たちに斧とローブを渡して、いいからさっさと取れってやたらしつこくせっついてきた時のことを覚えてる。知り合いだった何年もの間で、あいつが微笑んだのはあの時だけだったと思う。
ゲフィン博士: では君は、SCP-2817-2が君に危害を加えるつもりだとは一度も感じなかったのか?
SCP-2817-1: 一度も無い。あいつはクローゼットの中に住んでて、毎月化けて出る、死にたがりの怪物でしかなかった。あいつは俺たちに儀式のやり方を教えて、どうしてそれが必要なのかを説明してくれた。あの頃の俺たちにはあまり理解できてなかったんだが、その儀式はあいつの気分を良くしているようだった。あいつは何かしら理由があって俺たちを信頼してくれたんだと思う。
ゲフィン博士: 幼かった君は、SCP-2817-2の性格にどう反応した?
SCP-2817-1: そりゃ… うん。まぁな。変な話だが、我慢してた。こう、勿論好きじゃなかったが、俺はあいつを気の毒に感じてた。何か心無い事なんか言えやしなかったんだよ。そりゃまぁ、あいつは何かと大量殺戮をやりがちだけどよ、俺たちは皆それぞれ悪を抱えてるもんだろ? 少なくとも、あいつは地球には多分何もする気は無いと言ってる。よく分からん。俺にとって大事なのは、周りにいる奴らが幸せであることだ。それに、俺も弟も、人を幸せにするにはその人が求めている事をしてやるのが一番だって教わった。つまりだな、あいつは自分を罰してる。それはつまり変わることを望んでる証拠じゃないのか?
ゲフィン博士: だが、あれはまだ変わっていないようだぞ。未だに君のところに来ている。何故だ?
SCP-2817-1: 誰かが人生を変えようとしている時は、支えてやらなきゃダメだろ。そいつらを愛して励ましてやるんだ。それにな、言わせてもらうが、そういう世話役が見返りに受け取る愛ってのは特別なもんだぜ。
ゲフィン博士: 君は自分をSCP-2817-2の世話役だと思っているのか? それとも裁定者かな?
SCP-2817-1: (SCP-2817-1は肩をすくめる) 正直言うと、俺にとってもうその2つに違いは無いんだ。罰は世話。受け入れても罰しても同じさ。そいつは自分が見張られているってことを理解するための手段だからな。愛を受け入れるためにはもっと努力しなくちゃいけねぇことを、まだそのための準備ができてないことを理解する手段。
ゲフィン博士: 君はSCP-2817-2が善人だと思うか?
SCP-2817-1: (SCP-2817-1は再び肩をすくめる) 俺はあいつを裏切らねぇよ。あれはあいつ流のやり方、自分がやることの正当化だ。あいつに対しちゃ、俺は愛より劣るもんを感じたことが無い。 (SCP-2817-1は笑う) 多分こんなこと言うのは俺だけかもな。俺はモンスターの言いなりになってるのかもしれん。 (SCP-2817-1は微笑む)
<記録終了>
回答者: SCP-2817-1
質問者: タマル・ゲフィン博士
<記録開始 █/██/█>
ゲフィン博士: 何故、君と弟は二重殺人を犯したんだ?
SCP-2817-1: あれは、あいつの長い長い依頼リストの一番最後の出来事だった。トムと俺が少し年上になった頃、もうすぐ12歳って時期かな、あいつは“証拠”を求め始めた。自分が有罪であることを証明するための、簡単な務めを俺たちに課したんだ。大体この頃からあいつの振舞いはかなり、えー、どういう言葉が相応しいか分かんねぇけど“不安げ”がかなり近いかな、とにかくそんな風になり始めた。最初のうちは些細な事だった — 松ぼっくりを1つ見つけるとか、ガムを1個くすねるとか、ローマ史の長い本を初めから終いまで読むとか。かなりデタラメな指示だったよ。でもそれをやると、毎月の処刑の時に、あいつの顔はもっと落ち着いてるように見えた。
ゲフィン博士: で、私の仮定だが、これらの指令は時間が経つにつれてどんどん複雑になっていったのでは?
SCP-2817-1: あんたの言葉を借りりゃ、そんな感じだ。2人の男を残酷な手口でブチ殺してムショに行ってくれって頼みに来た時、あいつは自己嫌悪のオーラで俺たちのアパートを腐らせんばかりだった。
ゲフィン博士: この犯罪の性質を受けて、君は何か思わなかったか? 疑念を抱かなかったのか?
SCP-2817-1: 前も言ったし、今後も言い続けるが、罰は世話なんだ。
ゲフィン博士: どういう経緯で君はその考え方に至った?
SCP-2817-1: いいか、あいつの頼みが過激になってきて、俺たちが文句を言ったとする。つまり、俺たちが仮に抗議したと思ってくれ。 (SCP-2817-1は冷笑する) あいつのお使いやら何やらに文句を言うなんて、今考えると如何に無分別かって分かるな。とにかく、そういう事をするとだな、あいつにぶん殴られるんだわ。俺たちはお互いを訪ね合って痣を見せ合う羽目になる。あの時はトムだった、俺ん所に来たトムは病院を出てきたばかりだったよ。顔中が黒と紫色だ。看護婦はあいつが乱闘でもやったと思ったんじゃねぇか? こう、人が考えてる事なんて分かりゃしねぇだろ。
ゲフィン博士: それで、この暴力は君たちが抗議するのを止めさせたのか? それとも君たちの不満が増しただけか?
SCP-2817-1: うん、おれはもう抗議したいと思わなくなった。何と言うか、あいつが殴る時ってのは、頭ん中の何かをカチ割られたんじゃないかってぐらい激しい勢いなんだ。すごく恩知らずな真似をした気分になる。恩知らずな真似をした罪悪感で魂が傷付く。ぶん殴られてからあいつが次回の儀式に現れるまでの2ヶ月間というもの、俺は予定を早めて到着したあいつから廊下に引きずり出されて口で言えねぇ仕打ちを受ける夢を何度も見た。俺の体にも心にも信じられねぇような仕打ちをな。可笑しなことだが、夢が恐ろしいほど、あいつから受ける仕打ちが酷いほど、俺は落ち着いた気分になった。それを俺はある種の安らかな気分で受けた。叫びたいとも思わなくなった — 何で叫ぶ必要がある? そいつは正しく感じられたんだ、分かるか? 何もかも自然であるみたいに感じた。そいつは正しかったんだ。俺は世話を受けて矯正された気分になった。良い事だ。さっきの俺流哲学はそこで体得した物だし、トムと俺とが自分から進んで奴らを襲ったのもそれが理由だ。トムも俺と同じ夢を見たと言ってたよ。
ゲフィン博士: 君が刑務所に入る時、人生や家族に及ぶ影響のことは全く気に掛けなかったのか?
SCP-2817-1: (数秒の沈黙) いや。一度も気に掛けなかった。大事なのはあいつが毎月死ぬ時に、罪を告白して贖われた時に幸せだったという事だけだ。それが問題なんだ、俺はあいつのために責任を負ってる。俺たち皆のためにだ。あいつは自分がやってる事を贖わなきゃならないし、あいつはそれを裁かない、さもなけりゃ裁けない奴を必要としてる。優しく肩に手を置いてくれる奴を。俺たちは皆、何よりもそういう、優しく肩に触れてくれる奴を求めてる。
ゲフィン博士: 君はどうやって儀式を刑務所で、或いは儀式が公式に認められる前の財団で実行していた?
SCP-2817-1: トムが死んでから、あいつはかなり静かになった。不安げな振舞いを止めた。それほど頻繁に来ることも無くなった。でも俺は、俺は、あいつは今は幸せなんだろうと思う。
ゲフィン博士: SCP-2817-1?
SCP-2817-1: 絨毯大王が幸せな時、俺は幸せだ。俺は今は幸せだから、あいつも幸せなはずなんだ。
ゲフィン博士: SCP-2817-1、私の質問に答えてくれ。
SCP-2817-1: (長い沈黙) 昔の俺たちはあいつの愛が無けりゃ空っぽだった。今も空っぽだ。空っぽ以下だ。毎日そうなんだ。 (SCP-2817-1は意思の疎通を止める)
<記録終了>
ページリビジョン: 2, 最終更新: 10 Jan 2021 16:54