SCP-2819-JP
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SCP-2819-JP-1並びに-3群

アイテム番号: SCP-2819-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2819-JP現象の発生を探知するため、ボウ委員会との協定により、アメリカ合衆国国内で、ストリング作戦1が展開されます。ストリング作戦による探知後、最寄りのサイトから最速の手段で戦術対策チームとエージェントを派遣し、周辺地域の記憶処理と軍人墓地の記録改竄を行って下さい。可能なればSCP-2819-JP-1実体にインタビューを行い、SCP-2819-JP現象について現在知られている以上の調査を行って下さい。

20██/██/██追記: アメリカ合衆国内にとどまらず、各国支部においてストリング作戦同様の作戦を展開し、SCP-2819-JP現象の探知と追跡、解明を目指して下さい。

説明: SCP-2819-JPはアメリカ合衆国軍において不名誉除隊2となった軍人のうち、それまでに著しい功績を上げた人物の一部(以下対象)が死亡した際に発生する現象です。

20██/██/██追記: SCP-2819-JP類似現象はアメリカ合衆国軍のみならず他国軍でも発生していることが判明しました。

対象の死亡後30分~1時間以内に、対象の死体の存在する場所に、対象がかつて所属していた軍3の制服を着用した9体のヒト型実体(以下SCP-2819-JP-1-1~9)が出現し、対象を納棺すると、最寄りの軍人墓地へと霊柩車(SCP-2819-JP-2)で運搬します。SCP-2819-JP-1の出現に際し、対象の死亡現場に人物がいた場合、SCP-2819-JP-1は「軍の命令により対象を葬儀しに来た」という意味の説明を行います。全ての例において人物は説明を理解し埋葬を了承しますが、これが強制力や認識災害によるものかは未だ判明していません。

軍人墓地においては未知の作用により埋葬のための穴が出現しており、また、対象の親族や友人の姿を取ったヒト型実体(以下SCP-2819-JP-3)が複数4、集合しています。SCP-2819-JP-3群は悲嘆に暮れたような様子を見せますが、意思の疎通は不可能とこれまでの調査で判明しています。

対象の死体が収められた棺はアメリカ合衆国国旗によって覆われていますが、埋葬前にSCP-2819-JP-1によって規定の形式で折りたたまれ、SCP-2819-JP-3群のうち、最も近親者に引き渡されます。SCP-2819-JP-3が存命している人物の場合でも、そのアメリカ合衆国国旗が当該人物の所有物となった例はありません。然る後、SCP-2819-JP-1によりタップス5が吹奏され、3発の弔銃が放たれます。また、最寄りの掲揚されている国旗が半旗となります。

その後、SCP-2819-JP-1により対象の死体の埋葬が終了すると、数分内にSCP-2819-JP-1、2、3群とも消滅すると同時に、納棺された地表に高さ・横幅30cm、厚さ5cmの玄武岩製のモニュメント(SCP-2819-JP-4)が出現します。SCP-2819-JP-4には対象の氏名と生没年、対象が勇敢に戦ったことを称える文言、そして「安らかに眠れ」(Rest In Peace)との文言が彫り込まれています。SCP-2819-JP-4はこれまでの検査で破壊耐性を持つことが確認されています。なお、対象の死体が納められた棺には異常性は認められません。

SCP-2819-JPは19██年に、アメリカ合衆国████州の████軍人墓地で、届け出されていない葬儀があったとの通報により発見されました。財団は墓地関係者並びに葬儀目撃者全員にCクラス記憶処理を行い、記録改竄で対処しました。

なお、財団はSCP-2819-JP-1群とのインタビューに成功しました。以下がその記録です。

対象: SCP-2819-JP-1-9

インタビュアー: エージェント・シュシュニコワ

付記: エージェント・シュシュニコワは████州███市において発生したSCP-2819-JP現象をストリング作戦により検知・追跡し、███軍人墓地においてSCP-2819-JP-1-9とのインタビューに成功しました。

<録音開始, 20██/██/██>

エージェント・シュシュニコワ: なぜこの葬儀を執り行っているのですか?

SCP-2819-JP-1-9: (銃を下ろし、直立の姿勢を取る)彼は陸軍兵士として義務を全うした。そのため、礼式に基づき葬儀を行っている。どこかおかしい点はあるかね?

エージェント・シュシュニコワ: 彼は不名誉除隊者です。

SCP-2819-JP-1-9: お嬢さん、不名誉除隊者といえども、合衆国陸軍の、いや兵士としての義務を果たした者は存在するのだよ。

エージェント・シュシュニコワ: そのためにこのような葬儀を? 貴方達は正規の合衆国軍人ではないように見受けられますが。

SCP-2819-JP-1-9: お嬢さん、我々は無名兵士の総意を代表している。君の疑問は些細なことに過ぎない。兵士は最大限の敬意に基づき、礼式に則り埋葬されなければならない。それが伝統というものだ。

エージェント・シュシュニコワ: 貴方達が無名兵士の総意を代表している根拠は何ですか?

SCP-2819-JP-1-9: 誰もが思っている。軍人は、兵士は、名誉を持って葬られたいものだと。たとえそれが、軍の公式見解では不名誉除隊に値する人物であっても。(SCP-2819-1-9は突如消失する。同時にSCP-2819-1~8、SCP-2819-JP-2、3群も消失する)

<録音終了, 20██/██/██>

終了報告書: SCP-2819-JP-1は無名兵士の総意を代表していると主張している。不名誉除隊になった人物に、無名兵士の総意が敬意を表すというのは、些か無理がないだろうか? それに、彼が兵士としての義務を果たした、という点についてのさらなる調査が必要だ。 -エージェント・シュシュニコワ

補遺: エージェント・シュシュニコワの要請を受け、これまでの対象の履歴を調査した結果、抗命罪により軍事裁判の被告となった例が90%を占めること、残り10%は殺人罪により軍事裁判の被告となった例であることが判明しました。いずれも、当該容疑において、戦死者を減らすためにやむなく行った緊急避難であるとの弁護がなされていました。

この報告を受け、エージェント・シュシュニコワは直近のSCP-2819-JP現象関係者にインタビューを複数回行いました。インタビューの結果は同様の傾向を示しました。代表的な記録は以下の通りです。

対象: S.████陸軍軍曹

インタビュアー: エージェント・シュシュニコワ

付記: 対象はSCP-2819-JP現象の対象となったJ.████元軍曹の戦友です。エージェント・シュシュニコワはジャーナリストのカバーストーリーでインタビューを行いました。

<録音開始, 20██/█/██>

エージェント・シュシュニコワ: 今日はJ.████元軍曹についてのお話を伺いに来ました。

S.████陸軍軍曹: 礼金は弾んでくれたし、何でも話すさ。何を聞きたい?

エージェント・シュシュニコワ: 彼は、抗命罪により軍法会議にかけられ、不名誉除隊になりました。そのことを踏まえてお聞きしたいのですが、彼は英雄だったと思いますか?

S.████陸軍軍曹: あのクソッタレな軍法会議には俺も証人として呼ばれた。そこで言ったことと同じことをあんたにも言うよ。”そんな馬鹿げた問いはやめろ、やつはやるべきことをやった。味方を救い、犠牲を少なくした。それに文句でもあるのか?”

エージェント・シュシュニコワ: あなたの意見を、より深く聞かせて下さい。

S.████陸軍軍曹: あいつは、アフガンでタリバン共に俺たちが包囲された時、上官の――無能な小隊長の――”円周防御!”って命令を聞かずにそのままタリバンの包囲網に突っ込んだ。獅子奮迅の活躍で包囲の一角を切り崩し、俺達に突破口を開いてくれた。あいつがいなけりゃ俺も今頃ここであんたと話しちゃいないさ。その上で言うね。”あいつは、英雄だった”

エージェント・シュシュニコワ: 確かに英雄的な行為ですね。しかしそれでもなお、抗命罪により軍法会議に掛けられた。それはなぜですか?

S.████陸軍軍曹: 無能な小隊長がタリバン支配下の村を焼こうとした時、小隊長を殴り飛ばして止めたのがあいつだった。それを根に持たれ、昔の抗命罪と込みでアイツを公開処刑しようとしたのさ。[罵倒]

エージェント・シュシュニコワ: では、彼はその事件を上に報告しなかったのですか? 軍事裁判でも?

S.████陸軍軍曹: [5秒沈黙]話にゃ続きがある。俺たちは事件の前、小隊長をリンチに掛けようとした。だが、あいつはそれに首を振り「自分に良い考えがある」と言った。そして、俺たち全体に代わってひとりで俺たちの総意をストレートに示した。俺たちの総意を引き受けたあいつは、俺たちには責任を負わさないため、沈黙を守った。理不尽な判決も受け入れた。そして不名誉除隊になり、それからついぞ俺達の前には姿を表さなかった。

エージェント・シュシュニコワ: 罪をかぶるため、一切のつながりを切ったのですね。なんとか連絡を取ろうとしたことはありますか?

S.████陸軍軍曹: ない。あいつの決断を無駄にしたくはなかった。だけど、こないだ夢枕であいつの葬式が見えたんだ。大勢の仲間と家族と友人、その中には俺も含まれていた、そいつらに囲まれて、兵士の名誉に包まれた軍葬をしていた。なあ、あいつは本当に死んだのか?

エージェント・シュシュニコワ: はい。ですが、そのような厳粛な葬式ではありませんでした。身内だけの、静かなものでしたよ。

S.████陸軍軍曹: そうか。俺たちは一生あいつのことを忘れない。そしてあいつの物語を仲間たちとともに子供や孫に伝えていく。讃えられざる英雄の話を。それが、俺にできる唯一の贖罪だ。

<録音終了, 20██/██/█>

終了報告書: SCP-2819-JP現象の発生傾向ですが、英雄的な行動を取りながら報われざる者、讃えられざる者を顕彰し、讃える傾向が顕著にあると指摘します。 -エージェント・シュシュニコワ

補遺2: SCP-2819-JPに対するインタビュー後、20██/██/██に、「無名兵士の総意」と署名された書状が、財団内で特に勲功のあったフィールドエージェント並びに倫理委員会職員のデスクで発見されました。内容は以下の通りです。

君たちが闇から人々を遠ざけ、光の中で暮らす大勢の人々を守りながら、讃えられることも報われることもなく死にゆくことについて、心から哀悼の意を申し上げる。その上で、ひとつ提案したい。君たちの労苦を讃え、君たちの死を悼む儀式を、我々が執り行なおうではないか。なに、遠慮することはない。君たちはそれにふさわしい貢献を行っている。誇りは、勲は、讃えられることにより歴史となる。ヘロドトスを読んだかね? 300人で100万の兵を食い止めたレオニダスの行為は、讃えられなければ消えていただろう。そうならないためにも、君たちは讃えられるべきだ。もしこの提案に賛同するなら、便箋に”Yes”と記すだけでいい。君たちは歴史の英雄となるだろう。

この書状は直ちに回収され、関係者には調査と記憶処理が行われました。書状の便箋に”Yes”と書き込んだ職員は現在のところ存在していませんが、再度のインシデントに備え、継続監視状態が取られています。

補遺3: 補遺2のインシデントが発生し██カ月が経過した20██/██/██に、O5評議会評議員全員のデスクから「無名兵士の総意」と署名された書状が発見されました。

将軍諸君、君たちの兵士が、讃えられることも報われることもなく死にゆく事に対し、我々から哀悼の意を評し、その業績を顕彰することを禁ずるのは理解に苦しむ。それは彼らに対する冒涜だ。我々は諸君らに対し、再度の機会を与えよう。この便箋に”Yes”と記すだけでいい。君たちの兵士たちはそれで報われ、讃えられることになるだろう。それが兵の上に立つ者の責務と言えるのではないかね?

この書状に対し、O5評議会は全会一致で”No”と決議しました。

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