SCP-2830
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定期メンテナンス中のSCP-2830-1-C、2005年9月。

アイテム番号: SCP-2830

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-2830-1-Aから-Oは財団ガレージ020-2830に収容します。SCP-2830-3の唯一の未編集版とSCP-2830-4の原本は、地域本部020-ベートの標準的なSafeクラスファイルに保管されます。

年に2回、SCP-2830-3陽性の運転手15名と、地方機動部隊020-ベート(“九尾の猫鞭”)所属エージェント15名が、SCP-2830-1-Aから-Oの定期点検とメンテナンスを行い、その後2830行程に概説される走行試験を実施します。SCP-2830-2Δ1の内部において障害または変化が認められた場合は地域司令部に通達し、地域司令部は必要に応じて収容プロトコルの改正を担当します。

要注意人物-020830(“ペンローズ”)とその一味を特定/発見し、尋問のために拘留する試みは引き続き行われます。

説明: SCP-2830は、かつて運営されていた異常かつ高級志向の輸送団体に関連するオブジェクト群の総称です。この団体は“ザ・ナレッジ(the Knowledge)”の名の下に、1960年代半ばから2005年まで活動していたと考えられています。

SCP-2830-1-Aから-Oは、超常的手法で改造を加えられた15台のオースチンFX4ハックニー・キャリッジ2です。全てのSCP-2830-1実例は、3つの主要な特徴を共有しています。

  1. SCP-2830-1実例は、SCP-2830-3陽性の人物によって運転されることにより、SCP-2830-2Δと指定されるグレーター・ロンドン区域内の複雑に込み入った異次元街路へアクセスすることが可能になります。
  2. 各SCP-2830-1実例の車内空間は、SCP-2830-2Ξと指定される約██,███平方mの面積を持つ1つの空間を共有しています。SCP-2830-1実例の外部における空間的な位置および運転状況は、内部空間での出来事とは事実上“切り離されている”状態です3
  3. SCP-2830-2Ξの存在にも拘らず、外部の観察者は、位置に関係なく、SCP-2830-1実例が空間的にごく普通の位置に存在し、その車内に運転手と乗客が大人しく座っているのを目撃します。この効果の性質についての研究が進行中です。
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初期探査中に撮影されたSCP-2830-2Δ。SCP-2830-1-Eが中央右寄りに写っている。

SCP-2830-2Δは、SCP-2830-3陽性の人物がSCP-2830-1実例を運転することによってアクセス可能な領域であり、両脇に建造物が立ち並ぶ、広大かつ恐らくは果てしなく続くアスファルトの舗装路です。財団は、これまでのところSCP-2830-1以外にはSCP-2830-2Δにアクセスするための手段を発見しておらず、SCP-2830-2Δ内部探査で生命体の存在や他団体によるアクセスの兆候は現在までに確認されていません。SCP-2830-2Δは、約10mおきに設置されているハロゲン街灯4を除き、常に暗闇に包まれています。SCP-2830-2Δの通りに沿って並ぶ建物、街路樹、消火栓、その他の路地に典型的な配置物のように見える物体は、実際には完全に黒いアスファルトで構築されており、あらゆる形態の生命の先住/活動の痕跡を示していません。

SCP-2830-2Δは明らかに毎回侵入するごとにアクセスポイントの位置が異なっており、SCP-2830-2Δの内部で他のSCP-2830-1実例と遭遇する試みは成功していません5

SCP-2830-2Δ内で撮影された写真には、一様に肉眼では見えない歪みや光の屈折が写り込みます。SCP-2830-2Δをマッピングする試みは、SCP-2830-2Δの複雑かつ常に変化し続けている可能性がある内部地形が原因となって、現在まで失敗に終わっています。SCP-2830-2Δの探索は、財団が承認したSCP-2830-3陽性の運転手とレベル1以上の財団職員によってのみ実施されることになっており、前述の職員はSCP-2830-2Δへの侵入に利用したSCP-2830-1実例から見えない場所へは決して行かないように指示されています。
SCP-2830-2Ξは、SCP-2830-1-Aから-Oの車内で共有されている空間です。面積は約██,███平方mであり、広い宴会場、15ヶ所の出入口(SCP-2830-1-Aから-Oに対応)、休憩室、広いキッチン、貯蔵庫、並びに宿泊用だったと想定される███ヶ所の部屋から成っています。SCP-2830-2Ξの傷み具合は20-60年にわたって使われ続けてきたことを示唆するものですが、SCP-2830-2Ξの家具調度は全て財団による回収以前に取り払われています ― 例外は真鍮のシャンデリア1点、椅子1脚、そして過去に定期的に使われていた痕跡がある照明器具および水の蛇口█,███点です。SCP-2830-2Ξがかつてどのように水道と電力を引いていたのかは判明していません。

SCP-2830-2Ξの各部屋(15ヶ所の出入口エリア除く)の“窓”はどうやら破壊不可能らしく、写っているのは静止状態のぼやけた影と、ロンドンの現在時刻に一致する明るさの自然光による輝きのみです。視認できるぼやけた影と現実世界の立地の間にはまだ繋がりが見出されておらず、SCP-2830-2Ξでの更なる破壊試験は中断されています。

SCP-2830-2Ξの15ヶ所の出入口の部屋は、対応するSCP-2830-1実例の車内空間として適切な、均一なサイズの空間であり、部屋の窓には前述した各SCP-2830-1実例の周辺にある実際の風景が映し出されます。出入口の部屋では、対応するSCP-2830-1実例の動きと合致する運動量と感覚を感じることができます。出入口の部屋にあるドアのうち4つはSCP-2830-1実例の外部空間に、後部にある5番目のドアはSCP-2830-2Ξの宴会場に繋がります。

SCP-2830-3は、1冊の、ミーム/クラス-6(“一部懸念”)情報災害性質を有する全██ページのパンフレットです。8ページおよび13ページの特定フレーズを読んだ(そして理解した)人物は、SCP-2830-3陽性となります。SCP-2830-3陽性者は以下の特性を示すようになります。

  • グレーター・ロンドン区域内における通り/企業/住所、並びにグレーター・ロンドンに存在する2ヶ所以上の場所を最も効率的に繋ぐ道を発見する方法に関する、包括的かつ正確な知識。
  • SCP-2830-1実例をSCP-2830-2Δの内外へ簡単に出入りさせる能力。SCP-2830-2Δへの侵入と退出は任意の場所で行うことが可能であり、見たところ、侵入/退出ポイントの現実世界における物理的な距離との間に関連性を持ちません。この能力はSCP-2830-3陰性の運転手をSCP-2830-2Δの内外へ誘導するのに用いることは不可能です。また、SCP-2830-3陽性者は、SCP-2830-1の効果の性質やそれがどのように機能しているかをSCP-2830-3陰性者に説明/教育することが出来ません6

SCP-2830-3陽性となっても、その人物の自動車両を運転する能力や運転スキルには変化が無いという点には注意が必要です。このため、実験に携わるSCP-2830-3陽性の運転手には、訓練を受けており明確に安全な運転歴のある免許取得済みの人物を動員することが推奨されます。

SCP-2830-3からの5ページ分の抜粋(8ページと13ページの作動フレーズは検閲済)を以下に示します。

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SCP-2830-4、表面。

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SCP-2830-4、裏面。

SCP-2830-4は、複数の情報ソースから“ザ・ナレッジ”の創設者/運営者であったことが示唆されている人物、“ペンローズ”が書いたものとされている手書きのメモです。このメモは2005年6月5日、SCP-2830-1-Aから-OおよびSCP-2830-3(SCP-2830-Aのダッシュボードに入っていた)が、リーズにある財団所有施設の駐車場に置き去りにされた際、SCP-2830-1-Aのフロントガラスに貼りつけられていました。問題の晩の施設の監視映像は、バックアップも含め、全て失われています。SCP-2830-4の内容が以下に転写されています。

友へ、
私はペンローズという名で知られている者だ。血生臭くも魅惑的な世界を、日常の下に潜む奇妙な美しさを知る者たちは ― おそらく、君たちが考えているよりも ― 数多くいる。
“万物の下に眠る万物(Everything-Under-Everything)”には、何百年もの間、主人たちがいて、商人たちがいて、常連客達がいた。私たち庶民 ― 例えばタクシーの運転手 ― は、もし万一この世界のことを語る機会があった時は、密やかに囁く声を交わし合ったものだった。
だがこの新たな、秘匿された上流階級たちは、気付かれることに憧れていた。あらゆる利用可能なサービスの、そのさらに上の待遇を待ち望んできたのだ。
40年間、ザ・ナレッジ はその上位待遇を提供し続けてきた。毎日のように黒い車は

外を走り、その中にはファーストクラスの宿泊施設を収めていた。私たちの“陰滑りの道”はこの街のありとあらゆる強力な魔法を売り買いして豊かな生活を送る男女を運んできた ― いわば、彼らの世界にとっての脈打つ心臓だった。
だが私と仲間たちは一つの合意に達した ― これで幕引きにしようと。これは闘争のためでも、悲劇の所以でもない。私たちは殆どの者たちが熱望する以上の物を手に入れている。私たちは財を成し、友を作った。これからは退いて余生を満喫する時が来たという事だよ。私たちは、自らの手で築き上げたものを称賛してもらいたい。もしこれらの商品を最大の顧客に譲り渡せば、彼らはそれを競りに出すか、或いはまた新しく ザ・ナレッジ を開設しようという考えの下に仲間を集め始めるだろう。だが、君たちは? 奇妙にして美しい物を永遠に保ち続けてくれる。私たちの作品を楽しんでくれることを願っているよ。
私たちは存分に、楽しんだのだから。
― ペンローズ ❊

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