対象: SCP-2830-JP
インタビュアー: 井上博士
<録音開始>
インタビュアー: それではインタビューを始めます。まず……
SCP-2830-JP: あんたらが俺に何を聞こうってんだ。なんだ、ヘソクリの隠し場所でも教えてやろうか?
インタビュアー: いえ、そうではなく。あなた自身についてを話してください。
SCP-2830-JP: ……こんなクズの事なんか聞いて何が楽しいんだよ。
インタビュアー: クズ?
SCP-2830-JP: 俺がクズじゃなきゃ何だってんだよ。
インタビュアー: いえ、若槻氏はあなたのおかげで孤独を紛らわせた、心を保てたと言っていましたが……
SCP-2830-JP: [数秒間沈黙]俺のおかげなもんか。俺みたいなクズはな、今すぐ死ぬべきなんだよ。
インタビュアー: それは……
SCP-2830-JP: 俺さえいなけりゃ、あの子達は囚われる事も無かったんだ。そうだろ?俺がいなけりゃ、あんなクソ野郎の下衆な考えも成就しなかったはずなのに。
インタビュアー: ですが、あなたはいつも楽しげに話していたのではないのですか?
SCP-2830-JP: それくらいしか俺には出来なかったんだよ。俺だって、本当はあんな部屋に閉じ込めたくなかったさ。
インタビュアー: はい。
SCP-2830-JP: なのに1度ドアが閉まれば、もう開けられない。俺のせいで逃げられねえんだよ。
SCP-2830-JP: お前に想像できるか?あの暗い部屋に、ずっと一人きりで閉じ込められる子達の気持ちが。どんなに逃げたくても逃げ出せず、手錠で繋がれ、ただただあのクソ野郎に嬲られ続ける日々を。
インタビュアー: それは……いえ。
SCP-2830-JP: その辛さを少しでも忘れて欲しくて、何度も話しかけたさ。毎日話していれば、少しでも楽になるかと思って。
SCP-2830-JP: なのに、目の前であの子達はどんどん弱ってくんだよ。どんなにジョークを飛ばしても、どんなに怖い話をしても、少しも表情が変わらなくなるんだよ。
インタビュアー: ……ええ。
SCP-2830-JP: ピクリとも動かなくなって、1歩ずつ死に向かっていくのをただただ見る事しか出来なかったんだよ。そうなった原因はこの俺なのに。
[SCP-2830-JPが数秒間沈黙する。]
インタビュアー: ゆっくりで構いません。続けてください。
SCP-2830-JP: 最期には、『あなたがいて良かった』って、皆。どうせなら恨んで欲しかった。呪って欲しかった。
インタビュアー: ……ええ。
SCP-2830-JP: ……なあ、お前らは俺をここに閉じ込めるつもりなのか?
インタビュアー: それについてはお答えできません。
SCP-2830-JP: 別にそれでもいいさ。監禁されるのには慣れてる。だけど頼むから、絶対に俺と誰かを同じ部屋に入れないでくれ。
インタビュアー: それは我々としても徹底させます。
SCP-2830-JP: ああ、ありがとう。もうあんなのは見たくないん……[自嘲的に笑う]なんだ、やっぱりそうじゃねえか。
インタビュアー: 何がですか?
SCP-2830-JP: 散々悔やんでる風な事を言っときながら、結局のところはこれかよ。自分が見たくない、傷つきたくないだけのクセに。こんなの、アイツと何も変わんねえじゃねえかよ。
SCP-2830-JP: 身勝手で、結局は自分の身が可愛いだけのクソ野郎。……だからクズなんだよ。
[SCP-2830-JPが沈黙する。これより後の質問には一切返答しなかった為割愛。]
<録音終了>