アイテム番号: SCP-2833
オブジェクトクラス: Keter (元Euclid、1975/07/01を以て格上げ)
特別収容プロトコル: SCP-2833個体らは、密閉構造の壁と層状の防弾ガラス観察窓を備えたサイト-147の改良型ヒト型生物収容室に個々に封じ込めします。これらの収容室には日に一回のリモート除染が行われます。各SCP-2833個体には作り付けの空気チューブを介して一日三回、ミネラルウォーターのボトルと栄養カプセルを提供します。SCP-2833個体とのインタビューは全てリモートマイク越しに為されるものとします。
更新 (1975/07/01): 機動部隊オメガ-44(“死の探究者たち”)は、北西インドにおける全ての野生のSCP-2833個体を特定・捕縛する使命を帯びています。SCP-2833個体と相互作用するMTF Ω-44工作員は常にクラスAのHazmatスーツを着用してください。
更新 (2010/10/01): SCP-2833関連の全事項はシトラ=アキュラ合同司令部に引き渡されました。更なる情報はプロジェクト・シトラ=アキュラの職員に制限されます。
シトラ=アキュラ合同合意条項377に従い、現在財団の収容下にある全SCP-2833個体を終了します。特定された野生のSCP-2833個体は一度に捕縛・尋問します。24時間の初期勾留後、それらの終了が認められます。
MTF Ω-44と世界オカルト連合排撃班3396“マハ・シャクティ”は、両チームともにSCP-2833と過去に関わった経験があることからシトラ=アキュラ職員として包含され、野生のSCP-2833個体の捕獲を担当しています。サイト-147は捕獲されたSCP-2833個体の留置領域として指定されており、シトラ=アキュラ合同司令部の権限の下に置かれます。
SCP-2833個体の終了にあたっては、以下のガイドラインを遵守してください。
- 終了を監督する職員はクラスAのHazmatスーツを着用します。
- 終了されたSCP-2833個体は焼却処分し、続けて終了室の除染を行います。
説明: SCP-2833は、個体ごとに独特の外観を有するものの、全て遺伝的に同一な人間男性の集団です。全SCP-2833個体は典型的なアグホリの服装に身を包んでいます。様々なSCP-2833個体が知っている言語としてはヒンディー語・英語・グジャラート語・ドーグリー語・カシミール語・パンジャブ語・ウルドゥー語・古風なウラル語があります。最後のウラル語に関しては、現代のウラル語族には対応するものが発見されていません。
SCP-2833は体内の有機物を操作し、SCP-2833-Aに分類される異常な寄生虫を生成することができます。SCP-2833-Aは、典型的にはSCP-2833の開口部もしくは開いた傷から放出されます。
SCP-2833-Aは双翅目の昆虫に似た寄生性の無脊椎生物であり、体長約20mmです。SCP-2833-Aの体色は赤く、翅で飛ぶことが可能です。SCP-2833-Aは概して開口部もしくは開いた傷を介して、他の脊椎動物(以下“宿主”)の体内へ入り込もうと試みます。SCP-2833-A個体は通常、宿主の神経系に自らを接続し、対応するSCP-2833個体が宿主の神経系と感覚器官を操作できるようにします。これは宿主に対して幻覚を見せる、あるいは宿主の身体を操るために使用されます。
SCP-2833-Aの内部構造は主にケラチンと筋肉組織の組み合わせで構成され、灰の痕跡を伴います。SCP-2833-Aの内部には精包が1つ含まれており、その中にはミニサイズのSCP-2833個体が収まっています。SCP-2833-A個体から発見されるSCP-2833個体は身長2mmであり、通常は不活性です。
SCP-2833-Aの宿主が人間女性である場合、SCP-2833-A個体は宿主の子宮に各々のミニSCP-2833個体を預けます。その時点で直ちに、ミニSCP-2833個体は宿主の子宮内部で成長を開始し、周辺にある全ての有機物を消費します。SCP-2833-Aを介して、“親”のSCP-2833個体は宿主の女性を居住地域から離れさせ、非都市部の環境に誘導するように操る傾向があります。
約1年の期間の後、新しいSCP-2833個体が誕生します。観察された出産イベントの100%で、母体はこの過程を生き延びることができません。新生SCP-2833個体はそれぞれ“親”のSCP-2833個体の記憶を保持し、産まれた時点で発言が可能です。誕生後、新生SCP-2833個体は“母”の死体を食らう傾向があります。特筆すべき点として、宿主が死んでもSCP-2833の妊娠は防止できません。この場合、SCP-2833-AはSCP-2833の誕生まで宿主の体を維持するために正体不明の防腐剤を生成します。これらのケースでは、SCP-2833個体は早産になる可能性があります。
最初の既知のSCP-2833個体(SCP-2833-1に分類)は、1969/██/██にインドのグジャラート州ヒマットナガルで、自身の異常性質により民間人の不安を煽り立てているのが発見されました。SCP-2833-1は財団の要求に応じてインド政府から引き渡されました。
1975/██/██、グジャラート州アーメダバードの墓地で4体のSCP-2833個体が発見されたことにより、SCP-2833個体が複数存在することが判明しました。この4体は財団による状況把握前にGOCの工作員によるアンブッシュを受けており、結果的に1体は死亡しました。残る3体は正常に財団の勾留下におかれました。
SCP-2833個体の存在は、インドのグジャラート州、ラジャスタン州、ヒマーチャル・プラデーシュ州、ハリヤナ州、パンジャブ州、ジャンムー・カシミール州の農村部で確認されています。SCP-2833の総人口は1000体を超えると推定されます。
補遺2833-1: SCP-2833個体らとの選択されたインタビュー
回答者: SCP-2833-1
質問者: サンジェイ・シール博士
序: 以下のインタビューは元々グジャラート語で行われた。SCP-2833-1への言及が更新された。
<記録開始>
シール博士: SCP-2833-1、新しい住居が快適であることを願っています。
SCP-2833-1: 儂らは実に快適じゃよ。
シール博士: それは良かった。貴方に関する幾つかの質問があって此処に来ています。ですから貴方が最大限協力してくれることを望んでいます。分かりますか?
SCP-2833-1: 儂らは理解できとる。話せ。
シール博士: 貴方の身体から作成された生物について詳しく説明してください。
SCP-2833-1: 儂らは敵の下へと放たれた疫鬼であり、勝利は宣言されたのじゃ。あれは儂らじゃ!
シール博士: 貴方は闘っているのですか? ヒマットナガルでは民間人を無差別に襲っていましたね。
SCP-2833-1: 敵はおらん。腐敗と錆の疫鬼によって死に絶えた。そう、儂らは今では敵よりも長生きしておる。
シール博士: それと、なぜあなたは自分のことを“儂ら”と呼ぶのですか?
SCP-2833-1: 儂らはこの地の偽りの神々と同じじゃよ。数多くの形に分かれてはおるが、それでも一つなんじゃ。
シール博士: 貴方は自分のことを神だと考えているのですか?
SCP-2833-1: 異端め! 儂らはエオム(Aom)の僕に過ぎん。この世界の創造者にして破壊者たるお方の従者でしかない。
<記録終了>
回答者: SCP-2833-4
質問者: サンジェイ・シール博士
序: 以下のインタビューはSCP-2833-1以外にSCP-2833個体が複数いることに着目したものである。元々はグジャラート語で行われた。
<記録開始>
シール博士: SCP-2833-4、私たちは既に貴方と貴方の仲間が遺伝的に同一であることを確認しました。説明してください。
SCP-2833-4: 儂らは前にも言うたぞ。儂らは一つじゃとな。
シール博士: きっと貴方はもっと沢山いるのでしょう。どれだけの貴方が野放しになっているのです?
SCP-2833-4: 儂らはお主らの檻の中におる。儂らは無学者どもの群れから離れた所におる。儂らは作物や家畜の如くに育つ。儂らの数と信仰は成長し続けておる、そしてサマーディの昇天まで成長し続けることじゃろう。
シール博士: サマーディ? それは何処です? 誰がそこに埋葬されているのです?
SCP-2833-4: サマーディは目では見えん。そしてな、博士さんや、埋められしものは立ち上がるであろう。消費されることこそ復活への扉。これが儂らの循環、サマーディを待つ忍耐じゃよ。
シール博士: うーん…その、サマーディが訪れたらどうなると言うのです?
SCP-2833-4: 儂らはタンダヴァを踊り、世界を復活させるために消費するんじゃ。
シール博士: お時間を頂き有難うございます、SCP-2833-4。
<記録終了>
回答者: SCP-2833-42 (1985/██/██、ソ連とアフガニスタンの国境で回収)
質問者: サンジェイ・シール博士
序: 以下のインタビューはSCP-2833個体にとっての“サマーディ”の重要性に着目したものであり、元々はヒンディー語で行われた。SCP-2833-42は財団が収容している個体の中では比較的協力的であることが証明され、インタビュー対象として選択された。
<記録開始>
シール博士: SCP-2833-42、サマーディについて私に教えて頂けますか?
SCP-2833-42: サマーディを探し求めているのであれば、お主らの探究は無益じゃぞ。何となれば、儂らがサマーディの後継者だからじゃ。儂らだけなんじゃ!
シール博士: 私たちがサマーディを目指すのは、それが世界に脅威を及ぼす場合のみです。
SCP-2833-42: サマーディは脅かしはせん。脅かされたのは儂らの方じゃ。巨像どもがサマーディを蹂躙した時に追い出されてしもうたのじゃ。儂らは名残に過ぎぬが、一度として負けてはおらん。
シール博士: 成程。先ほど自分のことをサマーディの後継者と仰いましたね。何故そうなのですか?
SCP-2833-42: 儂らは光輝ある血統、カルキスト・ヴァスキの選ばれし種なんじゃ。儂らはかつてカルキスト・ヴァスキの奇跡によって家を手に入れた。そして儂らはサマーディを取り戻すじゃろう ― それがカルキスト・ヴァスキに対する儂らの誓いじゃ。
シール博士: カルキスト・ヴァスキとは何者ですか?
SCP-2833-42: 儂らじゃ。儂らこそがカルキスト・ヴァスキなんじゃ。
<記録終了>
補遺2833-2: [データ削除済]の一人称記録を基に、SCP-2833はダエーバイト文明に対して敵対的な異常団体だと仮定されています。しかしながら、SCP-140や他の影響を受けた文書においてSCP-2833や“カルキスト・ヴァスキ”への言及は見つかっていません。
以下はダエーバイト文明に関する知識があるかどうかを問われた際のSCP-2833-42の返答です。
ダエーワ。彼奴らはエオムの意志が育つにつれて腐ってゆく。儂らは彼奴らを消費した。殆どはな。一部の連中は逃げるために魔法を使いおった。儂らがそうしたように。儂らもまた、儂らを消費しようとする輩から逃げた。儂らは逃げた! 臆病者! 臆病者め!
補遺2833-3: 以下はウィリアム・ヘンリー・スリーマン卿が記した文書を部分的に集めたものです。これらはGOCによって照合され、プロジェクト・シトラ=アキュラの下に財団の権限下へ開放されました。
インド農村部の貧困層は、“ヴァーチュラ(Vātula)”と称する奇妙な神秘主義者たちのカーストについて述べている。死そのものの如くに蒼褪めた彼らは死と腐敗に対する尋常でない狂信を抱いており、インドの農民たちからは尊敬され恐れられている。彼らはインド北西部の異国の生まれであると言い、サマーディという伝説的な故郷のことを語っている ― 巨人族によって滅ぼされた大都市のことを。
宗教面はといえば、噂ではシヴァを崇拝しているという。だが彼らはシヴァの寺院を避け、彼らの間で内々の信仰を抱いているようだ。彼らの独自の神像はライオンの姿をしたシャラブハにウロボロスが絡みついたもので、これを崇拝しているのは彼らのみだ。これら特定のシンボルは、我々の尊重すべき協会(Society)のそれと似ているように聞こえる。恐らくは同一の印なのだろう。偶像の前で、ヴァーチュラたちは頻繁に“エオム”という精霊への賛辞の言葉を唱える。
また、全てのヴァーチュラは自らを“カルキスト・ヴァスキ”と呼ぶ。その神聖なる言語は我々のものに似ている。偶然の一致と言うべきか、伝説によれば巨像がアディトゥムに攻め込んだ際、カルキスト・ヴァスキは南へ逃げたという。彼は最終的にインドの地へ定住し、これらのヴァーチュラたちを子孫として残したのであろうか?
ヴァーチュラを頂点とする尊敬と恐怖は普遍的ではないらしい。ある男どもの集団が対立している ― 彼らは自身を“カーリーの子供たち”と呼び、他者は“タギー”と呼んで恐れている。カーリーの子供たち タギーはヴァーチュラに関する知識を有しており、血液を零すなどして“呪い”の餌食にならないような手段で彼らを殺している。カーリーの タギーを真似る輩もいるが、本物のカー タギーは専らヴァーチュラのみを標的にしているらしい。
一方で、ヴァーチュラは我々の対話の試みを警戒したままだ。彼らは自分たちこそが我々共通の信仰の唯一の生き残りと考えており、私たちは山師か詐欺師だとして撥ね付けた。きっとこれらの古の同胞への誠意を表すには、行動を強める必要があるだろう。
仲間から、“闇の娘”が注入の儀を生き延びたという報告を受けた。これでカーリーの子供たち タギーは存在しない偶像の使い走りとは言えなくなったわけだ。だがそれは真のタギーだけのこと ― 偽預言者の型に嵌め込まれた詐欺師どもが、我々の手回しで続々生まれつつある。
“娘”はインド全域で解き放たれ、タギーを分割するだろう。奴らが仲間割れをしているうちに征服しなければならない。捕食者を駆除してしまえば、獲物が育つ領域も増える。タギーは最早ヴァーチュラを悩ますことは無くなり、彼らは快く我々を迎え入れてくれるはずだ。
全ては順調に進んでいる。フェリンギアは上手い具合に我々の犠牲者を装ってくれた。彼の“証言”はタギーの不和を更に広げている。そこに加えて“娘”による内部腐敗。これから残りのタギーを一斉検挙し、淘汰して虐殺して収穫するとしよう。
必要とあらば、“娘”にもタギーと同じぐらい痛い目を見てもらうことになる ― その“娘”が本物であろうが、偽物であろうが。
個人的にヴァーチュラの数人から話を聞いてきた。彼らが先祖の栄光からあれほどに落ちぶれたのは無念である。彼らは確かに宗教的契約のことを思い返してはいるが、それ以上のことは殆ど覚えていなかった。転生を繰り返すたびに、彼らは徐々に精神と肉体を失いつつあるらしい。自我とサマーディを奪還する必要性(間違いなくアディトゥムのことであろう)は保っているが、彼らはこの段階では概ね退歩している ― 風に吹かれて彷徨う狂人だ。
私が話を聞いた中で、古の知識を僅かばかりでも保っていたのは1人だけだった ― ヴァーチュラの間における賢人だ。私は既に彼を他の者たちから引き離す手筈を整えた。彼の知識の名残は偉大なる協会への利益を齎し得る。とはいえ、私はこの賢人の知恵を過大評価しているのかもしれない ― それに、このカルキスト・ヴァスキの名残をいつ狂気が侵すか、分かりはしないのだ。
補遺2833-4: SCP-2833に関する追加資料、非公式な個人的コレクションから回収
補遺2833-5: 014/██/██、機動部隊ベータ-12(“砕氷船”)はロシアのクラスノヤルスク地方で正体不明のヒト型生物の死体を回収しました。以下は回収された実体の剖検報告書です。
剖検報告書SCP-2833-74
対象: SCP-2833-74
体重: 184.3 kg
身長: 1.82 m
年齢: 不明
詳細: 対象は手足を中心に、筋肉組織や骨の異常増殖を有している。DNA検査はこの個体がSCP-2833個体であることを確認した。SCP-2833-A個体は、対象の内臓の内側で発見された。対象の肉体は変異して下腹部に子宮に類似した臓器を有しており、幼いSCP-2833個体(SCP-2833-75と指定)を孕んでいた。
SCP-2833との顕著な違い故に、SCP-2833-74とSCP-2833-75は、SCP-2833の亜種として分類される予定。確認は保留中。このため、SCP-2833-75はシトラ=アキュラ合同合意条項377の対象外となる。