アイテム番号: SCP-2837-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル(2022/6/12改定): SCP-2837-JPはサイト-8129/M区画E棟の収容房Si-Typeに安置されます。SCP-2837-JP、特にSCP-2837-JP-A内部の状態は、熱的・光学的・物理的手法を用いて、常に監視された状態を保ってください。
SCP-2873-JP-A内部における物体出現に備え、専任のDクラス職員2名以上を常時待機させる必要があります。物体出現時には、可能な限り速やかに担当のDクラス職員による摂食試験を実施してください。

SCP-2837-JP。"豆腐"の概念実体を含んだ状態。
説明: SCP-2837-JPは、陶土製の鍋(SCP-2837-JP-A)、および卓上ガス調理器(SCP-2837-JP-B)から構成される1組の物品です。双方は不明な原理で接着しており、一方を取り外す試みは成功していません。
SCP-2837-JP-Bは、常に点火状態にあります。燃焼にあたり燃料の供給は必要でないと考えられており、装着されているガスボンベ缶も内部は空であることが判明しています。
SCP-2837-JP-Aは、沸騰した無色透明の液体のように見える流体と、不特定種類の内容物によって常に満たされています。このうち流体は水に近い物理的振る舞いを見せるものの、実際にはいかなる原子・分子からも構成されておらず、何らかの形而上概念が形而下物質のように振る舞う"概念実体"の一種であると結論されています。本報告書執筆時点で、この流体と対応する概念は未特定です。
SCP-2837-JP-Aの内容物(SCP-2837-JP-n)は、人類に既知の概念が概念実体として顕現した物であると推測されています。SCP-2837-JP-nの外見や性質は様々であり、実在する物体への対応度が高いほど具体的かつ実際の物体に近い性質を獲得する傾向にあることが認められています。しかしながら、SCP-2837-JP-nに対応する概念を特定することは、後述する異常性により常に不可能な状況にあります。
SCP-2837-JPの主となる異常性は、人類の持つ概念体系から特定の概念を奪取し、自身の容器内へ概念実体として抽出・顕現させる能力です。異常性の発揮されるタイミングおよび対象となる概念は完全にランダムであると考えられています。抽出された概念は人類の認知可能な概念体系から失われるため、顕現中は想起・理解が不可能です。結果として、SCP-2837-JP-nは常に正体不明の状態に保たれます。
一度SCP-2837-JP-A内に顕現したSCP-2837-JP-nの状態は、程度・所要時間の差異が見受けられるものの、典型的には以下の順序で遷移します。
- Step.1("具現化"): SCP-2837-JP-A容器内に、概念実体SCP-2837-JP-nが出現する。
- Step.2("煮込み"): SCP-2837-JP-nに、加熱状態と酷似した状態変化が生じる。軟化・融解・変色など。
- Step.3("煮崩れ"): SCP-2837-JP-nに、過加熱状態と酷似した状態変化が生じる。形状の崩壊・拡散・消滅など。
SCP-2837-JP-nの変化・消滅は対応する概念の変質・忘却を意味するようです。特にSCP-2837-JP-nがSCP-2837-JP-A内で消滅した場合、抽出元となった概念は人類の概念体系に復帰せず、そのまま失われるものと推測されています。この場合において人類が失った概念は直接的に確認できないため、その影響は概念欠如による副次的かつ複雑な二次災害によってのみ認知されるか、あるいは認知されません。SCP-2837-JP確保以前に消滅した概念の総数は不明です。
SCP-2837-JP-nの"煮崩れ"現象を防ぐ唯一の方法は「摂食」であると考えられています。人間がSCP-2837-JP-nを摂食した場合、消化器官内にてSCP-2837-JP-nは消失し、同時に対応する概念が人類の概念体系に復帰します("再獲得")。ただしこの際、摂食者の体内または周辺に何らかの副次的事象が発生する例が多数報告されています。発生する事象はSCP-2837-JP-nの対応概念に応じて様々のようであり、その法則性の解明が急がれている状況です。
補遺2837-JP.1: 実験記録の抜粋
以下は、SCP-2837-JP-nに対する実験記録の抜粋です。各実験は、被験者がSCP-2837-JP-AからSCP-2837-JP-nを匙で取り出し摂食する方法で実施されています。
フォーマット例:
被験者: [被験者の情報を記述]
対象外見: [SCP-2837-JP-nの外見を記述]
発生事象: [摂食時、被験者内外に生じた事象を記述]
獲得概念: [再獲得したと推定される概念を記述]
付記: [その他の情報を記述]
実験記録2837-JP-1:
被験者: D-11837
対象外見: メークイン種のじゃがいもに酷似した物体。既知の品種よりやや赤味がかっている。
発生事象: ほぼ外見通りの物体1つが被験者の消化器内に具現化した。被験者は味について「ほくほくしていて美味しかった」と述べた。
獲得概念: ”北海道富津郡阿空町特産ブランド阿空芋の新じゃがいも”の概念。
付記: 当該概念が煮込まれている約2日間の間、当該ブランド芋の収穫・出荷・販売業務が関係者らの無自覚のうちに放棄されており、約443万円の経済損失が生じたことが判明した。 - 飯能博士
実験記録2837-JP-2:
被験者: D-11837
対象外見: 透明なゲル状の粘膜の中に、無数の黒点が不規則にもつれ合いながら激しくぶつかり合っている物体。
発生事象: 被験者の口腔、耳鼻腔、肛門等の主要な開放部から、非異常性のユスリカ(Chironomidae)の群体が出現した。
獲得概念: "蚊柱1"の概念。
付記: 被験者は多少の心身の損耗が認められたため、一時的に実験から離脱。他に重大な影響は確認されなかった。 - 飯能博士
実験記録2837-JP-3:
被験者: D-22435
対象外見: 赤褐色〜赤橙色にゆるやかに明滅する、ヤシ科の果実に類似した硬質な球状物体。"煮込み"段階が長かったためか、一部が半融解状態にある。
発生事象: 被験者の頭上に非異常性のココナッツが出現し、落下。被験者は死亡した。
獲得概念: ”ココナッツ落下による死”の概念。
付記: 除外サイトからの報告によると、実験以前の当該概念はオセアニア諸国の年間死亡者数の上位8位以内に常に数えられる、比較的ポピュラーな事象の概念であった。当該概念は部分的な"煮崩れ"現象の影響により実在性が低下し、都市伝説に比肩するレベルまで概念的に弱化したと考えられる。 - 飯能博士