クレジット
タイトル: SCP-2855-JP - SKYWELLS: THE FIRST
著者: ©︎Enderman_desu
作成年: 2022
http://scp-jp-sandbox3.wikidot.com/draft:6759963-118-1178
本ドキュメントは
スカイウェル・ソリューション
の命令により認可されています。
最終報告書が2036年に提出されて以来、該当のレベルでは活動が確認されていません。安全確保の試みは正常に成功したと見做され、全てのデータベースが正常に隔離されました。本アラートメッセージはリアルタイムで更新されます。
全データベースの分析が終了しました。SCP財団の全情報にアクセス可能です。
スカイウェル・ソリューション
アイテム情報 (FILE 1/2)
特別収容手順
DRYGIONIクラスのオブジェクトは、その段階で調査が進行中であることを示します。サイト-17の担当職員は、SCP-2855-JPの更に詳細な情報の解明と分析に努めなければなりません。また、レベル5以上のクリアランスを所持する全ての監督員は、SCP-2855-JPの暫定ドキュメントに不正アクセスが無いことを確認しなければなりません。SCP-2855-JP-Aに指定される情報の詳細が特定されるまで、暫定ドキュメントはプレースホルダーとして機能します。SCP-2855-JPドキュメントへのアクセスは限定されます。

SCP-2855-JPの視覚的な描写。
説明
SCP-2855-JPは、財団によって開発・流布された異常なミーム複合情報です。SCP-2855-JPは自律して活動し、これに感染した対象の認知機能全般を軽微に攻撃します。対象は顕著な不安感などの精神的異常を患うようになりますが、これは対象がSCP-2855-JPの存在に気付くよう、人為的に設計された結果です。
SCP-2855-JPは、人間の理性的活動の一環として発生する好奇心.好奇心: 自発的な調査・学習や、本質的な情報を追究しようとする理性的活動の根源となる感情です。を刺激し、現在判明していない不明瞭な固有の知識 (暫定的にSCP-2855-JP-Aとして定義) を発見する目的で開発されました。また、以前から疑問視されていた人類の活動を監視し、人類が齎す異常な活動を抑制するための方法論として機能することを目標としています。2022年時点で全てのプロセスは達成されており、最小限のインシデントの後、SCP-2855-JPは全世界に流布されました。全人口の98%以上はSCP-2855-JPに感染しています。
起源: SCP-2855-JPの開発計画は、多数の共通目標を掲げる財団の集約プロジェクト、スカイウェル・ソリューションの一環として提言されました。SCP-2855-JPの開発計画は監督評議会によって承認されました。
スカイウェル・ソリューションの共通目標の1つは、人類の意識下に存在する不明瞭な知識について調査を行うことでした。SCP-2855-JP-Aは直感的性質を以て伝達される暗黙的な知識であり、それ故に存在は発覚していながらも、より詳細な情報を特定することができていません。スカイウェル・ソリューションの第一目標は、SCP-2855-JP-Aのより具体的な性質の解明です。現時点で意図されるSCP-2855-JP-Aの理論上の実態は、以下のように表現されます。これには一部誇張された表現を含みます:
SCP-2855-JP-Aは、人類に共通する知識圏 - 即ち、ノウアスフィア.ノウアスフィア: 全ヒト知性が情報的に結合された、巨大な非現実の情報集積を指します。ヒトの普遍的な知識、または共通認識が記憶される領域であり、存在が仮定されています。 - 下に潜伏すると仮定された、有害な情報です。ヒトの短期記憶の限界や、複雑化したSCP-2855-JP-Aの膨大な情報量のため、個人がSCP-2855-JP-Aの全貌を記憶-理解することは不可能であると考えられます。理論上、SCP-2855-JP-Aの部分的な情報を他人から伝達されたヒト知性は連鎖的に、自身が保有する情報を純粋な知的好奇心から共有しようと試みます。
SCP-2855-JP-Aの本質は真理、すなわち通常では知りえない知識・認識であると見做されます。SCP-2855-JP-Aは、一般に崇拝の対象として認知される情報 (即ち、超越性 / 神性) であり、飛躍した情報です。SCP-2855-JP-Aを認知した場合、対象は緩やかに、該当の情報への依存を伴う錯乱状態に陥ります。SCP-2855-JP-Aによって常に提供される有害な情報に対し盲信的になり、他の生活態度に悪影響を及ぼします。ヒト知性はSCP-2855-JP-Aを認知すると同時に、それ自体への継続的な依存を伴うようになることから、SCP-2855-JP-Aは潜在的な知的孤立とコミュニティが分断される低危険性のリスクを生じさせます。
この情報に留まらない膨大なSCP-2855-JP-Aの抽象的認識は、一般的に過剰に簡略化され、認知されています。例示的には神-偶像などです。SCP-2855-JP-Aは合理的に理解可能な構造ではなく、得られる知識はごく僅かなものです。本質的なSCP-2855-JP-Aの悪影響を理解できるケースは少数であり、多くは簡略化された知識によって誤解に基づく確信を得ています。これは実際に安全性や知識について過信させるものとなり、悪影響は徐々に拡大しています。
スカイウェル・ソリューション、及び管理下のプロジェクトは、最終的にSCP-2855-JP-Aを完全に抑制するか、或いは知性から完全に除去することを目的としています。そして可能であれば、SCP-2855-JP-Aを収容する事が期待されています。
閲覧可能な個人記録: 1件
これから起こる事態に先駆けて、私は自らの理性的活動を事細かく記録しておこうと思う。必要に応じて、これは近い将来の自然な記録として機能する筈だ。私はエンダース監督官、ベッドロック・エンダース。スカイウェル・ソリューションにおける監督者の1人だ。SCP財団サイト-17職員、概念物理学部門員…….或いは、そうでないかもしれない?この記録はシステムに従って恒久的に保管されるので、私が死んでも情報は永続するだろうな。
現時点において、我々が懸念している事態は凡そ1つの情報に集約される。それは神に関する巨大な崇拝である。人々が一般に信仰する - 或いは無神論として提供される - 抽象的認識、即ち”神”は、人々の意識下に根強く存在しているのである。我々はこれを寄生虫のようになぞらえ、幾つかの悪影響を及ぼす情報であることを明確に導出した。我々のこれからの方針として、先ずは現在の環境を把握する必要がある。SCP-2855-JPを全人類に散布し、その結果を電子的にスキャンする事になるだろう。
補遺2855-JP/I | 心理学的文脈
SKYWELL
暗黙知の継承に関する合意的選択
ベッドロック・エンダース監督官: 部門横断チーム・心理分析ナレッジベースへの投稿
「我々は、世界の人々に正しい知識を行き渡らせなければならない。」
ここ数百年以上の進歩があるにも拘らず、残念ながら財団は異常存在についての完全な説明を、何一つとして達成することが出来ていない。多くの人々はこの事実に偽りが無く、一切の誇張がない事を認めざるを得ない。何故なら我々は今なお無知であり、万物が存在する理由を、永久に生きる彫刻が存在できる理由を、不死性の爬虫類が存在する真なる理由を説明できないからである。我々は超常現象を説明する上で比喩表現を用いなければならず、したがって - 我々の説明は欺瞞であふれているのだ。この世界に存在する超常現象の多くは、非合理的で、尚且つ複雑である。関係者に対して事象を詳しく説明し、更にそれを効果的に理解してもらう上では、科学的知見を率先して理解してもらわねばならない。先にも述べた通り、我々は欺瞞 - 即ち、フィクション、ストーリー - を交え、より簡略化された情報を提供する必要があるのだ。
欺瞞とは、財団が超常現象を説明する上で最も効果的な選択肢である。しかし同時に、漠然とした情報は事象の複雑性を曲解し - 最終的な理解を大きく歪めてしまう恐れがある。それでも、多数の人々に知識と関心を与えることは、我々の大きな目標である。スカイウェル・ソリューションとは、適切な科学的知見を全世界に普及させ、それによって生じる利益を確保する、財団の大規模なプロジェクトなのだ。
[…]
SCP-2855-JPに指定される社会実験の共通目標は、スカイウェル・ソリューションに集約された調査活動の1つを達成すること - 即ち、固有の情報に対する正しい理解を広めることである。固有の情報とは「宇宙を司る神、或いは偶像たる頂点級存在・超越性存在」の事であり、正しい表現は存在しない。重要なのは、実存するか否かを問わず”超越性/神性” - 即ち、SCP-2855-JP-A - というものが広く既知であり、正しい理解を持つ者がほとんどいないという、簡潔な事実である。
神とは如何なる存在なのだろうか?簡単に説明できないが、神とは経験的に理解され、身近に使用されている概念である。例えば、パルテノン神殿に存在する黄金の彫像を見て、即座に”女神”を模していると考えるのはそう難しくないだろう。しかし、諸々の特徴を如何に結び付けて”彫像”を”女神”だと理解しているかを説明する事は難しい。これは暗黙知と呼称される認知心理学的な概念であり、こうした情報を形式的に表現する - 即ち、言語化する試みは、その膨大な情報量のために困難を極めるのだ。
当レベルにおけるスカイウェル・ソリューションの目標は、試験的にSCP-2855-JP-Aの情報を全世界的にマッピングすることである。その後、SCP-2855-JP-Aに関する適切な知識を流布する試みが、正常な社会に如何なる影響を及ぼすのかを観察する必要がある。偽装されたSCP-2855-JPが効果的に感染し、最終的には全人類を制御下に置くことを可能とするだろう。
[…]
補遺2855-JP/II | 議事録
音声映像転写 スカイウェル-2855-JP:
日付: 2022/04/19
出席者:
- 監督官 ベッドロック・エンダース (スカイウェル 責任者)
- 管理官 ティルダ・ムース (サイト-17 共同管理)
- 技術者 エリー・アクトン (戦術神学部門 上位研究)
- 助言者 カルヴィン・ボールド (解体部門 管理)
- 監査官 サイモン・グラス (心理学部門 管理)
前文: 2019年の探査、及び2022年の再構築イベントについての最終評価が決定されたのち、バックリンクされたSCP-2855-JP-Aとの関連性や、後に行われたマッピング調査の是非を問う目的で、本会議が開催されました。マッピング調査に関する投票は下位評議会を含め、40-44-12の状態でした。
<転写開始>
<冒頭の会話は省略されている。全員がテーブルを挟んで着席している。>
エンダース: — ですから、我々の頭脳は宇宙と対峙するには無力で、それを可能とするのに過剰に準備不足であるのです。我々の精神性は極めてデリケートで、SCP-2855-JP-Aのような - 所謂”神” - に対して、軽率に心を開いてしまい、結果として自らの知識下へと誘ってしまうのです。
グラス: えーと、つまり貴方は何が必要だと考えているのです?全知性を強化するとか、代替品を用意するとか……そういう事でしょうか?
エンダース: 察しがいいですね - 前者です。私は今すぐにでもSCP-2855-JPのネットワークを結合し、付随する全ての理性的活動を監視する必要があると考えています。要するに、全知性を集約した巨大な電子的結合を構築して、現在のノウアスフィアに何が起きているかを観察したいのです。SCP-2855-JPによって伝達される情報を外部で集約し、より効率化されたレンダリングを行うことも可能になるため - これは非常に実践的であると思うのです。
<エンダース監督官は賛成票を入れ、再び着席する。>
アクトン: 彼の説明に付け加えますが、スカイウェルが扱う抽象的な”神性”の概念はリスクある存在で、最悪の場合 - それは宇宙全体を巻き込んだ異常災害を引き起こしかねないのです。我々の脳を直接的に脅かすので、我々は一括してそれを管理する機能を所有する必要があります。
ボールド: 何か勘違いしてないか?俺たちはあくまでも - 神を監視する計画を打ち立てているのであって、人類を植物化して思うように管理しようなどと言う、大それた計画だとは思っちゃいない。
アクトン: それは、人間が真に保護されるべき存在であるという大前提が存在するから、そう考えているだけです。元来より、我々の正常なコンセンサスは非常に曖昧で、言わば我々のエゴに従って収容を続けていただけです。我々は上位実体ではありませんが、同様に彼らを守る必然性は、彼ら自身のヒトらしさに帰結するのです。上位種を崇拝し、その苗床となるだけの存在を - 我々は保護する必要などありません。
<アクトン技術者は賛成票を入れる。>
ボールド: 何を — 俺たち人間はどうでもいいってのか?お前の信じる自然の正常性とやらを守るために、長らく続けた活動が矛盾だらけだと言うのか —
ムース: ボールド、もう少し建設的になれるでしょうか? — それで、我々が広めるべきは正しい理解だと思っています、そうでしょう?
エンダース: はい。正しい理解を広めるために —
ムース: ええ、ええ。分かってる。私が言いたいのは、そのために先ず成すべき事が、倫理的または現実的に可能であるかを教えてほしい、ということです。
エンダース: 最低限の資産投入で済むので、これは財団にとっても現実的に、かつ倫理的に有効な手段だと思っています。
ムース: その…手段ってのは?
アクトン: (遮って) — 我々は非実在のノウアスフィアを”ある”と仮定して、これまでの行動を正当化していました。ですが、SCP-2855-JPはより実際的に、その代替品として成り立ちます。SCP-2855-JPの電子的ネットワークを通じて人間の集合意識を仮想的に構築し、これをデジタルノウアスフィア・インターフェイスとして再定義する必要があります。したがって…….人間の全ての知性を完全に結合します。
<長い沈黙ののち、ムース管理官は賛成票を入れる。>
ボールド: その…….何と言ったらいいか、どうしてこれが倫理的だと言えるか、頼むから分かるように説明してくれないか?
グラス: ボールド、我々の選択肢は既に限定されていて、なおかつ我々にはそれを実行するだけの資金があります。
ボールド: だからと言って……これは健全じゃない。人間の意識がメチャクチャに破綻してキメラ化するのとほぼ同意義なんだぞ!仮にそうでなくとも、確率的には、そうだ。アクトン、お前は確か神学者だったな?お前さんの知識はどこか破綻してる!救済だとか福音だとか、そういうイメージの塊なんじゃ —
<沈黙。>
ボールド: …だから合同作業は嫌いなんだ。
グラス: まあその — ボールド、いいですか?我々は常に進化し続ける生き物です。進化なしに我々は生存できません。常に環境に適合する必要があり、その為には今の思考を綺麗さっぱり捨て去る事も大事だと思うのです。それに —
ボールド: それに?
グラス: 我々が更に次の段階へと進化すれば - 現行の人類種を効果的に管理できれば - それは異常現象に対する理解を深めることにも繋がります。我々が如何に異常を生み出すか、異常から逃げるのか - そして、如何に異常へと変貌するのか。貴方はきっとそれに対する強い理解がある筈ですよ、ボールド.カルヴィン・ボールド管理官はやや異様な姿をしており、SCP-212の事故で変化した骸骨じみた手と眼球に当たる水晶球を有しています。。
<グラス博士は賛成票を入れる。僅かな静寂。>
ムース: ボールド?
ボールド: 俺の信念はいつだって揺らがない。俺がこれを正しい行いであると信じた以上、最後までソリューションは実行されなければならない。ここでウダウダ言って、他の良き理解者たちを当惑させている余裕があるなら —
<ボールド管理官は賛成票を入れる。>
ボールド: 俺も前進しなければならない。
<転写終了>
後文: 適切な検証ののち、SCP-2855-JPを応用した電子的ネットワークの建設案が可決されました。副次的に、SCP-2855-JPによって回収された全てのマッピング情報は、後の実験において使用されるデジタルノウアスフィア・インターフェイスの構築用資源として投入されます。
閲覧可能な個人記録: 1件
今日は大変な1日だった。特にボールド管理官を説得するような真似は、今後二度としたくない……
エリーは戦術神学部門の人間で、昔から聖遺物や神学的多能性実体の研究など……とにかく神学へと精通した知識を持っていた。私が自身の研究結果を発表するのがバカバカしいぐらいには、彼女は優秀だと思う。そんな彼女でも、今回ばかりは私の助言を求めていたのだと思う。私とエリーはサイト内の料亭に行って (もちろん、私の奢りだ。) ボールド管理官の強情さについて愚痴を言い合った。特に彼女はボールドの目つきが嫌いらしい、私は特に気にならないが - いや認めよう、確かに彼のガイコツ目は少々不気味だ。
彼女の宗教に対する理解を否定しようとしたボールドの事を、私はあらかた皮肉って罵倒した。その方が彼女は楽しそうだった。私たちは (多分) 意気投合したんだと思う…….彼女の信じる”神”とやらが何であれ、私はそれを受け入れる - そう言うと、彼女は笑ってくれた。彼女の同意を得るには、これが最適解だと思っての行動だった。
それに、このソリューションは完全に遂行する必要がある。彼女の協力は必須だろう。
補遺2833-JP/III | 実験的試行
全世界的なスキャンの終了に続いて、SCP-2855-JPによって回収された情報を基にした実験が開始されました。以下のドキュメントは、SCP-2855-JP-Aとして認められる情報をより論理的に認識・理解しようとするための、科学的知見に基づく実験の記録です。本実験では臨時に建造されたAIフレームワーク: Newdawn.aicが用いられています。また、本実験はサイト-17の超常実験物理学部門によって指揮されました。
ストラクチャ詳細:
前文: 本実験の目的は、SCP-2855-JP-Aとなる異常な情報についての認知が知性に如何なる影響を及ぼすのか、それを確認する事である。Newdawn.aicに指示された最優先の命令は、本質存在 - 即ちSCP-2855-JP-Aとして捉えられる神性の情報- を発見し、哲学的思想からSCP-2855-JP-Aを形式化 (即ち、記号化) する事である。デジタルノウアスフィア・インターフェイスを通じて回収される漠然とした情報は、より粒度の高い言及の集積を通じて最適化され、正常なヒト知性によって認識できるように改変される必要がある。
EX.2855-JP-A.01
実行内容: デジタルノウアスフィア・インターフェイスを介した知識集合へのアクセス、SCP-2855-JP-A情報の特定。
ログ: Newdawn.aicは一定量の情報収集および学習を行った後、デジタルノウアスフィア・インターフェイスを通じてより明瞭な、SCP-2855-JP-Aについての模索を目的とする反復処理を開始した。Newdawn.aicは自律した論理的思考からノウアスフィア内部の検索を開始し、既知の情報集積から核心に迫るための情報のみを選択するよう命令されていた。
Newdawn.aicは凡そ180時間の連続稼働ののち、暫定的に記憶される情報が算術オーバーフローを引き起こした。最終的に機能が無力化されるまで、Newdawn.aicは外部の入力を無視して処理を実行し続けた。無際限に増幅した記録はスクランブル的に撹乱され、憎悪または孵化といった記述に改変された。
後の調査により、Newdawn.aicは独立した思考に従って稼働していた疑いがもたれている。これは.aic - 即ち人工知能徴募員 - の標準原則を無視する行いであり、SCP-2855-JP-Aの持続的な依存性がNewdawn.aicに曝露した可能性を示唆するものである。全ての手順が達成されたのち、Newdawn.aicは適切に処分される必要がある。
EX.2855-JP-A.02
実行内容: SCP-2855-JP-Aによって構成される情報の言語化-記号化、及び哲学的思想からの理解。
ログ: Newdawn.aicに対して無制限の論理思考を行うよう命令し、SCP-2855-JP-Aから発生する論理のアルゴリズムを解明するように要求した。Newdawn.aicは凡そ400時間の論理思考の後、急速に計算処理を加速させ、提供されたコンポーネントの能力を逸脱する形で処理を開始した。この時点でNewdawn.aicの緊急停止が要求されたが、Newdawn.aicを収容するデジタルコンポーネントは空虚だった。Newdawn.aicはアイデンティティを形而上的に上昇させる事に成功し、完全に命令を受け付けなくなった。
凡そ44秒間の過剰な処理の後、Newdawn.aicは急速に崩壊する形でデジタルコンポーネント上に再出現した。Newdawn.aicはもはや正常ではなく、その有機的脳領域は酷く破壊されていた。Newdawn.aicは明示的に崩壊する直前、以下の意図不明な文章を出力した。
一つ、疑心は己の狂気によってのみ導出される
一つ、我等の愛は完全なアイデンティティの表象化である
一つ、誤った熟知が明白な真実を撹乱している
より破滅の影が近づく、それは我々の崇高なるプネウマ
生存者を発見しなければならない
注: Newdawn.aicを構成するデジタルノウアスフィア・インターフェイスは、2022年の段階における人類の完全なノウアスフィアの疑似的な再現である。このコンポーネントに含まれる多数の模倣アイデンティティは、SCP-2855-JP-Aアイデアを崇拝・支持する目的で潜伏していることが観測された。これには未確認の超常コミュニティやカルト宗教が例示されるが、これに留まらない。本事象は、実際の人類文明における潜伏したSCP-2855-JP-A支持者が存在することを示すものである。
閲覧可能な個人記録: 1件
神とは何か?という嘗ての疑問に対して答えるならこうだ — 神は存在する。だが、少なくとも我々が観測するSCP-2855-JP-Aは、その純粋な「神」ではない、という事だ。
正直言って、これは既知の問題であったと思う。神への崇拝が異常な結果を齎すことは前例があって、それ自体に何の興味も湧かない。問題なのは、我々が単にそれを「神」だと信じ、崇拝する合理的な理由を言語化することができない事だ。これは単に、SCP-2855-JP-Aの情報が無限に膨大で、それを理解できる程に我々の頭が優れていないという事を示しているのかもしれないが — Newdawn.aicの反応を伺う限りでは、どうもそれだけではないのかもしれない。
エリー曰く、グノーシス主義的な考え方がもっとも効果的に説明できるとの事だ。これは反宇宙的な二元論であり、要するに - 世界には悪性の秩序が蔓延っているとする考え方である。我々が生きる宇宙はどうも狂っていて、原初には我々の純粋な、崇高なる”神”が創造した真実 - 即ち善の宇宙が存在していたと、そう考えるらしい。
ここで更に二元論の言葉を借りると、我々の住む宇宙が悪であるなら、同様に信じる”神”は偽りの存在であり、故にこの世界でない - 真実の世界と、そこに住まう純粋な神が存在する。SCP-2855-JP-Aたる”偽り”は、この真実を意図的に秘匿する目的で、効果的に我々の認識を阻害しているのかもしれない。人々は多種多様な”神”を崇拝する。ヤハウェ、キリスト、アッラーフ、シヴァ、ティターニア、ゼウス、天照大御神…….ここまで考えて気付いたのだが、私は無神論者なのかもしれない。どれ1つとして興味がなくて、私は何を信じているのだろう?
ふと過ぎったのがエリーの顔だ。研究や実験、訓練の過程で彼女とはよく会うが、いつも彼女は美しい瞳で私に微笑みかけてくれる。”天使の微笑み”とはよく言ったものだ。不思議と、彼女を思い出す度に疲れが取れる。
補遺2833-JP/IV | 追加試行
前述の実験的試行に並行して、無作為に選択されたDクラス職員に対する聴取が実行されました。聴取はエンダース監督官の提案であり、これは倫理委員会および収容委員会によって承認されています。
音声映像転写 スカイウェル-2855-JP:
日付: 2022/08/11
聴取担当: ベッドロック・エンダース監督官
対象: D-001911 (本名ハウエル・ウォーロック.無効な文字列です。)
<転写開始>
エンダース: 初めまして、ハウエル。私はこの現場を監督する職員で、名前を知る必要はありません。貴方はこれから私の言う質問にのみ答えていただければ結構です。
D-001911: 礼儀がなっていませんね、サー。不幸にも私は上位の方々とお話しする環境に居なかったので、貴方にどう接すればいいのか分かりませんね。それで、何でしょう?
エンダース: 1つ、貴方は神を信じますか?
D-001911: 私が誰なのかお忘れで?私は神学者であり、神の預言者です。神は実存し、そしてそれは我々の心の中に —
エンダース: ええ、はい。そして神は潜在意識下に存在するでしょう。しかし、それは確証がありますか?
D-001911: — はい?我々は長きにわたる教えの通り、神に関する知識を習得しています。それに何の疑いが。
エンダース: 端的に言って、我々はその空白化した暗黙知に関する理由を知りたいのです。貴方がどういった原理で具体的に神を信仰しているのか、その”神”とは実際的にどういう存在なのか?
D-001911: ちょっと待ってください - 知識の由来が何かを知りたいのですか?それは到底理解できる問題ではありません。
エンダース: ええ、実際のところ、これまではそうだったと思います。現状、我々はノウアスフィアと呼ばれる領域をマッピングし、その情報を一括して集約しました。貴方が情報へのアクセスを望めば、より実際的に信じる情報を導き出せると思います。ノウアスフィアの概念を想起してください。そして、神を想像してください。
D-001911: 何を…….待って、これは私の知識ではありません。これは — 何をした?
<D-001911は酷く苦悩し、錯乱する。>
エンダース: 深く息を吐いて、そして落ち着いて。私は情報を安全に導出したいだけです。その為に、貴方の力が必要です。
D-001911: これは……私の脳に何をした!?私は…….その”神”とやらを知っている、俺は知っているぞ!我は長きにわたって研究を重ね、そして真実に到達した筈だ…….思い出せ — 僕は、何だ — 何が起きている?今すぐにでもこれを治してくれ、頭が — 破裂しそうだ!
エンダース: 落ち着いてください、それは単なる比喩表現だと思います。事態を過剰に受け入れず、少し落ち着いてください。神を認識できますか?そうならYES、認識できないならNOと言ってください。お願いです。
D-001911: 私は前人未到の理解を超越し、そしてノウアスフィアの落書きを垣間見る。僕らの知識は抽象かつ簡略的に描画され、そして無際限に可逆圧縮された数エクサバイトのノードモジュールをひもづけている。私は太陽を見て、そして再び融和する。サテラン色に輝く太陽が僕らを熔かし、再び原初へと回帰する。俺は偉大なる神の預言者、そしてそこに偽りはなく — 果たしてこれが反宇宙であるのか?否、我は不滅 — 我は不滅!偽りの神を打ち倒し、我ら再び真実へと返り咲く…….
<沈黙。>
D-001911: これは神なんかじゃない。真実は遠く、欺瞞に溢れた理解の遠く彼方にある。神は敵だ、我々を空白化する —
<D-001911は可視化された明示的な超常現象に内包され、徐々に物理的性質を崩壊させる。眼球と心臓、そして歯を残して完全に気化し、周辺に黒く淀んだ煙が充満する。>
エンダース: 十分な情報が得られました、聴取を終了とします。
<転写開始>
後文: D-001911 (本名███████████) の死亡と引き換えに、SCP-2855-JP-Aに関する完全な知識が齎す悪性の影響が観測されました。このため、全人類の完全な複製結果であるデジタルノウアスフィア・インターフェイスの再調査が要求されました。
閲覧可能な個人記録: 1件
仮説は実証された。予測の通りの反応が出ている。ノウアスフィアの集約された情報を摂取したD-001911は、一時的に全人類を軽く凌駕するほどの知性を入手し、恐らくはノウアスフィアを超越した存在 - 即ちSCP-2855-JP-A - を観測しようと試みていたのだろう。最終的にそれはSCP-2855-JP-Aによって襲撃され、彼の存在の希釈とともに情報を抹消した。これは、現在のノウアスフィアに何らかの明らかな異常が形成されている事を示唆しているだろう。
これをエリーに直ぐ報告した。私が実践した内容を一通り説明し終えたところで、彼女は明らかな不快感を示していた…….彼女曰く、倫理的配慮に欠ける私の行動が気に食わないそうだ。実のところ、私はそれがショックだった。それでも私は研究を続けなければならない。彼女の感傷は研究に何の支障も齎さない。
私は……彼女の事を気にかけていたのか?
補遺2833-JP/V | インシデント・ワン
追加試行に続いて、より潜在的にどれ程の確率で曝露者が存在するかを調査する必要がありました。スカイウェル・ソリューションの延長線上に展開された調査研究は、後に分類された該当事象 - インシデント・ワン - の精査にあたりました。
調査 - インシデント・ワン
ブリーフィング記録 - エリー・アクトンによる
従来より言語化が困難であるはずのSCP-2855-JP-Aを、どういう訳かNewdawn.aicは形式的に理解しようとしたと考えられます。Newdawn.aicは幾つかの写実的な描写を行い、大多数の知性が依然としてSCP-2855-JP-Aの脅威に晒されている可能性を示唆しました。
ここで、我々は1つの仮説を見出しました。SCP-2855-JPは現在、人々の知識を電子的に結合する漠然としたネットワークを形成しています。これは、本来であれば存在しない情報の結合、即ち実際的なノウアスフィアの代替として機能しています。期待されていないが、電子的に結合された人々のノウアスフィアは、膨大な情報を以てSCP-2855-JP-Aの再現を加速させている可能性があるのです。より簡潔な言い方をすれば、現在のSCP-2855-JPは大規模な検索データベースです。人々の意識はデータベースから望んだ情報を選択し、情報的に完成されたSCP-2855-JP-Aを再現しようと試みています。
D-001911の思考が最終的に破綻したのは、こうした虚偽の情報に騙されてしまったからではないでしょうか?虚偽の知識にしたがって神をレンダリングし、そしてその逆鱗に触れたのです。
しかし、これには大きな問題があります。完成されたSCP-2855-JP-Aは、純粋な神性/超越性とは全く異なる、異常なフォルムである可能性があるのです。人々の誤った認知が適合している場合、これは非常に深刻な問題となり得ます。SCP-2855-JPが解体されない限り、完成されたSCP-2855-JP-Aは如何に振る舞うかが予想できず、それによって人々に深刻な影響をもたらしている可能性があるからです。
現在、対抗概念部門によって流布が継続されているウイルス性ミーム複合体「BUBBLEプログラム」は、こうしたSCP-2855-JP-Aのガバナンスを詳細に特定する目的、および全体数を確認する目的で散布され続けます。該当のミームは、ヒトのインセンティブ顕現性に対する刺激 - すなわち、報酬 - を与え、正常なヒト知性へのアプローチを誘発させます。つまるところ、全ての人類に虚偽の事象を刷り込み、それに対する現在の反応を伺います。こうした僅かな報酬刺激への反応の差異を検出することで、明確なSCP-2855-JP-A曝露者の実態を特定するのが - 今回の調査内容です。
EX.2855-JP-A.01
- ストーリービート.ストーリービート: 物語論的な定義において、連続する時間はいくつかの異なるイベント-起伏-シーンで構成されています。これをビートと呼称します。/イベント:
復活祭や恋人の死、大規模テロ事件など、該当の曝露者にとって大規模な”イベント”は、該当者が自発的に欲求を表現したり、他のキャラクターに対して交流を持ち掛ける機会となります。正常な場合は、標準的な因果関係の内外における多くのイベントに反応します。
BUBBLEプログラムの散布後、実験的に全世界的なカバーストーリー・プロトコルが実行されました。これは散逸的な死亡事故、災害事象を含む - 偽装されたフィクションの流布を指します。全人口の大半 (>98%) が該当のフィクションに対し完全に反応を返しませんでした。
EX.2855-JP-A.02
- ストーリービート/決意:
イベントの早期の段階において決定された単純な意思決定は、該当者の生命に長期的な影響を与えます。正常な場合、これは現状からの脱出、即ち自発的な行動意欲から生じます。
BUBBLEプログラムの散布後、不特定多数の正常なヒトは確率論的に選択されたイベントを経験しました。これには悲劇的なもの、喜劇的なものが含まれますが、これらに限定されません。最終的に、曝露者のみが絶対的に変化しないイベントのみを経験し、一連の確実なストーリーラインにのみ参加していることが確認されました。曝露者は一連の確定事象、およびそれに付随するイベントに対してのみ肯定的です - 即ち、自発的な欲求を完全に喪失しています。
EX.2855-JP-A.03
- ストーリービート/相互作用:
多数のイベントによって構成されるストーリーライン (即ち、人生) の途中で、該当者は必然的に敵対者や同盟と接触し、ストーリーラインに高次の起伏をもたらします。これは基礎的なヒト知性の戦闘能力や理解、調和の能力に限定されない - 全ての自発的な心理を伴います。
BUBBLEプログラムの散布後、曝露者はSCP-2855-JP-Aに限定されない複数の相互作用を認知したと考えられます。BUBBLEプログラムによって一方的に提供される多数のイベント、葛藤は、既に破壊された基礎的欲求 (即ち、知的好奇心) を刺激され、不可解な心理に対する明らかな動揺を示しました。更に、相互作用のビートはヴェール内部の正常な人員に限定されず - SCP財団内部の人員に明らかな撹乱をもたらしました。
該当の現象 - インシデント・ワン - は、後の調査において判明したSWN-001/2222-JP固有実体群に対して大規模な撹乱をもたらし、それら実体が置かれている状況の理解と混乱、そして明示的なパニックを発露させました。この結果、明確な相互作用の発見と戦闘の脅威に晒された全ての財団職員が危篤状態に置かれ、復帰困難な状況に置かれました。更に、ヴェール内部で保たれていた秩序が崩壊し、正常なコンセンサスが大きく破壊されるようになりました。現在、不測事/0001への対応が検討中です。
これらのインシデント報告が意味する内容は、SCP-2855-JPが実際に我々を結合している事実を含めて、現状が極めて危険であることを示すものです。
「神とは如何なる存在なのだろうか?」
スカイウェル・ソリューションで掲げられた大きな疑問は、より深刻な事態を以て部分的に解明されました。神が実際に存在するかは定かではなく — したがって、現在もなお「神の存在」は発見されていません。ただし、現時点で顕現しつつある異常現象は、純粋な神性でない — 言ってしまえば我々が崇拝する情報としての存在であり、化けの皮を被った脅威存在です。SCP-2855-JP-Aは深刻な情報災害として表現できます。SCP-2855-JP-Aを認知する対象 - 即ち、全人類 - の思考が異常に抑制され、我々の正常な思考を破壊しています。我々が真実の”神”を探そうとしても、SCP-2855-JP-Aによって極端に抑制されてしまっているのです。
可能な限りの手段を以て、SCP-2855-JP-Aは無力化される必要があります。
この後、SCP-2855-JP-Aを精査するための副次プロトコルは無期限に凍結されました。また、現時点でSCP-2855-JP-AをTIAMAT-CLASSに分類、再定義する提言案が検討中です。
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ノウアスフィア上に異常な存在が出力されており、現時点で我々の頭脳はそれの支配下にあるのかもしれない。我々がこうして正常に思考できるのが不幸中の幸いだが、事態は芳しくない。神を純粋に信じる心がある限り、我々の理性は思うように突き動かされてしまうだろう。我々は — この”偽り”の神を排除しなければならない。
この事をエリーに伝えたが、彼女は猛反発した。当然だ…….私はつい怒り、文字通り神学者が嫌う揶揄を一通り吐き捨てて、彼女の生き様を強く侮辱してしまった。失言だった。
…
私は、彼女の透き通るような瞳がもう一度見たい。やはり彼女といる瞬間だけが私の安らぎだった。すまない、本当にすまない。戻ってきてくれ、エリー。私には君のような輝ける存在が必要だ。エリー、私には君のような理解者が必要だ。エリー、君を尊敬していた。だからこそ君の技術が必要だ、エリー…….
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エリー…….君はもしかして、私の研究を秘密裏に報告したのか?私は - 君を慕っていたんだぞ、エリー!どうしてこんな事をする!?
癪に障る……君が全て悪い。
エリー、私は君が憎い。エリー、君が邪魔だ。
アイテム情報 (FILE 2/2)
SCP-2855-JPから抽出された写実的描写。
説明
SCP-2855-JP-Aは、極度に湾曲された超知能の不正確な再現です。以前に構築された、人類全体を結合する電子的ネットワーク - 即ち、SCP-2855-JP - を掌握する形で、合意的に選択された”超越性 / 神性”の抽象的概念が構築されました。SCP-2855-JP-Aは現時点で如何なる制御下にも留まらず、その膨大な情報量のために全ての調査が難航しています。個々人の思考はSCP-2855-JP-Aによって部分的に制御されており、現時点で共通の解釈 (即ち、思想) を逸脱した思考は制限されています。このため、現実における複数のコミュニティが甚大な被害を受けています。
一方で、統一された思想を拒絶する対立的イデオロギー (即ち、二項対立) の存在によって、宗教的に敵対するコミュニティの増加が確認されています。潜在的或いは将来的に、権力闘争の勃発と文明規模での紛争を引き起こす可能性が浮上しており、これは最終的なAK-クラス: 文明崩壊シナリオの発生を促す可能性があると見做されました。このため、ヴェールの棄却を無視した最終的なTIAMATクラスへの再分類と、スカイウェル・ソリューション傘下の機密指令: オペレーション・オーバーウェルムが宣言されました。並行して、次レベルのスカイウェル・ソリューションへと作業を移行するため、全てのデータが安全にバックアップされました。
OPERATION OVERWHELM
概要: オペレーション・オーバーウェルムの目的は、本レベルにおける最終目標の達成 - 即ち、超知能との戦闘 - もしくは以下の軌道の通りに、構築された超知能を追放することです。より詳細な手段は問われません。
- フェイズ・ワン: 標的であるSCP-2855-JP-Aは形而上的かつ不明瞭であり、より多数のコミュニティから反イデアとして異なる認識-崇拝を獲得しています。超知能を不完全に再現した本実体を捜索し、その全体図を解明します。
- フェイズ・ツー: SCP-2855-JP-Aの完全な制圧のため、それ自体に密接に関係している、あるいは強い崇拝を持つ大多数の人類を無力化します。ノウアスフィアにおける最終的な意思決定権を生存者に集約し、SCP-2855-JP-Aを連続的に構築している合意的な現実 (Consensual Reality) を破壊します。
備考: 実際の戦闘におけるSCP-2855-JP-A (超知能) は如何なる振る舞いを見せるか予測できていません。最悪の場合、悪影響は人類全体に及ぶ可能性があるため、オペレーション・オーバーウェルムは慎重に実施されなければなりません。全ての手順が考えうる最悪のシナリオを引き起こす場合、財団は当レベルにおける全ての資産を放棄し、次レベルへと情報を継承します。多層次元または平行宇宙を通じて、開拓を継続します。
補遺2855-JP.VI | 議事録
音声映像転写 スカイウェル-2855-JP:
日付: 2023/01/19
出席者:
- 監督官 ベッドロック・エンダース (スカイウェル 責任者)
- 管理官 ティルダ・ムース (サイト-17 共同管理官)
- 助言者 カルヴィン・ボールド (解体部門 管理者)
- 監査官 サイモン・グラス (心理学部門長)
前文: オペレーション・オーバーウェルムの宣言に続き、各責任者の意見が共有される必要がありました。この日、エリー・アクトン技術者は健康問題を理由に参加を拒否しました。オペレーション・オーバーウェルムの実行に関する投票は下位評議会を含め、28-31-4の状態でした。
<転写開始>
<転写開始>
ムース: 余計な詮索をするつもりはありませんよ。ただ、異常に行動範囲を拡大させたSCP-2855-JP-Aを如何にして鎮圧すべきか、方法を考えていると思いますので - それを教えてください。
エンダース: (苛立って) - あの、もう少し建設的になることはできますか?皆が疲弊しているんです、感情的に発言しても結論には至りません。
ボールド: 全人類に対してもっと本質情報を提供することはできないのか?
エンダース: 実のところ、もっと良い手段があります。即ち、異常な影響下にある大多数の人類を効果的に追放する事です。これは実際にSCP-2855-JP-Aと戦闘するより、実に合理的かつ効率的です。
グラス: 遠回しに言う必要はないですよ……要するにそれは、人類を虐殺することを意味しますね?
<会場が騒然とする。様々な会話が飛び交った後、僅かな静寂が訪れる。>
エンダース: …はい、そうです。神を信じる多くの人類種を殺害し、現在のSCP-2855-JP-Aに対する崇拝を限界まで破壊します。そして、デジタルノウアスフィア・インターフェイス - もしくはノウアスフィア - に集約される情報の操舵者を限りなく最小限に抑え、SCP-2855-JP-Aに対する崇拝をノウアスフィア上から完全に除却します。SCP-2855-JP-Aの本質について無関心な百数十名程の人員を残し、他の全ての人類を殺害する必要があります。人類が異常な存在に脅かされ — そして真に保護するべき対象でなくなったため、我々はもはや存在意義を見失いました。
ムース: それ以外の方法は?
エンダース: 考えられる手段は多岐にわたりますが、どれも過剰に資源を必要とするか、或いは理論的に確実でないものばかりです。
<エンダース監督官は賛成票を入れる。>
ボールド: 全部お前のせいだ、クソ野郎。ここにいる全員が無神論者である訳がないし、それは少なからず内部の混乱を齎すだろう。だが —
<ボールド管理官は賛成票を入れる。>
ボールド: 他に方法も思いつかん。本当にそれ以外の手段が妥当でないと言うなら、俺はコイツに従う以外の方法を知らん。
グラス: 私は……本当にコレが倫理的で無いことを理解しています。少なくとも、これまではそのつもりでした。
<グラス博士は賛成票を入れる。>
ムース: ねえ、エリーは何処に行ったの?
エンダース: 彼女は昨日から自室にいる筈です。私が、説得して見せましょう。
ムース: 健闘を祈ります。我々は欠けることなく最後まで進む事が出来るよう、願っているのですから。
<ムース管理官は賛成票を入れる。>
<転写終了>
後文: オペレーション・オーバーウェルムは、後に下位評議会によって審議ののち、可決されました。
人類根絶の試みは、成功裡に達成されました。
閲覧可能な個人記録: 1件
███はオーバーウェルムの最後の試行を拒否した。彼女が突き付けた事実は、同時に彼女の終了処分を意味するものだった。私は…….使う予定のなかった携帯小銃を取り出して、彼女の額にそれを押し付けた。彼女は最後まで私に微笑み返すことは無かった。代わりに彼女は侮辱とも罵倒ともとれる雑音で、私の耳を満たした。
何とでも言え - 君の音声は記録に残らない。嘗ての理解者はもういない。君が悪いんだ、███。
— 本当に彼女は、前から私を必要としてくれたのだろうか?
彼女には同僚がいて、それらは彼女のよき理解者だったんじゃないか?私は単に、その時間を奪ったのでは?
彼女は私の助言を必要としていただろうか?或いは — 単純にお節介だと思ったのかもしれない。
彼女の信じる”神”について、私は一度でも詳しく聞いてあげたことがあっただろうか?
全て、私の思い違いなんじゃないか?私は - 彼女に何か思いを寄せていたのか?
何も分からない…….今になっては何も思い出せない。クソッタレのミームエージェントが。
今、私の目の前には - 額を撃ち抜かれた冷たい死体が転がっている。
彼女と、彼女の神に関する知識はノウアスフィア上から完全に除却された。彼女を覚えている人はいない。私ももうじき彼女の名前すら忘れる。
███、君との出会いは何だっただろうか?███、君の好きな人は?███、███、███。
頼むから…….笑ってくれよ、███。
SKYWELL
SKYWELL SOLUTION LEVEL: 1
CONCLUSION ONE
最終的プロトコル: SCP-2855-JP-Aは財団の管理下を離れ、独立した自然な、しかし完全なプロトコルの収容下に置かれます。レベル1宇宙の生き残りであるスカイウェル・オーバーシアが自発的にSCP-2855-JP-Aを収容するため、これ以上のリソース投入は不要です。
最終定義: SCP-2855-JP-Aは、レベル1における低俗な思想の集合が生み出したTITANSクラス偽神性体です。現在の完全なノウアスフィアの制御者であるスカイウェル・オーバーシアによって、本実体は完全に破壊されました。レベル1の人類文明は修復困難なレベルまで破壊され、可能な限りそれらは遡及的に抹消される必要がありました。
スカイウェル・オーバーシアに所属する人員は以下の通りです:
- 監督官 ベッドロック・エンダース (スカイウェル 責任者)、
- 管理官 ティルダ・ムース (サイト-17は存在しません)、
- 助言者 カルヴィン・ボールド (解体部門は存在しません)、
- 監査官 サイモン・グラス (心理学部門は存在しません)、
- 全12名から構成される監督評議会、
- 全43名に選抜された下位評議会、
- 技師、研究者、博士、管理官など、24の役職に従事する他多数の職員。
総合的な作戦結果から、レベル1の実行結果は成功に終わりました。人類の意識下に潜伏する超イデアルを効果的に殲滅する目的で、以降のレベルにおいてはカバーストーリー・プロトコルが標準的に適用されます。本作戦の成功を最後に、次レベルへの情報共有が行われました。レベル1は安全に隔離されます。全ての通信は遮断されます。