SCP-2857
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SCP-2857の正面顔写真。

アイテム番号: SCP-2857

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2857はサイト-17の標準的なヒト型生物収容室に収容されます。SCP-2857に提供できる食事は海南鶏飯ハイナンジーファンのみに制限されます。

指定された実験中、SCP-2857は最低1名の警備員の監視の下で、SCP-2857-A実例を調理することを許可されます。SCP-2857-Aを調理する際、SCP-2857は標準的なキッチン用家電・道具を備えた隣の部屋に移されます。SCP-2857-Aの食材は実験前に準備するものとします。必要な食材のリストは文書2857-Lorに詳述されています。

SCP-2857-A実例を消費した民間人には、私的に消費するための海南鶏飯の調理法を指導します。この時、レベル0クリアランスの調理師1名が講師を務めます。機動部隊イプシロン-65 (“シャドウ・ストーカーズ”) は、SCP-2857-Aの影響を受けた民間人の監視を任務とします。これらの民間人が自力で海南鶏飯を調理・購入・調達できない場合、医学的な昏睡状態に置き、点滴で栄養を供給します。

SCP-2857-Aを消費したDクラス職員に提供できる食事は海南鶏飯のみに制限されます。これらのDクラス職員は暫定的にサイト-17に在籍しています。このため、サイト-17では最低1名の料理人が海南鶏飯の調理に精通している必要があります。

説明: SCP-2857は嵇梵ジー・ファンという中国人男性の肉体を占有し、嵇氏の実子だと自称している支配的な意識です1。SCP-2857はそれ自体と嵇氏の双方に由来する記憶を有しています。また、SCP-2857は西暦2029年生まれであり、“調理法学校” (SOCA) という名の教育機関で“海南鶏飯調理学”の博士号を取得したと主張しています2

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SCP-2857が調理したSCP-2857-A実例。

SCP-2857はSCP-2857-Aの唯一既知の供給源です — SCP-2857-AはSCP-2857が調理した海南鶏飯3を指します。SCP-2857-Aと、選定された民間の屋台経営者や財団の料理人が調理した海南鶏飯には、物理的・化学的な相違点はありません。

SCP-2857-Aを摂取した人物 (SCP-2857の宿主を含む。以下“影響者”) はそれ以降、海南鶏飯 (SCP-2857-A実例を含む) のみを食べることを好み、その他の食物の消費を望まなくなります。影響者は頻繁に海南鶏飯以外の食品を“味気ない”と評し、摂取から約1時間後にそれらを嘔吐します。吐き出された食物を分析した結果、白米と“白切”4調理された鶏肉以外はほとんど消化されないことが判明しています。

影響者とSCP-2857に栄養を供給する既知の手段は、SCP-2857-A実例、非異常な海南鶏飯、点滴静脈注射のみです。記憶処理はSCP-2857-Aの異常性を打ち消すことができません。

SCP-2857は2016/██/██、シンガポールの████████ ██████████ ██ █████████から回収されました。当時、SCP-2857はここでSCP-2857-A実例を民間人に販売する店舗を経営していました。SCP-2857-Aの異常性が特定された後、SCP-2857は追跡され、財団の拘留下に置かれました。また、影響された民間人も尋問・治療のために一斉検挙されました。SCP-2857-Aの異常性の治療は不可能であったため、影響された民間人の精神に海南鶏飯を強く好む傾向を植え付けるために記憶処理薬が用いられました。

補遺2857-1: インタビューログ2857-01

回答者: SCP-2857

質問者: エージェント ハリー・リー

序: 以下はSCP-2857の異常性に関する予備インタビューである。

<記録開始>

エージェント リー: 嵇さん、何故ここに連れてこられたかお分かりですか?

SCP-2857: 何も悪い事はしていませんよ! 私は何処にでもいるような屋台の親父です。反体制派じゃありません。

エージェント リー: 我々は政府関係者ではありません。とりあえず、お名前をお訊きしても?

SCP-2857: 嵇梵博士、PhD。

エージェント リー: ふむ、その“PhD”はどの分野の博士号ですか?

SCP-2857: 海南鶏飯調理学です。いやまぁ、言いたい事は理解できます。SOCAは2016年時点ではまだ開講していませんから、あなたにはそのカリキュラムとかは分からんでしょう。

エージェント リー: SOCAとは?

SCP-2857: “調理法学校”School of Culinary Artsの略です。この地域の最も優秀な屋台経営者たちが、最高級の地元料理を作る技術を学ぶ機関です。

エージェント リー: その1つがチキンライス、ということですかね?

SCP-2857: もちろん。████年には言わずと知れたシンガポールの国民食になっています。

エージェント リー: あなたは未来から来たのですか?

SCP-2857: 運命予定説に興味がお有りですか。多世界解釈においては、私の世界はあり得る未来の1つか、もしかしたら私たちの時間軸タイムラインはもっと前の段階で分岐しているかもしれませんよ。

エージェント リー: どちらもあり得ますね。では、どういう経緯でこの世界に来たのですか?

SCP-2857: ああ、それは… あのチリクラバーどもめ! 奴らが-

エージェント リー: 失礼ですが、チリクラバーとは?

SCP-2857: ご存じない? [合間] ああ成程、今は2016年でしたっけね。ご説明しましょう。私のタイムラインでは、チリクラブの調理に関して学士以上の資格を有する者を“チリクラバー”と呼ぶんですよ。私のような学位持ちは“チキンライサー”と呼ばれます、ご参考までに。

エージェント リー: ありがとうございます。どうぞ続けてください。チリクラバーは何をしたのですか?

SCP-2857: そのぅ、奴らは私に共謀者たちを差し向けて、█████ ████5の時間異常に放り込んだんですよ。

エージェント リー: えっ、█████ ████に時間異常があるんですか?

SCP-2857: ええ、私のタイムラインでは大変なニュースでした。████年█月██日のことです。

エージェント リー: つまり、それは████年までに公共知識になるんですか?

SCP-2857: そうかもしれませんが… 物事の大いなる仕組みの中では、私はあくまでも数ある結果の1つでしかなく、必ずしも唯一のものとは限りませんよ。いやはや、あなたは本当に予定説が好きなんですね。まさか社会カルヴァン主義を信じてらっしゃるとか?

エージェント リー: 今回はこちらに質問させていただきたい。

SCP-2857: 失礼しました。

エージェント リー: とにかく、あなたが仰るところの時間異常に放り込まれた理由に心当たりはありますか?

SCP-2857: 私はリー首相を説得して、国会食堂でのチリクラブ屋台の営業許可を撤回させました。多分そのせいでしょう。チリクラバーどもは間違いなくあの件を冷静に受け止めていませんでした。

エージェント リー: 成程。時間異常が█████ ████にあるのに、あなたはどうやってシンガポール本土に辿り着いたのですか?

SCP-2857: その時間異常の特性のせいです。直に経験したから分かりますが、あれは紛れもなくアインシュタイン=ローゼン=李ブリッジの典型ですよ、特に[簡潔さを考慮し、また機密情報を含むため、編集済。完全な書き起こしは文書2857-Lahを参照 — アクセスはレベル4以上の時間異常部門職員に制限される]。私が実体の無い意識として父に憑依している現状にも、それで説明が付くでしょう。

エージェント リー: チキンライスの調理で博士号を取ったにしては随分と博識ですね。

SCP-2857: Googleのおかげです。優れた教師であり知識の伝達者ですが、どんなアルゴリズムも料理の繊細さや技巧を指導することはできません。私のタイムラインの人々にとって、料理は依然として重要な数少ない事柄の1つなんです。

エージェント リー: 成程。しかし、現状に気付いた時はどう思いました?

SCP-2857: 幸運だったと思いました。何処にも行きつけない可能性だってありましたからね。まだ私は生まれていないので、この世界では父が最も私に近い存在なんでしょう。ですが、父にはかなり迷惑をかけてしまいました。ほら、それが屋台を開いた理由です。少なくとも父は私と合体したことで利益を得られる。

エージェント リー: しかし、それは時空連続体に悪影響を及ぼしませんか?

SCP-2857: また社会カルヴァン主義者のようなことを言う! 私は時空間に別な経路を作っただけです。

エージェント リー: オーケイ、分かりました。では、代わりにあなたが作るチキンライスの話をしましょう。

SCP-2857: 喜んで。是非とも私の知識を共有したいと思います。

エージェント リー: 何故あれを食べた人はチキンライスしか食べられなくなるのですか?

SCP-2857: いいですか、一度本当に美味しい料理を味わったら、それ以外の全てはもう犬の餌です。私の海南鶏飯は一流屋台料理の頂点であり、私の世界は弱肉強食です。私たち屋台料理人は、ご先祖様のようにただ収支を合わせるばかりでなく、国会食堂での覇権を巡って戦わなければいけません。それにしても、この時代でも屋台料理人は毎日相当な汗を流して働かなきゃならないんですね。歴史は明らかにこの業界を美化してますよ。

エージェント リー: 嵇さん、あなたのチキンライスと、この時代の人々が作るチキンライスの違いを説明できますか?

SCP-2857: 博士号が証明する通り、私の料理には7年間の学術経験で得た真心がこもっています。宜しければ、試食をご用意しましょう。

エージェント リー: その手配は後日、必要なリソースが揃ってから行います。しかし、この依存症から回復することは可能ですか?

SCP-2857: 私の技巧を麻薬やタバコや連続行列待ちと比較しないでください。とは言え、SOCAの別学部にいるライバルが、自分たちの代表する料理に薬を盛る可能性はあり得ます。だからこそ、時には思い切った手段で均衡を保つ必要があるのです。

エージェント リー: 思い切った手段?

SCP-2857: 先程お話しした時間異常のことを思い出してください。あれはライバルを始末するのに割と一般的な方法なんです。学部生だった頃は、私もチリクラバーの教授を何人かあれに投げ込んで余分に単位を取得しました。

エージェント リー: 未知のポータルに人間を投げ込んだというのに、随分と落ち着いてらっしゃいますね。

SCP-2857: 当時は同調圧力と成績がそれを強いました。しかし、今は… ほら、あれが本当にアインシュタイン=ローゼン=李ブリッジなら、私はそこを生きて通過できるという証拠です。あのチリクラバーどもだって案外、時空の別な分岐タイムラインのあちこちに、ささやかな独占体制を築いているんでしょう。

エージェント リー: 我々はあなたを捕まえたのに、何故そのチリクラバーたちが自由に振る舞っていられると思えるのですか?

SCP-2857: 誰だって対処メカニズムは必要です。

<記録終了>

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