SCP-2857-JP
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アイテム番号: SCP-2857-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2857-JPは冷凍機能を備えた収容ロッカーに収容されます。収容ロッカー内部の温度はSCP-2857-JPの更なる腐敗を防ぐために常に−18℃以下に保たれます。担当職員は収容ロッカーからSCP-2857-JPが発する音が漏れていることを確認した場合、その原因を特定し、問題の処理に当たってください。

説明: SCP-2857-JPは全身に口腔のような器官を持つ身長165㎝のモンゴロイド系の男性の死体です。SCP-2857-JPは両手で顔の全体を覆ったような状態で硬直しており、顔から両手を引き離す試みはすべて失敗しています。そのためSCP-2857-JPの顔を確認することは不可能ですが、所持品や発見時の状況から宮城県██市在住の大学生の渡水衛氏であると考えられています。前述したSCP-2857-JPの持つ口腔のような器官(以降SCP-2857-JP‐1と表記)は発声することが可能ですが、声帯のような器官は存在せず、どのような原理で発声を可能としているのかは不明です。また、SCP-2857-JPが発する声を聞いた生物は嫌悪感を抱く、体調不良になるなどの傾向が見られます。

SCP-2857-JPの異常性は自身の周囲で生物が死亡した際に発現します。これは周囲で死亡した生物を全て対象としているわけではないため、正確な範囲は不明です。対象の生物が死亡してから約5分が経過すると、SCP-2857-JPの体のランダムな位置に対象の生物のものと酷似したSCP-2857-JP-1が出現します。SCP-2857-JPの体には人間のものだけでなく、爬虫類や昆虫類といったSCP-2857-JP-1も存在しています。人間の口腔のようなSCP-2857-JP-1は出現してから絶えず人名、命日、死因を発言し続けます。これは対象となった人物のものと一致しています。人間以外の生物の口腔のようなSCP-2857-JP-1は絶えず対象となった生物のような鳴き声を上げ続けます。1SCP-2857-JP-1の大きさはそれぞれ異なっており、最大のもので約50cm、最小のもので約2cmとなっています。出現するSCP-2857-JP-1の数には上限が存在しないと考えられています。前述したようにSCP-2857-JPの全身に存在するSCP-2857-JP-1は常に発声を行っていますが、全てのSCP-2857-JP-1が絶えず発声を行うため、SCP-2857-JP-1の総数が増加するにつれてSCP-2857-JP-1が発声している内容を聞き取ることは困難になります。現在、最も多くの割合を占めるSCP-2857-JP-1は昆虫類のものです。

SCP-2857-JPは宮城県██市に位置する自宅で首を吊って死亡している状態2で友人である下地氏によって発見されており、遺書のようなものは発見されていませんが、状況から見て自殺であると考えられています。その後発見者である下地氏へのインタビューが計画されましたが、下地氏は友人が首を吊っていることを見てしまったことや、SCP-2857-JP-1の発する声を至近距離で聞いてしまったことなどによって精神状態に問題が生じていたため、一時財団の保護下で治療を行い、精神状態が回復してからインタビューを行うことに決定しました。治療に要する期間は1、2か月ほどであるとみられています。

以下の実験記録はSCP-2857-JPの対象となる生物の条件を調査する目的で行われたものです。
実験記録2857-JP

対象: D-1028(死刑囚)

実施方法: SCP-2857-JPを対象の付近に設置した上で対象を規定の手順によって終了する。

結果: 対象のものと見られるSCP-2857-JP-1は出現しなかった。

実験記録2857-JP-2

対象: ハツカネズミ(Mus musculus)

実施方法: SCP-2857-JPを対象の付近に設置した上で低濃度のクロロホルムを対象に注射する。

結果: 対象のものと見られるSCP-2857-JP-1は出現しなかった。

実験記録2857-JP-3

対象: コオロギ(Grylloidea)

実施方法: SCP-2857-JPを対象の付近に設置した上で木製の棒を用いて叩き潰す。

結果: 対象のものと見られるSCP-2857-JP-1は出現しなかった。

この後も実験は継続されましたが、対象のものと見られるSCP-2857-JP-1が出現することはありませんでした。しかし、対象のものではない新たなSCP-2857-JP-1の出現は確認されており、これが実験による影響を受けたものかどうかは不明です。

追記: 治療が成功し、下地氏の精神状態が回復したため、以前から計画されていた通りインタビューが行われました。このインタビューは警察による事情聴取であると説明されています。

インタビュー記録2857-JP

<記録開始>

青井博士: それではインタビューを開始します。

下地氏: はい、よろしくお願いします。

青井博士: ではまず最初に、渡水氏とはどのようなご関係でしたか?

下地氏: 友達です。私は親友だと思っていましたが、彼がどう思っていたかはわかりません。彼は、すごく友達が多かったので。

青井博士: なるほど、ありがとうございます。では、渡水氏はどのような人物でしたか?

下地氏: すごく優しいやつでした。些細なことにも気を使えて。

青井博士: ありがとうございます。不審な行動などは見当たりませんでしたか?

下地氏: 不審な行動ですか……あ、そういえば。

青井博士: 何か心当たりが?

下地氏: あいつ、すごく真面目で、酒なんて全然飲まないようなやつだったんです。でも、突然あいつから飲みに行かないかって誘われて。

青井博士: それはいつ頃のことでしょうか。

下地氏: 確か……俺があいつを見つけた日の1週間前のことだったと思います。[俯く]

青井博士: 大丈夫ですか?一時中断することも可能ですが。

下地氏: ……ありがとうございます。大丈夫です。続けます。

青井博士: 無理はしないでくださいね。

下地氏: [頷く]それで、あいつと待ち合わせをしてた居酒屋に行ったんです。そしたらあいつはもう先に来てて、もうベロンベロンに酔っぱらっていました。そんなあいつを見たのは初めてだったので、俺、すごく不安になったんです。何か悪いことでもあって、自暴自棄になったんじゃないかって。だから、思い切って聞いてみたんです。何か嫌なことでもあったのか、大丈夫かって。

青井博士: ……それで?

下地氏: 答えは逆でした。あいつは良いことがあったから、喜んでたんです。浮かれて、普段飲まない酒に手を出すぐらいに。

青井博士: 何に喜んでいたのでしょうか?

下地氏: あいつには夢、というか成し遂げたいことがあったんです。それが実現できそうだ、とか言ってました。

青井博士: その成し遂げたいことというのはどのようなことでしょうか?

下地氏: 普段から、孤独死とかで人知れず死んでいく人達のために何かしたいって言ってたんです。誰の記憶にも残らずに消えていくなんて可哀そうだって。何とかしたいっていつもいい方法はないかって探してて。

青井博士: つまり渡水氏はそれを解決するための方法を見つけたということでしょうか。

下地氏: わかりません。酔っぱらいながらも何かを俺に熱弁していましたが、もうろれつが回っていなくて聞き取れませんでした。所々聞き取れるところはありましたが、代弁するだとか宿すだとか、もう意味が全然分かんなくて……。

青井博士: なるほど。貴重な情報をありがとうございます。今日はもうこの辺りにしておきましょうか。

下地氏: あの。

青井博士: はい?

下地氏: あいつは、渡水はどうなっちまったんですか?あんな、体中に穴みたいな……病気にしては異様すぎますし……。あとあの音は何だったんですか?色んな音が合わさったみたいな……。

青井博士: 申し訳ありません。お答えできません。

下地氏: ……そうですか。わかりました。すみません、1つだけいいですか?

青井博士: 何でしょうか。

下地氏: あまり長くは見てないのでよくわからないんですけど、あの穴みたいなやつが口みたいに見えた気がするんです。人とか、動物とかの。あと、虫?みたいなやつもあった気がして。

青井博士: ……きっと気のせいでしょう。

下地氏: そうですよね、良かった。あいつ、爬虫類とか虫が大の苦手で。自分の体にそんなのがあったら死んでも死にきれませんよね。

<記録終了>

インタビュー終了後、下地氏にはAクラス記憶処理を施し、解放しています。

インタビュー記録2857-JPにおける下地氏の発言を受けてSCP-2857-JPの異常性の対象となった人物について改めて調査を行ったところ、全ての人物が孤独死やそれと類似したような状態で死亡していることが判明しました。また、対象となった人間以外の生物については、群れを作らずに単独行動を取るような種が多く確認されています。

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