アイテム番号: SCP-286
オブジェクトクラス: Safe Euclid
特別収容プロトコル: SCP-286はサイト-19の保安収容房に留め置くものとしますが、そこでは最低でもSCP-286周辺の半径50mに開けた安全な境界を設けられるようにします。Dクラス職員のみがSCP-286と直接物理的接触をもってよく、また、承認された実験の一環としてのみ認められます。
07/19/20██更新: SCP-286での実験は今をもって追って通知があるまで一時中止とする(テクニカル・ノートTN-286-55参照) —O5—██
実験中SCP-286を360度監視できるよう監視カメラを配置してください。SCP-286が呈したすべてのシグマ状態の記録は維持管理しカタログ化するものとします。 これらの状態のアーカイブはレベル2以上のクリアランスを持つ研究員なら誰でも手にできるようにしておいてください。
03/11/20██更新: 事件I-286-5があったので、SCP-286は途切れず監視するものとし、シグマ状態の発動は即時監視司令部に報告するものとする。直接プロジェクトを管理する職務にある者以外に対しては、SCP-286のシグマ状態のアーカイブおよび関連素材についてレベル4にアクセス制限する。いかなる状況下でもSCP-286-1あるいはSCP-286-2と同定されたものがSCP-286と接触を持つのは予防するようにすること。 —O5-██
説明: SCP-286は石を彫ったゲーム盤で、一辺83cmです。これには中国のゲーム六博のものと一致する印づけがあります。回収中にSCP-286と一緒に発見された物品から見て、SCP-286は少なくとも商朝にまで遡るものですが、とはいえ直接この彫刻品の年代を決定しようとした試みはいずれも結論を得ていません。SCP-286の組成を分析したところ鉄とニッケルの濃度が高く、[編集済]のものと一致する結晶微細構造を持つことが示されました。
人類高等哺乳類がSCP-286に接触すると、SCP-286はシグマ状態を発動します。盤面に12個のコマが出現することがシグマ状態を示します。コマはSCP-286と同じ物質だと推測されいます。六つのコマは『暗く』、盤面よりも最大75%多く周辺光を吸収します。六つのコマは『明るく』、実際に照射しているより最大75%多く周辺光を放ちます。コマと一緒に盤面へ出現するのが二つの十八面サイコロで、見たところ青銅製です。サイコロはともに、一方は『明るい』コマ、一方は『暗い』コマと同様の反射吸収特性を持っています。それ以外は、サイコロは中国各地で出土された非特異的な六博一式のサイコロと同様のものに見受けられます。
また、シグマ状態によりSCP-286-1とSCP-286-2が具現化し、ゲームをはじめます。SCP-286-1およびSCP-286-2は、動作、認知、振舞い、発声の様式に一時的変容を被った人類高等哺乳類です。SCP-286-1は興奮しているように見え、動作は痙攣的で不正確であり、発声は早口で、どもり、攻撃的なものです。SCP-286-2は不活発に見え、動作はぎこちなくゆっくりであり、発声は低く、しわがれ、素気ないです。人語を解する被験体は会話をおこないますが、シグマ事象中に対戦相手とのみでおこないます。そのような対話(あるいは被験体が人以外の対戦者と向き合っている場合には独白)は無作為の諸人類語を連ねて執り行われ、言語が一度の陳述で複数回移り変わることもあります。記録されたSCP-286-1とSCP-286-2の間の会話のうち今日までに翻訳に成功しているのは45%のみです。
シグマ状態を発動した被験体はSCP-286の光に照らされた面に触れたならSCP-286-1に、SCP-286の表面の翳った面に触れたならSCP-286-2になります。
どちらの場合でも、被験体は盤の一方に着席し、SCP-286が具象化した二つのサイコロのうち一つを振ります。
サイコロが振られたら、何者か他の人類高等哺乳類がSCP-286から47m以内に出現し、被験体の対戦者(被験体がSCP-286-1の場合にはSCP-286-2、被験体がSCP-286-2の場合にはSCP-286-1)となります。この選択は最初のサイ振りの結果と相関しているようです。
出現したら、被験体の対戦相手は被験体と向き合う位置に着席し、初手に着手するでしょう。そして、ゲームプレイはSCP-286-1とSCP-286-2が交互にサイコロを振り盤上のコマを複雑な様式で移動させることで進行します。ゲームに勝ちとなるのは中央のマスに一方のコマが全て、そしてそちら側のコマだけがあるときです。 勝着でシグマ状態は終結します。
シグマ状態中には、SCP-286-1とSCP-286-2はどんな外的刺激にも、それがSCP-286-1、SCP-286-2、もしくは両者がゲームとやるのを物理的に邪魔しないのであれば、なんの反応を示しません。何事かが進行中のゲームを妨害したら、SCP-286-1かSCP-286-2が立ち上がり、多くの場合には『投了』と翻訳される文言、稀には『引き分け』と翻訳されるものを発声します。この出来事でシグマ状態は終結します。
シグマ状態が終結したら、プレイヤーがSCP-286-1あるいはSCP-286-2に指名されているのはそこまでで、コマ、サイコロ、そして被験体の対戦者はみな消滅します。 観察した被験体すべて、および同定され検査された対戦者について、SCP-286と相互作用を持ったことによる身体的な後遺症はなにも見られませんでした。しかし、すべての場合で明瞭に霊性と宗教的主題への関心の増大が見られ、これには新たな信仰体系の採用、誓戒を守る、異言、未来視などが挙げられますが、それらに限られるわけではありません。 勝者においては、この新たなる霊性は肯定的で救世主的な特徴を持つ傾向があります。敗者においては、その姿勢は黙示的な方向に傾きます。
付記1:
テクニカル・ノートTN-286-55: SCP-286が予言および/あるいは啓示と関連をもつ可能性について
漢朝(紀元前202年‐紀元前220年)の六博予言表
歴史的には、六博はただゲームであるばかりではなく、予言の方法としても用いられたものであり、盤面上の様々な地点が中国にて最初期の文献より時間経過の計上に用いられてきた六十年周期と対応しています。被験者はシグマ事象に関与した後に未来視を持つ傾向があることを鑑み、一部の研究員が唱えている説は、シグマ事象の間に指した手にはそれ自体なにか予言的意義があるものかもしれない、というものです。
記録済シグマ事象中の個別の手に意義があり得るかについては調査中であり今のところ結論を得ていませんが、はっきりしているのはどうやら勝利の達成はゲームそれ自体を越えて意義のある事象と対応しているようだということです。殊に、SCP-286-1が勝利した事例はどれも太陽黒点、太陽フレア、その他太陽活動一般の増大が激しくなるのと結びついていました。SCP-286-2の勝利は[編集済]など重大な地殻構造上の事象と関連していました。
これら事象が一方の勝利により予知されたものであるのか、それとも一方の勝利が原因となったのであるのか、それは未詳でありますから、SCP-286での実験には容認できないリスクがあることになるので一時中止となりました。
付記2:
文書TR-286-27e: シグマ事象#27中にSCP-286-1とSCP-286-2の間で交された対話の翻訳からの抜粋
前文: Dクラス被験者は44歳の白人男性であり、シグマ状態発動後にはSCP-286-1と識別された。対戦者、SCP-286-2は、今のところ同定されていないおよそ20歳のヒスパニック女性である。シグマ状態は68分間続き、そこでSCP-286-1が勝着を指した。シグマ事象の間、対戦者たちは25種の既知の言語、およびおよそ15種の未知の言語で会話した。対話の~30%が解読できないか未判明の言語によるものであり、このエピソードは記録された中でもっともよく翻訳されたものとなった。
<書き起こし開始、13:00 ████/██/██>
SCP-286-1: 汝は(ゆっくりと|曖昧に)(動く|周回する)、[翻訳不可能](物質|大地|世界)として。
SCP-286-2: (所持|所有)せよ忍耐を、(我が|我れらが)兄弟よ、そして(落ち着いた|静かな|沈黙せる)[翻訳不可能](精神|思考|頭脳)を。
SCP-286-1: [翻訳不可能]
SCP-286-2: [笑い](懊悩|不快|不興)が汝を[翻訳不可能]。
SCP-286-1: なぜ我れが汝の(罪|背信|忌み事)を[翻訳不可能]しようか。
SCP-286-2: [笑い]
SCP-286-1: 汝は我れをうんざりさせる。[翻訳不可能]な(物体|大地|世界)は我れをうんざりさせる。
SCP-286-2: 汝はその肉と皮の内に[翻訳不可能]。これが我れには楽しいのだ。
SCP-286-1: [翻訳不可能]
SCP-286-2: (動かせ|進めろ|続けろ)
SCP-286-1: いずれの(とき|瞬間|永劫)にも我が[翻訳不可能]はより近くに。この[翻訳不可能]を(照ら|輝か)(さねば|そうか|すべし)。
SCP-286-2: [溜息](動かせ|進めろ|続けろ)
SCP-286-1: 汝はあまりに(満ち足りて|心穏やかに)[翻訳不可能]なる肉の(人形|傀儡)の内に(隷従して|束縛されて|繋がれて)いる。汝は(愛|覚醒)が[翻訳不可能]と[翻訳不可能]するのか。
SCP-286-2: (動かせ|進めろ|続けろ)さもなくば投了しろ。
SCP-286-1: [翻訳不可能]
SCP-286-2: [翻訳不可能]
SCP-286-1: [翻訳不可能]
SCP-286-2: [翻訳不可能]が(物質|大地|世界)へと我れを(追放|放逐)した。[翻訳不可能]は汝よりも我れを(知っている|理解している)。
SCP-286-1: [翻訳不可能]は我れを(知る|理解する)だろう、そして(知識|理解)に(食われる|呑まれる|破壊される)だろう。
SCP-286-2: なれど、兄弟、我れは大いに近づいた。
<書き起こし終了、13:12 ████/██/██>
付記3:
事件報告I-286-5:
関与SCP: SCP-286、SCP-286-1、SCP-286-2、SCP-435-1
日付: 20██/03/11
場所: SCP-286の収容エリア、サイト-19
説明: 協定標準時05:31に、SCP-286の収容エリアの標準保安監視にてS███ S████博士が認可を受けていないのに存在しているのが発見された。博士は一時的にサイト19に割り当てられた財団の研究員であり、最近にSCP-435の研究に割り当てられた者であり。 SCP-286での試験は先行する八ヶ月にわたり一時中止となっており、この物品との活動はなにも承認されてこなかった。保安チームが派遣され、S████博士がSCP-286の収容エリアに入るところで彼女に追いついた。到着したところで保安チームは、SCP-286に割り当てられた研究員であるL██ W███博士がいて、すでにSCP-286の『闇』側に着席しているのを発見した。SCP-286はすでにシグマ状態にある徴候を示していた。両研究員はSCP-286-1およびSCP-286-2のものと一致する行動上の特異性を示していた。非認可の実験が進行中であるものと信じ、保安チームは彼女がSCP-286に着席する前にS████博士を拘束した。それに応じ、L██博士は立ち上がって声を上げたが、それはヴルガータ聖書のラテン語で『没収試合』を意味する言葉であったと同定されている。シグマ状態は05:45 UTCに終結した。いずれの研究員も彼らがどのようにしてSCP-286に影響されたのかについてなにも説明することはできなかった。S████博士の最後の記憶はサイト-19でSCP-286収容エリアの反対側にある売店にて一杯のコーヒーを飲んでいたところであり、他方でL██博士は記憶を失ったときにはオフィスでメイルを読んでいたところだったとの報告をした。
SCP-286のシグマ状態が停止すると同時に[編集済]にて突発緊急事態があったが、これは SCP-435-2が想定外に活性状態に入り、不規則かつ[編集済]に動き回って[編集済]の海盆に衝突し[編集済]を引き起こしてのことである。偶発事態435-XK-アルファが発令されたが、三分後にSCP-435-2が休息に至ったので取り消された。
注記: SCP-286の分類を今をもってEuclidに昇格する —O5-█