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認証コード…承認
クリアランスレベル5/2888-JPを確認
以下の秘匿詳細情報を開示します
- SCP-2888-JP-Þ
- R.O.P.H.E.システム
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異常性を獲得する以前の、唯一現存するSCP-2888-JP-Þの写真 (1889年撮影)
説明: SCP-2888-JP-Þは1901年から1973年までO5評議会員を務めていた7名の男女です。神経外科手術と認知療法を通じて、SCP-2888-JP-Þは SCP-001からの容貌失認状態にあります。SCP-001は奇跡論およびエリケシュ概念工学によって概念的に普遍的な死の過程と融合しているため、結果としてSCP-2888-JP-Þは死亡することも、あるいは衰えることもありません。
上記の死亡免除ステータスは、元O5評議会の独断でなされたものでした。また、「Dクラス職員の不当徴用」「親族の治療を目的としたSCP-500の私的利用」「SCP-893の人格を無視した生体サンプルの採取と、停止要請の却下」といった他多数の倫理違反と合わせて、O5評議会の行動は財団の職務に対し許容可能に正当化できるものではないという判断が下されました。これを受けて倫理委員会による"労使交渉Primary Action"が1973/07/17に実行され、機動部隊オメガ‐1("法の左手")によるサイト-01の襲撃が行われました。この際、SCP-001にO5評議会員を認識させることにより、相貌失認の解消が予期せず行われたことが判明しています。しかしその効果は一時的なものであったと推定され、結果的にその時点で致命傷を負っていた6名のO5評議会員が死亡しました。オメガ‐1は生存していた7名の捕縛と、SCP-001の確保に成功しました。その後、元O5評議会員およびSCP-001は一時的に倫理委員会が管理を行い、異常性の無力化が試みられましたが穏当に行うことは困難であるとの結論がなされました。以上のことから、元O5評議会員7名はSCP-001関連オブジェクトとして一時的にSCP-001-A-1〜7へ分類され、新任のO5評議会にも情報が開示されました。これによりSCP-001の研究はO5評議会に引き継がれ、O5-05を主導として異常性の解明が試みられました。
補遺: 1976/07/19、SCP-001のリバースエンジニアリングにより、SCP-001の作成に用いられた手法の再現に成功しました。また、その後の改良により因果操作aleakineticsを組み合わせることで、汎用的に状態を他者へ移し替える"概念付与技法Notionalization"が開発されました。以下は実験記録の抜粋です。
実験記録001-115
対象: D-001-64、D-001-65、D-001-66、D-001-67
実施方法: D-001-64が負っている右上腕部の切創を、概念付与技法によりD-001-65へと移し替える。D-001-64とD-001-65は別室で待機しており、直線距離は約5.2mである。D-001-66とD-001-67はD-001-65と同じ部屋に待機させ、特定の対象への概念付与を試みる。
結果: 成功。D-001-64の切創は完治した状態であった。D-001-65の健診結果は通常の切創との差異が見受けられず、切創は非異常なプロセスで時間経過によって自然治癒した。その後の経過観察において、両者に異常は確認されなかった。
実験記録001-131
対象: D-001-74、D-001-75 (被精神影響者での実験を目的として徴用された。SCP-1890による精神影響を受けている)
実施方法: D-001-75の精神影響を、概念付与技法によりD-001-74に移し替える。D-001-74とD-001-75は別室で待機しており、直線距離は約3.2kmである。
結果: 成功。その後の経過観察において、想定されていない異常は確認されなかった。
実験記録001-189
対象: D-001-82、D-001-83 (2級肢体不自由であり、左上肢を欠損している)
実施方法: D-001-83の左前肢欠損を、概念付与技法によりD-001-82に移し替える。D-001-82とD-001-83は別施設で待機しており、直線距離は約130kmである。
結果: 成功。D-001-83の左上肢には接合痕などは確認されず、指紋やDNAはD-001-83のものと一致した。その後の経過観察において、両者に異常は確認されなかった。
実験記録001-226
対象: D-001-96、D-001-97 (財団における業務の過程で、後天的に内部ヒューム値が0.995Hmと基準よりわずかに低くなっていた)
実施方法: D-001-97の低現実性をD-001-96に移し替える。D-001-96とD-001-97は別施設で待機しており、直線距離は約2000kmである。
結果: 成功。その後の経過観察において、想定されていない異常は確認されなかった。
上記の実験結果はO5-05により評議会に提出され、議論が行われました。以下はその際の音声記録からの抜粋です。
評議会アーカイブ記録20-0117
[途中省略]
O5-05: …これらの結果から、数千キロ単位で離れた距離での概念転送が可能であることが確認できるでしょう。私は、この概念付与技法を用いることで、異常存在が人に及ぼす被害を治療するシステムを確立したいと考えています。
O5-13: 被害をDに移すということか?
O5-05: いえ。いいえ、違います。Dクラス職員の数に特別余裕があるわけではありません。異常存在の被害者は年に1万人を越えることもあり、1-1交換では大した効果を得られないでしょう。別の対象に被害を移すという点はその通りです。私はその対象にはSCP-001-A、前のO5評議会員が適しているのではないかと考えます。
O5-02: それは…あなた…
O5-05: すみませんが先に言わせてください。前の評議会員が行ったことは許されるものではないでしょう。ですが、この案はその罰でもあるという考えはありません。実際、被害を移す対象として不死となっている彼らほど最適な者はいないでしょう。それに、運用するにあたって被害を他者に移すという手法は公表できないと考えています。偽装報告書をメインリストに登録して管理するのが妥当でしょう。SCP-001-Aの存在は隠匿されており、その点でも適しているのではないのでしょうか。
[O5-02は沈黙する]
O5-01: …異常性の被害者をどう扱うか、という問題は、我々が常に抱えているものです。収容するにしても施設を圧迫し、一般社会へ復帰させることも困難である場合が多いです。死亡事例以外で、職員が業務に従事できなくなる最も大きな要因でもあります。ファイブの案が実現できれば、決定的な解決策になるはずです。しかし、倫理的な問題があるでしょうね。
O5-05: シャウ副委員長とは話を済ませています。"持ち帰って検討する"とのことでした。
O5-07 ならばとりあえず、評議会で採決を取ってもいいな。その前に1つ訊きたいんだが、元評議会の面々に被害を移すとして、その収容はどうする?複数の異常性が混在することになれば、影響を予測して対処するのは無理だろう。
O5-05: 最近開発中の装具に転用できそうな技術がありました。収容場所とも合わせて草案をまとめているところです。
O5-07 そうか、分かった。
O5-05: 他に質問のある方は?
O5-01: …いないようですね。投票は次の会議で行います。その後に倫理委員会との協議を行いましょう。
[途中省略]
1980/07/11に開催された会議において、O5-05の発案したシステム開発の可否に関する投票が行われました。以下はその結果です。
K3E8H9
監督評議会概要
議題:
O5-05が提案した、概念付与技法により異常被害をSCP-001-Aに転移することによる治療システムの開発の是否。
評議会投票概要:
是 |
否 |
棄権 |
O5-01 |
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O5-02 |
O5-03 |
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O5-07 |
O5-04 |
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O5-05 |
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O5-06 |
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O5-08 |
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O5-09 |
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O5-10 |
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O5-11 |
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O5-12 |
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O5-13 |
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注記:
決議後の倫理委員会との協議により、システムの開発が承認されました。そのため、治療システムはコードネームをR.O.P.H.E.とし、SCP-2888-JPとして1980/12/05から開発が開始されました。これに伴い、SCP-001-AはSCP-2888-JP-Þに再分類されました。
1988/02/02、概念付与技法を使用する施設として、存在隔離施設-Aが建造されました。異常被害の転移にはSCP-2888-JP-Þ-1が割り当てられ、運用に用いられています。その後も施設の建築が進められ、2006/11/23に存在隔離施設-Gが稼働したことでR.O.P.H.E.システムの完成が宣言されました。以下はR.O.P.H.E.システムで使用されている、
SATラファエルの概要です。
SATラファエルは、R.O.P.H.E.システムの運用のため1985/10/11に財団が作成した7基の人工衛星です。SATラファエルは上空1,400kmの衛星軌道上に配置してあり、スペースデブリに偽装されています。SATラファエルの監視および隠蔽は、北アメリカ航空宇宙防衛司令部を代表とした各国の宇宙状況認識を行う機関と協力して行われます。SATラファエルの管理および操作は、対応する存在隔離施設にて行われます。
SATラファエルはSCP-2888-JP-Þを収容し、概念付与技法によりSCP-2888-JP-Þに転移した異常被害を内部に蓄積します。SCP-2888-JP-Þに付与された異常性が衛星および外部に漏洩すること、外的要因によるSCP-2888-JP-Þへの被害を防ぐため、SATラファエルには内側および外側の両方からの影響を遮断する絶対的除外装甲が搭載されています。SCP-2888-JP-Þの収容違反の兆候が確認された場合、SATラファエルは第四宇宙速度まで加速することで銀河系外への投棄を行います。
O5-05の覚書
先代のO5-01はこう語りました。「我々は道徳的に白黒ついた仕事をすることはない。それは我々にとって贅沢なことで、灰色だけが我々に許されている」。重々承知ではあると思いますが、この言葉は真実です。財団の倫理は一般のそれとは異なります。では、前評議会の過ちとは何だったのか。それは、この言葉を免罪符に用いていたことです。この言葉は免罪符などではなく、異常という怪物に対し、人間のまま戦うという決意の表れなのです。
財団は正常性維持機関であり、世界規模で異常存在の管理を行っています。その活動に際し、倫理が足枷になると考える人もいるかと思います。確かに、倫理とはある種の制限と言えるかもしれません。いっそ人の道から外れた怪物になってしまえば、何者にも囚われることはなくなるのでしょう。ですが、世界の規範となっているのもまた倫理です。倫理を忘れてしまえば、守るべき正常な世界の形さえ見失ってしまいます。灰色だけが許されている我々は、白と黒の狭間を可能な限り探りながら、人間であり続ける必要があるのです。
だからこそ忘れてはならないのは、我々が為したことも本質的には先代の評議会と変わらないということです。R.O.P.H.E.システムを7名の犠牲の元に成立させ、治療技術という嘘によってその事実を隠匿しています。我々もまた、灰色の罪を背負っているのです。1人たりとて天国に行くことはできないでしょう。