SCP-2901-JP
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風の又三郎

SCP-2901-JP

アイテム番号: SCP-2901-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-2901-JPは恒常的に自発的浮遊移動を行う事や、非実体でありルートの軌道を物理的に操作する事が出来ない点等から根本的な収容方法は存在しません。

SCP-2901-JPの出現する東北地方の太平洋沿岸地域では、一般人への流布を抑える為、自衛隊の貨物機に偽装した寒冷地仕様の財団の飛行機がSCP-2901-JPの移動に沿って随伴し、地上からの視認を阻害します。

SCP-2901-JPによって発生する偏東風の農作物への被害を防ぐ為、東北地方一帯では蒐集院農業部門が開発した寒冷耐性を有する農作物のみが育成されます。なお当該条項は蒐集院の行っていた農産物管理システムを財団が引き継いで利用しているに過ぎず、一般人が蒐集院製の種苗を更に改良する事でより寒冷地に強い農作物が出来る仕組みとなっている為、進捗具合によっては修正・廃案となる場合があります。

SCP-2901-JP-1の顕現は1993年以降観測されていませんが、再顕現の際には機動部隊による破壊措置の許可が申請されています。再顕現時、SCP-2901-JP-1が有する連鎖的空間凍結能力への対抗策としてレーザー等の高熱を発生させる兵装を軸とした地上からの狙撃作戦が計画されています。しかしながらこの計画がSCP-2901-JP-1に対しての有効打となるかは結論づけられていません。

説明: SCP-2901-JPは東北地方の太平洋沿岸地域に出現する自立浮遊型非実体です。外見上は概ね人型の黒い空間として認識され、輪郭の定まらない霧の様な状態で存在しています。SCP-2901-JPは常に赤色の光を放出していますが、人間が直接視認してもこの光がSCP-2901-JPの認識に影響を与える事はありません。逆に映像や写真で撮影した場合は赤色光のみが反映されSCP-2901-JP本体は映りません。

SCP-2901-JPは毎年6〜8月頃に出現し、周辺の空間の自然対流のベクトルを改変しつつ移動する異常性を有しています。SCP-2901-JPによって改変された大気は一貫して太平洋側から日本海側へ吹く風に変化します。この際に発生する風は異常な冷気を伴い、沿岸部上空2000mで観測された際の平均温度は-51度という結果を齎しました。しかしこれは一時的なものである為、地上での温度変化は最大でも-5度程度に収まっています。

この異常な冷気を伴った風は周辺環境の植物の育成、特に農作物に強い悪影響を齎します。SCP-2901-JPは常に移動し続けている為この異常性への曝露は一時的なものですが、毎年6〜8月にかけて岩手県や宮城県を中心とした農作物の異常な成長速度の低下や枯死等の被害が報告されており、被害規模を考慮しての総合的な経済的影響は平均約30億円に上ります。

発見記録: 1933年6月、SCP-2901-JPは財団が活動を開始する以前に日本の異常存在を管理していた蒐集院によって発見されました。第一発見者の██研儀官は当時、岩手県花巻市で不明な異常性を有する人間だと目されていたPoI-1933”宮沢賢治”の監視の任に当たっており、その過程で空中に突如出現したSCP-2901-JPに酷似した赤い発光体に遭遇、異常な速度で太平洋側へ飛翔したと報告しました。以降、東北地方全域で6〜8月にかけ異常な偏東風が観測される結果となり、当時の蒐集院上層部はSCP-2901-JPを管理しようと部隊を編成して蒐集に臨んだものの、試みは尽く失敗したと報告されています。

戦後、蒐集院から管理権限を譲渡された財団は蒐集院の手法を引き継いでSCP-2901-JPによって発生するこれらの被害をカバーストーリー(“やませ”)として発動し続けています。

インシデント-2901-JP-1: 1993年6月、東北地方に上陸した梅雨前線の活動に異常な活性化が見られた為、財団エージェントが調査を行ったところ、SCP-2901-JPが梅雨前線の低気圧と接触していた事が判明しました。これは特筆して珍しい事態では無いものの、SCP-2901-JPが自発的に沿岸部から離脱し太平洋上に移動する事態は観測史上初であった為に財団は機動部隊を-85(照照坊主)を編成し対処に当たりました。当該作戦では空気中の水分凝固剤を使用した天候の人工的な変化を起こす事で事態の鎮静化を図りましたが、実行された全てのケースにおいて実行部隊が謎の実体(SCP-2901-JP-1)の苛烈な襲撃を受け、壊滅的な被害を被った事から失敗に終わりました。

以下は、壊滅した機動部隊を-85の隊員との音声記録です。

インタビュアー: 星野博士(SCP-2901-JP担当職員)

対象: ██隊員(機動部隊を-85所属。ブラボー3に搭乗)

付記: 機動部隊を-85は15機の戦闘機及び無人高速航空ドローンで構成された部隊である。作戦当時、異常発達した低気圧による被害を防ぐ為に高度7000mを飛行していた。

<記録開始>

██隊員: こちらブラボー3。SCP-2901-JPを発見。至急応答願います。

星野博士: こちら対策本部、了解。手筈通りにこちらからの接触を極力避けつつ凝固剤を周辺に散布して下さい。

██隊員: こちらブラボー3了解。全機、散布開始。

[水分凝固剤の散布が行われる]

██隊員: ん?[暫くの沈黙]対策本部。応答願います。

星野博士: 何かありましたか?

██隊員: SCP-2901-JPの光が強くなっています。人型の黒い空間が視認できないほど強いです。当事例が今までに確認された事はありますか?

星野博士: [少しの沈黙]いえ、その様な事例は観測史上初です。ブラボー3、警戒レベル2を発令します。ドローンの一部をSCP-2901-JPの監視に回して下さい。

██隊員: 了解。ドローン3機を警戒に回し[沈黙]待て!SCP-2901-JPに変化あり!

星野博士: ブラボー3、状況を報告して下さい。

██隊員: 赤い光が消失!人型が[少しの沈黙]何だあれは、裏返った……?SCP-2901-JPが空間ごと裏返りました![強い重低音]

星野博士: もう少し具体的に説明して下さい、ブラボー3。聞こえていますか?

██隊員: は……はい、SCP-2901-JPは、周囲の空間ごと捻じ曲げた様に見えました。瞬間、周囲に明確な空間震を検知、SCP-2901-JPは[少しの間]あれは……子供?

星野博士: 何?子供?貴方達は地上7000メートル上空にいるんですよ?

██隊員: SCP-2901-JPの存在した座標に、子供が、子供が浮いています!いや待て、違う。子供のような何かだ。子供じゃない……何かが宙に浮いている!

星野博士: (隣の研究員に)更なる機動部隊の出動を手配して下さい。SCP-2901-JPに異常が検知されました。すぐに手配を!

星野博士: ██隊員。それはこちらに気付いていますか?敵意はありますか?

██隊員: [沈黙]不明です。表情は伺えませんが此方をじっと見ている様に感じられます。赤い……光を放っています。SCP-2901-JPと同種の光ですが、数段強いです!

星野博士: 他に何か特徴は見られますか?

██隊員: 人型、というか外見はほぼ人間です。至る所が透明で非常に見づらいですが、布のようなものを羽織っています。先程も伝えましたが赤い光を纏っています。[少しの沈黙]何だ…やけに寒いぞ?

[強い風音]

██隊員: [呻き声]

星野博士: ブラボー3、何があったのですか?

██隊員: 問題ありません、ただ強い風が吹いて──

[爆発音]

██隊員: 何!?ブ……ブラボー1撃墜!ブラボー1撃墜!チクショウやりやがった!

星野博士: SCP-2901-JPの仕業ですか?

██隊員: 凝固剤を散布している機体を……奴は何も挙動なんてしていなかった!おかしいぞ、何かがおかしい!

星野博士: 落ち着いてください。何がおかしいのですか?報告してください。

██隊員: 先程から温度の低下が止まりません。現在機体内部の気温は……-71度!

██隊員: それに奴の周囲の空間が揺らいでいます。常に空気が高速で奴の周囲を回転している様です。どんどん広がっています!

星野博士: [沈黙]了解しました。作戦は一旦中止。全部隊に撤退命令。すぐにそこから離脱してください。

██隊員: ……了解。これより帰還する。

[中略]

██隊員: 星野博士。緊急事態です。あれが追ってきている。

星野博士: 何ですって?

██隊員: こちらと徐々に距離を詰めつつあります!当機の最高速でもこのままだと2分後に奴と接触します!

██隊員: クソ、奴の表情が見えた……楽しそうに笑ってやがる!

星野博士: [沈黙]全部隊、本部への帰還を中断。これより仮称SCP-2901-JP-1との戦闘に入ってください。武器弾薬の使用を許可します。何としても食い止めてください。

██隊員: 了解。戦闘を開始します。

[激しい爆発音]

星野博士: 効果はどうですか?

[激しい高音の後凍結音]

██隊員: 何だこれは!何なんだこれは!!

星野博士: 何があったのですか!応答せよブラボー3!██隊員!

██隊員: [ノイズ]突然風が、風が強くなって、凍っている!周囲の全てが凍っています!全機凍結!身動きが取れません![沈黙]マズい、ブラボー1退避しろ![少しの沈黙の後爆発音]ブラボー1……ダウン。

星野博士: [沈黙]

██隊員: [ノイズ]奴が?奴の風が[ノイズ]鹿な、空気が凍[ノイズ]無いだろ!あぁ!奴が近づ[ノイズ]

██隊員: 冷た

[激しい爆発音]

[風の音]

[子供のものと思われる笑い声]

<記録終了>

機動部隊を-85との通信が途絶えた後、増援に訪れた別の機動部隊が現地に探査を目的として送り込まれました。交戦地点の周辺では空気中の水分や塵が連鎖的に凍結し、戦闘機はその場から落下する事無く留まり続けていました。その内数機は炎上していましたが、その爆炎や煙までもが空間内に凍結した様に留まっていたのは特筆すべき点です。機動部隊の隊員は全員が凍死、若しくは焼死した状態で発見されました。

SCP-2901-JP-1は機動部隊を壊滅に追い込んだ後、梅雨前線まで移動しました。SCP-2901-JP-1によって発達した低気圧は異常な冷気を伴って東北地方を中心に低温や暴風等の異常気象を引き起こし、この影響は8月下旬まで続きました。

これにより、東日本全体で農産物に突然の枯死や異常な変形が多数報告されました。特に稲への影響は深刻でこの年の米の生産量の低さは国内は勿論国外の貿易情勢にまで影響を及ぼし、各国の経済を大いに混乱させました。一連の事態に財団はカバーストーリー(“平成の米騒動”)を発動し各国の経済復興や情勢の沈静を図るにまで至りました。

補遺: インシデント-2901-JP-1の後、SCP-2901-JPの担当である星野博士はSCP-2901-JP-1を調査する目的でSCP-2901-JPの発生を目撃した元蒐集院の██研儀官を招集しインタビューを行いました。以下は当時のインタビュー記録です。

インタビュアー: 星野博士

対象: ██研儀官(元蒐集院現地調査員。1993年のインタビュー当時91歳。現在は故人)

<記録開始>

星野博士: それではインタビューを開始します。わざわざご足労頂き誠にありがとうございます。

██研儀官: えい、えい。はよう質問せい。

星野博士: それでは。貴方はSCP-2901-JPの発生を目の当たりにしていると伺いましたが?

██研儀官: その通り。儂は確と見たとも。

星野博士: 先日、SCP-2901-JPから人間らしき存在が出現する事態が発生し、機動部隊は全滅、現在も各地で多大な農作物の被害が発生しています。

██研儀官: その様だの。

星野博士: 率直にお聞きします。SCP-2901-JPの正体について、心当たりはございませんか?

██研儀官: [無言]

星野博士: 何か関わりのありそうな事柄でも良いのです。ご存知ではありませんか?

██研儀官: [暫くの沈黙]無くは無い。

星野博士: それは?

██研儀官: 儂はあの人の、宮沢を見張っとったのは知っとるな?

星野博士: はい、存じ上げております。

██研儀官: 当時、なぜ儂が宮沢を見張る事になったか。あやつには詳細は分からんが人には無い異常な何かがあると蒐集院は見ていたからでの。結果としてそれは大当たりだった訳じゃが……。まあそれは良い。兎も角あやつの事を監視しておったのだ。

██研儀官: 当時あやつは突然稲に手を加え始めた。元々農業に明るい男でな。文にも農にも長ける珍しい奴だったが、それでもあの当時の稲への執着は恐ろしいものがあった。あくまで監視していた中での話だがね。

星野博士: そんな中、SCP-2901-JPは現れた、と?

██研儀官: そう。奴は空高くに大きな揺れと共に現れおった。その時宮沢はさして驚きはしておらんかった。だが切羽詰まった様な表情をして何処かへと走り去ってしまったのだ。儂もすぐに追いかけたが、見失ってしまった。それにあの赤い光を報告するのが先だと感じ、結果として引き上げてきたという訳だ。

星野博士: PoI-1933は何故稲の改良をしていたのですか?

██研儀官: 当時、農作物の収穫量はそこまで酷いものでは無かった。稲は特に味も良く収穫量も良好だった。それこそ改良の余地が無いほどにな。それを態々弄ろうとする宮沢には何かしらの理由があると踏んでいたのだが、[少しの沈黙]事ここに至ってようやく分かった気がするのう。

星野博士: ……もしや、PoI-1933はSCP-2901-JPの出現を予測していたとでも?

██研儀官: 恐らくな。それも出現する時刻や場所、その後起きる事すら予測していたのだろう。そうで無ければ稲の改良をする理由が見当たらん。

星野博士: [沈黙]なるほど、ありがとうございます。今日はひとまずここまでとしましょう。

██研儀官: 待て若いの。

星野博士: 何でしょう?

██研儀官: 奴は赤い光を放つ子供の様な姿だったそうだな?

星野博士: はい。

██研儀官: [少しの沈黙]思い至ったわ。彼奴があの時、書き記しておった作品をの。

星野博士: [少しの間]まさか、書き記す事で……?貴方はそう仰りたいと?

[██研儀官がゆっくりと頷く]

星野博士: ……インタビューを終了します。

<記録終了>

SCP-2901-JPの詳細及び目的は依然不明ですが、██隊員の音声ログにより得られた情報がPoI-1933の作品「風の又三郎」内にSCP-2901-JP-1を想起させる人物1 が存在する事、同作品が記された時期が発生時期と一致する事などからSCP-2901-JPとの関係性があると見て調査が進められています。

またPoI-1933の有する異常性として、基底現実上に存在しない概念や生物を自身の作品の中に記し定義づける事で、基底現実上に具現化させる異常性が備わっていた可能性が浮上した為、現在PoI-1933に関連するアノマリーを再調査中です。

SCP-2901-JPは1993年のインシデント-2901-JP-1以降も毎年6〜8月頃に出現していますが、SCP-2901-JP-1の新たな顕現は現在まで確認されていません。SCP-2901-JP-1の攻撃的な異常性や残虐性、またSCP-2901-JP-1の顕現理由が不明であり、今後いつ、どこで顕現するのかを判別するか事は不可能である点から、オブジェクトクラスはKeterに留め置かれ、如何なる事態が発生しても再分類される事はありません。

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