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SCP-291-FRの沿岸沿いにパトロールを行うSCPFS アトラス。 |
アイテム番号: SCP-291-FR
脅威レベル: 赤 ●
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: 5海里(9.3km)の海上・空中排他域がポイントUbalt-291周辺に設定されています。アクティブなスクラントン現実錨を搭載したブイ11基が、そのアクティブフィールドが恒久的に排他域の表面を覆うよう、その内に常時存在するようにせねばなりません。SCP財団とスウェーデン理論研究省間の協力協定に従い、沿岸警備船HMS モルテン・ペーターセンは民間人の侵入を阻止し、ポイントUbalt-291を通過しようとするSCP-291-FRの船舶を妨害、及び/又は破壊するため、隔週で最低72時間は排他域をパトロールせねばなりません。
武装監視サイトHe-291がSCP-291-FRの地表に設置されました。機動部隊カッパ-22 ("守護天使") はサイトの防衛を担当すると共に、SCP-291-01-FR個体の協力的姿勢の維持を確実なものとせねばなりません。SCP-291-01-FR個体が財団職員に対し敵対的であることが示され、機動部隊カッパ-22がサイトHe-291の安全を確保できなくなった場合、職員は即座に Dクラス職員の供給 グェン提言の適用を停止して島を退避することになっており、機動部隊カッパ-22はプロトコル66-5 "宴の終幕" を開始せねばなりません。
残りの収容プロトコルは、SCP-291-FRの統治個体らと共に、SCP-291-FRの特別収容憲章にて平和的に規定されました。
オブジェクト: SCP-291-FR
日付: 200█/03/27
- 第一条: 財団は、SCP-291-FRに毎月23名のDクラス職員を供給し、その意のままに処理することに同意する。 2011/12/01現在では、グェン提言が毎月適用されねばならない(補遺291-b参照)。見返りとして、SCP-291-01-FRはSCP財団職員、またはその保護下にある一般民衆の安全を損なわないことに同意する。
- 第二条: 財団は、SCP-291-01-FRによるSCP-291-02-FRへの自由なアクセスを保証することに同意する。また、SCP-291-01-FRの儀式、慣習、伝統、宗教行為を尊重することを約束する。見返りとして、SCP-291-01-FRはポイントUbalt-291の封鎖を尊重し、SCP-291-FRの宇宙を離れようとしないことに同意する。
- 第三条: 財団は、SCP-291-01-FRの住民の保護を保証し、妥当な範囲内で食料、種子、家畜、家具、工具、燃料の恒久的供給を提供することに同意する。見返りとして、SCP-291-01-FRは財団職員の同伴中は異常性の利用を制限し、その科学的調査任務への協力に同意する。
- 第四条: 財団は、SCP-291-01-FR個体に対するグループ-A個体の行政的・法的な権利を認め、その任務達成への支援に同意する。見返りとして、グループ-A個体は財団の利益と科学的調査任務に対し敵対する如何なるSCP-291-01-FR個体をも追跡し、制裁を加えることに同意する。
スティーヴン・オーテン博士 - サイトHe-291 管理官
デイヴィッド・ブルーメンシュタイン - 倫理委員会 代表
カルキスト ナルヴェルセン
ヴォルタール シュクレリ・ヴァルヴェウム・フヴィトセルク
説明: SCP-291-FRは小型宇宙内に位置する85km2の島であり、そのアクセスポイント(ポイントUBalt-291に指定)はバルト海、スウェーデン沿岸の67.5海里(125km)沖に位置します。SCP-291-FRの地形、気候、生態系はバルト諸島で一般的に見られるものに一致します。SCP-291-FRから5km以上離れた物体はいずれもポイントUbalt-291地点へとシステム的に転送されるため、SCP-291-FR周辺の海、及びその先に存在する可能性がある領域の正確な地理は現時点では不明です。このことに関しSCP-291-01-FRから提供される情報は正確でなく矛盾しており、大半は伝説か寓話であることがわかっています。
ポイントUBalt-291は我々の宇宙とSCP-291-FRの宇宙間の接点を指します。ポイントUbalt-291は直径37mの球型空間異常であり、アノマリーの約1/4が海面下に沈んでいるため、比較的大きな船でも2宇宙間を問題無く航行できることは特筆に値します。
SCP-291-FRの住民は、約31,000体の異常な人型実体群(SCP-291-01-FRと総称)から構成されます。各個体は3組の補助染色体の存在により特徴づけられる異常な遺伝子構造と共に、標準的な血液型とは完全に相なれない未知の血液型を保有します。また、SCP-291-01-FR個体の大多数は極めて高度な奇跡・局所的現実改変能力を保有します。
SCP-291-01-FR個体はプロト-サーキック・カルトの分派に属する宗教を実践しています。この宗教の最も特筆すべき特徴は、SCP-291-02-FRのカルトです。SCP-291-01-FRの生活様式は主に農業系であり、あらゆる形のテクノロジー、特に電気、各種化学製品と非自然的な肥料、自動車、工業食品の拒絶を基盤とするものです。先進的な家系や氏族の間では旧型の車や発電機の使用が注目されており、財団職員に没収される前には数点の銃器も確認されていました。また、大多数の個体は、種子、各種基本工具、生贄用のヒトといった補給活動に関するものを除き、あらゆる外界との接触を拒絶します。
その政治面に関して、SCP-291-FRのコミュニティは家父長/家母長的権威の人物を中心にグループ化された、数十〜数百人までの家系/氏族の古風なシステムに分割されています。これらの氏族は名誉の問題、資源の共有、漁業・農業の領土の境界を巡って頻繁に争っています。また、島の最も保守的な一家と、最も先進的な家系(ある程度のテクノロジーの使用とSCP-291-FR外部への進出に寛容)の間には非常に暴力的な宗教紛争があります。コミュニティ全体は、コミュニティにより終身で選出され、島の最大の居留地(住民およそ5~6,000人)であるフヴィトセルクガルドのイオン・アスキン寺院に席を置く23名の人物からなる評議会に管理されています。
SCP-291-FRのコミュニティは3つのカテゴリに分けられています:
- グループ-A(386人): このグループはコミュニティにおける政治/法律/宗教的な指導者 ─ すなわち、SCP-291-01-FRの統治評議会メンバーや主要な氏族長から構成されます。非常に影響力のあるカーストであり、メンバーは”最も高潔にして清澄なる”[原文ママ]SCP-291-01-FR個体の中から選ばれています。
- グループ-B(~28,500人): 住民の大部分を占めており、大半は漁師や農民です。小規模なサブグループ(約300人)が警察として、統治評議会所属個体の直轄下で活動しています。現時点では、当該個体らは機動部隊カッパ-22隊員がSCP-291-FRの特別収容憲章の条項に基づき、住民を分断する紛争を取り締まるのを援助しています。ヴァルヴェウム・フヴィトセルク家とその同盟者達は、財団の関与が島民達に齎す利益を考えて憲章を支持していますが、SCP-291-FRにおいて最も古参かつ保守的な家系であるイヴェンガルソン家は、財団を占領勢力と見なしているようです。
- グループ-C(~2,000人): 異常能力を持たない住民です。奴隷や召使に当たる極めて低い地位のカーストであり、インドの不可触民に匹敵します。ただし、この個体群はグループ-A及び-Bのメンバーと同じ遺伝的特性と血液型を保有するため、SCP-291-02-FRへの生贄の犠牲者になった事がないことへの注意は重要です。
SCP-291-02-FRはSCP-291-FRの地理的中心に位置する、Fraxinus excelsior (ヨーロッパトネリコ) の異常な個体です。樹木の高さは約80m、幹の周長は5.5mあり、規格外ではあるものの、この種の樹木では非異常です。一方でSCP-291-02-FRは通常の根を有さず、その幹は単に不明な深度まで地面に突き刺さっている模様です。また、SCP-291-02-FRは把握性のある23本の肉質の付属器官を有しています。この器官は長さ2.8~4.3mであり、幹基部に円状に並んでいます。器官からは神経系への麻痺作用を持つ消化酵素が分泌され、獲物に巻きついて消化することを可能としています。一般的に、犠牲者が消化中に抵抗することを防ぐため、SCP-291-01-FRは麻薬植物から作られた飲食物を犠牲者に与えます。特筆すべきことに、この精神安定剤は犠牲者の身体を内部で消化するプロセスも促進します。対象がSCP-291-02-FRに捕縛される際、リラックスして落ち着くように、儀式の進行を務める司祭らがテレパシー的な暗示を用いることもあります。
SCP-291-02-FRはヒトを専食し、前述した付属器官を用いた、生きた健康なヒトの消化によってのみ栄養を得ています。これまで代替合成食品や各種動物、ヒト死体、[編集済 – レベル4/291クリアランスが必要です] (補遺291-c参照)、SCP-291-01-FR個体を用いてSCP-291-02-FRに給餌しようとしたものの、その全てが失敗に終わっています。
約20人の消化に1ヶ月ほどの時間がかかります。定期的または十分に給餌されないと、SCP-291-02-FRは数日間萎れます。SCP-291-FRの過去の歴史を分析したところ、かつてSCP-291-01-FRは生贄を最大限自給自足するため通常人類に生殖を強制し、それによってSCP-291-02-FRのニーズに応えていたことが判明しました。1980年代にはこうした人々のほぼ全員が悪性インフルエンザの伝染で亡くなったため、100年以上に渡ってSCP-291-01-FRが我々の宇宙への最初の補給遠征に乗り出すこととなりました。
SCP-291-01-FRのコミュニティはSCP-291-02-FRを崇拝しています。SCP-291-02-FRは崇高なるカルキスト・イオン ─ ほとんどのサーキック・カルトにより崇められる準神性存在 ─ の化身と見なされており、そのため生神として神聖視されています。また、SCP-291-01-FRの住民達はSCP-291-02-FRとの共生関係を有しているようです。事実、SCP-291-FRの初期収容中にSCP-291-02-FRが食料源から遮断された際には、住民の全体的衰弱と異常能力の喪失が確認されました。数日後、およそ[編集済]名の死亡が住民内で確認されたため、倫理委員会は機動部隊カッパ-22とSCP-291-FR割当研究員に、SCP-291-01-FRの統治個体との交渉に入らせました(詳細については補遺291-aの文書a1: 収容報告を参照してください)。
補遺291-a: 歴史
SCP-291-FRは[編集済]事案の結果としてスウェーデン海軍により発見されました。この事案では、バルト海の小さな港村らに住む何十人もの民間人が数ヵ月間に行方不明になったと報告されていました。
199█/09/04、失踪事案に関する複数の港や沿岸の村々で確認された不審な漁船についてのスウェーデン海域の報告を受け、沿岸警備船HMS モルテン・ペーターセンが介入。発見した船舶が命令に従うことを拒否したために暫く追跡した後、沿岸警備船は最終的にポイントUbalt-291の端で船舶を見失う。スウェーデン理論研究省はアノマリー周辺の保安境界を迅速に確立した後、財団の支援を要請。
199█/09/05、SCPFS アトラスがポイントUbalt-291を通過し、SCP-291-FRの偵察・観測を目的とする第一任務を開始する。住民達はSCPFS アトラスの到着時に内陸へと逃げ、多くの放棄されたSCP-291-FRの村が探査される。この遠征中、機動部隊カッパ-22("守護天使")分隊が砂浜で遊んでいたSCP-291-01-FRの幼年個体3名の捕縛に成功する。この個体らはその後、尋問のためにアトラスへと移送される。尋問中に捕縛個体らは行方不明になっているバルト海の民間人らがSCP-291-02-FR付近にいることを認めたため、人質回収任務が設定される。
199█/09/10、機動部隊カッパ-22の隊員らがSCP-291-02-FR付近まで空輸される。SRA装備とオカルト交戦時戦略、重兵器と少なからぬ運の要素のおかげで、機動部隊カッパ-22はSCP-291-02-FRの捕縛から人質を回収して脱出させつつ、その周辺に境界線を確立することができた。作戦は部分的にしか成功しなかった ─ アトラスの医療職員は、誰一人として回収された人質達を生かし続けることができなかった。機動部隊カッパ-22の死傷者はKIAが2名([編集済]の1件を含む)、MIAが2名、軽傷4名であった。SCP-291-01-FR側の死傷者はこの時点では不明である。
この後、アトラスと機動部隊カッパ-22はSCP-291-FRの宇宙から脱出。11基のスクラントン現実錨とスウェーデン海軍の軍艦による封鎖がポイントUbalt-291周辺に敷かれる。SCP-291-01-FRがポイントUbalt-291の反対側から反撃を試みるも、この配置のおかげで容易く撃退される。
199█/09/15、SCP-291-01-FR グループ-Aの代表団がポイントUbalt-291の前の白旗の下に現れ、交渉に入る意思を述べる。個体らは即座に捕縛され、アトラスに移送されて尋問を受ける。医療報告は、この個体らが問題のある健康状態にあったことを指摘している。特に、急速に進行する急性筋障害、脂肪・筋肉量の減衰、腎不全、重度の貧血の診断が下されている。また、個体らはバルト海の民間人回収任務中に機動部隊カッパ-22に確認されたいかなる異常性をも示さなくなっていた。
尋問において、個体らはコミュニティが健康なヒトの助けをかりてSCP-291-02-FRに給餌し、また財団の援助と慈悲と引き換えに協力を取り付けることが不可欠であると供述した。またSCP-291-02-FRの絶食が住民の全体的衰弱を引き起こし、老年個体や乳幼児の間で多くの死を齎したことにも言及している。沿岸の村へと派遣された機動部隊カッパ-22分隊は彼らの主張を確認し、およそ100名の遺体を報告した。
1999█/09/17、O5司令部からの覚書でSCP-291-02-FRに対する毎月のDクラス職員の供給が仮認可され、SCP-291-01-FRとの平和的交渉を実施するよう命令される。SCP-291-FRの収容・研究プロジェクトが倫理委員会管轄下に置かれる。
199█/10/12、SCP-291-FRの特別収容憲章が財団とグループ-A個体群の間で署名される。
ポイントUbalt-291の位置を示す15世紀の航海図。
前記: 以下の文書は、紀元17世紀~18世紀のデンマークの歴史家である”キンブリのボイオリクス”により著された手稿、”北方史(De Septentrionalis Chronicae)”からの抜粋です。この文書にはSCP-291-FRの存在への、最初期の書面による言及が記されています。
オジルモーク・イオン ─ アディウムの祭司王にして遍くナルカの父 ─ が遥か遠くメディアやアッシリアの領地へと彼のMekhaneに対する十字軍をお連れになった時、預言者イヴァンガルは大いなるスヴェーアの海岸へと旅されていた。イヴァンガルはその地に住むヴァリャーグの未開人共に、ナルカの奇妙な信仰の神秘を教えるのだと宣誓していた。群衆の驚愕する眼前で、預言者は御主イオンの名の下に数えきれないほどの奇蹟と驚異を実演して見せ、彼の教えに従うべく大勢の参拝者達が集まった。大勢のヴァリャーグが先祖の神々を捨ててイヴァンガルの弟子となった。預言者は活動が上手くいったことに満足すると、アディウムの祭司王に相応しい祭壇を建てることのできる場所を探し始めた。
弟子達とともに、彼はカーフ・ヴァスル ─ その名は”水の家”を意味する ─ へと赴いた。そこはヴァリャーグが彼らの海神達の栄光のために寺院を建てた場所だった。そこで、彼はヴァリャーグの祭壇を倒し、彼らの神木を伐採して、自身と弟子達がナルカの教えに従い信仰を実践できる生きた聖堂を建てることにした。
しかし、崇敬なる預言者はヴァリャーグの神々の怒りを買ってしまった。何故ならば、彼が祭壇を倒し、神木を伐採したからである。嫉妬深き神々は、彼が外国の野蛮なる神に益するために自身らの信徒達を奪い取ったのを見て、日々煮えくり返っていた。したがって、ヴァリャーグとその神々はイヴァンガルの弟子達を異端者と宣言し、以降彼らを亡ぼそうとした。イヴァンガルが回心させた者達の多くが、ヴァリャーグの獰猛な神々の矢や斧の元に斃れ、殉教していった。捕らえられた信者達は残酷な供犠会にて彼らの神への供物として捧げられ、そこではワインと血に酔った群衆達がイオンの名を冒涜し、イヴァンガルの破滅を誓った。
イヴァンガルはこれを見てたいそう悲しまれた。あらゆる食物を受け付けず、喪服を着て、恥を隠すために顔をヴェールで覆った。絶望を克服した彼は、心からの、熱の籠もった嘆願でイオンに訴えた。
”父よ、私は貴方の名において、貴方の如何なる子らよりも遠く西方へと旅をいたしました。ヴァリャーグをナルカの信仰へと回心させましたが、あの野蛮人達は貴方の名前を賛美し、貴方への生贄を捧げておりました。私は彼らの堅木と切石でできた偶像を投げ倒し、そして今や彼らは脂肪と肉と血の生ける祭壇の周りで貴方を崇拝しております。私はその生涯を通して貴方の戒律を遵守し、貴方の法に従いましたが、貴方は私を、私が集めた貴方の群れが西の異教の狼共の牙や爪の下に散らばりゆくのを見るやもしれないことを、忘れてしまわれたというのでしょうか? 今や私は群れなき羊飼いです。我が主よ、私を助けに来てください。貴方の民に力を与えてください。足元にあるヴァリャーグの残酷な神々を踏み潰してください!”
イオンは下僕の祈りと悲嘆をお聞きになり、その心は野蛮人共がイオンの信徒に向けたものと同等の怒りで満たされた。彼は直接カーフ・ヴァスルに現れると、その場でイヴァンガルを抱えあげ、父が息子にするように彼を抱きしめられた。
”善良にして忠実なる下僕よ”、彼は言った、”私はお前の嘆願を聞き、我が心は怒りに満たされている。安心せよ、私はヴァリャーグの悪行を罰しよう。我が寺院は彼らにとって畏怖と驚異の対象となるだろう。私はお前の権威を彼らの後世の子供達の子供達の子供達のそのまた子供達の上に置く。彼らはお前の子孫を敬い、畏怖と崇敬を以てしてお前の名前を崇めるであろう。”
これらの言葉とともにアディウムの祭司王はそこから遠くないトネリコの若木に近づき、枝を折ってイヴァンガルに託した。
”この枝に我が霊を置いた。我が祭壇の足元へと行き、これを植えよ。養い、成長させ、お前が私にするようにこれを忠実に崇拝せよ。下僕達が我に救いを求め手を差し伸ばす時、イオンは彼らを捨てたなどとは言われぬためだ。この日から私はお前とその弟子達に力を与える。お前はもはや言いなりになることも、恐怖を感じることもなく、勝利に向けて行進するのだ。”
イヴァンガルはイオンの名を祝福し、供物を焼いて捧げた後、正確に彼の指示に従った。約束された通りに祭司王の霊は彼とその弟子達に力を与え、もはやヴァリャーグの剣の恐怖を感じることはなかった。異教徒達の偶像と魔術はイヴァンガルとその弟子達に対抗することができず、かつて狩っていた者達の神的優勢の下に打ち砕かれた。彼らは全てを失った ─ イオンが温かな血と脈動する肉からなる生きた神であるのに対して、ヴァリャーグの偶像はただの木と磨かれた石の彫像に過ぎなかったからである。これがイヴァンガルがヴァリャーグの神々にラグナロクを齎したいきさつである。預言者の御業が終わった時、ヴァリャーグの3分の1がその足元に斃れていた。弟子達は更に3分の1を奴隷にし、残った3分の1は彼の影に畏怖して跪き、彼に敬意を払うしかなかった。
イヴァンガルは奴隷となった野蛮人共をイオンへと捧げた。彼が王座から投げ落とした異教の偶像達については生贄とし、弟子達とともにその霊を喰らった。したがって、ナルカの教えは崇敬された ─ 肉は霊となり、霊は肉となる。
補遺291-b: 特別収容プロトコルの更新
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日付: 01/07/200█
件名: Dクラス職員について
管理官様へ。
私に課せられた多数の法的制約のために、人事部門が頻繁に供給問題に対処せねばならないことはご存知でしょう。貴サイトは年間276ユニットも消費しており(それもたった1つのアノマリーに費やされていることを申し上げます)、これはヨーロッパ地区内での我々の年間リソースのおよそ██%を現在占めています。参考としてですが、我々の話し合っているこの記録は財団の他の収容プロジェクトを遥かに上回るものです。全サイト、支部、部門のどれよりもです。よって私と同僚達は貴方がたの担当しているアノマリーの性質を調査し、貴サイトは優先事項ではないと結論づけました。
このように貴方がたへの物資を断ち切ることが研究機会の無視できない損失のみならず、遺憾にも貴方がたが担当するアノマリーの損失を引き起こすのは私としても理解しています。ですが、我々は貴方がたより遥かに重要な他の収容プロジェクトのニーズにも応えねばならないことを思い出していただきたい。
このため、残念ではありますが、今年度末までに低コストな解決法を見つけられなかった場合、貴サイトへの供給の大幅な削減 ─ おそらくは中止 ─ を余儀なくされることをお知らせさせていただきます。
心より。
パーシヴァル・J・ベラミー
人事部門 Dクラス課 副管理官
前記: サイトHe-291へのDクラス職員の供給に関する上記問題に次いで、O5司令部は200█/07/15にSCP-291-FRに関する代替収容法調査委員会Le Comité de Recherche de Confinement Alternatif(CRCA)を設立しました。CRCAのメンバーの大多数はサイトHe-291の科学職員と管理職員、ならびに財団倫理委員会メンバーであり、その目的は名称の通り、SCP-291-FRの収容に対する代替解決策を見つけ出し、財団の人的資源とサイトHe-291監督下にある実体群の完全性の双方を維持できるようにすることにありました。200█/10/10、何ヶ月にも及ぶ調査と議論の末に、グエン博士はついにCRCAのメンバーらに実行可能な解決策を提言することができました。
[…] CRCAの皆さん、
”長期的に持続可能な形でSCP-291-02-FRに給餌する方法をついに発見した”とお知らせできることを心から誇りに思うとともに、深く安堵してもいます。
この中にはSCP-███-██について耳にしたことのある方がいるかもしれません。これは財団研究員がラボで作り出したSafeクラスオブジェクトであり、職員の間ではあまり知られていません。オブジェクト独自の異常性は、簡潔にまとめるとヒト組織含むいくつかの生体組織の複製・クローン作成です。この特性から、SCP-███-██は危険な任務中に負傷してしまった職員の移植用皮膚片や[編集済]の作成といった医療目的にこれまで使用されてきました。
私のチームが関心を向ける以前、SCP-███-██は限られたサイズかつ、非常に少量のサンプルしか生成できませんでした。しかし長い時間をかけて、私とその研究チームは初めて生存可能なヒト被験者の複製に成功しました。この結果の改善に向けた研究は日々進歩しており、最新の予測によればわずか数ヶ月でSCP-291-02-FRへの定期的かつ持続可能な形の給餌が可能となります。最も前向きな報告では、現在から202█年の他の収容プロジェクトにおけるSCP-███-██の異常性の使用すらも見越しています。手短に言えば、我々はD-クラス職員の無尽蔵な供給源を作り出す第一歩にあるのです。 […]
この演説後、SCP-291-02-FRの収容手段としてのSCP-███-██の利用はCRCA、倫理委員会、O5司令部のメンバーらによって正式に承認されました。ただし、他の収容プロジェクトへの利用は拒否されました。SCP-291-FRの特別収容プロトコルはこれに応じて改訂されました。
補遺291-c: アクセス制限 – 認証レベル4/291が必要です
プロトコル-12に関する覚書
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申請 第7010号
対象: SCP-291-FRの特別収容プロトコルの更新
日付: 200█/10/15
サイトHe-291のレベル4職員達へ。
この覚書に入る前に、我々のモットーの第三原則である”保護”について簡潔に思い出させておこうと思う。この原則は、我々が異常存在から防護することを誓った人類種のみならず、我々が担当する異常な物品、現象、実体をも指している。我々にはこれらの存在を保全し、その完全性を保護する義務がある ─ これは、こうしたアノマリーが呈する科学的関心のためだけでなく、道徳的・倫理的な理由のためでもある。
SCP-291-FRの初期収容はこの原則に違反していたというのが総意だ。我々の束の間の無知は、何千人もの自我と知性を備えた人型実体群を死へと誘った。二度と繰り返してはならぬ過ちだ。重要な収容プロジェクトは僅かな消費できる人的資源を独占し、それゆえ我々は代替品を見つけねばならなかった。これがグエン提言が作られたいきさつであり、皮肉ながらも任務の遂行を可能とするには必要かつ効果的な解決策であった。
だが、いまだかなりの問題が残っている。
グエン提言はデコイだ、財団職員と倫理委員会を安心させるためのカモフラージュでしかない。次の3つの理由により、この提言は最終的にはプロトコルから除外されることとなった。
- 危険性: SCPオブジェクト同士のクロスは、未だに絶対的なタブーの1つだ。SCP-291-02-FRのようなほとんど理解されていない実体が、異常物品で作られた人型実体との接触にどのように反応するかを職中に発見する危険は冒せない。
- 有効性: 何度かの初期成功の後、グエン博士とそのチームがSCP-███-██で得た生成物は、最終的には極めて破滅的であることが実証された。得られたヒト被験者 ─ それがヒトと見なせるものと仮定して ─ は全く生存可能ではなかった。その生体組織は作成の最終段階からわずか数時間で壊死を起こして分解する。これまでのところ、グエン博士は彼らを長期的に生存させ続けることができていない。
- 費用: ユニット当たり6桁の金額、それもこのユニットは製造されたものの実質的に無価値だったものである。
SCP-291-FRの保護を確実なものとするため、我々は再び別の解決策を見つけることを余儀なくされた。
君達の中にはプロトコル-12、一般市民からのDクラス職員の徴収について耳にしたことがある者がいるかもしれない。いいや、それは伝説ではない。ああ、我々はかつてそれを使ったことがある。そしてだ、我々は再びそれを用いてSCP-291-FRの収容ニーズを提供することに決めた。
これが、200█/01/01現在、サイトHe-291の人事部門がDクラス職員の月例徴収を独自実施している理由だ。欧州パートナーの医療当局との合意に基づき、様々な医療施設の、回復見込みなしの昏睡患者、末期疾患晩期の患者、安楽死または幇助自殺志願者の中からDクラス職員が選ばれている。この処置はSCP-291-FRの研究プログラムの完了(201█/12/31)まで有効であり、その後の継続はO5司令部による年次投票により決定される。
こうした処置が君達には非道徳的であったり、怪物的なように見えるかもしれないことは理解している。だがこのことを考慮したまえ ─ こうした人々は死に瀕している。彼らは自ら死を選んだか、死の間際にある者達だ。何千人もの老若男女の生存は、死の運命にある儚い少数の命を犠牲にするだけの価値はある。
確保、収容、保護
送信元: pcs.192ehetis|neto.s#pcs.192ehetis|neto.s
宛先: o5-5secreteriat@███████████.scp
日付: 16/10/200█
件名: 辞任について
拝啓
私と同僚達に送られた覚書を確認しましたが、残念ながら財団が支持すべき倫理標準に関する私の考えとは相なれないと考えていることをお伝えせねばなりません。
貴方がこの役職をよこした時、私に保護することを誓わせたのと同じ民間人を、例え死にかけていたり希死念慮を抱いていたり深刻な昏睡状態にある者だとしても、何も知らず犠牲にせねばならないなどとは契約書には書かれていませんでした。事実、私からしてみれば、小規模な異常団体の生存は、無実の人間に対する犯罪的搾取を正当化するには不十分です。
こうした理由のため、私はサイトHe-291管理官としての地位から辞任することを申し上げます。貴方が私の代わりを見つけるまでの間は、秘書のフォジェロウス博士が暫定的に仕事を引き継いでくれます。
最後に、各種管理問題を解消し、クラスC記憶処理剤の錠剤を500mg分くださるよう (よければ注射器はやめてください、瘢痕化にはウンザリしています) 、なるべく早めに連絡をお願いします。私を再割当するか、市民生活へ再統合するか、C/Dクラスへと降格するか、終了するかに関しては貴方にお任せします。
敬具
サイトHe-291管理官辞退予定者
スティーヴン・オーテン博士