アイテム番号: SCP-2916-JP
オブジェクトクラス: Euclid
SCP-2916-JP
特別収容プロトコル: 全てのSCP-2916-JP個体は個体ごとにケージに入れて取り扱わねばなりません。原則的に、SCP-2916-JPの収容機材はアルミナ (あるいはそれと同等以上の硬度・耐摩耗性を備えた素材) で構成されていなければなりません。やむをえず標準的な小型生物用ケージを一時的に使用する場合、油脂で固められた専用飼料を与えることによってケージへの損傷を回避してください。それ以外の場合において、SCP-2916-JPへの給餌は原則禁止されており、また自食を除くあらゆる摂食行動は可能な限り回避されなければなりません。
確保されたSCP-2916-JP個体群はすべて、サイト-86201内の保管シャフト (現在29m×29m×16.8m) に収容されます。個体はそれぞれ外寸450mm×450mm×180mmのケージに入れられ、各ケージは互いに少なくとも0.5m離れた状態になるように配置・固定します。監視カメラおよびケージ床面の重量計によってそれぞれの個体はモニターされます。2個体以上のSCP-2916-JPが同じケージに収容されている状態になってはなりません。大幅な重量の変化あるいは外見上の異常が確認された場合、直ちに個体の隔離を含む適切な処置を行わなくてはなりません。
収容下においても、SCP-2916-JPへの給餌は原則禁止されています。死亡した個体はさらなる異常がないことを確認の上で、非異常な小型動物に対する通常の処分方法が実行されます。
エリア-86382は私有地として、全体を塀によって封鎖し、警戒レベルに応じた監視および警備を行います。個体ないし個体の痕跡が発見された場合、直ちに機動部隊-丁巳-13 (“忙碌海狸”)ビジービーバー が出動、個体の確認と確保が行われます。エリア-8638の周囲3kmは警戒範囲に指定され、ドローン、AICおよび専任部隊によって生態系の調査が行われます。SCP-2916-JPの生息が確認された場合、個体の確保と各エリアの再指定が行われます。連結しているSCP-2916-JPの生息範囲から1km幅を目安に、漸次的にエリアの買収・収容が継続されます。
説明: SCP-2916-JPは、コタケネズミ (Cannomys badius) の異常な亜種です。以下の異常性とそれに伴う食性の変化および肛門の退化を除いて、身体的特徴等は通常のコタケネズミと大きく変わりません。
SCP-2916-JPは固形物を摂食した際、その機能も含めた完全な複製を2個、背部の体表面から生産します3。生産プロセスは通常15–20分で完了しますが、自身の体長を大幅に超える物を摂食した場合、同時並行的に摂食と生産のプロセスが完了します。SCP-2916-JPは雑食性であり、自身が咀嚼、嚥下できるあらゆる固形物を摂食することができます。SCP-2916-JPの歯は非異常なエナメル質4ですが、その食性のためにプラスチックや鋳鉄5を切削することがあります。
SCP-2916-JPは通常のコタケネズミが食べるもの、およびそれらと同程度の大きさの有機物を優先的に摂食しますが、周囲にそれらが無い場合、(1) 同種個体、(2) 自身より大きい固形物、(3) 自身、の優先順に摂食を試みます。同種個体を優先する習性のため、収容プロトコルにおいて同種個体の隔離は摂食物の隔離より優先されています。
加えて、SCP-2916-JPは他個体の臀部に噛みつき、そのまま消化管を一体化させる「連結態」と記される形態を取る性質があります。$N$ 個体が一列に連結態となったとき、摂食された固形物は列の前方の個体からは生産されず、最後尾の個体のみから$2^N$ 個生産されます。従って、同種個体を摂食後、生産された個体群がすべて一列に連結態を形成した場合、一度に生産される個体数は指数関数を遥かに上回る速度6で増加することになります。
エリア-8638は中華人民共和国湖南省永州市に所在する、企業と思われる不明な団体「䋣桃创新有限公司」が所有していた建物およびその敷地を中心とする、壁によって囲まれた約10.8km2の範囲 (2024年6月現在) に指定されています。エリア-8638では野生のSCP-2916-JPが確認されており、財団による発見時から継続してSCP-2916-JPの発見と駆除が行われています。現在の警戒レベルは2であり、エリア内外に設置された360°カメラと隔日ごとのドローン撮影によって監視が行われています。SCP-2916-JPの生息範囲は2024年6月現在確定できておらず、非異常なコタケネズミの生息範囲を中心に調査と収容が行われています。
発見と収容: SCP-2916-JPの原種は湖南省永州市・広東省清遠市を中心に原生しており、また、不明な原因によって前述の異常性を既に持ち合わせていたと考えられています。䋣桃创新社はこの原種から品種改良を行い、飼料および植物類の生産および食肉用7としてSCP-2916-JPや生産した飼料等を販売していました。䋣桃创新社は生きた個体の販売を行っていませんでしたが、永州市において背中から棘状にアクリルガラスを生やした個体が捕獲されたこと、永州市を起点として異常な量の植物・種子類の輸送が観測されたことが独立に財団の興味を引くことになりました。
2020年5月末~6月初頭を境として、䋣桃创新社はSCP-2916-JPおよび関連する商品の取り扱いを止め、ある程度の在庫処分を行った後に拠点であった建物を引き払い、所在不明となりました8。この際、建物内で飼育されていた個体は全て屋外へ解放されており、財団エージェントが調査に突入した際には建物内で発見された個体はわずか2個体でした。
SCP-2916-JPが持つ異常性のうち、連結態については初期の収容プログラムの途中で発見されました。このため、現在の収容プロトコルとサイト-8620の保管シャフトが完成するまでに、結果的に2棟の収容棟が破棄され、機動部隊によって96% (重量比) の個体が焼却処分されました。
補遺-1: 食事に関連する習性と増加予測
非異常なコタケネズミと同様の食料を食べる範囲において、SCP-2916-JPの食事量や頻度、夜行性であること等の習性は通常と変わりありません。一方、同種個体や自身より大きな物品を摂食する際には、SCP-2916-JPは一度に全体を食べきることを目指します。ただし、樹皮やケージの柵など、主に壁やケージのような様態の物体に対して、5~15分程度で食事を中止することが判明しています。両者の行動の差異がどのように決定されるかは分かっていません9。
大型の物体を摂食した際、次の食事までの時間はその重量と弱い相関があります。また、前回摂食した物体の種類に関わらず、SCP-2916-JPは常に先述の優先順位に従って食物を探します。このため、他に食料がなく同種個体を優先して摂食する環境においても、SCP-2916-JPの食事サイクルは通常より遅い90–120分が1サイクルとなります。一方、その異常性により、初期状態が2個体のみであったとしても、4サイクル (6–8時間) の増殖サイクルの完了でSCP-2916-JPの個体数は制御不可能なレベルまで増加するため、周期の遅延は状況の緩和に対して実質的には無意味です。
爆発的な増加速度の模式図。SCP-2916-JPは「テトレーション」に相当する。
補遺-2: 䋣桃创新社から回収された資料
䋣桃创新社の建物を財団エージェントが調査した際、一部の内部資料が処分されていない状態で残されていることを確認しました。以下の内容は後に回収されたそれら内部資料に基づくものです。
(a) 特徴およびセールスポイント
以下は䋣桃创新社の内部資料からSCP-2916-JPの特徴についての内容を要約したものです (原文は中国語)。
䋣饀小竹鼠
- 経済的な飼育
- 食餌を自ら増やし、余剰の飼料を大量生産することで、エンゲル係数を究極に減少、ゼロを超えて負のエンゲル係数を実現10!
- 効率的な繁殖
- 食餌のみならず自らも効率的に繁殖可能。最小のコストで最大の収率を獲得!
- 高級な食味
- 原種の野味とは似て非なる美味!
(b) 飼育マニュアル
䋣桃创新社による改良種の飼育については、基本的に通常の小型齧歯類と大きな差異はなかった事が推測されています。以下は回収された内部資料から抜粋された、SCP-2916-JP特有の注意事項です (原文は中国語)。
- ケージ内の食糧は適切な数量に留めること。1日当たり最低3度は各ケージを確認し、生産された余剰の食糧は回収すること。
- 共食いを避けるため、ケージ内には必ず食糧があるようにすること。事故等によって食糧が無くなった場合、最優先のタスクとして食糧の供給を行うこと。
- 木の枝や書類、檻などを齧らせないようにすること。発見した場合は直ちにやめさせて、代用の食品類を与えること。身体から生えた枝や紙等は数時間で抜け落ちるため、無理に引き抜こうとしないこと。自然に離脱したそれらの非食糧は迅速に回収すること。
回収された内部資料の内容から判断する限りでは、䋣桃创新社は連結態についての知識を持っていなかったことが疑われています。
(c) 研究および商品開発
䋣桃创新社は生物に対する異常な増殖能力を他の生物種に適用する手段を研究していたと考えられ、候補となる動物として以下の生物が挙げられていました。
- ウサギ (Oryctolagus cuniculus domesticus)
- ウズラ (Coturnix japonica)
- クジャク11
- ヤマドリ (Syrmaticus soemmerringii)
- モルモット (Cavia porcellus)
- ネズミ12
いくつかの証拠から、日本向け商品の開発企画が進行していたと考えられています。









