SCP-2920-JP
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アイテム番号: SCP-2920-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2920-JPを直接視認することは禁止されます。SCP-2920-JPの疑いが存在する死体が発見された場合は対致死ミーム装備を着用の上、周囲を完全に閉鎖して収容に当たってください。収容したSCP-2920-JPは対致死ミーム収容房で保管されます。SCP-2920-JPを直接視認した場合は3か月以上の拘留を行ったうえで自殺を阻止し、Dクラス職員を周囲に待機させることでSCP-2920-JP-1へ変化させ、影響を排除してください。一般人がSCP-2920-JP-1になったことを観測した場合、可能な限り自殺の制止を行ってください。SCP-2920-JP-Aはその住居及び生活圏内を24時間体制で監視してください。

説明: SCP-2920-JPは致死ミームベクターの特性を持つ死体の総称です。SCP-2920-JPは現在観測されているもの全てが縊死による自殺体であり、死因に異常性があるものは存在しません。

SCP-2920-JPを視認した人物(以下、SCP-2920-JP-1)は首吊りによる自殺を試みます。SCP-2920-JP-1が発生した段階でSCP-2920-JPの異常性は喪失します。また、SCP-2920-JP-1になり得る人物が複数存在した場合はそのうち1人に限定されます。自殺を試みるまでの期間は個人差があり、現在のところ、最短で1時間、最長で78日の例が確認されています。SCP-2920-JP-1が自殺した場合、その死体はSCP-2920-JPと同様の異常性を持ちます。

SCP-2920-JPによって発生した死体の死因は窒息による中枢不全や頚骨骨折など、縊死において一般的なものですが、頸部における索状痕、組織破壊など縊死において顕著である痕跡は確認されません。このことから、SCP-2920-JPによって発生する死亡現象は縊死の過程を無視し結果のみを再現する、という可能性が検討されています。

この自殺に関しては突発的なものであり、周囲に他者がいる場合や、会話中、路上等などの不自然な場合においても自殺を試みようとします。この自死行為は身体を拘束する、何らかの説得を行う等の方法で制止することで、自殺を阻止することが可能です。また、制止する以外に自殺を試みた場所から強制的に排除することでも自殺の阻止が可能です。

SCP-2920-JP-1の自殺を阻止した場合、SCP-2920-JP-1の半径約100m以内に存在する人物が新たなSCP-2920-JP-1に変化します。この変化の基準は規則性が存在せず、これまでの例ではすれ違っただけの通行人、付近を走行していた乗用車の運転手などが確認されています。

SCP-2920-JP影響下に置かれた人物は自殺を試みた記憶が曖昧であり、多くの場合、「首を吊らなければならないと思い込んだ」と証言します。一部において、その思い込みが不明な人物からの示唆によるものであるとする証言が確認されることは特記されます。

補遺1: 発生したSCP-2920-JP及びSCP-2920-JP-1の死亡条件に対する調査を行ったところ、SCP-2920-JP-1の自殺現場は凡そ5km半径の渦状に点在していることが確認されました。これは財団による拘留を受けた場合においても同様であり、財団の拘留が渦の範囲を広げる原因である可能性を指摘されています。

また、SCP-2920-JP-1が自殺を行うために移動する方向は、凡そこの渦に沿ったものであることが確認されています。

これを受け、渦中心部の地域調査が行われました。以下は中心部付近に住む野澤氏への聞き取り調査です。

音声記録2920-JP-01 - 日付 20██/██/██

担当者: エージェント・足利 (交番勤務の警察官として調査を行っている)

対象: 野澤 由紀子氏

«再生開始»

[関連性が低いため省略]

エージェント・足利: じゃあ、最近変わったことは何かありませんか?

野澤氏: いえいえ、何もありませんよ。お巡りさんにお仕事してもらうようなことは何も。この街は静かですし、困ったことなんて何も

エージェント・足利: 確かにそうですね。私もここに勤めてから軽い交通事故くらいしか経験してないですよ

野澤氏: そうでしょう? いい街なのよ、ここは。住んでいる皆さんも朗らかですしね。お隣の五木さんなんかもいつもニコニコしてらっしゃって。お姉ちゃんが今度高校受験なんですけど、弟さんがやんちゃで困ってしまうって。ご両親共働きですものね。あらやだ、お巡りさんにこんな話しても仕方ないわね

エージェント・足利: いえいえ、街の雰囲気を知るのも大事な仕事ですから

野澤氏: 真面目ねえ、この街にあなたみたいな人がいて良かったわあ。歴史のある街だから、あなたもその一部として頑張ってちょうだい

エージェント・足利: 肝に銘じます。そんなに歴史のある街なんですか? ここは

野澤氏: 街としての歴史はそんなに長くないのだけども、古い文献に街の名前があるって聞いたわ。もっとも、処刑場だったなんて物騒な話らしいけど

エージェント・足利: 処刑場、ですか

野澤氏: そうなの。何でも悪い人の首を刎ねてたとか聞いたわ。野蛮よねえ、昔の人って。私考えるだけで血の気が引いちゃうわ。でもよく考えれば、人なんてどこでも死んでるものね、考えてもしょうがないかも、それに、今はこんなに平和な街なんですもの

エージェント・足利: ええ、そうですね。では私はそろそろ

野澤氏: 引き留めちゃってごめんなさいね、また来てくださいな。お茶くらいなら用意しておくから

«再生停止»

これを含む聞き取り調査において、中心部付近が過去に処刑場だった歴史を持つという証言が複数確認されました。財団歴史学部門の調査においてその事実は確認されず、複数個所において行われた発掘調査においてもそれらを裏付ける痕跡は発見されませんでした。一方でこれらの共有された不確定な情報がSCP-2920-JP発生の原因であるという推論が提示され、調査が行われました。

補遺2: 20██/██/██、新たに発生したSCP-2920-JPから異常性が喪失していることが確認されました。同様にSCP-2920-JP-1対象であった人物からも異常性及び突発的な自殺行動の喪失が確認され、経過観察が行われると同時に、Neutralizedクラスへのクラス変更議論が開始されました。

補遺3: 20██/██/██、新たなSCP-2920-JPがこれまで発見されていた地域から約50km離れた██市において確認されました。この情報を受け、かつての渦中心部及び新たな中心部を調査したところ、かつて渦中心部において生活していた五木 ██氏が転勤の関係で移住していたことが判明しました。これを受けた精密調査において、渦の正確な中心が五木氏の住宅であることが判明したことから、渦の中心は地域ではなく五木氏及びその家族であると推測されています。これにより、五木氏及びその家族は暫定的にSCP-2920-JP-Aとして分類されます。

周辺調査によりSCP-2920-JP-Aに異常性及び異常な行動、要注意団体等との関係は存在せず、生物学的にも人間であることが確認されています。SCP-2920-JP-Aの物理的収容は異常性の性質が変化する可能性と、収容サイトの位置特定が容易になるという観点から実施されません。

また、SCP-2920-JP-Aが移住した地域において、以前に生活していた地域と同様に"この土地は処刑場だった"という証言が確認されています。この証言はSCP-2920-JP-A移住以前には確認されていません。

補遺4: 20██/██/██、上記の情報を受け、SCP-2920-JP-Aへの聞き取り調査を準備していたところ、エージェント・足利が調査のため配置されていた交番宛に野澤氏から封筒が送付されました。封筒内には便箋1枚と、採取場所不明の細粒砂が封入されていました。便箋の内容は以下の通りです。

ごめんなさいね、きちゃダメだったみたい。笑ってるのよ

これを受け、野澤氏の住居を訪れたところ、内部で野澤氏が窒息死していることが確認されました。死因は自身の手で頸部を圧迫したことによるものであり、異常は確認されなかったため、自殺として処理されました。また、野澤氏がSCP-2920-JP-Aの転居直前に五木氏と会話している姿が目撃されています。この事案よりSCP-2920-JP-Aに接触することで異常性が変化する可能性を踏まえ、現在SCP-2920-JP-Aに対する直接的な接触は停止されています。

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