SCF-2922

特定未詳文書: №2922-JP

rating: +27+x
blank.png

— 自動メッセージ —

以下の文書は財団外時間大深度アーカイブから偶発的に回収された文書であり、現行と異なるタイムラインにおける無力化された/未だ存在していないアノマリーを描写しています。レベル4/2922-JPクリアランスを保持する各職員は、N/Aクラス機密解除プロトコルに応じて参照用にこの文書が公開されていることに留意してください。


%E5%A4%A9%E7%90%83.gif

図示された地球とSCF-2922。

オブジェクトナンバー: SCF-2922

アイテムクラス指定: Aporeia Tiphereth

議定済収容手順: 不必要。 SCF-2922の隠蔽及び完全な収容は極めて困難であるため、実施されません。包括的なSCF-2922対処方針は現在行われているO5評議院会議によって近日中に決定されます。

概要: SCF-2922は、1969/07/20まで人類に認知されること無く地球の周囲に展開されていた未知の超大規模高次元構造体です。その所在を三次元座標に置換した場合、SCF-2922は地球から約300,000km離れた地点において球面状に地球を包む形状で位置していました。

これまでのところ、SCF-2922を構成する素材は超常物理学における仮説上の存在であったヴァスティッケドルフ=ポネア多胞体の純粋な物理的実例であると見なされています。SCF-2922はその球面内部に質量と実体を持たせながら宇宙空間をディスプレイのように"映し出す"ことが可能であったと見られ、ポネア多胞体の躍動的写像特性も相まって地球上からの観測のみではSCF-2922の存在を看破することは極めて困難であったと判断されています。

SCF-2922がいつ/何の目的で/何者によって/如何にして創造されたかについて正確な情報は一切判明していません。SCF-2922捕捉直後に実施された網羅的起源調査において、財団が認知している全ての政府機関・超常関連団体・要注意個人の多くは関与を否定しました1

捕捉経緯: 前述の通り、SCF-2922は1969/07/20まで財団を含む全人類にその存在を認知されていませんでした。07/20当時、北アメリカ自由連合国は冷戦の中で長年進められてきた宇宙飛行・月面到達プロジェクトであるハイペリオン計画の集大成として、宇宙船ハイペリオン9号による人類初となる有人月面着陸の最終段階を進行させていました。

この時点で異常は存在せず、いくつかの計器トラブルはあったものの月周回軌道からの降下・着陸シークエンスは概ね順調に進行していたことが後の調査においても判明しています。その様子が全世界から注視される中、ハイペリオン9号乗組員である█████・██████・████████氏が着陸船外に姿を現し、ついに月面に降り立ちました。

その直後、音源不明の鋭い破砕音と共に、夜空が"ひび割れる"ようなと形容される複数の色で構成されたパターンを描き出す様子が世界各地で確認されました。

%E5%A4%9C%E7%A9%BA.jpg

観測されたパターン。

この"ひび割れ"のパターン(SCF-2922-Aと指定)はハイペリオン9号着陸船の着陸地点周辺を中心として立体的に発生しており、即座に財団によって関連性の調査が実施されました。その結果SCF-2922の存在と、ハイペリオン9号が到達した月、ひいては人類がこれまで観測していた宇宙の全てがSCF-2922による写像実体であった事実が初めて認知されることとなりました。

SCF-2922-Aの発生はSCF-2922の形而下的破損に起因すると考えられています。しかし状況的証拠から████████氏の月面歩行がSCF-2922破損の直接の原因だと仮定した場合、この月面歩行を破損の単なる物理的要因として判断するにはハイペリオン9号着陸船の重量やそれ以前の無人探査機着陸・墜落などといったヒト一人分の重量負荷を優に上回るエネルギーによってSCF-2922が破損しなかったことに説明が付かないため、担当研究班では秘教技術系統要素や認知現実論的観点、無人空間における霊魂が高次元に及ぼす影響("荘厳たる荒涼"効果)など複数の視点から調査が進められています。

追補: 1969/07/20のSCF-2922-A出現より、全世界で大規模な混乱が生じています。混乱の大部分は終末論的不安2を背景とした暴動・(集団的)自殺・デマゴギーやSCF-2922-Aの解釈に端を発する宗教的示威行為・信条的対立、事態の責任所在を北アメリカ自由連合国に求める世界各国と同国との著しい政治的緊張の高まりに起因するものです。

この混乱が同時多発的な大規模破壊兵器の行使にまで発展つつある差し迫った事態であることを確認した財団は、社会的沈静を誘発するために配備されていたROUETシステムを緊急発動し、この混乱を鎮圧しました。ROUETシステムによる人類社会機能のほぼ全面的な停止と人体への長期的副作用が正常性に不可逆の負の影響を与えかねないため、議定済規定ではROUETシステム発動から一週間を一般市民の健康の維持・社会機能の回復が容易に可能な期間と定め、継続的使用をこの一週間に留めるよう制限されています。

そのため、現在財団最高機関であるO5評議院は包括的なSCF-2922対処方針をこの一週間の内に決定するよう討議を進めています。以下は進行中の評議院会議の抜粋です。

評議院議事録



╣ 要レベル5アクセス権限ファイル ╠


[記録開始]

O5-1: 既に聞き及んでいるように、我らの空は割れ砕けた。諸君らは如何にしてこの混乱を収拾するべきだと考える?

O5-7: ENUI-5大量散布による大規模記憶処理、またはKALEIDOSCOPEシステムによる公衆ミーム操作。これ以外考えられるか?ここまでの大事になってるってのに。

O5-12: 待ってよ、アレを正常性の範疇に組み入れ直そうって言ってるわけ?月に覆い被さった馬鹿でっかい色とりどりの模様を?無茶が過ぎるわ、どれだけの月と夜空に関する歴史を矛盾無く改変しなきゃいけないと思ってるの?

O5-9: 12に同意する。公衆文化操作担当として……なにより一個人として、SCF-2922-Aは"あたりまえに・もとからあった"ものとするのは余りにも不自然だと言わざるを得ない。

O5-3: ならば、あのひび割れを早急に人類の空から退かさねばなるまいて。それが出来さえすれば後はどうにでもなるわけであろう?7が提示したような方法でな。

O5-1: そのことについて、担当である4から報告がある。4、頼んだ。

O5-4: はい。2つほど現場からの連絡事項があります。良いニュースと悪いニュース、どちらから聞きますか?

O5-11: これ以上事態って悪くなるもんなのか?

O5-7: どちらでも良いから早く頼む。

O5-4: では1つ目。SCF-2922を効率的に除去する手段として、旧型のジェノス次元回廊エンジンを空転させ近傍余剰次元に集積する手法が現在のところ最も有効だということは既にお伝えしていましたが、SCF-2922の全てを地球周囲から除去するために必要な日数の試算が終わりました。

O5-11: 何日ほどかかるんだ?

O5-4: 財団の総資産を投じることが可能と仮定して、約2年5ヶ月。

O5-5: クソが。2年以上継続して使えるようなROUETシステムの代替手段を探さなきゃならねえな。

O5-10: 元から一週間で全部解決できるとは思っちゃいなかったよ。良い面を見よう、2年半程度の短期間なら歴史の不自然さも十分騙しきれる。それで、良いニュースは?

O5-4: 今の話が良いニュースです。

O5-11: 最悪。

O5-4: 2つ目は、SCF-2922-Aの観測結果です。次元回廊エンジンの使用と平行して、僅かながらひび割れを通してSCF-2922の"向こう側"を観測することに成功しました。結論として、向こう側にも宇宙はあります。……ただし、我々の知る宇宙とは月との距離から星の配置まで何もかも異なった宇宙が。

O5-7: [舌打ち] おい12、さっきなんて言ってた?夜空と月に関する歴史はどう足掻いても改変しなきゃあならないらしいぞ。矛盾の無いようにな。

O5-12: [頭を抱える] 星読みと太陰暦の時代から再構成しなきゃいけないわけ?冗談やめてよ……。

O5-9: 今まで私たちが見てきた星空は、全部が全部SCF-2922による偽りだったと。[ため息] 到底受け入れがたい。

O5-8: 過去にタイムトラベルして、新しい星の配置について記憶を古代人に植え付けた方があるいは楽かもしれんね。

O5-6: 財団がそんな技術を持ってたとしたら、俺ならまず月に飛べないようハイペリオン9号をぶち壊しておくね。出来ないのが残念でならない限りだ。

O5-5: もっと簡単で俺たちでもできることがあるぜ? 市民達が一週間後に目覚めたら、今度こそ最終戦争を起こるがままにしておいて文明が石器時代まで戻るのを待つ。この手に限るね。

O5-2: 冗談でも笑えませんよ、5。しかし、SCF-2922-Aを受容するにしろSCF-2922を完全に除去するにしろ、人類の歴史は大きく様変わりすることになりそうですね。財団自身もその影響を完全には免れないでしょう。

O5-3: 仕方ないことだ。災厄を望むと望まざるとにかかわらず、かのオブジェクトは永きに渡り人類文明の中心部Heartにあった。だからこそKetherでもAporeiaでも無く、大昔のTiphereth分類という遺物を引っ張り出すことになったのだからな。

O5-10: ああ、何でこんなことになっちゃったんだろうねえ。本来なら人類は宇宙へ華々しい一歩を踏み出して、人々が手にすることの出来る技術はどんどん進歩して……栄光に満ちた、バラ色の科学世紀が待っているはずだったのになあ。ここで一旦打ち止めか。

O5-1: それでも、我らは幸運に思うべきなのだろう。世界は人類へ問答無用に終焉を突きつけず、行く末の選択権は未だ我らの手の内にある。滅びの陥穽が至る所に口を開けているこの世界では、まさしく今回の人類は運が良かった。

O5-7: 確かにな。少なくとも異次元からの侵略や古代の神の怒りによって滅びるより少しは……いや、よっぽどマシで、色気のある終わり方だ。

O5-2: ええ、全くです。悪くない。少なくとも我々人類は、宇宙という未知へと勇気を持って前進し、殻を破りました。きっと次は、天の果てへも手が届くでしょう。何者も遮ること無しに。

・・・

・・・

・・・

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。