アイテム番号: SCP-2933-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-2933-JPは船内から外した状態で保管され、SCP-2933-JP-A群生成実験を行う場合はセキュリティ・クリアランスレベル3以上の人物1人以上の許可が必要です。
SCP-2933-JP-A群は標準小型齧歯類基準のエリア内において、給餌内容に応じて分割して飼育されます。
説明: SCP-2933-JPは瀬戸内海で発見された若竹型駆逐艦の改造機「月杵」、及び食堂内部に存在する約3*3*1.5mの「雑食成体兎生成装置」と称される装置です。
中央部が最も太い樽状をした装置であり、正面には「鳥獣人物戯画」内部に描かれた兎の模写が彫り上げられています。
以下の物品を内部に封入した上でのレバー操作により稼働/停止します。
- ウサギ目(Lagomorpha)の雌雄の骨格標本及び新鮮な脳、心臓、生殖器
- 雑食性の哺乳類の胃袋から腸までの消化器官
- 可能な限り汚損させた伊邪那美命を祀っている神社の御神体の一部
- 伊弉諾尊を祀っている神社の御神体の一部
- ガマ(Typha latifolia L.)の穂
SCP-2933-JPを稼働させた場合、ニホンノウサギ(Lepus brachyurus)(以下、SCP-2933-JP-Aと記載)が約30時間に1~2羽の割合で装置下部から排出されます。
SCP-2933-JP-A群の外見は通常のニホンノウサギと同様ですが、約1ヶ月で成体に成長し、歯列及び消化器官の構造が通常のウサギ種と変わらないながらも食性は雑食性です。全ての雌の個体は生殖能力を持ち合わせておらず、今異常性は子供の代以降は完全に消失する事が判明しています。
SCP-2933-JPは1922年に鋳造された後、第二次世界大戦開戦において「海上における安定した食糧供給」の為に蒐集院及び負号部隊の手によって1942年から1943年にかけて装置が増設・改名された事が判明しています。関連する計画内容は「ミカヅキブネ計画」と銘打たれており、ウサギが選ばれた理由においては鳴き声を発さない・犬猫よりも小柄で扱い易い等の理由が財団が保有する資料上に挙げられています。
終戦後は蒐集院が財団に吸収された事を元に1946年に管理権が完全に財団内に譲渡されましたが、残存する負号部隊と思わしき一員による破壊工作によって装置の一部が破損・紛失した事によりSCP-2933-JP-A群の精製は不可能となっていました。
1958年に発見された設計図の断片に基づいた長期的な調査により、1996年に装置の分析・解析が完了した事からSCP-2933-JP-A群の再生成が可能になりました。以下はSCP-2933-JPの関連記録です。
関連記録:1943年に陸軍関係者により行なわれたSCP-2933-JP-A群摂食実験
付記: SCP-2933-JP-A生成装置は外部で製造された後、SCP-2933-JPに搭載された事が判明している。
対象い: 生成した兎を即座に血抜き・解体した薄切り肉を焼き、少量の塩を塗布した物。
意見: 幼体故に可食部が少ない以外は野味に富んだ美味な兎である。この様な物を海上で食える兵隊達は幸せ者であるだろう。対象ろ: 約一月牧草のみを摂食させた生成した兎を血抜き・解体した薄切り肉を焼き、少量の塩を塗布した物。
意見: 少々筋張っているが、十分に美味な兎である。この大きさならば問題は無いだろう。対象は: 約一月肉類他人間用の食事を摂食させた生成した兎を血抜き・解体した薄切り肉を焼き、少量の塩を塗布した物。
意見一: 草の根を埋め込んだかの如く巨大な筋が点在している。
意見二: 解体に失敗した猪の膀胱間際の如き肉。
意見三: 金歯が折れてしまいそうな程の弾力。
意見四: 生肉味の肉焼き。
意見五: 船の者達は財布と垢すりには困らないだろうよ。
<以下20行類似する内容の為省略、詳細は別途資料を参照>追加情報: 今摂食実験の結果によるものかは不明ですが、SCP-2933-JP内部には大量の牧草が積載された事が記録されています。
追加情報2: 今情報を元に再現したSCP-2933-JP-A摂食実験を行った結果、ほぼ同じ内容の回答をDクラス職員は行いました。
関連記録:SCP-2933-JP医務室内部の傷病記録抜粋
三月二十九日: 兎の糞を踏み転んだ事による打ち身。塗薬を塗布。兎用の包帯を分配。
四月二日: 兎に足元に纏わり付かれ転んだ事による顔面強打。氷嚢を提供。兎用の包帯を分配。
四月三日: 兎の糞を踏み転んだ事による打ち身二名。塗薬を塗布。掃除の徹底を提案。兎用の消毒液を分配。
四月八日: 食道裂傷。服薬後二日間の絶食にて対応。兎用の包帯を分配。
四月十一日: 深夜兎が床を掻く音による不眠症一名。丸めた紙を脱脂綿を包んだ即席の耳栓を提供。
四月十四日: 兎用の消毒液を分配。
四月十五日: 兎が深夜立てる音による不眠症患者五名。耳栓を提供。
四月十六日: 四月十一日に提供された者が耳栓が耳から抜けなくなった者。油を少量塗った後摘出。
四月十七日: 耳に塗布した油を兎に舐められ齧られた事による少量の出血。消毒後絆創膏を提供。兎を籠内に収める事を提案。
記録帳の隅に記載されていた文章: 兎によって出来た面倒事が、兎と戯れる事によって解消される日々である。
関連記録:SCP-2933-JPに搭乗経験のある船員が戦後遺した日誌より抜粋
小等部の頃に腹に出来た巨大な腫物に鑿を突き立てて膿を掻き出し、焼いた木炭を押し付けて治してやったと毎回話しながら腹に残る傷を見せて笑うのが酒宴の常であった間川君が、六尺を越す躰を丸め船内の床に頭を擦っている。敷板に染みを浮かべる程の涙を流して、上官殿へと再度乞うた。「玉次郎は勘弁してください」と。周辺は暴れた時に取り押さえる為に遠巻きに兵士が見守り、上官とて例外なく立ち尽くしている。土下座するその背後には既に兎の、玉次郎と間川君が名付けた兎が籠の内側を爪で掻き毟っている。本日我が船内の昼食用に捌かれる取り決めとなっている兎で、残りの兎は既に別の籠の中へと収められていた。「間川君、この兎らが生まれた役目を忘れてはならぬのだ」その様な事を豪語している上官とて、既にその両目が開かない程の涙を流し、間川君よりも嗚咽を漏らしていて顔は赤みを帯びている。つい三日前には丁度間川君の座した位置に上官殿が躰を丸めて床に頭を擦り付け「逸彦は食べないでくれ」と料理長の足元に縋り付く程に懇願し、料理長直々の兎らが生まれた役目を説かれた事によって逸彦含む兎達は丸焼きとなって我々の食卓に並んだのだった。担当の兎に名前を付ける者は間川君と上官殿以外にも数多く存在し、調理された兎に決して手を付けぬ者、骨まで噛み砕き自身の骨肉にしようとして医務室へ担がれた者、頭骨の欠片を御守の中に収める者、日誌の切れ端で折った紙船に兎の毛を乗せて流した者、思い思いの法則で兎を弔っていた者が居て、その時ばかりは食糧を弔うとは馬鹿らしいと思っていた。来来週に担当が回って来た時には、己も「もみじを食べてないで貰えませんか」と上官殿に頭を下げていたのである。
追加情報1: 航海中SCP-2933-JPによって合計103羽のSCP-2933-JP-Aが生成されましたが、摂食された記録が残っているのは32羽となっています。生存していたと思わしきSCP-2933-JP-A群の食糧をどの様に賄っていたかは不明です。
追加情報2: 調査の結果、SCP-2933-JP-A群はミーム的影響、精神干渉能力を保有していない事が発覚しています。
補遺: 調査の結果、SCP-2933-JP-A群が盲腸便1を排出していない事が判明しました。過去にSCP-2933-JPに対して行なわれた破壊工作において、便所に該当する区画そのものが完全に消失していた事に関係していると予想されています。