DクラスによるSCP-2934-A実体のスケッチ。
アイテム番号: SCP-2934
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-2934とその付属部品は、内部がアルミ箔で三重に覆われるように改造した標準納体袋に収めてください。SCP-2934を入れた袋は少なくとも底面2×1メートル、高さ1メートル、壁厚10センチメートルの鋼鉄製金庫に収めてください。
封じ込めチャンバーの全表面は厚さ25センチメートルの鋼板で完全に覆ってください。チャンバー内部には10名の被験者の睡眠に十分な空間が必要です。
実験時以外、SCP-2934-1のドリームキャッチャー下側の輪は、上の輪から取り外して個別に保管してください。
説明: SCP-2934は身元不明女性の保存処理された遺体で、死亡時の年齢はおよそ18歳程度と思われます。皮膚の色は白人のもので、頭髪は完全に剃られており、改造が行われる前の身長は160から163センチメートルと推定されています。
- SCP-2934の足首と手首は粗雑に切除されています。傷跡は不規則で大きな痣が見られ、肉芽組織の成長も僅かであることから、この行為は死の前に鈍らな刃物によって数日間かけて行われたことが示唆されます。
- SCP-2934-1と指定されたドリームキャッチャーが、外科用ステープラーでSCP-2934の顔面に固定されています。ドリームキャッチャーは2つの輪から構成されており、下側の輪は直径5センチメートル、上側の輪は直径16センチメートルです。上側の輪はSCP-2934の眉毛の間に固定されており、顔のほぼ全体を覆っています。下側の輪は上側の輪から吊り下げられています。双方の輪は吊り下げられた黒い紐飾り、白いビーズ、未知の種の鳥に由来する白い羽毛によって装飾されています。上側の輪の内側には黒い糸で紋様が編み上げられています。しかし下側の輪の内側にこのような装飾はなく、2個の白いレゴブロックで衛星アンテナを模した物体が黒い糸で輪に結び付けられています。
- 長さ2センチメートルの完全に治癒した切開痕がSCP-2934の額の中心に位置し、ここから長さ56センチメートルの灰色のUSBケーブルが伸びています。ケーブルの先端はタイプAのUSB端子となっており、Raspberry Pi 1 Model Aに接続されています。Raspberry PiのGPIOピンからは長さ15センチメートルの赤い配線が12本伸び、独立した液晶板に接続されています。明確な電源が存在しないにもかかわらず、ディスプレイには常に「22 04 2011 LIFE 0 TRANSMIT READY」というメッセージが表示されています。X線撮影によると、SCP-2934の頭部内にあるUSBケーブルは前頭骨を貫通して中脳皮質神経路に沿って伸び、どこにも接続されていないminiUSB端子で終わっているようです。液晶、Raspberry Pi、USBケーブルは纏めてSCP-2934-2と指定されています。
- 発見時、SCP-2934の口内には4個のオブジェクトが入っていました。3個は雑に千切られた黄色い紙で、鉛筆による手書きで「KOMPETENCË」「BESIM」「AUTORITET」と書かれていました。1個は中年男性の顔の低解像度写真で、A4紙に印刷され折り畳まれていました。この写真の人物はンドレッツ・ゲガだと推定されます。(以下を参照。)
- SCP-2934は未知の方法によって異常な形で保存されています。サンプルの分析では、組織の保存に一般に用いられる化学薬品は全く発見されませんでした。皮膚が蒼白であることを除けば、SCP-2934は死んでから長期間経ったような兆候を全く見せていません。
SCP-2934は半径0.7キロメートル内の全ての個人に、SCP-2934-Aと指定された異常作用を発生させます。効果範囲内で何らかの睡眠段階に入った人間は常に、ある男性キャラクターを中心とした鮮明な夢を1回以上見ることとなります。
目覚めた際、影響を受けた個人は常にこのキャラクターに「ンドレッツ・ゲガ」という名を与え、その外見を次の記述に一致するものと説明します:およそ50歳、身長180から200センチメートル、後退した生え際、灰白色の髪色、太く濃い眉毛、幅広い顔と体格、幅広く高い鼻、比較的日焼けした血色の良い白人。SCP-2934の口内から発見された写真を提示すると、影響を受けた全ての個人はこの男性が夢の中のンドレッツ・ゲガであることに同意します。
夢のストーリーは常に、ンドレッツ・ゲガが夢を見る個人自身と親密な関係にあり、有能な権威者として振る舞っていることを特徴とします。夢の例を以下に示します。
被験者 |
夢の要約 |
エージェント M█████・バートン |
エージェント・バートンは失業し実家暮らしをしている。彼が子供時代に通った小学校を通りかかると、新たな校長であるンドレッツ・ゲガが彼を個人秘書として雇用することを申し出る。エージェント・バートンは3年生の時に過ごしていた教室でンドレッツ・ゲガのために働き、電話を捌きスケジュールを調整することに大きな満足感を覚える。ンドレッツ・ゲガは髪型に関してエージェント・バートンに3回も相談し、エージェント・バートンは信頼されていると感じる。 |
D-163758 |
D-163758はパリへ向かうクルーズ飛行船の一等航海士である。ンドレッツ・ゲガは船長で、D-163758に3回も舵取りを任せる。戻った彼はD-163758に、彼女の操縦にはとても満足していると伝える。船はヨーロッパコマドリと衝突し危うく墜落するところだったが、ンドレッツ・ゲガは高い技量と努力でこれを切り抜ける。パリに着陸すると、ンドレッツ・ゲガはオスカー像を授与される。彼は像の頭部を外し、D-163758に贈り物として与える。 |
D-767449 |
D-767449はシャンプー工場の製造ラインで働いており、流れてくる全てのシャンプーボトルにホースからオレンジジュースを添加する作業を担当している。ンドレッツ・ゲガは工場の監督である。彼は通りかかるたびに彼女を抱きしめ「よくやっている」と伝える。ンドレッツ・ゲガは、工場の機械に向けてハッピーバースデーを歌っていると、その生産性が3倍になることを発見する。この発見に関する国営放送の生中継インタビューで、彼はD-767449の助けがなければこの発見は不可能だったと質問者や視聴者に伝える。結果として、D-767449はアメリカ大統領に選出される。 |
SCP-2934-Aを初めて経験した個人は、起きた際に夢のキャラクターに対して「直感的に」心からの思いやりと信頼感を感じたことを報告し、この作用は無期限に続くように見えます。もし「ンドレッツ・ゲガ」が現実に存在し、上司や政治的代表などの権限のある立場に就いたならどう感じるかを尋ねると、被験者は常に非常に肯定的な反応を返します。
しかしSCP-2934-Aの夢を複数回見たならば、影響を受けた個人はすぐにキャラクターの継続的な出現に混乱と不安を感じるようになります。夢を5回以上経験した被験者のほぼ全てはある程度の恐怖と不快感を感じています。長期の曝露は稀に極端に否定的な反応を引き起こすことがあり、数名の被験者は実体を見ることを避けるために長期間にわたって睡眠を拒否しました。
SCP-2934やその付属部品からはいかなる電波の発信も検出されていないにもかかわらず、標準的な電波遮蔽技術で異常存在を収容することで、その外部の個人に対するSCP-2934-Aの夢の作用を阻止できるようです。さらに、レゴブロック製衛星アンテナを含むドリームキャッチャー下側の輪を取り外すことで、SCP-2934-Aを完全に阻止できるようです。機動部隊オミクロン・ローのメンバーによるSCP-2934の効果についての調査は保留中です。
補遺: SCP-2934の夢や写真の人物と一致する、ンドレッツ・ゲガという名の個人が現実世界で発見されています。ンドレッツ・ゲガはアルバニア北部のArrëz e Madhe県に属する町、Dorëzにおいて2011年5月8日に行われた町長選挙に立候補したアルバニア民主党員でした。
インタビューを受けた地元民は、2011年4月25日から2011年5月6日の夜にかけての12日間、Dorëzの中心部に住むほぼ全ての人物がSCP-2934-Aの特徴を有する夢を経験したと報告しています。ンドレッツ・ゲガは3日後の選挙で記録的大敗を喫しました。これは、彼が有権者のほとんどの夢に繰り返し出現し、広範な苦痛を与えたことが大きく影響したものと思われます。
選挙の翌々日の2011年5月9日、現実のンドレッツ・ゲガはアルバニアのA1高速道路で致命的な事故に遭いました。彼の車は時速180キロメートルで迷走した末に、道を外れて道路脇の木に衝突したことが観察されています。注目すべきことに、検視官による報告では衝突による外傷で両手足が切断されたことが述べられています。