特別収容プロトコル
本報告書及び附随文書には、セキュリティクリアランスレベルによる情報制限が設定されます。一連の文書群は職務上の利用を想定したものではなく、あくまでも記録用に留められます。また、SCP-2940-JP担当班の編成を必要としません。
説明
SCP-2940-JPは指定職員1が個別に保持する夢性空間です。心理構造の最深層位に存在する関係上、通常のレム睡眠時において知覚されることはありませんが、変性意識状態を利用した電磁的補助により、宿主実体2を内部に到達させられることが判明しています。これにより、脳情報デコーディングでは単一視点による静的描写の抽出のみでしたが、宿主実体の視点を介した動的描写をストリーミング形式に記録可能です。
SCP-2940-JPは死体安置所のような形態を取っています。主に、分界を意味するコンクリート壁及びタイル床、死体安置棚並びに一方の壁に取付けられたタッチパネル式の操作盤で構成され、画一的に無宗教的装飾が徹底されています。扉などの開口部は存在せず、完全に密閉された様相を呈しますが、覚醒後、宿主は内部に満たされた冷気の存在を報告しています。
死体安置棚の規模は個別に差異が認められます。コンポーネントとなる冷蔵ユニットは不定期に余剰次元的拡張が為され、結果として空間全体の不可逆的な拡大を伴います。これは正常な潜在意識に対する緩やかな侵食を意味し、通常のレム睡眠時における曝露等、心理構造の重大な変質を招く危険性が提唱されています。
操作盤は死体安置棚の制御系に対応しており、随意に操作可能です。取り出された冷蔵ユニットには、衣服を着用しない一体の死体が納入されています。死因と推測される致命傷を除き、低温下に置かれた全身の保管状態は極めて良好です。つま先3に付けられた識別タグには特定の日付及び個人名と思しき文字列の他、自由形式の備考が付されています。死体の容姿を含め提示された情報群について、宿主は一切の見覚えがないと報告しています。
SCP-2940-JPの除去には、局所的な記憶処理が有効とされています。潜在意識に対する侵食は多面的に望ましい結果を齎さず、研究価値の低さが有意に認められることから、将来的に財団全体での完全な除去が為されることが決定されています。
添付資料
以下は、オブジェクト評価初期において作成された、SCP-2940-JP内部の記録群です。研究資産の恒久的な解体に伴い、有効な検証が為されていないことに留意してください。また、記録群は非倫理性情報に指定され、内部規定に基づき、その取扱は厳重に管理されています。
記録群.2940.JP/非倫理性情報
概要: 基本的に、宿主実体の視点を介した動的描写を採用。心理構造の定量化を名目に、無作為に選出された財団職員に協力を要請する。事前の指示内容は、簡易な内部の探査及び冷蔵ユニットに納入された死体の観察。電磁的補助の身体的/精神的負荷を考慮し、5分程度の記録に留めること。なお、夢本来の記憶保持の脆弱性にも期待できるが、万全を期して実験後には宿主に局所的な記憶処理を施す。