インタビュアー: D-11029
対象: SCP-2956-JP個体
付記: 対象となったSCP-2956-JPは探査ログ 2956-JPにおいて接触した個体と同個体と思われる。なお映像は██バラ園内の探査時と同様、眼鏡に偽装したカメラとマイクにより撮影された。
<再生開始>
[D-11029が追跡した結果、██バラ園から5分程の位置に存在するアパートの前に到着した。SCP-2956-JP個体が追跡に気付き振り向く]
SCP-2956-JP: おや? あなたは確か先日の……
D-11029: よ、よお! やっぱりあんただったのか!えーっと…そうウェスターランドさん!いや偶然見かけてさ! 今、帰りか?というか…こんな普通のアパートに住んでんのか?
SCP-2956-JP: 名前……憶えててくれたんですか! 嬉しいなぁ……。 ここは僕たちの社員寮みたいなもんなんですよ。そうだ!ここで会ったのも何かの縁ですし、よろしければあがっていきませんか?お茶くらいしかだせませんが。
D-11029: えっと、じゃあ……お言葉に甘えてお邪魔しようか……うん。
[二人がアパートの一室に入室する。部屋は玄関からのびた廊下の先に10畳程の空間が広がっており、異常な点は確認出来ない]
SCP-2956-JP: 散らかっててすみません。適当に腰かけて下さい。
[床に座ったD-11029に緑茶と思われる液体が入った湯飲みが渡される]
D-11029: どんなヤバいところかと身構えたけど、意外と普通なんだな。ん?なんだこりゃ?こんなん見るのか?
[D-11029が付近の床に置かれたボディビル関連のものと思われる雑誌とグラビアアイドルのDVDを発見する]
SCP-2956-JP: [興奮した様子で]素晴らしい肉体美でしょう! いやあこちらの世界にもこんなに素晴らしいヒト芸術の表現方法があるなんて思いませんでした! 彼らはきっとこれ程の芸術的で美味しそうな肉体を維持するために並々ならぬ努力をしているに違いない! 僕らの芸術作品の参考にさせてもらっていまして、よくアイスバーグとここで研究してるんですよ!
D-11029: そ、そうなのか。ん?なんか今物音が……
[D-11029がウォークインクローゼットと思われる扉を注視する。扉の奥からはガタガタと物音が確認できる]
SCP-2956-JP: あ!そうだ忘れてた!
[SCP-2956-JPが慌てた様子で扉を開く。ウォークインクローゼット内部には鉢植えに植えられた状態の男女二体の人型実体で構成されたSCP-2956-JP-Aが確認できる。男女は脚部が結合している。D-11029に視線を向けて何かを伝えようとする素振りを見せ身体を僅かによじらせており、発声は確認出来ない。また男性個体は探査ログ 2956-JPにおいてSCP-2956-JPに拘束された男性に酷似している。SCP-2956-JPがSCP-2956-JP-Aをウォークインクローゼットから取り出す]
SCP-2956-JP: いやぁいけないいけない。昨日群馬で働いてる古くからの友人が遊びに来ましてね。良いヒトが手に入ったからってお土産にくれたんですよ。今日は次の作品の試作をしようと思ってたんでした。眠ってるはずだったんですが……薬の分量間違えたかな……。酒に酔って作業するもんじゃないですね。ハハハ!
SCP-2956-JP-A: あ……かっ……はっ……
D-11029: お、おい。このオッサンこの前の……
SCP-2956-JP: ええ、まあたまにいらっしゃるんですよ。当園のヒトの栽培方法は企業秘密なので盗もうとする方が。女性の方もおそらく何かトラブルがあって捕まえたんでしょう。私の友人は密猟なんかするタイプじゃないですし。最初はこちらの世界の警察に突き出してたんですけど他では手に入らないからかキリがなくて……。 あ、そうだ!よければ試作風景をぜひ見ていってください!
[SCP-2956-JPがウォークインクローゼット内部へ入っていく]
内海博士: [他の研究員と協議を行う] 先程の発言が気になります。D-11029、このまま会話を続けて他の地域のSCP-2956-JPについての情報を聞き出して下さい。
D-11029: わ、わかった。やってみる……。
SCP-2956-JP: え?何か言いました?
[SCP-2956-JPが何らかの薬物が入っていると思われる注射器を持って戻ってくる]
D-11029: い、いや別に何も!
SCP-2956-JP: そう…ですか?
[SCP-2956-JPが手にした注射器をSCP-2956-JP-Aの首筋に刺す]
SCP-2956-JP: さあ怖くないよ? 僕が君たちを素敵に飾ってあげるからね。ゆっくりおやすみ。
[SCP-2956-JP-Aに薬物が注入される。SCP-2956-JP-AはD-11029を見つめたまま身をよじらせているが次第に動かなくなる]
D-11029: し、死んだのか…?
SCP-2956-JP: いえ、眠らせただけです。目も開いてますから見た目からはわからないですけどね。無駄に怖がらせる必要はありませんし。
[SCP-2956-JPがウォークインクローゼットから電動ノコギリに酷似した未知の機械を取り出し、数分SCP-2956-JP-Aを観察した後、男女両個体の両腕を切り落とす。出血量は本来想定される量より遥かに少ない]
SCP-2956-JP: ふぅ……どうですか!あえて腕を剪定する事で胸部や腹部、臀部の筋肉や膨らみの美しさを強調しました!欲を言えば男性の方はもうちょっと筋肉質なら映えるんですけどね……。
D-11029: え……ちょ……は!?
SCP-2956-JP: あ、す、すみません!いきなりで脅かせちゃいましたか?これは皆さんで言うところの生け花みたいなやつでして!
D-11029: ま、まさか俺もこんな風に!?
SCP-2956-JP: 落ち着いてください!誤解です!貴方を生けたりなんかしないですって!
D-11029: 目の前で人間が刻まれたんだぞ!?信用出来るかよ!
SCP-2956-JP: それは……えっと……そんなにおかしなことでしょうか…?
D-11029: な、何?
SCP-2956-JP: 僕達にとってヒトは、大いなる自然の恵みであると共に、同じ星に生きる仲間なんですよ。だからその命には敬意を表します。皆さんだって牛や鶏を憎くて殺す訳じゃないでしょ? 木や花を快楽のためにいたずらに刈り取る訳じゃないでしょ? それと同じなんですよ。それに……僕は嬉しいんです。
D-11029: 嬉しい…?
SCP-2956-JP: はい、嬉しいんです! 僕達の世界のヒトは、野生種はそこら中にいますけど植物のように殆ど動きませんし、皆さんの様に日々自分を磨く知性も意思もありません。だからこうして大好きなヒトとおしゃべりしたり……友達になれるなんて思ってませんでしたから。それに、あの園の創業者達はビジネスという打算的な考えがあったかもかしれませんが、僕個人としてはこちらの世界の方々にヒトの魅力を、そしてそれから創造される美しい芸術の世界を、僕達の文化をもっともっと知って欲しいんです! もちろん逆もしかりです。ボディビルやアイドルとかね。まあ、こちらの世界にはこちらの世界のルールがありますから、あまりおおっぴらには出来ないのが残念ですけど……。
D-11029: 友達……友達か……そうだな、文化がちょっと違うくらいで……悪ぃ、取り乱しちまった。俺達が動物食べたり、花束作ったりすんのと変わらないってことか……いやでもやっぱ……。
SCP-2956-JP: いやあ驚かせてすみません!そんなつもりなかったんですが……。 あ!良いこと思い付きました。仲直りに飲みませんか?僕達の友情に乾杯しましょう!
D-11029: あ、ああ酒か……酒なんてホントに久しぶりだ……。
SCP-2956-JP: そうだ! さっき剪定した腕で何か美味しいものでもこしらえましょう! こう見えても前職は市場でヒトの解体ショーやったり、学生時代もヒト料理専門店でバイトしてたんで料理は得意なんですよ? ちゃちゃっと作るんでちょっと待ってて下さいね!
D-11029: ひっ……あ……。
<再生終了>
上記の時点で協議が行われ、これ以上のインタビューの継続は有益な情報の入手は難しくD-11029の精神的にも危険だと判断され、D-11029にはインタビューの中断と撤退が指示されました。 また映像内の女性はインタビューの数日前に群馬県内で行方不明になり捜索願が出されている人物と特徴が一致していることがわかりました。