アイテム番号: SCP-2962-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-2962-JPはサイト-8181の低脅威度物品収容ロッカーに、不透明な箱に入れて収容してください。異常性の曝露につながるため、SCP-2962-JPを遮蔽を設けずに直接視認しないでください。
SCP-2962-JP-aへと変化した疑いのある人間は拘束の後検査されます。検査対象がSCP-2962-JP-aへと変化していた場合、地下サイト-81██の収容施設へと収容し、備えられた焼却装置を用いて終了処分してください。これらの業務には全てDクラス職員を使用して下さい。使用したDクラス職員はSCP-2962-JP-aと共に終了処分してください。これらの業務の際のDクラス職員への指示は全て職員からDクラス職員への単方向で行い、返答を行うことが不可能な形で行ってください。
如何なる形式を用いてもSCP-2962-JP-aへと変化した疑いのある人間及びSCP-2962-JP-aとは双方向のコミュニケーションは禁止されます。
説明: SCP-2962-JPは株式会社小池屋から販売されたポテトチップス「コーホ」の包装袋です。SCP-2962-JPを視認した人間はコミュニケーションの際、末尾に「ポテトチップスは小池屋!ポテトチップスっていいよね!」という文言を付け加えるように精神汚染されます。異常性に曝露した人間はこの文言を認識することが出来ません。文言はコミュニケーションを行うたびに指数関数的に強調されます。異常性に曝露した人間をSCP-2962-JP-aとします。SCP-2962-JP-aの異常性は、如何なる形式でもコミュニケーションを行った人間にSCP-2962-JPの異常性を伝播させることです。SCP-2962-JP-aとなった人間は、積極的に他者との会話を試みます。
発見経緯: SCP-2962-JPは黒沢博士のオフィスのゴミ箱から発見されました。発見者である黒沢博士はスナック菓子に対して嫌悪感を持っているにもかかわらず、SCP-2962-JPに対してのみ摂食欲求が湧いたことから異常性が発覚しました。黒沢博士は記憶処理を受け、影響を取り除かれました。調査の結果、SCP-2962-JPと類似の商品は一般に流通しておらず、小池屋という名称の株式会社が過去に存在した記録はありませんでした。
事案2962-JP: 当該オブジェクトを用いた実験中に黒沢博士が死亡しました。解剖の結果、死因は呼吸器への損傷による窒息であることが判明しました。また、黒沢博士の鼓膜が死亡前に破裂していたことも明らかになりました。鼓膜の状態から、至近距離で180dB以上の音が発せられたことが原因であると推測されています。しかし、黒沢博士が事案前後に大音量に晒される職務に就いていた記録は存在しません。当該事案の原因、及び黒沢博士の鼓膜を破った原因の音源について調査が行われています。また、未知の異常性を有している可能性を考慮し、これ以上の実験は凍結されました。
事案2962-JP-2: SCP-2962-JP研究チームの彦井研究員が黒沢博士と同様の状態で死亡しているのが発見されました。
死亡時に彦井研究員の付近にいた山永研究員からインタビューの申請がありました。インタビューの結果、彦井研究員の死亡直前の状態が判明しました。
以下がインタビュー記録です。
対象: 山永研究員
インタビュアー: エージェント・二条橋
付記: 山永研究員がSCP-2962-JP-aに変化している危険性、インタビューを終えるまでは記憶処理が出来ないという問題点から、インタビューは筆談で行われました。
<再生開始>
インタビュアー: インタビューを開始します。[エージェント・二条橋が用紙を対象に見せる。以降は省略する]
対象: はい、お願いします。
インタビュアー: [暫くの間対象の見せている紙を見つめている]死亡直前の彦井研究員はどのような様子でしたか?
対象: 何というか、ちょっとおかしな感じでした。話すときに、変に間を空けて喋っていました。
インタビュアー: なるほど、SCP-2962-JP-aに変化していたかもしれませんね。貴方はそのことを疑いはしなかったのですか?これは貴方を責めようということではなく、異常性が精神に影響を与えることを考慮した質問です。
対象: 疑問を抱くことはありませんでした。彦井がSCP-2962-JPの研究チームに参加していたことは彼自身から聞いていました。けれど、彦井が記憶処理を受けるところを俺は見ていました。オブジェクトの異常性に曝露していたとしても、その影響は除去されていたはずなんです。
インタビュアー: なるほど、では彦井研究員が死んだとき、どのような状態でしたか?思い出したくないこととは思いますが、監視カメラが不明な原因によって破壊されていたため、あなたの証言だけが頼りです。
対象: 突然血を吐いたんです。それまでは、普通に話していたのに、急に苦しみだして、俺、びっくりして、頭が真っ白になってました。
インタビュアー: なるほど、続けられますか?
対象: はい、大丈夫です。その後、我に返って、急いでサイト内の医療施設から職員を連れてきました。だけど、もう遅くて、彦井が死んだのは俺のせいです。
インタビュアー: いいえ、誰にも予想できなかったことです。今日はこのくらいにしましょう。貴方はゆっくり休む必要があります。
対象: あの、最後に一つだけいいですか?彦井が死ぬ前に一言だけ俺に告げたんです。
インタビュアー: かまいません。どうぞ。
対象: ポテトチップスは小池屋!ポテトチップスっていいよね!…こう言っていました。
インタビュアー: [戸惑った様子で暫く対象を見つめている]わかりました。これにてインタビューを終了します。
<再生終了>
終了報告書: 彦井研究員はSCP-2962-JPの異常性を受けていたと思われます。しかし、山永研究員の証言の通り、彼は記憶処理を受けて影響を除去されています。SCP-2962-JPについて更なる研究を行う必要があると考えます。[ミーム汚染が含まれるため編集済み]-エージェント・二条橋
補遺: インタビューの後、SCP-2962-JPの異常性を示すと考えられる証拠が発見されたため、山永研究員及びエージェント・二条橋にはAクラス記憶処理が行われました。記憶処理によって異常性が除去されなかったため、SCP-2962-JP-aに指定され確保されました。
インタビューに使用された用紙に記された全ての文章の末尾には「ポテトチップスは小池屋!ポテトチップスっていいよね!」と記されていました。また、この文言は記述されるたびに文字のサイズが巨大化していました。この文言は記憶処理後に山永研究員及びエージェント・二条橋に行われた異常性検査試験の際にも発見されたため、両職員はオブジェクト指定を受けることとなりました。この文言に関する詳しい研究は加山博士の研究チームに引き継がれます。
補遺2: 東京都内の所有者不明の廃ビルに関する調査の際に以下の内容のメールが保存されたPCが回収されました。廃ビル内部には、「株式会社小池屋」が過去に存在していたことを示す証拠が発見されています。これらの証拠及び研究によって判明したSCP-2962-JPの異常性に含まれる反ミーム性から、「株式会社小池屋」は過去に存在していたが、反ミームに関連した異常技術によって認識が不可能になったのではないかという推測がなされています。
To: 斎音技術課長
From: 黒川部長
Subject: 新商品「コマーシャルマンポテトチップス」について
我が社のスナック業界における再起の一手となることが期待されている「コマーシャルマンポテトチップス」についてだが、仕様変更を行うように社長命令が下った。「コンセプト自体は問題ないが、どうもインパクトが足りない」ということらしい…改善点についてはメールに添付したファイルを参照してくれ。また、この仕様変更に関する納期の延長は行われない。すまない、何とか当初の発売予定日に間に合わせてくれ。
購入者に秘密裏に宣伝をしてもらうこの方式自体、既に同業他社である湖池屋が行っている。音量を徐々に大きくする程度の小細工で差別化できるかは正直言って厳しいと思う。しかし、これが失敗すれば我が社は倒産し、私たちも君たちも路頭に迷うことになるだろう。頑張ってくれ、期待しているぞ。