SCP-2963-JP
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アイテム番号: SCP-2963-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-2963-JPは発見次第撤去し、サイト8190内で保管されます。LoI-2963-JP内の探査において他の並行次元から跳躍したと考えられる実体と接触した際は、可能な限りインタビューによる情報収集を行ってください。

説明: SCP-2963-JPは製造元不明の仮設用トイレです。外見上は████社製のものに類似しており、幅850mm奥行1600mm高さ2500mmで、内部にポンプ水洗設備の付随した洋式便器が据え付けられています。

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ドイツ国内で確認されたSCP-2963-JPの一例。

SCP-2963-JPの異常性は、内部の人物が大便を排泄する意図で使用した際に発現します。後述する異常性発現要件を満たした人物(以下、対象)は、即座に基底次元外の空間へ転送されます。この時転送される次元は固有のものであり、LoI-2963-JPに指定されています。

これまでの研究において、異常性を発現させる要件として以下が挙げられています。これらを満たさない状態で使用した場合、SCP-2963-JPは一般的な仮設用トイレとしての使用が可能です。

  • 対象がSCP-2963-JPで大便を排泄する意図がある。
  • 強い便意切迫感1あるいはVASスケール4相当の中等以上の腹痛がある。
  • 使用に際して逼迫した精神状態である。

LoI-2963-JPはSCP-2963-JPの異常性によって転移することが可能な基底次元外の余剰次元です。これまでの試験によって、転送される座標は常に同一の地点であることが分かっており、その周辺には小川とこれに架かる長さ10mの石橋、その向こうに位置する丘のみが確認されています。なお、LoI-2963-JP内では長時間の探索が不可能であることから、現在財団による詳細な探索は転送座標より半径300m以内の領域に留まっています。

LoI-2963-JPから離脱する方法は、転送された人物の領域内での排便です。排便が始まると領域内の人物は即座に転送元の次元に排出され、SCP-2963-JPから最も近いラウンドアバウト交差点の座標に帰還します。これまでの研究で、この転送はGoI-101 ("エルマ外教")に由来する儀式的構成によって、排便の際に解放される精神・感情のエネルギーを利用して発動することが判明しています。

LoI-2963-JPはエルマ外教の信者らによって『ブリグストー』と呼称されています。一部の宗派からは主神である女神エルマと邂逅することができる領域として信仰を集めており、LoI-2963-JP内で財団が把握していない転送者がこれまでに複数名確認されています。このため、複数の並行次元においてエルマ外教信者の管理下にあるSCP-2963-JPが存在すると考えられており、その総数は不明です。

更新: 財団はこれまで回収された資料から、LoI-2963-JPには内部に更なる未探索の事象があると判断2して追加の探索を行いました。以下はその資料です。

第22次LoI-2963-JP探査記録


対象: アルファ、ブラボー、チャーリー。

注記: SCP-2963-JP内部が狭小であり大型装備の持ち込みが困難であることに鑑み、対象には小型カメラを装着させて、音声で内部の様子を説明させた。LoI-2963-JPの異常性の検証のために男女混成の部隊が用いられた。また、近傍のラウンドアバウトを実験のために封鎖している。


[ログ開始]


アルファ: これより、内部に突入する。

(アルファ、ブラボー、チャーリーの3名がSCP-2963-JP内部に侵入する。転送状態を統一するため、3名は同時に排便の準備をする。)

アルファ: スリー、トゥー、ワン、ファイア!

(3名がLoI-2963-JPに転送される。)

アルファ: 点呼を取るぞ。ワン!

ブラボー: トゥー!

チャーリー: スリー!

アルファ: 全員問題なく転送された。これより内部の探索に移る。

ブラボー: 目標は12時方向の山の向こう側です。報告では、あの山の向こうで異常現象が発生するそうです。

チャーリー: 推定活動限界は2時間です。急ぎましょう。

アルファ: 待ってくれ、その前に……

アルファ: あっ。

(アルファがLoI-2963-JPから消失する。基底世界ではラウンドアバウトに転送された排便中のアルファが記録された。3アルファは地上30cmの高さから出現し、約5秒かけて着地した。)

ブラボー: は?

チャーリー: は?

ブラボー: ……えー、アルファは離脱。規定の通り、これより指揮権はブラボーに移譲される。

チャーリー: アルファの合計活動時間は1分27秒です。

ブラボー: ともかくこれ以上無駄な脱落を防ぐために調査を急ぎましょう。

(突入から15分程度が経過する)

ブラボー: 山の麓に到着。これより登山を開始します。

チャーリー: 酸素濃度など、周辺環境は特に問題ありません。標高が平均的ということでしょうか。

ブラボー: 何者かが手を加えていたり、異常性の影響であるということも考えられます。エルマの教徒がよくここを訪れているようなので。ともかく、早く山に入りましょう。標高500m程度の山とは言え、下りきるまでには1時間程度は確保しないといけなさそうです。

チャーリー: 了解です。

(突入から40分程度が経過する。)

ブラボー: 現在山の中腹あたりに位置。進捗はあまり芳しくない。この調子だと下山には予想より30分ほど時間を要し、推定活動限界ギリギリです。チャーリー、お腹の様子は?

チャーリー: 私はまだ余裕があります。

ブラボー: [深い呼吸] 正直、こっちはかなり限界です。下山まで持たないかもしれません。

(突入から1時間20分程度が経過する。)

ブラボー: ようやく山の山頂に到達。とりあえず山の反対側を観測中も、異常の観測なし。

チャーリー: こちらは植生を調査していますが、いずれも未知の植物であるため現時点では詳しいことは分からなそうです。

ブラボー: なるほど……予想下山時間はどのくらいですか?

チャーリー: 登山時間から考えれば30∼40分程度と言ったところでしょうね。ただし、状況は悪化していくのでもう少しかかるとみていた方がよいでしょう。

ブラボー: そう……そうですね。

(遠くから数人の話声のようなものが聞こえる。)

ブラボー: チャーリー、確認は?

チャーリー: はい。エルマの信者の集団でしょうか。接触しますか?

ブラボー: いや、やめておきましょう。今回はあくまで内部の探索調査です。見た目はヒトとほぼ同一ですが、言語も違いますし。

(エルマ外教の信者とみられる集団は中年の男性と若い男女の2人によって構成されている。)

ブラボー: 一旦隠れてやり過ごすことにします。ロスになりますが、仕方ないでしょう。

チャーリー: 了解です。

(身を潜めてから5分程度が経過する。)

ブラボー: 移動を確認。我々も行動します。

チャーリー: すみません、水を飲み過ぎたようです。用を足しても構いませんか?

ブラボー: 大?

チャーリー: 小です。

ブラボー: ……じゃあ手短に済ませてください。

チャーリー: すみません。では失礼して……

チャーリー: えっ。

(チャーリーがLoI-2963-JPから消失する。基底世界ではラウンドアバウトに転送された放尿中のチャーリーが記録された。チャーリーは地上4mの高さから出現し、約40秒かけて落下した。)

ブラボー: ……えー、新たな情報。どうやら排便のみではなく排尿でもLoI-2963-JPから脱出できるらしい。

ブラボー: だからなんなのか。

ブラボー: ともかく、1人で可能な範囲まで調査します。

(突入から1時間30分程度が経過する。)

ブラボー: 現在下山中。途中目撃したエルマの信者はものすごいスピードで下山を続けています。かなりの速度。一緒に行動していた若い2人組のカップルはいなくなっている。離脱したのでしょうか。

ブラボー: 腹の調子は……あまり良くない。持ってあと十数分という感じです。ともかく、限界まで探索を続けます。

(突入から1時間40分程度が経過する。)

ブラボー: 下山中。エルマの信者を完全にロスト。現在山の中腹。

ブラボー: 恥ずかしい話ですが、実はさっきの報告から50m程度しか進めていません。もう限界かもしれません。

(数分が経過する。)

ブラボー: もう限界!

(ベータが近くの草むらに駆け込む)

ブラボー: 突入から1時間42分23秒、現時点で任務の遂行を断念して帰還します!

ブラボー: [唸り声。]

ブラボー: ……出ない?

ブラボー: [連続した深い唸り声。28秒の記録]

ブラボー: 奇妙なことに……排便に失敗しました。人間の体は限界になるとこうなるのか、それとも、何らかの異常がかかわっているのか。

ブラボー: ……身体的な苦痛はそのままですが、帰還不可能なので調査を続行します。

(突入から1時間50分程度が経過する。)

ブラボー: 脂汗が止まらない……便は出ないが、かといって動けるような状態でもない。

ブラボー: この調子だと下山にはあと1,2時間はかかる見込みです。その前に体の方がどうにかなりそうですが。

ブラボー: さっき便のために草むらに駆け込んだけど誰も見ていないんだしあまり意味はなかったな。

ブラボー: また探索を中止して休憩をとることにする……。

(ブラボーが山道の脇の切り株に腰かけて休憩をとる。深い呼吸と呻き声が記録されている。)

(転倒音。この時点でブラボーが身体の平衡を失って転倒したと考えられる。その後、ブラボーが山道を逸れ、崖から落ちる音が記録される。)

(ブラボーがエルマ外教の男性の前に着地する。)

[不明な男性の声。言語は不明だが"エルマ""女神"という単語が聞き取れる。]

ブラボー: た、助けて……。

[不明な男性の声。困ったような口調で返答を行っている。]

ブラボー: 腹……腹が……

[呻き声を上げながらブラボーが立ち上がる。]

[男性は驚愕した様子で大声を上げ、ブラボーから距離を取る。その後、ズボンを降ろし数秒後に消失した。]

ブラボー: で、出る……。

[ブラボーがその場で排便する。48秒後、屈んだ状態のブラボーがラウンドアバウトに転送された。ブラボーは地上30mの高さから出現し、約10分かけて落下した。]


[記録終了]


付記: 調査後の健康診断ではいずれの隊員にも深刻な健康被害は確認されませんでした。特に、ブラボーは長時間の探査と探査中の事故が記録されましたが、腕の骨に軽いヒビが確認されたこと以外には大きな問題は確認されませんでした。

また、帰還時にブラボーが上空に出現したため、実験の様子が周辺住民に観測されました。これに対し財団は周辺住民への記憶処理とカバーストーリーの流布を行いました。

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地元住民によって撮影された帰還中のブラボー。


事案: エルマ外教の信者から回収された文書の一部にSCP-2963-JPに関連する記述が発見されました。以下はその文書です。

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