アイテム番号: SCP-297-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-297-JPは右肘から先を右肩から先をセラミック製のギブスで固定した状態で、サイト-8173の標準的な人型オブジェクト収容室に収容します。通常の給食とは別にSCP-297-JP-Aの発現例に応じた餌料を与えてください。SCP-297-JP-Aには給餌の時以外、適切な形状の口枷を装着します。また、必要に応じて拘束具の追加が認められていますが、給餌作業の妨げになるものは許可されません。
SCP-297-JPは現在精神的に非常に不安定です。週に1回2回以上のカウンセリング、心理療法を行い、必要に応じて最小限の睡眠薬を処方することが認められています。収容室内から金属は極力排除し、万一自傷、自殺の兆候が見られた場合は即座に非致死性の手段で無力化してください。
説明: SCP-297-JPは、身長176cm、体重78kgで30代の日本人の男性です。本人が自称した姓名により身元が確認され、DNA検査や歯の治療跡から本人と断定されています。後述の右腕以外に特異性はありません。家族等の関係者にはカバーストーリー『登山中の遭難』が適用され、対外的には行方不明扱いとなっています。
SCP-297-JPの右手首から先の部分は、1週間から20日の不定期な周期で、地球上で確認される様々な生物の頭部(SCP-297-JP-Aと指定)に入れ替わります。変化の過程はほぼ一瞬で、その生物本来のサイズは無視され、右腕の断面から生えるのに適当な大きさへ拡大・縮小された状態で現れます。SCP-297-JP-Aの例としては、イエイヌ、ホホジロサメ、ナイルワニ、アフリカゾウ、ハダカデバネズミ、キイロアナコンダ、グレビーシマウマ、コウテイペンギンなど財団に収容されている約6か月間で██種が確認されていますが、脊椎動物以外は発生していません。これはSCP-297-JPの尺骨を脊椎代わりにしているためと思われます。また、SCP-297-JP-AとSCP-297-JPは循環器系、神経系を共有しているため、不用意な攻撃はSCP-297-JPへのダメージ、出血として現れます。SCP-297-JP-AのDNA検査結果はSCP-297-JPのものと同一であり、そのためこれら動物の頭部はSCP-297-JPの肉体が変異しているものと推測されます。
SCP-297-JP-Aはその頭部の生物が常食する餌料と睡眠を必要とし、もし給餌が成されない場合はSCP-297-JPから未知の原理で直接栄養を吸い上げます。これは通常の飢餓状態に比べ異常な速さで進行し、およそ12時間でSCP-297-JPは体重を最大██kg減少させ、脱水症状から昏倒し、放置すれば死亡するものと思われます。単純な栄養点滴では吸収のスピードに追いつくことが出来ず、この現象を止める手段はSCP-297-JP-Aへの適切な給餌のみです。X線検査では食道は途中で途切れており胃や腸などの消化器系は確認されず、摂食した物品の行き先および排泄については未解明です。
また、SCP-297-JPはSCP-297-JP-Aと大まかな感覚を共有しており空腹や適切な食糧を察知することができますが、右ひじから先のコントロールを失っています。肉食動物がSCP-297-JP-Aとして出現し飢餓状態へ陥った場合、SCP-297-JPそのものが(上記の栄養吸収とは別に)直接の捕食の対象となる場合があります。現在SCP-297-JPの肉体には█ヶ所の、異なる生物の噛み傷があります。また睡眠においてもSCP-297-JPと時間帯が一致しないケース1が多く、睡眠不足に陥ることも珍しくありません。
インタビューログSCP-297-JP-12
対象: SCP-297-JP
インタビュアー: ██研究員
付記: 聴取室内には対象とインタビュアーの他に、突発的な事態に備えて2名の警備員を待機させた。SCP-297-JPは右肘から先をセラミック製ののギブスで固定。SCP-297-JP-Aはインタビュー時、セキセイインコの形態を示していた。
< 録音開始, (日付20██/██/██)>
SCP-297-JP: 俺の頼みは聞いてくれるのかい?
研究員: その結論を出すために、もう少しインタビューをさせてください。
SCP-297-JP-A: インタービュ! インタビゥー!
SCP-297-JP: [約20秒の沈黙][ため息]わかったよ。
研究員: 貴方の腕について、どうしてそのようになったのかの経緯を聞かせてください。
SCP-297-JP: 何回も言ったはずだけど。
研究員: 再度、確認したいところがあるので。
SCP-297-JP: [約30秒の沈黙]。俺は山歩きが好きで、その休日も。
研究員: すみません、正確な日付をお願いします。
SCP-297-JP: [苛だったようなため息]もう半年前だ。20██年の██月██日。俺は██山に昇ったんだが、迷った。これに関しては別に妙なことはない。慢心してただけだ。よくある登山者のミスって奴だ。とにかく天候が予想を超えて急変して、それに対する備えは足りなかったし、俺は一人だった。
SCP-297-JP: 土砂降りで、どうしようもなかった。予定通りの下山は難しかったから、途中にある山小屋に入ったんだ。そしたら先客が居た。居たんだけど、そいつはそいつでどう見ても山登りに来たように見えなくて……医者みたいな白衣を着てた。あんたらみたいに。
研究員: それで?
SCP-297-JP: そいつは俺が入ってきたことに相当驚いたようだったが、すぐに笑って暖かいコーヒーを勧めてきた。大きめのマグカップにたっぷりで……待て、今思い出した。マグカップに漢字で何か書いてあったんだ。
SCP-297-JP-A: オモイッシタ! オモッダシタ!
研究員: 漢字ですか?
SCP-297-JP: あぁ、普通に土産物屋で売ってる奴じゃなくてこう……ほら、会社の創立何十周年とかで記念品を作ったりするだろ? そんな感じの品だ。
SCP-297-JP: そうだ……日本生物……何とか研究所……みたいな。全部は思い出せないけど、日本の『日』と生物の『生』と研究の『研』は確かに見た。
研究員: ……続けてください。コーヒーを飲んだ後は?
SCP-297-JP: 何か薬が入ってたんだろうな。すぐに意識がなくなって、目が覚めたら山小屋の外に放り出された上に、右腕が……。あの目が合った瞬間は一生忘れられないな。それで、ひどく腹が減って……でもそれは、俺じゃなくて、腕の奴の空腹だったんだ、それで……。
研究員: なるほど、解りました。それでは、インタビューを終わります、ありがとうご
SCP-297-JP: ちょっと待てよ。俺の頼みはどうなった?
研究員: 今回のインタビューを元に検討して
SCP-297-JP: [立ち上がり身を乗り出す]ふざけるな!! 難しいことじゃないだろ!! 俺の同意もあるし、こんなもの治しようがないに決まってる! 俺は元の生活に戻りたいんだ!
研究員: 落ち着いてください、貴方の提案は貴方自身への負担が
SCP-297-JP: そんなこと解ってる!! 馬鹿にするな!![罵倒]
[椅子を蹴り倒す]
SCP-297-JP-A: フジャケナ! フザケルナ!! イエニカーリタィ!!
SCP-297-JP: [悲鳴]。うるせぇんだよ! この[罵倒]の[罵倒]鳥が!!!
[逆上し、SCP-297-JP-Aをギブスごと机に打ち付け始める。SCP-297-JP-Aはそれに抵抗するような動きを見せ、けたたましく鳴く]
研究員: やめてください! 落ち着いて! 鎮静剤を!!
[警備員が鎮静剤の注射を取り出し、SCP-297-JPに接近する]
SCP-297-JP-A: キリオトセ! キリオトシテクダサイ!
SCP-297-JP: 俺に触るな! [研究員に対して]この[罵倒]。俺の腕がワニならてめぇを食わせてやるとこだ! インコで良かったな、えぇ!? [罵倒]が!!
[警備員を振り払い、左腕で研究員に掴み掛る]
研究員: 急いで!!
SCP-297-JP-A: オネガイデッス! カミサマ! モトニモッドシテ! ヒドイ、ヒドイヨ! オカーチャー!
SCP-297-JP: てめぇらは俺を治そうなんて考えてねぇんだ! 俺を閉じ込めておきたいだけだろうが!!
SCP-297-JP-A: ツカマエル! トジコメル! ゲンジョウイジ!!
SCP-297-JP: 俺が食ったんじゃない俺が食ったんじゃない俺が食ったんじゃない俺が食ったんじゃない俺が食ったんじゃない……
[SCP-297-JPは鎮静剤を注射されて無力化される]
< 録音終了 >
補遺: インタビュー内に現れた山小屋の存在は現在確認できていません。また、要注意団体である日本生類創研の関与が疑われます。エージェントは捜査を進めてください。
SCP-297-JPは██県██山3合目付近において全身が血塗れの状態で登山客に発見され、その右腕の異常性から山岳救助隊に潜入中のエージェントが調査を行いました。結果、発見地点のすぐ近くに大部分の内臓、大腿部、臀部、肩の筋肉が欠損した別の登山客の死体が見つかり、傷はSCP-297-JP-Aの歯型と合致しました。発見時、SCP-297-JP-Aは[編集済み]の形態をとっており、関係者にはカバーストーリー『猛獣との不幸な遭遇』を流布したうえで記憶処置を実施済みです。
提案事項: 収容上の懸念からSCP-297-JPに対するカウンセリングと拘束の強化を提案します。
提案は承認されました―日本支部理事