SCP-2970-JP
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SCP-2970-JP-1付近のナイル川。

アイテム番号: SCP-2970-JP

オブジェクトクラス: Euclid Safe Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2970-JP-1内部は映像機器を用いた監視が行われます。SCP-2970-JP-1の存在する地点は監視を行い、接触を行おうとする人物がいた場合には尋問を行った後に記憶処理を行ってください。SCP-2970-JPに関わる未確認の記録が発見された場合には、担当博士への報告を行ってください。SCP-2970-JP-4はSCP-2970-JP-1監視施設内の低危険物収容ロッカーに収容してください。

説明: SCP-2970-JPはナイル川流域で確認される異常存在・異常現象の総称です。SCP-2970-JP-1からSCP-2970-JP-4で構成されています。

SCP-2970-JP-1はナイル川の北緯24.██°、東経32.██°地点河底から進入可能な空間異常です。SCP-2970-JP-1は10 mの深度を有し、入口部は半径約5 m、内部は半径約4.5kmの円形をしており、内部には非異常性の水が存在しています。SCP-2970-JP-1は外部にある機器類による観測が不可能であり、内部ではGPSは入口部にあたる河底地点を指し示します。SCP-2970-JP-1内に記録機器を配置した場合は、外部からも観測が可能です。

SCP-2970-JP-1内には都市と見られるものが存在しており、南端には古代エジプトの祠堂と様式が一致する建造物(以下祠堂と呼称)が存在しています。SCP-2970-JP-1内の建造物群は破壊が不可能であり、建造物内部への進入及び観測は成功していません。

SCP-2970-JP-1は不定の周期で非活性化します。非活性期間は最長でも██日、最短で██分と短期です。活性化時には祠堂のヒューム値が上昇し、SCP-2970-JP-1内に人型実体群(SCP-2970-JP-2に指定)が出現します。SCP-2970-JP-2同士では意思疎通の様子が確認されていますが、外部からの刺激には無反応であり接触も不可能です。SCP-2970-JP-2個体群は常に同一ではなく、不定の周期で出現と消失を繰り返します。SCP-2970-JP-2の総数は不明ですが、少なく見積もっても[編集済]体は存在するものと考えられています。

SCP-2970-JP-3は第一急端1以北のナイル川流域で発生する異常現象です。

該当地域に365日以上居住している、あるいは同地域を出たことがない人間がナイル川で溺死した場合、溺死から30分以内に、SCP-2970-JP-1にその人物と同一の外見をしたSCP-2970-JP-2が出現します。2出現までの時間はSCP-2970-JP-1からの距離に比例します。出現したSCP-2970-JP-2は祠堂に進入し、以降他の個体と同様の振舞いを見せます。溺死の前に特定の手順(SCP-2970-JP-aに指定)が行われた場合、新たなSCP-2970-JP-2は祠堂進入後に死亡地点上に出現します。SCP-2970-JP-aは複数確認されており、一部は偶発的に発生しうるものであると判断されています。このときのみSCP-2970-JP-2は外部刺激への反応を示し、接触した人間に対して、自身や地域の自然環境に関することを不明の手段で伝えます。出現したSCP-2970-JP-2は5分程度で消失し、以降他の個体と同様の振舞いを見せます。

SCP-2970-JP-aが行われた後に物品がナイル川に沈められた場合、その物品は河底に達した段階で消失します。消失した物品が発見された事例はありません。この過程で人を模した物品が用いられた場合、当該物品は消失後に沈没地点水上に出現します。この物品を視認した人間は、当該地域の自然環境に関する情報を不明の手段で認識します。出現した物品は5分程度で消失します。「人を模した物品」の基準は判明していません。

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18世紀におけるナイル川の祝祭の様子。

補遺1: SCP-2970-JPの起源は不明ですが、一部のSCP-2970-JP-2群の服飾から紀元前2千年期の終わりに出現したと考えられています。SCP-2970-JP-1は古代エジプトの伝承における「ハピ3の洞窟」との類似が指摘されている他、前5世紀の歴史家█████がSCP-2970-JP-1に関連すると見られる記述4を残しています。これらの伝承・記述内容において、SCP-2970-JP-1に相当する存在はナイル川の源として認識されていました。ただし、「ハピの洞窟」の伝承はSCP-2970-JP-1出現に先行すると見られることから、SCP-2970-JP-1が元になって伝承が成立した可能性は低いと判断されています。

個人が特定できるSCP-2970-JP-2個体としては、実験に用いられたDクラス職員を除けば、紀元前47年に死去したプトレマイオス13世、130年に死去したアンティノウスと同定された個体が確認されています。アンティノウスについては130年8月にハドリアヌス帝による神格化が行われており、この例外的な神格化5にSCP-2970-JP-3の発生が関与している可能性が指摘されています。

紀元前のエジプトにはナイルの増水を祈り供物を川に投げ込むという慣習が存在しており、この慣習が何らかの形でSCP-2970-JP-3の起源になったと考えられています。溺死を伴うSCP-2970-JP-3に関しては、15世紀の歴史家アル=マクリーズィーが「ナイルの花嫁」という儀式に言及しているものの、意図的に発生させられた具体的な事例は確認されていません。SCP-2970-JP-aに類似する事象としては、コプト教会6において殉教者の指をナイル川に浸し増水を祈る儀式が存在していたことが知られています。7この儀式はマムルーク朝において14世紀以降禁止され、同時期に行われた祝祭の禁圧によって、SCP-2970-JP-aの発生は抑制されたものと考えられています。

財団がSCP-2970-JP-3を認識した時点において、SCP-2970-JP-a及びそれに類似する行為は儀式・占いとして民間で行われていたものの、SCP-2970-JP-aと正確に一致する事例は少数でした。SCP-2970-JP-aの目的についての関係者たちの認識に一貫性は見られず、SCP-2970-JP-3を知らずにSCP-2970-JP-aを行っている集団も存在しました。また、SCP-2970-JP-1の存在を認識している例は皆無でした。

財団の活動によりSCP-2970-JP-aは非異常性の儀式・占いに置き換えられ、19██年以降財団外で明確な意図をもって行われた事例は確認されていません。19██年以降、SCP-2970-JPが一般人に露見した事例は█回です。

補遺2: 1971/08/██、SCP-2970-JP-1の面積が半径約2 kmに縮小、入口部は半径約2.5 mまで縮小しました。活性時におけるヒューム値にも低下が見られ、出現するSCP-2970-JP-2個体群の数も大幅に減少しました。現在確認されるSCP-2970-JP-2個体の総数は50体前後です。この時点から、SCP-2970-JP-3の発生は確認されていません。これらの変化の原因は明確ではありませんが、前年に竣工したアスワン・ハイ・ダムによるナイル下流での周期的増水の消滅との関係が指摘されています。

広範な異常性の喪失をうけて、1975/██/██、SCP-2970-JPはSafeに再分類されました。

補遺3: 2006/██/██、SCP-2970-JP-1監視施設内に高さ60 cm、幅45 cm、厚さ30 cmの花崗岩の銘板が出現しました。銘文はエジプト聖刻文字を用いて中期エジプト語で記されていますが、人間が視認した場合、自身が最も容易に読むことのできる文字が記されていると認識する異常性を有しています。識字能力を持たない人間が視認した場合や、視覚以外の方法で認識した場合には異常性は発現しません。この銘板はSCP-2970-JP-4に指定されました。以下はその内容です。

彼は言う
川は増水しない
私が両岸を緑にすることはない
あなたたちはこの町をとらえた
この町は閉じられた
人が川で生きる限り、この町は保護される
見よ、天と地は開かれている
見よ、太陽の眼はとらわれていない
あなたたちが二つの土地8に安らぎをもたらさんことを

SCP-2970-JP-4の出現により、SCP-2970-JPが何らかの形で知性を有しており、財団を認知している可能性が高いことが判明しました。これをうけて、2006/██/██、SCP-2970-JPはEuclidに再分類されました。またこの事案発生から、SCP-2970-JPとSCP-2343の関連が指摘されています。

私はSCP-2970-JPの危険性について懸念している。我々はSCP-2970-JPにはナイル川の水位に干渉する性質はないものと考えてきた。また、SCP-2970-JPは環境の変化によってその異常性を縮小してきたと。しかし、SCP-2970-JP-4は本来SCP-2970-JPが増水に干渉していたことを示唆している。もしその力を今も隠し持っていて、目に見える異常性を縮小させて油断を誘っているとしたら。SCP-2970-JP-4は未収容の実体に言及しているようだが、これも注意を逸らそうとしているようにも見える。SCP-2970-JPは破壊的な収容違反を起こす潜在性を有している可能性がある。ダムの決壊までいかずとも、増水した水が押し寄せれば現代のエジプトは致命的な被害を受けるだろう。 -██博士

2006/██/██、██博士はSCP-2970-JPのKeterへの再分類を要請しました。

知性がある以上、SCP-2970-JPの潜在的危険性は否定できないが、私には██博士が指摘するほどの危険性を有しているようには思えない。そもそも、警戒を解こうとするのに自らの力を示すのは不合理である。SCP-2970-JP-4がなければ、我々がSCP-2970-JPの知性を認識することもなかった。昨年収容違反を起こしたSCP-2343にも言えることだが、私にはSCP-2970-JPが異常性を認識されるリスクを冒してでも助けを求めざるを得ない状況にあるように思える。我々が確保していない何かが手に負えない状態になっていると。もちろん、無暗に信用はできないが。 -██博士

2006/██/██、SCP-2970-JPのKeterへの再分類は却下されました。「太陽の眼」については調査が行われています。

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