プロトコル・マイラに則り、SCP-2971-Aは実在しなかったということをあなたに再確認させるためにこのメッセージが導入されました。ジェリー・リー・ルイスは2012年12月28日に自宅を離れておらず、ヴィック・スタンレー・カントリークラブという施設は存在していません。
SCP-2971-Aの存在を反証するため、この記事全体を通してメッセージが挿入されています。メッセージには最初から最後まで目を通し、指摘されている点が事実であるということを自分で信じられるまで考察してください。もしSCP-2971-Aは一度も開催されていないということを自分が受け入れられないのに気付いた場合は、直ちにファイルを閉じてワークステーションを離れ、監督者に報告して記憶処置を要請してください。
アイテム番号: SCP-2971
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-2971のキャリアの疑いがある人物は、ソーシャルメディアのアカウント、銀行口座の取引明細書、および所在地を監視します。これらの人物がSCP-2971-Aについての情報を広めた際には検閲し、当該人物を拘束します。
インターネット上の検索エンジンは、“考えてみてくれ”、“ロックンロール・サクリフィニシャル”、“クリフ・ボッグ”、“ヴィック・スタンレー・カントリークラブ”、“2012年12月28日”に該当するフレーズ(およびそれらの変化形)の検索レベルをモニターします。SCP-2971関連のキーワードが繰り返し単一のIPアドレスから検索されている場合は、IPの場所を追跡し、エージェントがその場にいる全ての人物を尋問およびプロトコル・マイラ適用のために拘束します。
プロトコル・マイラはSCP-2971の影響下にあることが証明された対象者に施される措置です。プロトコル・マイラはSCP-2971-Aの実在に対する明確な否定と、それに続けて当該事象が実在し得ない理由を対象者に合理的に説明することから成っています。これはSCP-2971の治療に100%効果的であることが証明されました。
ジェリー・リー・ルイスの自宅と彼が所有する資産の電話を傍受し、ルイス自身は任意のSCP-2971関連現象の兆候が無いかを監視されます。ルイスの監視に割り当てられている職員は、特筆に値する発見があれば全て記録し、かつ異常現象が発生した場合は直属の上司に通知してください。
説明: SCP-2971は“2012年12月28日にルイジアナ州フェリデーのヴィック・スタンレー・カントリークラブで開催されたジェリー・リー・ルイスのライブコンサート(以下SCP-2971-A)に出席した”と影響者に信じ込ませるミーム的な限局性現実再編事象です。SCP-2971-Aが実際に開催されたことは一度も無く、“ヴィック・スタンレー・カントリークラブ”という名前の施設は存在していません。SCP-2971は、SCP-2971-Aまたはその内容に関する物事を読むまたは話し合うことによって、非影響者にも伝染します。イベントとしてのSCP-2971-Aへの言及が無いSCP-2971についての話題は、ミームの拡散に十分なものではありません。
SCP-2971-Aは一度も開催されていません。ジェリー・リー・ルイスは2012年12月28日には自宅で過ごしていました。彼は問題の日には公演していません。
SCP-2971に感染した対象者には、主に2種類の影響が及びます。
影響A: 対象者は唐突に、SCP-2971-Aの曲目、SCP-2971-A中にジェリー・リー・ルイスが発したコメント、その他ヴィック・スタンレー・カントリークラブへの道中の出来事などの詳細に関わる完全な回想記憶を取得します。SCP-2971影響者はこの出来事のことを興奮もあらわに他者へ伝え(それによってミームを拡散し)ようと試み、またルイスの曲や活動歴への関心が強迫観念に近い域まで異常に増します。SCP-2971影響者が治療を受けると、これらの記憶は全て消失し、ルイスに対する異常な関心は抱かれなくなります。
影響B: SCP-2971は局地的な現実再編事象を引き起こします。これに影響された人物は、SCP-2971-Aイベントが非影響者にとっては一度も行われなかったという事実にも拘らず、当該イベントに事実上参加したことになります。影響者の所持品にはしばしばSCP-2971-Aの記念写真が出現します。また幾つかの例ではサイン色紙、非異常性のCD-ROM、Tシャツ、イベントのアマチュア録音なども確認されています。SCP-2971影響者が治療を受けると、このようにして影響者の下に現れたアイテムは全て消失します。
SCP-2971感染の一つの注目すべき症状として、“考えてみてくれ(Think about it)”というフレーズを異常なほど頻繁に使用することが挙げられます。フレーズそのものは異常ではなく、SCP-2971の拡散においても、影響者が通常行うSCP-2971-Aについての会話以上に寄与してはいません。しかしながら、今日まで確認された事例の100%で、SCP-2971感染には当該フレーズの頻繁な使用が伴っています。
SCP-2971の発生源は判明していません。SCP-2971は2012年12月29日、ルイジアナ州の住民2446名に自然発生的に広まったと考えられています。影響者は明らかに無作為に選択されていましたが、例外として、最も影響者が多く集中していたのはフェリデー市域内でした。
SCP-2971-Aは行われませんでした。あなたは 2012年12月28日には仕事があったので、コンサートを見に行く時間は無かったはずです。
財団エージェントによるSCP-2971の発見時には、ルイスの状態を確認するため、彼の家への電話による接触が成されました。財団はルイス自身と話すことは出来ませんでしたが、アシスタントから、2012年12月28日のルイスは“頭痛の発作”を除いては何事もなく過ごしていたという証言が得られています。
回答者: ████ ███████████、最初に発見されたSCP-2971影響者の一人。
質問者: █████博士
序: ████ ███████████は自身が出席したと語るコンサートに異常な関心を示し(初期報告書ではこれが事実かもしれないという事が示唆されている)、非常に詳細な点まで覚えていると主張した。彼女はインタビューへの協調姿勢を示したものの、絶えずジェリー・リー・ルイスに関連する物事に話題を切り替えようとするため、会話は困難だった。
<記録開始>
█████博士: こんばんは、███████████さん。
████ ███████████: どうも。
Dr. █████: 2012年12月28日の出来事について話していただけますか?
████ ███████████: あら、勿論話せますとも! 素晴らしかったわよ。あの日、ジェリー・リー・ルイスのライブを見に行くのにウチの子供たちも連れて行ったの。何時間もあそこで過ごしたの…ライブがはねた後にサインをもらってCDを買って…子供たちも気に入ってたわ! ホント、私たち…
█████博士: [遮る] あー、███████████さん、イベントに関して何か場違いな出来事は思い出せますか? それとも全く何も覚えていませんか?
████ ███████████: いえ、何も変なことは無かったわね。全くもって普通のイベントよ。
█████博士: では、何も妙な事は起こらなかったのですね?
████ ███████████: いいえ、アタシが言いたいのは、ジェリー・リー・ルイスのコンサートとしては完全に普通だったって意味。考えても見てちょうだい、アタシには貴方がどういう答えを待ってるのか分かんないのよ。目新しい事といえば、ジェリーが“ロックンロール・サクリフィニシャル(Rock and Roll Sacrificial)”っていう新曲を披露したことかしら。客席がもう大騒ぎ。彼があれを歌ったときは皆が席を立ち上がってた。すごかったわ!
ジェリー・リー・ルイスが“ロックンロール・サクリフィニシャル”という曲目を収録したことはありません。我々は彼のディスコグラフィーを全て確認しましたが、問題の曲は発見されていません。
█████博士: そうですか。もし他に何も無いようなら、███████████さん、インタビューを終…
████ ███████████: 待って、ジェリー・リーが“グレート・ボール・オブ・ファイヤー”を歌った時に何をしたかって話はもうしたかしら? あれは話しておかなくちゃ!
█████博士: 彼が何をしたんですって?
████ ███████████: 彼はね、曲の最中にピアノに火を点けたの!
█████博士: そんなバカな! イカレてる!
████ ███████████: ホントにやっちゃったのよ! 壮観だったわ。ウチの子たちなんか、あれを見てもう呆然としちゃって。考えてみてちょうだいよ。
█████博士: …こうして思うと、私も実際そのコンサートには出席していたような気がしますな。例の古いヴィック・スタンレー・カントリークラブでの催しでしたよね?
<█████博士はSCP-2971の影響を受けたため、███████████女史と共にプロトコル・マイラが適用されました。余分なデータは削除されました。記録終了>
結: 間もなく、これ以上の事件発生を避けるために、影響者に対するインタビューは1分間の時間厳守とし、続けてインタビュアーにはプロトコル・マイラを適用するという決定がなされた。█████博士と███████████女史は既に完治している。
以下は、影響者から提供されたSCP-2971のアマチュア録音の転写です。
<録音開始>
00:01 拍手と共に音声が開始。最初の曲は既に演奏を終了したことが仄めかされている。
00:08 曲目“ジョージア・オン・マイ・マインド”が開始。
00:14 ルイスは“ジョージア・オン・マイ・マインド”に続けてすぐ“スウィート・リトル・シックスティーン”を歌い始める。音声は時折酷く音割れし、完全に回復するのは曲の終了時である。
00:17 “スウィート・リトル・シックスティーン”の終了後、ルイスは以下のように述べる。「俺たちのコンサートにようこそ。もし騒がしくなりすぎたら君たちは多分この建物から出ていきたくなっちまうかもしれんよ、なにしろ俺自身が時々そうなるんだから。考えてもみてくれ。」
00:18 “ロックンロール・オーバー”が開始。
00:20 “アイ・ウィッシュ・アイ・ワズ・エイティーン・アゲイン”が開始。
[ここで音声には大きな空白が生じる。00:42まで完全に無音。]
00:42 直前の曲の終了時、拍手喝采が聞こえる。ルイスは再び「考えても見てくれ」と発言。録音装置の近くにいる聴衆が、少なくとも1人、問題のフレーズを繰り返すのが聞こえる。
00:42 “アイル・ファインド・イット・ウェア・アイ・キャン”が開始。
00:46 ルイスがコメントする。「オーケイ皆、今日は新曲を持ってきてるんだ…えー…今まで君たちが一度も聞いたことのないやつだな。2時間ぐらい前に、クリフ・ボッグが俺のためにこいつを書いてくれたんだ。タイトルは…“ロックンロール・サクリフィニシャル”…いこうか、諸君。とちるなよ、観客は皆、俺たちと同じ部屋にいるんだから。」
SCP-2971-Aは開催されていません。“ロックンロール・サクリフィニシャル”という曲は存在しません。ルイスの提携者に“クリフ・ボッグ”という名の人物は存在していません。
00:47 “ロックンロール・サクリフィニシャル”が開始。この曲は記録上において9分42秒という圧倒的な長さである。5分11秒時点まで演奏のみが続き、その後にルイスは歌詞を歌い始める。完全な歌詞はファイルSCP-2971-A2参照。
00:57 ルイスが観客に呼びかける。「ちょっと待っててくれ、ケニーの指が痺れちまった。」 [これは恐らく、ギター奏者のケネス・ラブレイスに言及したもの。] 音声は流れているが、聞こえるのはホワイトノイズのみ。
00:59 大きなポンという音が記録されている。観客が息を呑む。
01:00 ルイス:「自分がやってることを見失わないのはつまりこういう訳さ。まんまと引っ掛かったな。」観客が笑う。
01:01 “グレート・ボールズ・オブ・ファイヤー”が開始。注意すべき点として、ギター演奏が明白に欠如している。
01:03 歌の最中に、観客たちは息を呑み、騒々しく喝采する。ルイスは「燃えるような愛ってやつだ、ベイビー!」と叫ぶ。[ここで恐らく、███████████女史が述べたように、ルイスはピアノに放火したと思われる。]
01:05 曲の終了直後、ルイスは以下のように述べる。「今日は来てくれてどうもありがとう。俺は楽しかったし、君たちも楽しんでくれたことを願ってる。楽しかったかい?」[観客の拍手] 「ああ…考えてもみてくれよ。」[全観客が完璧なユニゾンで“考えても見てくれ”と繰り返す。]
01:06 “ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイン・オン”の演奏が開始。曲の途中に一部の楽器が突然演奏を停止し、以降は聞こえなくなる。
01:07 ベースギター演奏が停止。
01:08 リズムギター演奏が停止。
01:10 ルイスが歌の半ばで発言する。「バンドメンバーを紹介する予定だったんだが、またの機会という事にしようか。」
01:11 ドラム演奏が停止。
01:12 ピアノ演奏が停止。ルイスがマイクに向かって不明瞭に呟くのが聞こえる。
01:13 観客席からの全ての雑音が停止。
01:14 ピアノ演奏が再開。音程は大きく外れており、およそ半分のスピードである。
01:15 音声、フェードアウト。
<録音終了>
SCP-2971-Aは開催されていません。あなたが読んだ出来事は架空のものであり、実際は起こっていません。
“ロックンロール・サクリフィニシャル”の歌詞。
[イントロ演奏]
They never told you what you're doing
奴らは一度もあんたに語ってくれやしなかった
standing in this choking land
この息も詰まりそうな土地に突っ立って、あんたが何をしてるのかって
they never gave a reason nor
呪われた地を彷徨うその理由も
a way to wander through the damned
その方法も教えてくれやしなかった
Tomorrow's death is what you get
あんたにも明日には死が訪れる
for a life so weak and grim
人生はそれほどに弱くて残酷だ
today's the day your light shines bright
今日のあんたの光は眩く輝いている
enjoy it now, it's growing dim
今を楽しめ、光は衰えつつあるんだから
They're coming for you now child
奴らがあんたのもとにやって来る
can't you see 'em over there
あそこにその姿が見えないのかい
a growing mass of flesh and grief
肉と嘆きの育ちゆく塊
and they're loaded for bear
しかも完全武装ときてやがる
They're coming for you now child
奴らがあんたのもとにやって来る
with spears clenched in hand
その手に槍を握りしめて
I want a rock and roll sacrifice
俺はロックンロールな犠牲が欲しいのさ
came forth the command
御言葉は既に発せられた
[間奏]
Though you may think peace has won
あんたは思うかもしれない、平和は勝利を収め
and swords be drawn no more
剣が抜かれる事はもう無いんだと
put your ear to the dust
だが耳を地面に付けて澄ましてみれば
hear the whispers of war
戦の囁きが聞こえてくる
Nevermind those empty halls
空っぽの大広間のことは気にするな
your nightmares locked away
あんたの悪夢は閉じ込められた
there's a prophecy of pending doom
差し迫る破滅への予言は
in the words I say
俺が語る言葉の中にある
They're coming for you now child
奴らがあんたのもとにやって来る
their souls filled with rage
その魂は怒りに満ちている
a voice decreed it will be done
これから成すことを宣言しながら
it trembled from the cage
檻を揺さぶっている
They're coming for you now child
奴らがあんたのところにやって来る
sooner than you know
あんたが考えるよりも早く
for a rock and roll sacrifice
ロックンロールな犠牲のための
is the way you must go
道をあんたは進まなきゃならないのさ
[間奏]
[ルイスの語り]
Let me tell you folks
俺の話を聞いてくれ、皆
I've seen many things in this wretched world
俺はこの悲惨な世界で数多くの物事を見てきた
things that would make the devil himself cry out in fear and renounce hell as 'too tame'
悪魔その人を恐怖で泣き叫ばせ、「地獄は温すぎた」と宣わせるような代物をな
but let me tell you
だがこれだけは言わせてくれ
these things are not for human minds
そういう何やかんやは、人間の精神にゃ太刀打ちできないんだよ
i was given a burden that I am sharing with you all here tonight
俺は自分が背負わされた重荷を、今夜ここにいる皆と分かち合っている
and in time you will understand what the words to this song truly mean
そして遠からず、君たちはこの歌の言葉が本当は何を意味しているか理解するだろう
because you will be singing it too
君たちもこいつを歌うことになるだろうからな
that's the way it goes
それが成り行きってもんなのさ
think about it
考えてみてくれ
just once, that's all it takes
一度だけ、それでもう十分だ
They're coming for you now child
奴らがあんたのところにやって来る
with hunger in their hearts
心の中には飢えを宿して
a bloody end to your filthy life
あんたの猥らな人生に血塗れの終わりがやって来る
before it really starts
まだ本当の始まりを迎えてもいないのに
They're coming for you now child
奴らがあんたのところにやって来る
to put terror in your veins
あんたの身に恐怖を刷り込むために
a punishment much worse than death
死より遥かに悪い罰、それと比べりゃ
you'd plead for a life in chains
あんたはきっと鎖付きの人生でも嘆願するだろう