SCP-2972-JP
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アイテム番号: SCP-2972-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: サイト-8144の収容室にてSCP-2972-JPを特製のアクリルガラス製のケースに収納したうえで、そのケースを固定してください。サイト-8144にフランスの王家に関係する人物を出自とする家系の人間、もしくは悪魔実体と何らかの関係を持つ人物、オブジェクトが立ち入ることを禁止してください。

説明: SCP-2972-JPはヒトの腕部左右一対を模した彫刻です。形状は概ねヒトの腕と同じですが、形容は一般的なヒト腕部の1.3倍程度です。また、左腕の全長は右腕よりも長く、右腕にはない肩のような部位が見られることが確認されます。また、両実体の断面は破損しており、それ以外にも姿勢などに若干の差異が見られることから、本来は他の部位に付属していたものが何らかの理由で脱落、破損したものであると推定されています。

SCP-2972-JPは現在ルーヴル美術館に収蔵されている大理石像、通称“ミロのヴィーナス”像の方角に向けて、後述する例外を除き一直線の軌道を取るように未知の原理を用いて移動します。この際SCP-2972-JPは進路上の障害物を回避する様子を見せず、また障害物に衝突してもその材質・形状・硬度に関わらずSCP-2972-JPが損傷することはありません。

移動に際し、進路の近傍にフランス王家の関係人物を出自に持つ個人がいた場合、その対象に向かい移動したうえで対象の腕に取りつく、または単純に激突するなどの手段によって対象の腕を断裂させようとすることが確認されています。この性質によってのみSCP-2972-JPはミロのヴィーナスに対する直線的進路から外れて行動します。

SCP-2972-JPが移動する速度はミロのヴィーナス像との距離が接近するほど上昇すると考えられ、試算された移動速度の最高値は約2450.0km/hです。ルーヴル美術館(フランス)-サイト-8144(日本)間の距離が置かれている現在では0.09km/hほどですが、厳密な移動速度、及びその変動幅についてはいまだ不明です。

SCP-2972-JPは19██年にミロのヴィーナス像が日本国で展示されることになった際、ヴィーナス像を輸送していた艦船に衝突し、このとき随行していた財団のフィールドエージェントによって発見されました。その後簡易的な収容を施され、日本に到着した後日本支部にて収容されることになりました。また、この輸送の開始と前後する時期にイタリア・スペインをはじめとした地中海沿岸の地域の一部で「彫刻の腕が飛んでいる」などといった証言が確認されています。その他にも収容以前にSCP-2972-JPが移動した経路と思しき地域で「人の腕が飛んでいる」といった情報が数件確認されていますが、当オブジェクトとの関連は明らかになっていません。

以下はSCP-2972-JPに対する実験記録です。

実験記録 2972-JP-1

対象: エージェント・██████

実験方法: フランス王家の傍系血縁者にあたるフランス支部所属のエージェント・██████と特製耐衝撃ガラスによって隔てられた実験室で、SCP-2972-JPを解放。このときのオブジェクトの動向を観察、記録する。

結果: 解放された後しばらくはルーヴル美術館の方角へ徐々に移動していたが、数秒後に軌道を変更し、左右両実体がエージェント・██████めがけて飛んでいき、ガラスに衝突したのち静止。なおこのとき左腕実体は対象の左腕へ、右腕実体は対象の右腕を目標としていたことが確認できる。測定可能なオブジェクトの移動速度は最高で150km/hを記録していた。

実験記録 2972-JP-4

対象: D-██████

実験方法: フランス王家の顧問教師を祖先に持つと主張するDクラス職員D-██████を待機させた実験室でSCP-2972-JPを解放。その後の動向を観察、記録する。

結果: 解放された後、オブジェクト自身の左右に対応する腕に取り付く。その後両オブジェクトがそれぞれ対象の両腕を引っ張る形で移動する。これにより数秒後、対象の両腕が断裂したものの対象は困惑するのみであり、出血や痛感は確認できず。数秒後オブジェクトは断裂した両腕を解放し、通常通りにミロのヴィーナス像の方向へ移動し始めた。回収された対象の両腕は激しく損傷していたものの、対象自身と同様に出血は確認されなかった。

付記: 当実験の後に対象に施された接合手術は失敗。

実験記録 2972-JP-6

対象: ミロのヴィーナス像(レプリカ)

実験方法: SCP-2972-JPの進行方向へ精巧なレプリカを設置した実験室でSCP-2972-JPを解放。その後の動向を観察、記録する。

結果: 解放された後、対象に接触。対象をまさぐる様子を見せた後、レプリカの破損部分に接触すると両腕を組み合わせたのち落下。数秒後再び浮上し進行方向を変更する。

付記: 新たな進行方向はルーブル美術館の方向から大きく逸脱した。また、このレプリカとオブジェクトの破損部分を確認したところ一致しないことが確認された。

上記実験を受け、複数の地点でSCP-2972-JPを解放することにより、新たな移動地点を推測する調査が行われました。この調査の際、移送したサイト-81XXにおいて軽微な収容違反が発生しました。以下はその映像記録です

インシデント記録 2972-JP

関連オブジェクト: SCP-████-JP-1 (サイト-81XXにおいて収容されていた人型実体。悪魔崇拝の現場から発生した副次的オブジェクトである)

«再生開始»

00:00: SCP-2972-JP移送班が収容ユニットへ移動中、SCP-2972-JPが収容コンテナを破壊し、SCP-████-JP-1へ接触。

00:02: SCP-2972-JPはSCP-████-JP-1の全身を撫でるような仕草を見せる。この際、接触した部分から白色の煙が発生。同時に何かが焦げるような異臭が確認されたが、SCP-████-JP-1は困惑するものの顕著な反応は見られなかった。

00:04: SCP-2972-JPがSCP-████-JP-1より離脱。約10mほど離れたのち、右腕実体は強くこぶしを握り締め、SCP-████-JP-1の方向へ向ける。同様に左腕実体は上腕部を握る形態に移行する。これを確認したSCP-████-JP-1は強い困惑と恐怖の感情を発露する。

00:06: SCP-2972-JPの右腕下腕部が約680m/秒でSCP-████-JP-1の胸部目掛け発射される。右腕下腕部はSCP-████-JP-1の胸部を貫通し、周囲に爆発物、可燃物が存在しないにもかかわらずSCP-████-JP-1は激しく燃焼、爆発した。この事案時の発射音は約130デシベルを観測したものの、本来付随する衝撃波等は確認されていない。

00:07: SCP-2972-JP下腕部はしばらく周囲を旋回した後、上腕部と再び接合した。これ以降SCP-2972-JPの行動はインシデント以前のものに戻っており、再度収容態勢に置かれる。

«再生終了»

この事案を受け、SCP-2972-JPの襲撃対象に悪魔実体と関連のあるオブジェクトが指定されました。その一方で、悪魔実体と関連する対象全てに反応を示すわけではない事も確認されており、現在、厳密な反応対象の調査が継続されています。

補遺: 数回の調査によりSCP-2972-JPの新たな移動目標地点がギリシャのキクラデス諸島に存在する未発見の海底洞窟であると特定されました。調査部隊により洞窟内の調査が行われたところ、内部にはミロのヴィーナス像と類似した大理石像が破損されたものも含め数十体確認されました。これらの彫像は全て腕部が損失、破損していることが確認されます。ここからSCP-2972-JPと同様の存在が他にも存在する可能性を踏まえ、現在も海洋部を中心に調査が続行されています。

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