
図A.1: SCP-2991-JPに感染した臓器(心臓)
アイテム番号: SCP-2991-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 現在全てのSCP-2991-JPは、液体窒素保存法1により保管されています。新たにSCP-2991-JPが発見された場合、収容に必要な量のみ該当するSCP-2991-JP-A個体からSCP-2991-JPに感染した臓器を摘出し、同様の方法で保管してください。残りのSCP-2991-JP-Aは処分されます。ポリアンナ症候群と判断された人物は財団による判定テストが実施され、SCP-2991-JP-Aであった場合近隣のサイトからエージェントを派遣し捕縛されます。
説明: SCP-2991-JPは日本人女性の体組織内に存在していたウイルスです。SCP-2991-JPの起源となった女性は1985年に死亡が確認されており、GOI-8436として登録されているニルヴァーナ2による臓器移植手術に使用されたとする僅かな記録が残されていたことから異常性との関連が疑われています。3財団の捜査によってほぼ全ての臓器が回収され、現在は心臓・肺・腎臓・肝臓・膵臓・小腸・子宮・皮膚(一部)・眼球含む角膜・骨髄液・血液(一部)が凍結することで保管されています。生前のSCP-2991-JPを保持していた女性はポリアンナ症候群4を患っていたことが判明しています。
以下は回収されたニルヴァーナによる文書の一部です。
親愛なる 張 さつき5様
さつき様の感じている幸福を他の存在にも分け与えたいという思いに我々ニルヴァーナの組織一同深い感銘を覚えております。
つきましてはこの度、さつき様の臓器提供の承諾を受け「幸福のおすそ分け」作戦が実施される運びとなったことをお知らせいたします。とはいえさつき様の身一つでは世界の人々に幸福を分け与えるのは難しいものであるため、まずは幸福を伝染させることに注力する予定となっております。
必ずや我々が全ての人と異常が幸福に、そして平等に暮らしていける世界を実現することをここにお約束いたします。
The Secular Watcher, “Molech”
SCP-2991-JPは免疫系および前頭葉を変質させる性質を持つウイルスであり、血液感染および粘膜組織からの接触感染によりポリアンナ症候群と似た症状を発症させます。この性質はヒト(Homo sapiens)にのみ有効であることが判明していますが、感染した動物の肉の摂食や蚊など感染症を媒介する生物から感染を引き起こすことも確認されています。
感染した人物(以下、SCP-2991-JP-A)は前頭葉の変質によりネガティブな感情を徐々に喪失していきます。初期段階であれば「現状より悪い状況を考え、今そうなっていないことに満足しようとする」程度の症状であり記憶処理を行うことで症状の進行を遅らせることが可能ですが、後期段階に入ると一切のネガティブな感情や状況を感知することが不可能となりそれら全てを幸福であると認識するようになります。後期段階においては記憶処理の効果が望めないことが判明しています。
SCP-2991-JP-Aの体組織はSCP-2991-JPに感染しており、受容者はSCP-2991-JP-Aに変異することが確認されています。またSCP-2991-JP-Aの特徴的な行動として積極的に献血や性交渉による接触を図ろうとすることが挙げられます。これはSCP-2991-JP-Aを増加させるためであると考察されており、その特性および通常のポリアンナ症候群との見分けが困難なことにより未収容の個体が存在する可能性が問題視されています。
以下はSCP-2991-JP-Aによる被害記録の抜粋です。
Case_2991-01: 病院での感染
収容日時: 1991/11/03場所: 千葉県 千葉愛友会記念病院
感染者数: 400名程度詳細: SCP-2991-JPおよびSCP-2991-JP-Aが初めて確認された事例で、千葉愛友会記念病院にて入院患者、医師・看護師を含む約400名が感染しました。来院患者のカルテがほぼすべて焼却処分されていたため、正確な感染者数は不明です。病院に訪れた人間にウイルス感染済みの注射針などを使用するなどして感染の拡大を図っていました。事件発覚の1年ほど前にSCP-2991-JP-Aは病院内に感染者を送り込むために、勤務していた医師の一人に接触し性交渉を持ちかけていたことが判明しています。その際、感染した外科医師はニルヴァーナとの繋がりがあり、違法な手術に関わっていたことが後の調査で判明しています。財団の突入以前に病院から抜け出したSCP-2991-JP-Aについては捜索中です。回収されたSCP-2991-JP-Aはニルヴァーナとの繋がりがあったとされる1個体を除いた全員が終了措置を受け処分されました。
Case_2991-02: 貯水槽からの感染
収容日時: 1992/05/05場所: 東京都港区の大型集合住宅(マンション)
感染者数: 83名詳細: 大型集合住宅の屋上に設置されていた4つの貯水槽のうち2つにSCP-2991-JP-Aの血液および死体が混入し、水道水を飲用などした住民83名がウイルスに感染しました。水道の異常を感じた住民により水道業者に調査依頼が出され、業者が発見、警察の介入により財団関係者へ認知されるに至りました。貯水槽内で発見されたSCP-2991-JP-A死体の手首には深い裂傷があり、死因は出血多量によるショック死と判明しています。また司法解剖の結果、手首の傷跡は自分で傷つけたものと判明しています。
Case_2991-03: 新興宗教団体
収容日時: 1993/10/12場所: スペイン北部ガリシア地方の農村
感染者数: 約1370名
詳細: 日本以外で確認された初めての事例となります。スペイン北部ガリシア地方の農村(現在は廃村とされている)全域で感染が確認されました。農村は山間部に位置した集落であり、閉鎖的な風土の村として認識されています。その地形や排他的環境が情報を漏れにくくし、独自のコミュニティを形成するのに適していたため大規模な感染の主因になったと考えられています。SCP-2991-JP-Aは感染した人物に万能感を与え、次第に感染者から持ち上げられる形で新興宗教の体を成していったと思われます。その間"宗教儀式"と称し、増殖したSCP-2991-JP-Aのうち1体を解体し臓器を移植する杜撰な手術が頻繁に行われ、SCP-2991-JP-Aに変異した個体から材料を調達して手術を繰り返し、感染を更に拡大させることを繰り返していました。すべての住民が感染した後は外部との一切の接触を絶っており、その間、村ではSCP-2991-JP-A群による農耕と畜産による自給自足が行われていたことが確認されています。数年にわたり外部自治体を欺き隔離されたコミュニティを維持していましたが、別件で調査に行ったエージェントが戻らないことを受けて財団の調査の手が入り事件が発覚、財団による殲滅作戦が実行されました。
Case_2991-03により日本および中国以外での感染が確認されたため、本部を含めた全ての支部へと綿密な情報の連携が実施されました。各支部の状況確認を行ったところ全ての支部から"問題なし"との回答が得られています。