補遺1: インタビューSCP-3000-EX-A
回答者: PoI-3000-1
質問者: エージェント カーティス
日付: 1987年4月5日
序: インタビューにおいて関連する部分の抜粋は以下の通りである。完全版のインタビューログ(275分)は文書3000-EX/084で閲覧可能。インタビューの最後の件において、PoI-3000-1 には嘘発見器が取り付けられていた。
エージェント カーティス: 名前と住所を述べてください。
PoI-3000-1: カール・ウィリアム・フレイザー、アメリカ合衆国テキサス州アーリントン、オールド・グローヴ・ドライブ17番地。元は俺の婆さまの家だった。
エージェント カーティス: 何故自分がここにいるかは分かりますか、カール?
PoI-3000-1: ああ、警官がウチに来て、地下室に入ってって、あの子らが死んで横たわってんのを見つけたからここにいるんだろ。
エージェント カーティス: 貴方はあの子供たちを殺したのですか、カール?
PoI-3000-1: そうだ、殺した、と言うより、少なくとも手助けをしなきゃならなかった。
エージェント カーティス: 誰を手助けしたのですか、カール?
PoI-3000-1: あいつらさ。男の子たちが自分でやったんだ。俺は助けなきゃならなかった。
エージェント カーティス: あの子供たちにどういう成り行きで会ったのかを教えてください。
PoI-3000-1: 殆どの子たちはフォートワースのバス停で会ったんだ。で…
エージェント カーティス: 医療ベッドを何処で手に入れたのですか?
PoI-3000-1: 買った。1つは婆さまが持ってたんだが、あの人が死んだ後、横になった時のマットレスの感覚が個人的に気に入った、それで幾つか他にも買ったんだ、全部同じ型なのに感覚は同じじゃなかった。
エージェント カーティス: 何処で購入しましたか?
PoI-3000-1: フォートワースにあるジャクソン古物店って店だ。中古品を扱ってる。
エージェント カーティス: 購入後にベッドに手を加えましたか?
PoI-3000-1: あの子たちの手が届くように金属のパイプを幾つか付けた。パイプ無しでやってみたけどダメなんだ、手錠が短すぎた。それで背中の方に物を詰めてやると身体を起こした姿勢になるから、前に屈むことができるようになった。
エージェント カーティス: ベッドにそれ以外の何かをしましたか、カール?
PoI-3000-1: いや。
エージェント カーティス: 貴方は魔法マジックというものを信じますか?
PoI-3000-1: ああ、ジークフリード&ロイみたいなやつだろ。
エージェント カーティス: 手品ではなく、本物の魔法はどうです、カール?
PoI-3000-1: 本物の魔法なんてある訳ねぇだろ、そんなのはただの物語か幻想さ、実在しない。
エージェント カーティス: 貴方にはその幻想的な行為が可能ですか、カール?
PoI-3000-1: いや。
エージェント カーティス: ベッドに対して幻想の力を施したのですか?
PoI-3000-1: いや。どういう意味だ?
エージェント カーティス: あのベッドは男の子たちに自分を傷付けるように強制することが可能ですか? ベッドは少年たちの心に語り掛けることができますか?
PoI-3000-1: 何を言ってんだか分からねぇな。俺をペテンにかけようってのか、俺はな、人からペテンにかけられるのが嫌いなんだよ。
エージェント カーティス: オーケイ、カール、貴方を引っ掛ける気はありません。ただ質問がしたかっただけです。水、飲みますか?
PoI-3000-1: ペテンにかけられるのは嫌いだ。
エージェント カーティス: 貴方は動物の血を子供たちに付けましたか、カール?
PoI-3000-1: ありゃ肉から滴ったものだ。冷凍庫のな。
エージェント カーティス: 血液を特定のパターンに広げましたか?
PoI-3000-1: いや、あれはただ普通に汚れただけで、パターンじゃない。
エージェント カーティス: 動物の血が付着したのは事故に過ぎなかったという事ですか?
PoI-3000-1: そうだ、事故だ。どうしてこんな質-
エージェント カーティス: しかし少年たちを殺したのは事故ではない、そうですね、カール?
PoI-3000-1: そう、そうだあれは事故じゃない、でもな-
エージェント カーティス: なぜ殺したのですか、カール?
PoI-3000-1: 殺してねぇ! 言ったろう、俺は殺したわけじゃない、手助けをしただけだ。
エージェント カーティス: オーケイ、それでは-
PoI-3000-1: 他の連中、最初の子に関しちゃ殺したさ。でもあの時の俺は頭が回ってなくてビールでいい気分で、帰るのを引き留めようとして首を掴んだだけなんだ、そんで目が覚めたらあの子は死んでた。そうしようと思ってやったわけじゃない、でもすごく可愛らしい子だったから何処にも行ってほしくなくて俺の家に留めてた、でも死んだらあの子は腐り始めて俺はそれを片付けなくちゃならなくなってそれで-
エージェント カーティス: その後はどういう事なのですか? 例えばガヴィン・スタウブは?
PoI-3000-1: ガヴィン、ガヴィンか、ああ覚えてる、逞しい顔つきで目がキラキラしてたよ、でもあの子は弱り過ぎた。
エージェント カーティス: “弱った”というのはどういう意味です?
PoI-3000-1: 最初の子たちの後、手錠を手に入れて地下室を整えてから、俺はあの子たちに食事をさせようとした。でもあの子らは食べようとしてくれなかった。あの子たちは美しい、でも食べ物はあの子たちの美しさをどんどん損ねていって、終いには皆死んだ。それでもう一つ方法があるって俺は気付いたんだ、あの子たちの美しさを保つ唯一の道は、あの子たちに自分自身の肉を食べさせることなんだって。
エージェント カーティス: 彼ら自身の肉を食べさせるとどうなるというのです?
PoI-3000-1: そうだ、分かるだろう、まるで美しいループみたいに美が回って回って絶対に色褪せなくてあの子たちはいつまでも留まってくれる。でも俺はそれをあの子らに理解させてやれなかった。おれがナイフを渡して言い聞かせても、そうしようとしないんだ、だからガヴィンの時は俺にも一つ考えがあった。
エージェント カーティス: どういう考えです、カール?
PoI-3000-1: あの子が目を覚ましてベッドの上にいる事に気付いて叫び始めた後のことだ、俺はあの子に自分の肉を食べなきゃダメだと言ったが断わられたんで、だったら他のメシはやらんと言ってそれを毎日言い聞かせた。あの子が腹を空かせてるのが見て取れたがそれでも相変わらず返事はノーだった、だから待ちに待ち続けてからステーキをやったんだ。
エージェント カーティス: 冷凍庫に保管していたステーキのことですか?
PoI-3000-1: ああ、それをあの子の腹の上に置いてな、食べても構わないと言ってあげたんだ。冷凍庫を持ってて良かったよ、冷えたもんを乗せるから腹の感覚は鈍るし、肉はカチカチだからナイフが滑りやすくなる。俺はあのナイフがどれだけ鋭いか分かってた、ペテンみたいに聞こえるだろうが意地の悪いペテンじゃない。もしあの子が肉を切り始めたら、きっと自分の身体の匂いを嗅いですごく腹ペコになって美しさがいつまでも続くだろうなって思った。でもあの子は弱り過ぎてて、ナイフをしっかり持つことができなかった。だから俺は手助けをしなきゃいけなかったんだ。
エージェント カーティス: <5秒間の沈黙> それで、一体何が-
PoI-3000-1: 俺はいつだって手助けをしてやらなきゃいけなかったんだ、一度も上手くいかなかったから! やりたくなかったが、そうしなきゃいけなかった、他に方法は無かった。それで、いつもその後に、美はあの子たちの身体から抜け出して行っちまったんだ。
エージェント カーティス: これから貴方に幾つかの名前を訊ねます、カール、聞き覚えがあるかどうかを答えてください、いいですね?
PoI-3000-1: オーケイ。
エージェント カーティス: ”アディトゥムの目覚め”。
PoI-3000-1: いや。
エージェント カーティス: “イオン”。
PoI-3000-1: 化学の?
エージェント カーティス: いえ、人名です。イオンを知っていますか?
PoI-3000-1: いや。妙な名前だな。
エージェント カーティス: “白蛆の秘密教団”。
PoI-3000-1: いや。
エージェント カーティス: “第五教会”。
PoI-3000-1: いや。俺んとこは確かデビー・レーンにあるカトリック教会のはずだ。
エージェント カーティス: “とらぉる”。
PoI-3000-1: いや。そんな単語は無い。またペテンにかける気か?
エージェント カーティス: いいえ、カール、違います。私はただ貴方がこれを知っているか否かを聞いているだけです。
PoI-3000-1: そんな言葉は実在しねぇよ。
エージェント カーティス: オーケイ、では“ヴェルド”はどうです…
結: ポリグラフ検査の結果、如何なる異常な接点や要注意団体の関与も確認されなかった。
更なる実験により、PoI-3000-EXとSCP-3000-EX指定物品はいずれも異常特性を全く有していないと結論付けられた。PoI-3000-EXは記憶処理を施され、タラント郡刑務所へと戻された。