SCP-3000-JP-EX

SCP-3000-JP

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科学は何も解き明かさない。知れば知るほど、
世界はより深遠かつ幻想的になっていく。
   オルダス・ハクスリー





    • _


    RAISA通達
    以下のファイルは1956年に作成されました。
    今ではもはや古い表現・内容となっている事に注意してください。
     

    ファイル - 1956/03/25

    nemophila.png

    SCP-3000-JP-1。

    アイテム番号: SCP-3000-JP

    オブジェクトクラス: Euclid

    特別収容プロトコル: SCP-3000-JPは発見場所に数百年単位で留まっており、収容難度の関係から、本人の意志で留まっている現状を維持すべきというのが現在の見解です。よって、SCP-3000-JPが現在地に留まり続ける事を目標とし、これを達成するために遠隔からの監視が行われています。SCP-3000-JPと直接関わる職員には、穏便な対話によって定期的に情報を得る事が指示されています。

    説明: SCP-3000-JPは数十万年の寿命を持つと考えられる、フラヴィアという名の女性です。彼女の容姿は20代前半の人間に似ており、178cmの身長、クリーム色の長髪、青色の瞳、装飾のない白いワンピースを特徴とします。しかしながら人間の基準で考えられる思考体系とは異なる無感情の言動を取るため、彼女と関わった職員のほとんどが「考えを理解できない」という意を示しました。

    彼女はSCP-3000-JP-1と定義されたネモフィラ属(Nemophila)に類似する花を生成する能力を持ちます。本人はこれを「ヴィトランシア」という魔法であると呼称しており、彼女がそうしたいと念じさえすれば広範囲にわたって生成できるようです。花弁に触れた者は異常な心理状態に陥りますが、この状態に陥った人物は、幻想的な光景を幻視したり、通常では起こりえない事象を体験したりします。

    彼女は日本、石鎚山の、行き来困難な道を越えた未踏の土地におり、SCP-3000-JP-1が一面に咲いた場所で数百年ほど生活しているようです。その動機は明らかになっていません。




    収容提言

    私、エステリア・セリーヌは、SCP-3000-JPの現地収容をここに提案します。

    財団は過ちを繰り返してきました。繰り返し過ぎました。高尚な使命に囚われるように、財団は収容能わざるを収容しようとし、収容及ばざるを収容しようとしてきました。間近でそれを見てきた者として、見過ごすわけにはいきません。

    SCP-3000-JPは社会に毒も薬も与える事なく、ただひとり、人智の届かぬ地で暮らしているだけのわきまえた能力者です。私達が不要な言動を取らない限り、彼女はこの先数百年間、あの場所に留まったままでいるでしょう。私達人間には耐えきれない事でしょうが、長命の彼女にとっては何の苦でもないようです。

    特記すべき点として、彼女は私の事を一度も名前で呼ばなかったほか、表情の1つさえ見せませんでした。彼女にとって人間が取るに足らぬ存在である事の証左であり、そこには自身の能力への信頼と、人間との思考の違いが見て取れます。彼女は裁量次第で、私の首をも簡単に切り落とせるでしょう。そうしないのは彼女が敵意を向けられていないからに他ならず、それは「余計な事さえしなければこちらも何もしない」と暗に伝えていると言えます。これを最大限活かすべきです。

    恐らく今の財団では、彼女を収容できません。彼女が花を生み出す時、空間が歪んでいました。これは人間をバースデーケーキに変えたり、収容室を大きなクッションに変えたりする現実変容者の能力と同じ類いだと推測できます。財団はこういった存在を制御下に置こうとし、何度も失敗してきました。

    よって私は、彼女の真の能力を明らかにし、異常を科学的に解明し、そして収容技術が充分なレベルに達するまで、彼女の管理を遠隔監視のみに留める事を提案します。

    SCP財団 サイト-8135 研究補佐員
    エステリア・セリーヌ

    返信: 提案を承認する。君の言う通り、財団は現実変容者に対する収容技術を持っていないのに収容しようとし、そして失敗してきた。同じ過ちを繰り返すべきではない。収容できず、またその必要も無いのなら、警戒は万全にした上で無理に収容しないのも1つの決断だ。ただし、彼女の事を理解するための対話や調査は欠かしてはならない。その任は君に頼もう。

    我々は旧い考えに囚われず、常に一歩先を征く。

    SCP財団 サイト-8135 サイト管理官
    御堂 雄介


    .

    .


    実験記録

    序: SCP-3000-JP-1と定義された“夢幻を見せる花”が人に対しどう作用するかを調査するための実験を行った。

    実験内容: SCP-3000-JP-1を数々の職員に触れさせ、その結果を主観的に書き起こしてもらう。

    被験者: D-308

    結果:

    気付けば俺は森林の壁にもたれかかっていた。せせらぎや鳥の鳴き声も聞こえないほど遠く暗い森林だったが、垣間見える青空が自分を見守っているようで、不思議と怖くは無かった。立ち上がって壁に触れると、それが壁などではなく、途方もなく大きな巨木であったと気付いた。見回すと、どの樹木も万年を生きたかのように巨大であった。

    森を歩く。道など無かったのに、自然と足は正しい選択をした。やがて俺は1つの大きな切り株がある場所に辿り着いた。何の根拠も無かったが、そこが最果てなのだと確信した。

    切り株の中心に何かがある。それは幼い頃に使っていたヘッドフォンだった。まだ鬱蒼とした森が怖かった頃、擦れ合う葉の音が怖くてヘッドフォンを付けていた事を思い出した。手に取ってよく見ると、それは壊れていた。自分は学の無い人間だが、その事が「森を恐れる必要は無い」と暗喩しているのだと理解した。ヘッドフォンはもう必要ないのだ、と。

    そう理解してヘッドフォンをその場に置くと、幻は過ぎ去っていった。

    考察: フラヴィアが述べたように、この花は確かに幻想的な夢を見せるらしい。昔の人間がこれを好んでいたのも頷ける。とはいえ興味深いのは、この幻が精神病の患者が見る支離滅裂なものではなく、ストーリーのようなものがあった点だろう。

    被験者: D-1088(元レベル3研究員 アヒム・N)

    結果:

    それは虚無と呼ぶべき光景だった。一切の飾りも形もない無の中に、私は立っている。そこには自分の影も、地面と空の境目も、そしてその定義さえも無かった。見渡す限り白しかない光景は、何があるかも見えない暗闇よりも恐ろしく感じた。全てが見える、「何も無い」が見える、希望や可能性すら塗り潰す白、白、白…

    私はそれが旧い同僚の見た光景だと直感した。レイラ、ヴィクター、シャオ、アルビア…危険なアノマリーの影響に曝され、もはや身体を動かせぬまま生かされる同僚たちを見て、それを終わらせなければと思った。彼らを秘密裏に終了するため、私は「存在をやめさせる」消却施設へと彼らを運び出し、除却機へ入れた。その時に彼らが見た光景が、これなのかもしれない。

    事が露見して降格されても後悔は無かったが、心残りがあった。彼らが上手く旅立てたか。この光景を見て、もしかするとここで苦しんでいるのではと不安になった。狼狽していると、後ろから馴染みある声が聞こえた。

    「お前の選択は間違ってなかったよ」

    振り返った先には何もいなかった。ただその時、一瞬だけ虚無は白以外の色を見せたと、そう断言できる。

    考察: 存在をやめさせる消却施設とは、今で言う玄妙除却施設の事である。彼の行為は規則に反していたが、人道には反していなかった。これが根拠の曖昧な幻想だとしても、そこで見た光景には彼にとって価値があったらしい。人生は時に、正しい事よりも、正しくないかもしれない事が救ってくれる。

    とはいえこの花が見せる幻は、人生経験と紐づけられる傾向にある。この幻は、人生のわだかまりや不安を解決させてくれるようなストーリー、と言えるかもしれない。

    被験者: ランヴァルド・ユウ研究員

    結果:

    それは未定義だった。その場所は、人類がまだ名を付けた事のない光景だった。

    僕はそれを融彩界Polychromeldと名付けた。

    考察: この異様な結果は何だ。この幻は人生経験に関係せず、そしてストーリーを欠いている。人類が名付けた事のない光景、というのも引っかかる。彼はその光景を「あらゆる色が複雑に混ざり合った世界」と述べた後、ただ一言「幻想的だった」と零した。アイツは微笑んでいた。

    結論

    27回の実験では、ランヴァルドを除いた全ての被験者が、人生経験に基づく物語的な幻を見た。しかし全員に共通したのは、どれもポジティブな効果を与えた事である。この点で精神病患者の幻覚とは異なるが、アフリカではしばしば「誰かが微笑みかけ、優しく話しかけてくる」といった幻覚を経験するケースがあり、そしてその経験者はそれにポジティブな印象を持っている。

    SCP-3000-JP-1による幻覚も、そのような幻覚の類型だと解釈して良いだろう。報告書には何かと複雑に異常性が記載されているが、単純に「ポジティブな幻覚」と記載しても良いと思われる。古くなってきた事だし、正式に改稿を行う事とする。

    特筆すべきはランヴァルドの事例だろう。明らかにこれのみが奇妙な幻覚だ。実験時期にも何度か赴いてはいたが、また改めて彼女に尋ねる事にしよう。




      • _


      RAISA通達
      以下のファイルは1971年に作成されました。
      今ではもはや古い表現・内容となっている事に注意してください。
       

      ファイル - 1971/08/19

      3/3000-JP LEVEL 3/3000-JP
      CLASSIFIED
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      Item #: SCP-3000-JP
      Euclid
      nemophila2.png

      SCP-3000-JP-1。

      特別収容プロトコル: SCP-3000-JPはサイト-8135からの遠隔監視によって管理されています。SCP-3000-JPに看過できない変化が訪れた場合に備えて機動部隊がサイトに常駐しています。エステリア研究員は引き続き対話による情報収集の任を負っています。

      説明: SCP-3000-JPは数十万年の寿命を持つと考えられる、フラヴィアという名の人型実体です。20代前半の人間に類似した容姿を持ちますが、人間とは極端に異なる経験によって得た異質な思考回路を持つため、会話はしばしば錯誤を生じる事があります。

      SCP-3000-JPは、本人が「ヴィトランシア」と呼称する現実変容能力によってSCP-3000-JP-1を地面から生成できます。SCP-3000-JP-1はネモフィラ属(Nemophila)に類似する花で、その花弁に触れた者はポジティブな幻覚を経験します。大抵の場合それは人生経験に基づくものですが、例外もあるようです。





      .


      私信

      ランヴァルド。財団に入った頃はどちらが先に昇任するか競い合っていたのに、今やあなたの方が遥かに上の立場になってしまった。博士としてやっていけてる?人類の誕生と滅亡サイクルについて調査してるらしいけど、それは順調?O5が研究成果を見に来た時は緊張しなかった?

      きっと業務は忙しいのでしょう。私もそうだ、2つのKeter級アノマリーの収容研究に割り当てられて頭がこんがらがっている。これが無事終わったら昇任できるらしい。しかしやはり、お互い忙しすぎて、昔のように美しく輝くものを追い求める心は失ってしまったかもしれない。でも今回メッセージを送ったのは、その心を思い出してほしいからだ。

      物語は書ける?あなたには、「融彩界」と名付けた光景をよく思い出して、それがどんな光景で、何があって、何を感じたかを描いてほしい。空想的な物語にしても、自伝のようにしてもいい。好きに書き連ねて構わない。フラヴィアにそれを送りたいんだ。

      恐らく必要になるだろうから、花束を私が届けに行く。それを受け取ったら、お互い話をしよう。昔サイトのカフェでよく飲んだエスプレッソでも用意して、語るべき物語を語ろう。

      融彩界は、一言で言うなら「この世全ての色が混ざり合った世界」である。水の混じった絵の具を混ぜたかのように、僕を取り囲む一面の色が蠢いていた。それは大きなパレットの球体であり、その中心に僕は立っていた。地面には色がなかった ― あるいは「透明」という名の色がそこにあった。

      色の蠢く様がまるで藻搔いているかのようにも見え、僕は動揺した。それらの色は、見た事があるはずなのに、見覚えのないものだったからである。その色を表す言葉も、喩える言葉もこの世には無いと思えた。空しいことに、僕はそれを喩える語彙の1つも持ち合わせていなかった。

      もう少しだけ見てもらいたいと言うかのように自己主張する色彩から圧を感じ、目を逸らそうとしても、逸らした先にはまた同じ光景が広がっているのである。しばらくのやるせなさを覚えた後、僕はこれらの色が「人類に忘れられた色」なのではないか、などと思った。

      かつてこの世を構成していたが、何らかの理由で姿を消してしまった色彩。今の世界に使われている色彩に混じって、それは蠢動していたのだ ― 事実無根の考察に過ぎないが、僕はそんな物語を想起した。

      その瞬間だけ、僕の色褪せた心は、鼓動と共にその輝きを取り戻したと思う。


      .


      研究報告および通知

      SCP-3000-JPの分析が進みつつあります。彼女の能力は「幻覚作用を持つ花の生成」ですが、最初の報告で「生成時に空間が歪曲していた」とあるように、そこには現実改変と似た要素が含まれています。当時の報告書には「現実変容力」と書かれていましたが、これはかなり昔の名称です。今ではこの分野の研究が進み、これは「現実改変」と名付けられています。近いうち、ファイルの改稿が必要でしょう。

      それはさておき、彼女は現実改変能力者に分類できますが、これには2つの可能性があります。1つは、彼女が単純に花の生成しか出来ないのか。もう1つは、彼女が万能な現実改変者でありながら、それを「花の生成」のみに意図的に絞っているだけなのか。

      会話から察するに、後者の可能性が高いでしょう。後者の場合、非常に強力な実体である事が予想できます。エステリア、あなたにはそれを探ってもらいましょう。彼女は能力を隠したがっていますから聞き出すのは難しいかもしれませんが、最も彼女と上手く付き合えているあなたにこの任を託します。幸い時間はたっぷりとありますから、別件の研究が終わってからで構いません。


      .

      .

      .


      収容提言

      SCP-3000-JPの現実改変は、今ではスクラントン現実錨という装置で制御できる異常性です。極端に言えば、現実錨で取り囲んだ収容室に彼女を連れ込めば収容は可能です。当初の目的である「真の能力を明らかにすること、収容技術が充分なレベルに達すること、異常を解明すること」、このうち前2つが達成できる状態になったと言ってもいい状況でしょう。

      ただ、私はそれでも、収容すべきではないと思っています。その理由はやはり、収容の必要性が薄いからという一点に絞られます。彼女は花を生み出す以外に能力を使っておらず、人間と関わる事もなく、あの花園に居たがっているだけです。収容できるからという理由だけでそれを奪ってしまって良いのでしょうか?

      収容という行為は、これまで培ってきた信頼関係を破壊し、相互理解から程遠い不信の状態にしてしまいます。この50年、私達は遠隔監視のみで実質的な野放しの状態に彼女を置いていました。それで何も問題が生じなかったのですから、このままで良いとは思いませんか?

      もちろんタダでとは言いません。花園の周りにいつでも起動できる現実錨を埋め込むなどの措置をとった上で、です。私はここに、現地管理の継続を提言します。

      SCP財団 サイト-8135 博士
      エステリア・セリーヌ

      返信: 時に、収容のジレンマは重要な議論の的となる。収容せずとも問題のない生物を収容すべきなのか。「今は問題なくとも後に問題になるかもしれない」と述べる者もいれば、「収容する事で友好関係を失い、その生物が持つ固有の知や文化を知る機会を失くす」と述べる者もいる。

      どちらも正しい。収容しないリスクも、収容するリスクも、どちらも容認しがたい。こういった議論が紛糾した結果、どちらに絞る事もできず、今では「時と場合によって対応を変えるべき」という言説が支配的になった。

      収容の必要性に疑問を抱くようになった財団はやがて、ArchonやTiconderogaといった収容の不必要性に関連するオブジェクトクラスを開発するようになった。つまり、今の財団には君の提言を承認できるだけの土壌があり、そして私にはそれを決める権限がある、という事だ。

      結論から述べよう。私はもう既に、何層もある官僚機構の向こう側にいるO5達と話し合い、君の提言を承認させた。私は収容しないリスクよりも収容するリスクの方が大きいと判断した。彼女の述べた幻想性は、科学で理解能わざるを理解しようとする私達が忘れてはならない概念であり、彼女からそれを奪ってしまえば、私達は世界に根差す重要な何かを1つ失う事になるからだ。

      これを承認できるのも、収容せずとも問題なく管理できるような技術力の向上による恩恵が大きい。収容技術の向上が収容以外の選択肢を開拓してくれたというのは興味深いが、ともかくその恩恵に感謝しなければらなないだろう。

      それに私達サイト-8135の人間は、他の者に遅れを取ってはならないのだ。前時代的な考えから脱却し、新しきを求める。「我々は旧い考えに囚われず、常に一歩先を征く」という先代管理官の教えを、私は受け継がねばならない。

      SCP財団 サイト-8135 サイト管理官
      ランヴァルド・ユウ




        • _


        RAISA通達
        以下のファイルは2010年に作成されました。
        最新のバージョンです。
         

        ファイル - 2010/11/19

        №: 3000-JP
        LEVEL3
        収容クラス:
        euclid
        副次クラス:
        {$secondary-class}
        確保クラス:
        {$disruption-class}
        保護クラス:
        {$risk-class}
        nemophila-3.png

        SCP-3000-JP-1。

        特別収容プロトコル: SCP-3000-JPの住む花園を取り囲むようにして待機中のスクラントン現実錨が12機埋め込まれたほか、上空には現実改変妨害波を照射できる財団衛星が回遊しており、有事の際はサイト-8135の判断でこれらが起動される事となっています。

        説明: SCP-3000-JPは数十万年の寿命を持つと考えられる、フラヴィアという名の女性です。SCP-3000-JPは万能型クラスIX現実改変能力者ですが、普段はその能力をSCP-3000-JP-1、幻覚作用のある花の生成のみに絞っています。




        私信

        時が過ぎるのは早いもので、私はいつしか、"異常を追って解明する研究者"から、"その者らを監督する責任者"の立ち位置になってしまった。フラヴィアとも最近会えていない。異常性の解明がもう間近に迫っているし、私自身も年老いてしまったから、会う機会も無くなってしまった。

        ここ最近、ずっと彼女の言葉を反芻している。「私の寿命が永いこと、私が花を生み出せること、それに意味なんて要らない」。彼女にとって世界の幻想はただそこに在るだけで良い、しかしそれは財団の理念に真っ向から反している。彼女の想いとは裏腹に、私は研究プロジェクトの長として、寿命の永さに、花の創造に、科学的な解明を主導している。

        それは仕方のないことだ。だが、科学が幻想を解き明かしてしまったと聞けば、彼女は悲しむだろう。ランヴァルドよ、私に何か出来ないものか?



        通告

        現実改変についての通告です。現実改変はこれまで一部の組織にのみ通用する単語として存在していましたが、今や現実改変に関連する知識は体系的にまとめられ、制御可能で、技術として転化できるモノとしての意義を強めています。ここ最近は、一般社会の学者も自力で現実改変の論理に辿り着くケースがあり、それを封殺するのも無視できないコストになっているほか、封殺する事それ自体の意義が疑問視されています。

        そこで私達は、今後50年以内に、現実改変を解明済み科学として正式に公開する事を取り決めました。混乱を招かないために数十年かけて一般社会に明かしていく予定ですが、この取り決めにより400以上のSCPがExplainedクラスアノマリーに再分類されるでしょう。

        研究報告

        SCP-3000-JP-1についてです。この花の構成物質はある程度分かっていましたが、なぜ幻覚作用があるのかはこれまでよく理解されないままでした。

        しかし先日、SCP-3000-JP-1の花弁にある、現実改変によって生じる特殊な微粒子が、人間の皮膚に吸着すると幻覚を見せる電気信号を与える、という機序が明らかになりました。人によって幻覚の種類が異なるのも、その電気信号と対象の脳との相互関係によるものでした。少し前に現実改変が解明済み科学となるという話がありましたが、それに照らし合わせるとSCP-3000-JP-1は科学的に解明できたものとなるので、ナンバリングが解除されることになりそうです。

        となると、今後はこれを“幻覚作用のある花”と呼ぶことになりそうですが、これは何とも風情がないとは思いませんか。特別な花に名前が無いというのも変な話ですから、名前を付けてあげるのはどうでしょう?

        博士、最も長くこの花と付き合ってきたあなたにこそ、名前を付けてもらいたいです。


        .


        私信

        エステリア。確かに科学はいつか全ての幻想を解き明かしてしまうかもしれない。でも僕の仮説では、そうはならない。正式に公開していない仮説だが、君だけにそれを送るよ。

        [暗号化済メッセージ,閲覧権限なし]

        僕が正式に財団情報誌にこれを公開したら、これはフラヴィアに言ってもいいが、どうだろう?彼女の全てがもうじき解明されるからこそ、これを伝えることには大きな意義があるんじゃないか?


        .


        研究報告

        SCP-3000-JPの寿命に関する研究報告です。現実改変者はその能力を用いて身体を若く保っている例があるため、彼女もその一例だと思ってこれまで研究が続けられていました。しかしそれは誤りだったようです。

        彼女の肉体は普通の人間とは異なる特殊な細胞で構成されており、周期的に一定の状態へ自己修復する性質を有している事が分かりました。これを可能としている細胞内構造体がペルシオームという液状の物質なのですが、これはエルフや妖精、ドラゴンのような長命種にのみ見られるものです。

        要するに彼女は現実改変で長命を得ている訳ではなく、他の長命生物と同じ方法で長命になっているだけです。更に言えば、人間とは異なる知性種族については混乱を招くため一般社会には存在を公開していませんが、公開していないというだけで、ペルシオーム関係の知識は非異常なものです。

        つまりSCP-3000-JPの長命は、全く異常ではない原理によって成立しています。


        .


        私信

        ランヴァルド、あなたに頼って正解だった。あなたの美しきを見る心は未だ色褪せてなどいない。

        私も最後の火花を輝かせようではないか。


        .

        .


        評議会より通達

        エステリア・セリーヌ殿

        SCP-3000-JPに関する研究プロジェクトの指揮、大変お疲れ様でした。半世紀以上にもわたる研究は財団でも稀なものであり、その道は前途多難であった事でしょう。あなたの忠誠と能力に感謝します。

        さて。私達O5評議会が少し前に、現実改変を含むいくつかの超常知識を解明済み科学として一般社会に公開していくと取り決めたことはご存知かと思います。この取り決めは、一般科学の進展および収容資産の逼迫を主な要因としますが、ともかくこの事項により、決して少なくない数のSCPがExplainedクラスに再定義される事になりました。

        それに関し、先月あなたから送付された研究報告書には、SCP-3000-JPの長命や現実改変能力は将来的に非異常となる科学で説明可能であるとの旨が記載されていました。よってSCP-3000-JPを今後Explainedアノマリーとして再分類し、3000-JPスロットを空けることをここに通告します。また、将来公開される予定となる改訂報告書の草稿を近日中に作成し、RAISAによる審査を受けることを指示します。

        SCP財団 評議会員
        O5-8


        .

        .


        私信

        彼女に会う。これで最後だ。


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          RAISA通達
          以下の文書は審査中です。
          審査通過後、財団内に公開されます。
           



          SCP-3000-JP-EX



          アイテム番号: SCP-3000-JP-EX

          オブジェクトクラス: Explained

          特別収容プロトコル: SCP-3000-JP-EXは石鎚山に留まることを望んでおり、それを尊重しつつ一般社会から隔離するため、バリケードと待機中の現実錨に囲まれています。サイト-8135はSCP-3000-JP-EXを監視しています。

          説明: SCP-3000-JP-EXはフラヴィアという名の、数十万年の寿命を持つクラスIX現実改変能力者です。これらの異常性は解明済み科学によって説明可能なものであることから、Explainedクラスに再指定されました。

          SCP-3000-JP-EXは能力の範囲を、幻覚作用を有する花の生成のみに絞っており、その花が一面に咲いた花園の中心で空や星を眺めることを好んでいるようです。

          エステリア・セリーヌ博士は、この花を啓密花Unveilabloomeと名付けました。


          nemophila-colored.jpg

          啓密花。

          nemophila-colored-mobile.jpg

          啓密花。







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