
愛妻近影
アイテム番号: SCP-3000-JP-J
オブジェクトクラス: 𝙐𝙣𝙘𝙤𝙣𝙩𝙖𝙞𝙣𝙚𝙙 𝙏𝙝𝙖𝙪𝙢𝙞𝙚𝙡 𝙇𝙤𝙫𝙚
特別収容プロトコル: 私はSCP-3000-JP-Jを妻とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、収容に違反したときも、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓います。この確固とした決意の言葉を、特別収容プロトコルの詳説に代えさせていただきます。
2022年5月28日 小鳥遊 貴志
説明: SCP-3000-JP-Jは私の妻となるであろう女性人型実体です。オブジェクト 彼女は私が中2の頃から妄想していた長編ダークファンタジーのヒロイン「シモーネ・フランツィスカ・エスターライヒ」嬢であり、亡国の神代魔法を使いこなす、クールで麗しき大魔導師です。空想科学部門の学術知識と在野の超常技術、及び彼女への揺るぎなき愛を組み合わせることで、ここ基底次元への召喚に成功しました。現実への転移に伴う形質劣化は0.00%であり、これは作中のシモーネ嬢そのものが出現したことを意味しています。
というわけでですね、これから彼女に告白したいと思います!いやー緊張するなあ!
プロポーズログ
[記録開始]
小鳥遊研究員: へゃ、へへ……やっと会えたね、シモーネちゃん。
SCP-3000-JP-J: 誰よアンタ。
[記録中断]
致命的な論理破綻があったため、SCP-3000-JP-Jとの婚姻プロセスは失敗に終わりました。現在、カバーストーリー("私は異世界「ニホン」の首席賢者であり、魔王軍討伐の助力を乞うべく、魔法使いとして高名な貴殿を召喚した。突然の召喚のお詫びとして、最大限のもてなしをさせて欲しい")を適用し、彼女を家に留まらせつつ、今後の収容策を全力で検討しています。
財団の監視の目をくぐりつつ、PAMWAC掲示板の有識者に意見を募ったところ、以下のような案が提出されました。
素直に好きだと口説く 顔が良ければ落とせる
却下。彼女は物語の主人公に恋をしており、初対面の人間が口説き落とすのはあまりにも無謀な試みである。こんなもん最初から気付くべきだった。
自分が創造主であることを打ち明ける
却下。創造主であると説明しても、抱かれるであろう感情は愛ではなく「崇拝」または「嫌悪」ではないか?そうなった時点で、健全に付き合うことは極めて困難となるだろう。
財団に通報した 機動部隊がやってくるから彼女を守って吊り橋効果を狙え
それが本当の場合、私など秒で無力化されるので無理。
え、マジで通報したの?
適当に最強装備召喚してさ、機動部隊に勝てば惚れるんじゃない?
俺自体のステータスはレベル1なんだが 精神攻撃で終わるわそんなん
純愛は諦めて強引に行け [編集済]だ
最強装備を使えば理論上は可能。でも嫁にんなことできるわけないだろしねかす
催眠魔法とかそういうの使えば?
そこまで堕ちたくはない……
媚薬で即落ちですよ
抜きゲーじゃないんだよ
一旦送り返して、主人公を好きじゃない、むしろ嫌いな状態のシモーネちゃんを召喚するというのは?
それは作中のシモーネと言えるのか?理想上の嫁と言えるのか?
お前もうパラオタク向いてないよ 技術はあるのに純情すぎる
…
インシデントログ
[記録開始]
[小鳥遊研究員はスレッドをそっと閉じ、SCP-3000-JP-Jを見やる。彼女はPanasonic社のマッサージソファにもたれつつ、あずきバーを片手に相撲中継を眺めている。]
小鳥遊研究員: ど、どうですか?我が国のおもてなしは。
SCP-3000-JP-J: まあ……うん。悪くはないわね。とてもエキゾチックだわ。
[そうは言っているものの、彼女の身振りからは退屈が見て取れる。]
SCP-3000-JP-J: それで、ここの魔王軍とやらはいつになったら攻めてくるの?そろそろ、タカシ達の所に戻りたいんだけど。
小鳥遊研究員: あ、あの、えっとですね、あの、実は……実は一つ、隠していたことがありまして……
SCP-3000-JP-J: [訝しげに] ふーん?何かしら。
小鳥遊研究員: ええっと、つまりその、僕はあなたの……その……ああ……。
SCP-3000-JP-J: 賢者なんだから、いい加減はっきりしなさいよね。
[暫しの沈黙。意を決する小鳥遊研究員。]
小鳥遊研究員: 僕はあなたの……ファンです。ファンなんです。
SCP-3000-JP-J: ファン?
小鳥遊研究員: ええ……はい。皆さんの冒険については、魔法のノートを通して、始終拝見しておりました……その中でも、特に貴女、シモーネ嬢の活躍には目を見張るものがあった!氷神アイス=ヴァインを倒した時の、あのシビれるような機転ときたら!参謀役としての振る舞いも、時折見せるお茶目な仕草も、一切合切が大好きなんです!
SCP-3000-JP-J: あらまあ、ずっと見てたの?それはちょっと、いやかなり……恥ずかしいわね。というか…… [顔を赤らめる] あなたまさか、あんなとこやこんなとこも見てたんじゃないでしょうね?この変態ヒューマン!
小鳥遊研究員: いやいやいや、大丈夫です大丈夫!かなりほんと、硬派なやつなんで、そんなシーンは書き…… 見ませんでした!
SCP-3000-JP-J: 本当かしらぁ?けど、まあ……異世界にも冒険が知られるってのは、なかなか嬉しい話ね。お褒めの言葉、有り難く頂戴しておくわ。それで、話は戻るけど、魔王軍はいつ──
小鳥遊研究員: [満足した顔で] 機は、熟した。
SCP-3000-JP-J: はぁ?何よいきなり。
小鳥遊研究員: いやあ、申し訳ない。実はですね、貴女の召喚でだいぶ魔力を使っちゃいまして。これまでずっと、マナ的なアレを溜めてたんですよ。いやはや、たいへん長らくお待たせしました。……それでは、出でよ勇者達!
SCP-3000-JP-J: ちょ、ちょっと。何よコレ!?
[小鳥遊研究員は自作の装置を起動し、残りのパーティーメンバーを召喚していく。一行の姿を見て、SCP-3000-JP-Jは安堵の表情を浮かべる。]
SCP-3000-JP-J: タッキー!みんな!やっと会えたわ!
[SCP-3000-JP-Jは主人公の青年、ヴェルナー・フォン・タカシにかけより、強く抱擁する。]
小鳥遊研究員: うん、うん……。主人公: おいおい、どこ行ってたんだシモーネ!というか、ここは一体……何処なんだ?
戦士: クソみたいに狭めぇな。犬小屋か何かか?
SCP-3000-JP-J: あら、こう見えてけっこう快適なのよ?賢者曰く、「愛の巣」とか何とか……
小鳥遊研究員: ははは……。
戦士: ……なあ……このおっさん……誰?
巫女: はわわ、頭を振りながらニタニタ笑ってるのです。
主人公: こやつ、悪魔の手先か……?
SCP-3000-JP-J: ああ、紹介が遅れたわね。彼は異世界ニホンの首席賢者、タカナシ・タカシよ。
小鳥遊研究員: あ、ええ……そうですね。タカシです。賢者やってます。
巫女: はわわ、賢者様でしたか!馬鹿2人が失礼しました!
主人公: タカシか……私の名字に似てるな。よもや貴殿、ハイウィズダムの里の出身か?
小鳥遊研究員: あー、うーん……まあいいや。それで、えー…… [強く目を瞑る] みんな、ごめん!
[小鳥遊研究員は一行に向かって土下座をする]
小鳥遊研究員: いきなり呼び出してしまって、本当にすみませんでした。けど……この世界の魔王軍は、僕たちの力ではどうにもならなくて……。不死身の魔竜に緋色の魔王、腐肉の魔獣に混沌の……まあとにかく、とんでもないモンスターがうじゃうじゃいるんです。もう明日にでも世界が滅亡しそうなんですよ。そこで、えー……人類を代表して、私から頼みがあります。"神殺し"の渾名を持つ皆さんに、この世界を救って頂きたいんです。俺みたいな厄介ファンが言うのもなんですが……どうか……
小鳥遊研究員: 皆さんの、外伝を、見させてください!
[記録終了]
紆余曲折ありましたが、ご覧のように、Thaumiel級技術の発明、およびThaumiel級アノマリーの生成・維持に成功した次第です。寛大なる処遇を何卒お願い申し上げます。
小鳥遊研究員
いやまあ、大局的に見れば、確かに大手柄だとは思うよ?でも結局のところ、これってアノマリーの私的濫用なのよね。報告書も私情挟みすぎじゃない?GoIに色々漏らしちゃてるしさあ。おまけに、機動部隊との応戦で町に被害出まくり。誤解が解けるまで財団に被害出まくり。エトセトラエトセトラ……
宇宙ウロボロスと彼らの決着がつき次第、小鳥遊君から首席賢者の職位を剥奪し、懲戒処分とする。財団日本支部理事 "升"