SCP-3001-JP
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SCP-3001-JPの外観

アイテム番号: SCP-3001-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 毎年の現地時間06/02/00:00~06/03/00:00の期間中、SCP-3001-JPの出現ポイント周辺海域はカバーストーリー「ドミニカ共和国海軍の軍事演習」により封鎖します。

SCP-3001-JP、およびSCP-3001-JP-1への敵対行為は禁止します。敵対的と見なされる行為は、現時点で判明しているものはSCP-3001-JPの拿捕、SCP-3001-JP-1の捕獲、SCP-3001-JP-1の指示の無視ですが、他にも存在する可能性に留意して下さい。

SCP-3001-JP-2摂取実験の被験者は、基本的にはDクラス職員から選定されますが、他クラス職員の志願も可能です。実験後の記憶処理の可否は、被験者担当の心理カウンセラーが判断します。

[追加項目] 現時点ではSCP-3001-JP-2の新規のボトルキープは禁止します。

説明: SCP-3001-JPは船名・所属共に不明の帆船です。毎年の現地時間06/02/00:00にカリブ海上の一定のポイント(██.██████、-██.██████)に出現し、06/03/00:00に消失します。出現・消失時は海中から浮上・沈下しているように見えますが、船体が全く濡れていない点や、海面下のSCP-3001-JPが観測出来ない点から、実際には海面上に生成された不可視のポータルを出入りしていると推測されます。

SCP-3001-JPに関する最古の記録は、1680年のイギリス領ジャマイカ総督への報告書中の「聖エルモの日1に不思議な船が現れる」という記述と考えられていました。しかし、最近の研究では、大航海時代以前の原住民の伝承にもSCP-3001-JPらしき存在が登場することが判明しており、その起源はさらに古い可能性があります。

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接客中のSCP-3001-JP-1

SCP-3001-JP-1はSCP-3001-JPの唯一の乗組員と自称する人間型実体であり、外見上はコーカソイド系の中年男性です。SCP-3001-JPは主に船内バーのバーテンダーとして振る舞います。客に対しては極めて礼儀正しく接しますが、素性に関する質問は毎回返答が異なり2信憑性がありません。

SCP-3001-JP-1はバーに来店した客の約25%に対して、「前世で来店した際にボトルキープ3した酒類を飲むか」と質問します。この酒類(以下、SCP-3001-JP-2)に関して、SCP-3001-JP-1は「ボトルキープした人物の記憶を蘇らせる酒」であると説明しています。

客が了承してSCP-3001-JP-2を摂取した場合、鮮明かつ一貫性を備えながら、明らかに本人が経験し得ないエピソード記憶を想起します。その際、客は「前世と同じ失敗を繰り返してしまった」と激しく苦悩し、約85%の確率で中度以上の抑うつを発症します。記憶及び抑うつはDクラス記憶処理で消去可能です。なお、SCP-3001-JP-2を他の客に摂取させた場合は、この効果は生じません。

SCP-3001-JP、およびSCP-3001-JP-1に対する敵対行為を試みた場合、関与した人間4はカリブ海上のいずれかの島に強制的に転移させられます。そのためSCP-3001-JPの物理的確保は成功していませんが、出現期間が短い上に、出現ポイントが限定されている点から、現時点ではオブジェクトクラスはEuclidが妥当と判断されています。

SCP-3001-JP-2摂取実験ログ抜粋(全文は研究本部のサーバーに保管)

担当者: ハルトマン博士(通信で指示)
被験者: D-8610


〈前略〉

[D-8610がバーに入店する。店内にはジャズ調の曲が流れているが、曲名は特定されていない]

SCP-3001-JP-1: いらっしゃいませ、お久しぶりでございます。

D-8610: あ、ああ。[通信で]先生、当たりみたいだぜ。

ハルトマン博士: よろしい、予定通りに。

[D-8610が着席する]

SCP-3001-JP-1: 現世では何とお名乗りに?

D-8610: げ、現世? いや、親が付けた名前は█████・████だが。

SCP-3001-JP-1: では、████様、前世でボトルキープなさった品がありますが、お出し致しましょうか?

D-8610: 何をキープしたんだ、その、前世の俺とやらは?

SCP-3001-JP-1: おや、お忘れですか。[棚からボトルを取り出す]名も無き沈没船から回収された、年代物のラムでございます。

D-8610: おお、ラムなら好きだぞ。コーラ割で頼む。

SCP-3001-JP-1: かしこまりました。

[SCP-3001-JP-1がSCP-3001-JP-2をグラスに注ぎ、D-8610が摂取する]

D-8610: [脱力した様子で]ああ、ああ、そうだった。俺は、私は。

ハルトマン博士: 辛いかもしれんが、記憶が鮮明な内に話してくれ。まずは、前世の名前と職業を。

D-8610: [数秒沈黙して]キッド、ウィリアム・キッド5。船乗りだ。

ハルトマン博士: 何だって、キャプテン・キッド? いや、まあ、よろしい。あとは自由に話してくれ。なるべく時系列順だと助かるが。

D-8610: 一番古い記憶は、教会で父親の祈りを聞いている場面だ6。もっとも、私は窓の外の海にうつつを抜かしていたが。ああ、海への憧れこそ、私を生涯突き動かし続けた衝動だった。

D-8610: 次に印象に残っているのは、初めて船長を任されたブレスト・ウィリアム号の勇姿だ。私はあの船と共に、カリブ海を駆け巡り、海賊どもに正義の砲撃を加えたのだ! [奇声を上げて]ざまあみろ、政府の豚どもめ! 俺たちを虐げた報いだ! おお、奴らの脂はよく燃えるなぁ。

ハルトマン博士: Dクラス君、落ち着いてくれ。本物の記憶7と混同していないか?

D-8610: あ、ああ、すまん。[深呼吸して]その後、私は静かな暮らしを求めて、ニューヨークに移った。部下だったカリファドに島に置き去りにされたりして、さすがに疲れてな。そして私は伴侶と出会い、船を降りて商人になった。妻は、サラは未亡人だった。二度と寂しい想いはさせたくなかった。それなのに、ああ、私は海が恋しくなって、船乗りに戻ってしまったのだ。妻よ、許してくれ。これ以上、政府に好き勝手させる訳にはいかないんだ。

D-8610: ベロモント伯爵が私掠免許を出してくれたが、久しぶりの航海は苦難の連続だった。海軍の強制徴募に人員を取られ、標的には一向に出会えず、部下どもが反乱を起こす寸前で、ようやく我がアドベンチャー・ギャレー号はフランス船の拿捕に成功した。

D-8610: 船内はまさに宝の山だった! 黄金、宝石、絹、総額50万ポンドは下るまい! これで私は英雄だ。サラも喜んでくれる。そう思って、意気揚々と帰途に着いていたら、思いも寄らない噂が飛び込んできた。[残ったSCP-3001-JP-2を飲み干して]私が本国で海賊呼ばわりされていると! 馬鹿な、あの船は確かにフランスの通行証を持っていたぞ!

D-8610: 釈明に戻った私に、伯爵は会ってくれなかった。あの臆病者め! どうせ、トーリー党の連中に非難されて、怖くなったのだろう。死刑!? 違う、私は海賊じゃない! 俺はテロリストじゃない! 私は、俺は、英雄になりたかったんだ! [頸部を掻き毟りながら]縄が、縄が、苦しい、サラ、████8

ハルトマン博士: Dクラス君、大丈夫かね?

[D-8610が昏倒し、SCP-3001-JP-1が水を与えて介抱する]

D-8610: [意識が混濁している様子で]ああ、俺はまた、妻を一人にしてしまったのか。

〈後略〉


付記: 実験中のD-8610の叙述は、史実のキッドとの明確な矛盾はなかった。D-8610は重度の抑うつを発症したため、Dクラス記憶処理が実施された。記憶処理後にD-8610に行った聴取では、キッドに関しては名前程度しか知らなかったことが判明している。

 
 
 

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