SCP-3007-JP
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大きな機械がぞろぞろとサイト-8129の旧研究棟に運び込まれていく。シャンク-アナスタサコス恒常時間溝とシャンク=スクラントン因果擾乱器だ。シャンク=スクラントンの方は財団全体でも数機しか保持していないほど貴重かつ危険な代物だ。機動部隊達は物々しい姿で旧研究棟を取り囲んでいる。

私は警備員に囲まれながら白い殺風景な部屋に到着する。そして命令された通りにギシギシと揺れる机の上で遺書を書いた。つらつらとありもしない本心を御託へと書き綴っていく。苦しい。


SCP-3007-JP、それはこの世界の便利なゴミ箱だった。


世界にとって都合の悪い奴を喰らい、別世界へと運び、それ以降奴らが帰ってくることは無い。

今回の探査は私がそのゴミ箱へ行き、そこがどうなっているかを見てくるという体裁を取っている。

私は数ヶ月前にクリアランス違反を犯した。SCP-3007-JP報告書を読んだのだ。担当してもいない旧Keterクラスオブジェクトの報告書を。

私に存在したたった1人の友人はSCP-3007-JPに飲み込まれた。理由はわかっている。高ヒューム空間への探査、その過程での3007-JPの出現。付近の空間ごと飲み込まれたというわけだ。当然彼は行方不明になった。

私はSCP-3007-JP内部探査に適任であると言われた。当然だった。SCP-3007-JPを知っていて、クリアランス違反を犯している。そしてそこそこ財団にも務めている。

要するに、名目は内部探査、実情は違反者の処刑だ。

遺書を書き終わると、目の前に人1人が漸く乗れる様な複雑な装置が鎮座していた。

「ジェフスキー重力撹乱機、シャンク-アナスタサコス恒常時間溝のセットが終わりました。これよりシャンク=スクラントン因果攪乱機のスイッチを入れます。ご搭乗を。」

「こんな犯罪者に手厚いケアをありがとう。」

窓に映る橙色の空は、この世界がまるで私を引き止めているようだった。

二度とここへ帰っては来れないだろうが、最善を尽くすしかない。

「因果攪乱機を稼働させました。これより旧研究棟から撤退します。」



周りの景色が濁った灰色に変わる。



「内部ヒューム値を1000Hmまで上昇させます。複雑な現実改変イベントが発生する可能性があります。機動部隊はより一層周囲の警戒を。」



涙が自ずと出てしまう。こんなゴミ箱に入れられるのが私の人生の最期でいいのだろうか。






前方には赤黒いポータルの出現が確認できる。









装置はガタガタと揺れ、ジェフスキー重力撹乱機の数値はワームホールへの侵入を示している。











私は目の前に広がる風景を見て、現実を見ているとは到底思えなかった。

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