無許可のアクセスは禁止されています。

エリア-3K-19。
特別収容プロトコル: SCP-3009-JPは3Kサイト群エリア-19の管理下に置かれています。エリア-3K-19はプロジェクト・X/パンサPROJECT X/PANZA (補遺3009-JP/III参照) の割り当てサイトであり、同計画の割り当て職員のみが入場を許可されます。エリア内の職員の制限は標準プロトコルに準じます。
SCP-3009-JPは常に活性化状態を維持し、全世界に影響を与え続ける必要があります。その主要な管理・運用は、適切に訓練された人工知能徴募員ユニット "Rucio.aic" によって行われます。情報統制部門・ミーム部門・オントキネティクス部門・空想科学部門から選抜された人員で構成される保守・管理セクションがSCP-3009-JPの運用を監督し、稼働状況を常に監視します。SCP-3009-JPの本体および電力供給システムは、AICによる定常的な自動点検とは別に、週に1回手動による点検が行われます。
SCP-3009-JPによる影響を測定するために、無作為に選出された80名のDクラス職員が監視対象群π-3に指定され、SCP-3009-JPの影響下に置かれた状態で収容されます。少なくとも週に1回、監視対象群π-3に対して測定と簡易カウンセリングが実施され、SCP-3009-JPの影響の評価が決定されます。監視対象群π-3の人員には、これらの任務は褒賞としての休暇であると説明されます。

SCP-3009-JP。
説明: SCP-3009-JPはプロジェクト・X/PANZAの運用のために財団が設計・開発した固有兵器である、固有下位物語領域拡張制限装置 (Eigen sub-narrative domain Expansion Limiter Device) - EELデバイスです。SCP-3009-JPは知性体が生成・保有する固有下位物語領域に干渉して内部の因果変動を制限することで、ストーリーラインの突飛な改変 — すなわち想像における現実的な思考からの逸脱を選択的に抑制します。SCP-3009-JPの主目的は、カバーストーリーへの懐疑的思考を抑制し、財団および超常社会の存在が民間に露見する可能性を低減させることです。
単一の知性体の思考に依拠する下位物語構造体のこと。知性体が空想上の出来事を想像するために操作するために使用される。一般的には通常の下位物語よりも抽象的で流動的な、不安定な状態で存在するため、上位物語に対してより強く従属し、より大きく影響される。より平易には、想像宇宙やポケット物語とも呼ばれる。
SCP-3009-JPはその目的の遂行のために、合意的社会を忠実に再現して作成された下位物語構造体 (SCP-3009-JP-Aに指定) が疑似固有接続され、同時に多数の副次的な物語複合体 (SCP-3009-JP-Bに指定) が犠牲宇宙として接続されています。その性質のため、SCP-3009-JP-Aは必要に応じて更新・編集が実施される以外に改変されることはありません。倫理的観点から、SCP-3009-JP-Bは現実性を供給できる最小の物語構造体のみで構成されます。
SCP-3009-JPは、SCP-3009-JP-Aを参照して、SCP-3009-JP-Bから吸引した現実性を供給することで、対象の固有下位物語領域に正常性コンセンサスに基づいた現実を浸透させ、内部の現実性変動・因果変動を制限します。これにより、対象の思考からアノマリーの発想可能性が除去され、カバーストーリーの有効性が有意に上昇します。
起源: SCP-3009-JPは、開発当初はプロジェクト・X/PANZAの前身であるプロジェクト・パンサの運用のための汎用ミーム兵器でした。プロジェクト・パンサは1992年に情報統制部門・ミーム部門の共同で提案された大規模な偽情報活動計画であり、同時期に検討されていたアザック・プロトコルとの併用を前提に、ミームによる誤情報の効率的な拡散を目的としていました。のちに承認されたプロジェクト・パンサは、始動から2010年代後半までのおよそ20年間にわたって効果的に収容活動に貢献し、2度のヴェール危機を抑止しました。
しかしながら、2010年代中期に実施されたアザック・プロトコルの機械化・一部縮小と、同時期に顕著化した超常的事件発生頻度の増加により、記憶処理剤の生産量の減少・消費量の上昇が同時に発生し、プロジェクト・パンサが要求される偽情報ミームの強度は許容上限に漸近しました。この問題を解消するために、当時の最先端研究であった現実錨プロジェクトを流用して再構築されたプロジェクト・X/PANZAが2019年に提言・承認され、増強されたミーム兵器はThaumielクラスのSCPオブジェクトとしてSCP-3009-JPに指定されました。
補遺3009-JP/I: 提言に関する会議
音声映像転写 O5/3009-JP/1 |
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日付: 2019/09/09 位置: エリア-3K-19 第3会議室 出席者:
前文: プロジェクト・パンサの再構築案についての議論のためにO5評議会が招集されましたが、スケジュールのために上記の4名が先行して公聴することになりました。以下の転写は、オーベッド管理官によってプロジェクト・パンサによるミーム的影響の状況に関する要約が行われたのちから開始されています。 |
<転写開始> |
O5-02: 状況は理解しました。ですが、これを承認することはできません。(間)いいえ、20年前の時点で、承認するべきではありませんでした。 オーベッド管理官: お言葉ですが、マム、我々の部門は少なくともこの20年間において、記憶処理剤の生産方法の問題を除けば十分にやってきたと言えますよ。 O5-08: 私は — 賛成します。 O5-12: 俺もだ。 O5-02: 貴方たち、正気なの!? 先ほどの説明で理解できなかったのかしら、私たちが提案されているのは「増強」で、それは問題を先送りにすることでしかないって? ジェフスキー管理官: 御三方、どうか結論を急ぐのは待ってください。マム、どうやら誤解があるようです。お二人も、お言葉は嬉しいですが — O5-12: (遮って)しかしだな、先の話を聞いて、むしろ首を縦に振る以外の選択肢があったようには思わなかったがね。 オーベッド管理官: 決して強制するつもりなど — ████管理官: (遮って)ええ、その通りです、サー。この会議で我々が焦点を当てているのは、もはや貴方方と議論を交わすことではなく、すべてを説明して貴方方の口から「イエス」を引き出すことにすぎません。決して一刻を争う事態ではありませんが、あれこれと試しているほどの猶予もまたないのです。特に、このプロジェクトは数ある中でもよいものであると自負していますよ。プロジェクトの説明に移っても? <O5-12が首肯する。O5-02が発言しようとするが、再び口を閉じる。> ████管理官: 我々が行おうとしていることはこうです; ミームによって正常を信じ込ませるのを廃止し、想像を制御して異常を信じさせないようにするということです。固有下位物語領域 — 想像宇宙について改めて補足しますが、これは通常の下位物語構造体とは異なり、思考の主の主観の上にのみ存在します。あらゆる知能は、知性を有する限り想像宇宙を有し、入力された刺激に反応して想像宇宙を変化 — というよりむしろ、上書きするように拡張させることで認識や空想を解釈しています。我々が提案しているのは、人々の思考そのものを収容することではなく、人々の思考の中にある異常を収容することです。 ジェフスキー管理官: そのために、民間人の想像宇宙へと現実性を供給し、正常性コンセンサスに則った認識を保たせることがこの計画の主眼です。すでに、安全で持続的で、且つ倫理的に現実性を供給し続けるための犠牲宇宙の生成手段は確立されています。 O5-10: 犠牲宇宙に対して、どのように倫理的であると? 私たちはSRAの例について知っていますが、この場合は何が想定されているのかしら? ████管理官: <挙手する。> はい。我々の現実と同様の時間と空間の次元を持ち、意味が発生しない — すなわち知性が発生しない程度に物語次元が低い宇宙では、ただ現実が存在するのみです。我々が犠牲にするのは真の意味で"宇宙そのもの"のみで、そこに犠牲にされることを知覚するもの — あるいは、知覚することは発生し得ません。 O5-12: 下位物語構造体における現実性と正常性は一致するのか? 現実的に安定しているからと言って正常性が安定する保証は? コールフィールド管理官: その点は検証済みで、問題ありません。忘れがちですが、本来、異常であることは非現実的であることと同じです。合意的現実を反映して生成された想像宇宙においては、現実的であることは正常であることと事実上同義なのです。 O5-08: 想像宇宙間での現実性のやり取りの際に、現実同士での現実性の — 在り方、つまり、現実の構成要素が異なる可能性はないのですか? ジェフスキー管理官: ええ、非常に良い質問ですね。回答としては、「そもそもそのような現実の構成要素は存在しない」です。現実論において、現実性は時折「砂の濃度」に喩えられることがありますが、実際に質量を持った何かが存在しているわけではありません。現実性とは、現実感であり、あるいは「現実であるという実感」です。先ほど彼が説明した通り — <ジェフスキー管理官はコールフィールド管理官を指し示す。> ジェフスキー管理官: — 現実は、一般的には正常です。想像主に強く従属している固有下位物語領域では特に、外部から流入した現実性はその世界に自動的に完全に適応することがわかっています。物語の位相が異なるため私たちの現実を安定させるには不十分ですが、私たちより下位の物語構造体同士では十分に利用可能です。 <████管理官が首肯する。> オーベッド管理官: そして、そうした「現実感」をミームによって微調整することで、偽情報活動が非常に容易になります。ですから、プロジェクト・パンサが実行してきたミーム拡散活動は大幅に縮小される見通しです。要求されるであろうミーム強度は許容上限の5パーセント前後となり — プロジェクト発足当時とほぼ同等です。この程度での攪乱性は非常に弱く、精神衛生上の健康被害も皆無と言えます。更に言えば、偽情報活動のために記憶処理剤が求められる場面も、大きく減ることとなるでしょう。 <オーベッド管理官がコールフィールド管理官へ向き直り、続いて一同が彼に注目する。> コールフィールド管理官: (咳払い)はい、その通りです。私たちの新プロジェクトは、記憶処理を部分的に代替することができるでしょう。これまでのような、記憶を消去してその空隙をミーメティックな偽記憶で埋め立てる作業は必要なくなります。偽記憶がなくとも、異常現象を一見正常に見せかけて説明することができるようになるためです。"異常な現実を、非異常な非現実で塗り替える"。私たちが為すことは何も変わりません。ただ、その手段がより最適化されるのみです。それに — <コールフィールド管理官は出席者をそれぞれ一瞥する。> コールフィールド管理官: — この場にいる全員とも、"アザック"で何が行われているか知っています。あの怪物の腹を肥やしてやる必要も、随分と減ることになるでしょう。 <録音上の沈黙。> O5-02: お待ちください。最も重要な点、人々の想像を制御すること自体の可否について触れられていません。 オーベッド管理官: 織り込み済みですよ、マム。想像を制御すると言いましたが、あくまで我々が収容するのは、人々の想像上の異常であり、想像上の我々です。今までずっと姿を隠してきた我々がついに誰にも見つけさせなくする方法を編み出したとして、一体誰がそれを気に掛けるでしょう? <録音上の沈黙。O5-02は熟考したのち、額を押さえながら手を水平に振る。> |
<転写終了> |
後文: 会議に参加した監督職員は全員が賛成票を投じました。続く第2・第3の会議の記録は別紙を参照してください。 |
補遺終了
補遺3009-JP/II: O5評議会投票
提言: 「プロジェクト・X/PANZAを承認し、再構築および増強のための資源を割り当てる。」
評議会投票概要:
是 | 非 | 棄 |
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O5-01 | ||
O5-02 | ||
O5-03 | ||
O5-04 | ||
O5-05 | ||
O5-06 | ||
O5-07 | ||
O5-08 | ||
O5-09 | ||
O5-10 | ||
O5-11 | ||
O5-12 | ||
O5-13 |
結果 |
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承認 (8-3-2) |
結果: 賛成多数で承認されました。管理部門が明示的に許可したのち、プロジェクト・X/PANZAが始動しました。
補遺終了
補遺3009-JP/III: プロジェクト概要
プロジェクト・X/PANZA
2019/10/14
マクシミリアン・H・コールフィールド
情報統制部門
目的: 固有下位物語領域の拡張性が異常存在を含む可能性を制限し、超常社会を秘匿する。
概要: 記憶処理資源の減少を補填する偽情報活動手段を開発する必要がある。従来の偽情報ミームを用いた正常性の維持は、それ自体が異常であるというジレンマを有し、設定された限度を超えて運用することは許容できない。これらの逼迫した問題を解消するため、現実論および物語論の研究成果から、正常性コンセンサスに反する発想を指向的に除去する長期的に利用可能な異常兵器を作成する。
方法: 固有下位物語領域拡張制限装置を開発する。EELデバイスは専門の割り当てサイトであるエリア-3K-19に収容され管理される。プロジェクト以前に使用されていたミーム出力機は、個々の固有下位物語領域の正常性を安定させるために使用を継続される。新たに追加される超常機器を含むEELデバイスの構成要素には以下に示す中枢機構が内包される。
セクションA: 中央演算ノードCentral Computing Node
中央演算ノードは、EELデバイスの自動制御機能を管理するための高密度計算機複合体で構成される。総支配コンピュータにはRucio.aicがインストールされ、前述の処理を行う。最外面に設置されたアンテナによって全人口の固有下位物語領域の状況を計算し、後述のミーム放射器の出力を調整する。保守・管理セクションへ直接接続する操作端末が設置されており、EELデバイスの手動操作およびSCP-3009-JP-Aの編集のために使用される。
セクションB: ████-ジェフスキー物語錨████-Rzewski Narrative Anchor
████/RNAは、入力されたストーリーラインに物語除外領域を生成し、保護対象が意図しない物語改変の影響を受けないようにするために設計された機構である。SCP-3009-JP-Aを包含することで、それが正常性コンセンサスを維持して存在し続けることができるようにする。Rucio.aicが参照するために、セクションAと完全に一体化して接続されている。保守・管理セクションがSCP-3009-JP-Aを編集する際には、作成された物語はRucio.aicによって自動的にエンコードされて████/RNAにアップロードされ、ストーリーラインの安定性を維持したまま改変する。
セクションC: ミーム的デルタ放射器Memetic Δ Radiator
伝搬性が非常に高いタイプ-Δ異常放射線によってミームを拡散する、ベリリウム-銅-鉛合金製のアンテナで増強されたミーム放射器.以前のミーム出力機の中枢であり、部分的に改造して流用された。。後述の現実錨によって安定化された固有下位物語領域が正常性を逸脱しないことを確実にする用途で使用される。
セクションD: スクラントン-コウルドマン現実錨Scranton-Caldmann Reality Anchor
SCRAはSRAのバリアントであり.SRAが別宇宙や異空間から現実性を吸引して自身の周囲を安定させるのに対して、SCRAは設置された対象から現実性を吸引して別の対象を安定させるという点で異なる。、接続された犠牲宇宙から現実性を吸引し、対象(EELデバイスの場合は全人口の固有下位物語領域)へ供給するためのポータルを生成・維持する機構。全人口への供給に対応するため、多数のSCRAが強連結のネットワークを形成し、常に十分量の現実性を出力可能になっている。犠牲宇宙が枯死した場合、保守職員によって新たな犠牲宇宙が挿入される。
更新 2020/04/09: EELデバイスの建造は最小限のインシデントのみで完遂されました。プロジェクト・X/PANZAは成功裡に始動され、安定した稼働を維持しています。
補遺終了
補遺3009-JP/IV: 実行ログ
前文: 以下は、SCP-3009-JPの正式な運用に先立つ実験的な試行および運用開始後の定例診断実施時の例示的な抜粋の目録です。
実験番号001 |
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対象: D-1911 |
付記: N/A |
結果: 対象の固有下位物語領域から客観化された派生物語構造体は、十分な現実性・正常性を維持していることが確認された。 |
備考: 対象は、正常性コンセンサスから逸脱しない知識を用いて — 確率的には信じられがたい理屈を交えて — 異常存在を合理的に説明することが可能だった。対象はこれらについて一切の疑念を示さなかった。 |
実験番号002 |
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対象: D-1920 |
付記: N/A |
結果: 対象の固有下位物語領域から客観化された派生物語構造体は、十分な現実性・正常性を維持していることが確認された。 |
備考: 対象は、正常性コンセンサスに組み込まれた超常的な概念 — "神がかり"やタイムマシンのような普遍的に理解されているフィクション的概念 — を用いて異常存在を半ば強引に理解した。このようなケースを排除することはそれ自体が正常性の攪乱に直結しうるため、許容可能であると見做されている.実現可能性が極端に低い発想は、その超常性に反して低い攪乱性を示す。。 |
6件の実験を省略 |
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実験番号009 |
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対象: D-1952 |
付記: 対象は試行前に幻覚剤を摂取し、酩酊状態に置かれていた。 |
結果: 対象の固有下位物語領域から客観化された派生物語構造体は、対象が影響下に置かれた直後から、幻覚症状による無秩序状態を脱し、急速に正常な状態に転換された。対象は依然として酩酊状態に置かれていたものの、無介入時よりも有意に短時間で覚醒した。 |
備考: 幻覚症状によって歪曲された神経入力が固有下位物語領域への反映される際に強制的に秩序化されたことで、その意味の有無にかかわらず半自動的に対象の覚醒を早めたことが示唆されている。 |
さらなる試行記録は別紙を参照してください。
以下は、SCP-3009-JPの運用開始後に行われた偽情報活動の例示的な抜粋の目録です。これらの活動の大部分は、オントキネティクス部門が主導したKant-WNETsによる現実改変実体の大規模収容キャンペーンを中心に展開されました。
調査番号001 |
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対象: ███・█████ |
付記: 当該活動は対象の邸宅の地下に存在している高ヒューム物体の回収任務を隠蔽するために行われた。対象には、「定点的に行われる地質調査の一環である」と説明された。 |
結果: 対象は一時的に協力を拒んだものの、説得により最終的にエージェントらに立ち入りを許可した。作業の間、対象の固有下位物語領域の現実性は常に安定しており、客観化された派生物語構造体には一切の疑念やカバーストーリーとの乖離は観測されなかった。 |
調査番号001 |
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対象: ████・███████ |
付記: 当該活動は対象が飼育している現実改変特性を持ったイエイヌ (Canis lupus familiaris) の回収任務のために行われた。対象には、「近隣で発生しているペット盗難との関連を目下調査中である」と説明された。 |
結果: 対象は比較的容易にカバーストーリーを受容し、さらなる詮索や懐疑の兆候は検出されなかった。 |
偽情報活動のさらなる記録は別紙を参照してください。
プロジェクト評価: 上記の収容活動・偽情報活動におけるプロジェクト・X/PANZAの貢献として、以下の事項が挙げられますが、これに限りません。
- 侵害行為に関する、カバーストーリー全体の受容率の上昇
- 物品の遺失に関する、カバーストーリー全体の受容率の上昇
- 人物・生物の失踪に関する、カバーストーリー全体の受容率の上昇
- 新規に提案された34種のカバーストーリーの利用可能性の証明
また、副次的な効果として、EELデバイスによる抑制効果は異常性を有する知性存在に対して、能力自体は制限しませんが、能力を行使することを制限できることが示されました。
補遺終了
補遺3009-JP/V: インシデントレポート
調査番号139-22 |
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対象: π3-22 (D-2469) |
付記: N/A |
結果: 対象の固有下位物語領域から客観化された派生物語構造は、十分な現実性・正常性を維持していることが確認された。 |
注: 下記を参照。 |
音声映像転写 PRE-E-3009-JP |
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日付: 2022/12/03 質問者: オーベッド管理官 対象: π3-22 (D-2469) 前文: 対象はのちにインシデント-3009-JPに指定されたイベントに先立ち、数値上は観測されていなかった違和感を報告していました。インシデントとの関連性は未解明ですが、参考のために掲載されます。 |
<転写開始> |
オーベッド: あなたが感じ取ったという異常な点について教えて欲しいです。何を問題だと感じていますか? π3-22: (間)わからない。うまく言い表すのが難しい — ほら、「わからないことがわからない」というか、そういう — <録音上の沈黙。> オーベッド: 要領を得ませんね。あなたの証言から推測していくつか候補を挙げるとすれば、鬱や心的外傷のような重大なものだけでなく、単純な疲労感によるだるさでさえ考えられます。どれか一つにでも、症状や原因に心当たりはありませんか? π3-22: だるさ、か。それなら少しだけあるかもしれないな。だるいと言うよりも無力 — 無気力? そんな感じだ。 オーベッド: (メモを取る)そういったものを感じる原因についてはどうでしょうか? π3-22: 思いつかないな。俺はこんななりだが、これでも報酬だっけか? — を与えられるくらいにはよくやってたんだぜ.「褒賞としての休暇」はプロトコル上の欺瞞ですが、記録ではD-2469は実際に勤勉に労働していたことが認められています。。ただ — オーベッド: ただ? π3-22: — 報酬が、ええと、なくなっちまったって言うか — やりがいが感じられなくなった、のかもしれない。 オーベッド: では、あなたにとって「やりがい」とは何のことだったのでしょうか? それがわかれば、貴方の無気力感も解き明かせるかもしれません。 π3-22: ああ — それがもうわからなくなっちまったんだな。すまない、博士。これ以上考えるのは疲れる。何かが俺の目を塞いでるみたいで — 一度休ませてもらってもいいか? オーベッド: 結構です。また後でお会いしましょう。 |
<転写終了> |
後文: こののち改めて行われたインタビューにおいても、π3-22が主張した感覚は明瞭化されませんでした。さらなる検証によって対象とEELデバイスのいずれにも異常が検出されなかったのち、π3-22は特例的に記憶処理を施され職務に復帰しました。 |
インシデント時系列
[2022/12/06 19:34]: EELデバイスに接続された犠牲宇宙が異常な速度で消費され始める。管理・保守セクションにアラートが発令され、即座に保守職員によって緊急点検が開始される。同時に、EELデバイスのセクションDの予備の犠牲宇宙が準備される。
[2022/12/06 23:47]: SCP-3009-JP-Aが無許可で改変されたことでEELデバイスの暴走状態が自発的に解消され、通常の活動が再開される。それまでの4時間にわたる点検にもかかわらず、異常事態の原因は解明されなかった。保守・管理セクションは警戒態勢で原因究明のための作業を続行する。SCP-3009JP-Aが編集された原因もまた不明であり、████/RNAの重点的な点検とともにこれに関するさまざまな議論が行われた。
[2022/12/07 12:55]: SCP-3009-JP-Aに加えられた改変が内部の疑似合意的社会を撹乱し、全人口の固有下位物語領域での正常性コンセンサスの維持に対して有害であることが確認される。
[2022/12/07 14:29]: さらなる議論の末、SCP-3009-JP-Aに加えられた改変を差し戻すことが決定される。
[2022/12/07 17:43]: 技術職員によって改変の差し戻しが完了する。改変されたSCP-3009-JP-Aの安定性は、固有下位物語領域のパターンと類似していることが判明する。
[2022/12/07 20:59]: Rucio.aicの再訓練中、EELデバイスの暴走が再開する。即座にSCP-3009-JP-Aが編集され鎮静が試みられるが、直後に再びSCP-3009-JP-Aが改変されたことで暴走状態は継続される。暴走状態の間、████/RNAはSCP-3009-JP-Aを繰り返し改変し続ける。
[2022/12/08 02:42]: SCP-3009-JP-Aに行われる改変が微視的になり始める。
[2022/12/08 05:16]: 最終的にEELデバイス全体が機能を停止する。SCP-3009-JP-Aの安定性が平均された固有下位物語領域のパターンとほぼ一致したことによって、そのどちらをも編集することができなくなったことが原因であると考察される。
[2022/12/18 12:00]: 偽情報活動の不全のため、LK-クラス:"捲られたヴェール"シナリオが宣言され、財団の存在が公開される。
[2022/12/08 12:01]: EELデバイスが再稼働し、再訓練されたRucio.aicが中央演算ノードに即座にアップロードされる。
補遺3009-JP/VI: インシデント後の会議
音声映像転写 POST-E-3009-JP |
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日付: 2022/12/19 位置: エリア-3K-19 第1会議室 出席者:
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<転写開始> |
O5-02: 何が起きたというのです? オーベッド管理官: ええ、簡潔に申し上げれば、私たちは想像宇宙を現実的にし過ぎた、といえるでしょう。本来、私たちが対象としていた想像宇宙の安定化が完全に遂行されることは想定されていませんでした。仮にそうなったとしても、EELデバイスの出力は極限まで低下するはずでした。しかしながら、様々な要因により、想像宇宙の平均的な安定性が、EELデバイスに含まれていた合意的社会の観念 — SCP-3009-JP-Aの安定性を上回ったことで、EElデバイスはある種の「胡蝶の夢」に似た状況に陥りました。そのため、もう一度デバイスにとっての現実を転覆する必要があったのです。 O5-08: 君が昨日の会議で言った「ネタバラシ」というのがそれのことだな。 オーベッド管理官: その通りです。 コールフィールド管理官: EELデバイスが陥っていた現実と想像の均衡を破るために我々がとることのできた最善の方法は、我々自身を公開することで人々の想像に打撃を与えることであるということでした。これによって、EELデバイスは再稼働することができました。 O5-02: ですが、私たちが払った代償はあまりにも大きすぎます。結局のところ、私たちは私たちの手でヴェールを — コールフィールド管理官: それについては問題ありません。今回のことで、私たちは私たちがどれほど民間からうまく隠れおおせていたかを体感しました。つまり、私たちの偽情報活動が少なくとも今回のことまではうまくいっていたことを理解できたのです。 <コールフィールド管理官が出席者を見渡す。> コールフィールド管理官: 明日からは、また今まで通り — いえ、今まで以上にうまく、隠れてみせようじゃないですか。 |
<転写終了> |
後文: 会議の後に、LK宣言は秘密裏に撤回され、カバーストーリー「やり過ぎな広告宣伝」が発布されました。現在まで、さらなる異常の兆候は確認されていません。 |
補遺終了