SCP-301-FR
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█████████ 山から見たSCP-301-FR(北東).

アイテム番号: SCP-301-FR

脅威レベル:

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-301-FRの監視を担当する職員は個人的野心が欠如していることを基準として現地の人間から選出されなくてはなりません。監視に就く職員は常に4人組で相互に施錠された鎖で繋がれます。職員の一人がSCP-301-FRの効果に暴露するに至った場合、他の職員は電子インパルス銃を用いて当該職員を制圧してください。SCP-301-FRの見張りに立たないときは、 職員は常にSCP-301-FRの可視範囲の外に留まらなくてはなりません。そのため、職員の休憩所はオブジェクトの可視範囲から適正な距離に設置されます。

SCP-301-FRの半径50km内に位置する全ての旅行者グループは不安定または暴力的な振る舞いを監視されます。

150mの空き地を隔てた可視範囲を完全に囲う3m50cmのコンクリート製の二つの壁から構成される保安区域がSCP-301-FRの周囲に直接設置されます。壁の全体は赤外線カメラを通して監視されなくてはなりません。壁を越えようと試みるすべての個人は監視チームによりその場で速やかに妨害され、取り押さえられた後、現地施設AZ-06またはAZ-08へ移送されます。確保された人物とその近親者と目される人物は記憶を置き換えられ、そして利用可能な最初の航空便で出身国に送り返されます。他の目撃者にはクラスA記憶処理を施します。

侵入者が第二の壁を超えることに成功した場合、生命を危険に晒すことなく追跡が可能な状況ならば、現地のチームは標高3,200mまで追いかけることができます。もしこの標高に達するまでに侵入者を取り押さえられなかった場合、侵入者はその時から消失したとみなされ、監視チームは速やかに下山しなくてはなりません。

説明: SCP-301-FRはロシアーアゼルバイジャン国境のコーカサス山脈に位置する█████████山の名前で知られる切り立った山岳を指します。2000年の初頭より、SCP-301-FRの斜面は異常な確率での失踪、事故、自殺と確認されたもの、その他不可解な死亡で地域の旅行者から知られていました。

SCP-301-FRの異常性質は、様々な特徴の個人に影響するタイプIの認識災害ですが、ほぼすべてのケースで先進国かそれに匹敵する国の中流または上流階級の16歳以上の人物に見られます。入念な心理的分析により影響を受けた人物は深層心理に根差した職業的、社会的、恋愛的、または個人的野心を表明することが明らかになりました。

初期の段階では、影響を受けた人物(以後「対象」と表記)がSCP-301-FRまたはその地域の存在を知らないとしても、この影響は、ほとんどの場合でバカンスを動機とし、SCP-301-FRの近くへ行きたいという強い願望として現れます。この影響がミーム的要因か他の異常な媒介物により引き起こされているのか財団は特定できていません。対象はSCP-301-FRの周辺、半径20km内の宿泊施設での滞在を場合によっては近親者とともに予約します。

ひとたびSCP-301-FRと視覚的接触を直接持った場合、例え登山や登攀の経験が一切なく、かつ以前に類似の何らかの欲求を表明していないとしても、対象はすぐにSCP-301-FRに登りたいという抗いがたい欲望を感じます。対象は一人で、適切な装備もなしに、夜であっても、また悪天候であっても山を登り始めます。SCP-301-FRの頂上へ向かう対象を妨害するすべての試みは話し合いの余地なく暴力的な返答に帰結します。それでも対象を取り押さえ、可視領域(50km以上)から最低3か月遠ざければ、対象は非常に協力的になりますが、SCP-301-FRを登り切りたいという説明のつかない願望を示し続けます。(補遺301-1を参照)

取り押さえられなかった人物には二つの主たる傾向が観測されます:

  • 第一グループでは、2,400mから3,200mの間で完全に停止するまで対象の歩調が次第に衰えて行き、しゃがむか横になるかし、動かなくなります(登攀の場合は両手を放してしまいます)。介入がなければ、対象は低体温症で数十分のうちに死亡します。この段階で回収された場合、対象はすべての刺激に対する不治の無感覚になります。
  • 第二グループでは、対象は環境的要因(雪崩、クレバス、滑落後の致命的落下……)により標高3,500mから4350mの間で死亡します。死亡状況はすべての救助者たり得る人物の介入が不可能になります。

稀なケース(0.5%以下)では、どのような状況、虚弱な身体能力、道具の不足にも関わらず、対象は山頂に辿り着きます。対象は数分の間動かず、その後しばしば走り出しては空中へ身を投げ、ほとんどの場合自殺します。偶然生き残った場合この作業を繰り返すためにできる限りのことをします。このケースに達したいかなる対象も生きたまま山頂から回収することはできません。

補遺301-1 : V███████博士による宿泊施設██████ ████████ ████████から離れようとした際に取り押さえられたA█████ D██████へのインタビュー。対象はSCP-301-FRから 4█km離れた現地施設AZ-██へ移送された。対象は44歳で14歳、17歳の二児の父で三年前に離婚しており、既知の精神病歴はない。

<記録開始>

<V███████ 博士が入室し、すでに椅子に掛けている警備員監視下の対象の正面に座る>

V███████博士 : こんにちはD██████さん、落ち着かれましたか?

A. D██████ : <少しの間ためらう> そう思います。


V███████博士 : では、あなたの旅程の初めから、あなたが何を感じたかも踏まえて一緒に少しずつ辿っていきましょう。██████ ████での滞在を予約することにしたのはいつだったか覚えていますか ?

A. D██████ : えっと……たぶんひと月前でしょうか?

V███████博士 : あなたの家からとても遠い旅にしては短いですね。

A. D██████ : ええ、白状しますと後先考えずに決めてしまったんです。

V███████博士 : バカンスしたかったのですか?

A. D██████ : 気分転換したいということならそうです。

V███████博士 : 他に理由はありますか?

A. D██████ : ここ数か月は本当にギリギリまで仕事に打ち込んでいて、遅くに帰ることもしばしばでした。

V███████博士 : 厳しい上司ですね。

A. D██████ : それほどではありませんでした。少し前から彼の離職が予想されていたのでなおさらですし、彼のいたCTO1になるには私は良い地位にいましたから。私にはこの種の好機が他にいつやってくるか確信が持てなかったものですし。

V███████博士 : なるほど。何があなたをこの██████ ████ 地方へ引き付けたのですか?

A. D██████ : すべてから離れた平穏さですかね。子どもたちとしばしば山あいでバカンスを過ごしています。それは旅行的というより、真に迫った何かを見つけるための機会でした。

V███████博士 : 登山をよくなさるんですね。

A. D██████ : いえ、それほどでは。ハイキングはしますが、長い間高い山には登っていません。


V███████博士 : ホテルまでの道のりで何か変わったことはありませんでしたか?

A. D██████ : 少し疲れていましたが、神々しい景色でした。窓にほとんどの時間張り付いていました。少ししてあの山があって注意を引かれました。

V███████博士 : この山ですか? <SCP-301-FRの写真を差し出す>

A. D██████ : はい。これを見たとき……わかりません。他のことは考えませんでした。あの山は美しかったですが、他の山と比べてずば抜けてというわけではありませんでした。しかし、何か特別なものがありました。

V███████博士 : 心惹かれたというわけですか?

A. D██████ : はい……何故かはわかりません。本当に疲れていたんでしょうね ?

V███████博士 : それで登ってみたいとお思いになりましたか?

A. D██████ : はい。馬鹿らしく思えるかもしれませんが、私には確かに……私は……はっきりした考えはありませんが、山頂へ行かないといけなかったんです。山頂へ行かないとならないんです。

V███████博士 : どうしてですか ?

<対象は困惑し、少しの間、目と口が大きく開く>

A. D██████ : ……わかりません。

V███████博士 : 子どもを置き去りにして、助けや準備もなしに4,000mの山に登るには何か理由があるはずです。何を考えていらしたのですか?何か見つかるとお考えに?

<再び沈黙>

A. D██████ : ……わかりません。私、私は何か探していました。何か私に欠けたものを。

V███████博士 : いったい何ですか?

<対象はとりわけ困惑し、返答できない様子を示す>

<V███████博士の決定によりインタビュー終了>

対象、その子ども、および目撃者はクラスA記憶処理薬を処方され、A█████ D██████氏は利用可能な初めの便で[削除済み]へ送り返されました。彼らには偽の記憶を植え付け、D██████氏は現在1年毎に財団の心理学者により経過を観察されています。

補遺301-2 : 2010/11/13: SCP-301-FRの頂上近くの岩石の斜面に彫られたアゼルバイジャン語の碑文が発見されました。制作についての詳細は不明です。テキストの翻訳は以下の通りです。

一生をかけて幻想を追う者は不幸である。さらに不幸なのはすでに追いついてしまった者である。

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