SCP-3020-JP及びSCP-3020-JP-A
アイテム番号: SCP-3020-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-3020-JPは現状収容不可能です。そのため情報隠蔽に重きが置かれます。財団の監視ネットワークはSCP-3020-JPの出現・人の不自然な移動・プロトコル3020-JP.01の流出を監視します。
1日に1度プロトコル3020-JP.01に従ってSCP-3020-JPを呼び出してください。SCP-3020-JP-Aにインタビューを行い、SCP-3020-JPの利用者及び関係者を特定して記憶処理・カバーストーリーの流布を行ってください。プロトコル3020-JP.01の詳細は下記を参照してください。
説明: SCP-3020-JPは████社1で使用されていたタクシーと同型の車両です。SCP-3020-JPは不明なプロセスにより物理的に不可能な距離を瞬間的に移動することができます。移動の観測はいずれも搭乗者及び周囲の人物の前後記憶の喪失・撮影機材の一時的な不調により失敗しています。SCP-3020-JPはSCP-3020-JP-Aによって操作されているものと思われます。
SCP-3020-JP-Aは中年のモンゴロイド男性に類似した人型実体です。SCP-3020-JP-AはSCP-3020-JPを不明な手段で操作し、瞬間的な移動を行います。SCP-3020-JP-AをSCP-3020-JP外に出す・SCP-3020-JP-Aに記憶処理剤を投与する試みは、全てSCP-3020-JPの瞬間的な移動により失敗しています。初期収容時のSCP-3020-JP内痕跡調査の結果、少なくとも1年間SCP-3020-JP-AはSCP-3020-JP外に出ていないことが判明しています。
SCP-3020-JP-Aは時間を問わず日本国内のプロトコル3020-JP.01を行った人物(以下、対象)の元にSCP-3020-JPを用いて移動します。プロトコル3020-JP.01の詳細は以下の通りです。
SCP-3020-JP-Aは対象の乗車後、以下の行動を行います。特筆点としてSCP-3020-JP-Aは、対象が言及していない身元情報を把握しているような発言をします。
1. SCP-3020-JP-Aは対象にある場所への移動を提案します。提案される場所は概ね対象に縁のある場所です。一例として、対象の両親の居住地・対象の祖父母が埋葬されている墓地・通話時点で対象の友人が利用している居酒屋が挙げられます。
2. 対象が移動に同意すると、SCP-3020-JPを用いて提案した場所へ移動します。
3. 対象を下車させた後、SCP-3020-JP及びSCP-3020-JP-Aはその場から移動し消失します。
4. 対象が上記電話番号に電話をし「家に帰りたい」という旨を発言すると、SCP-3020-JP及びSCP-3020-JP-Aは対象近辺の車両が通行可能な道路に再出現します。
5. 対象を乗車させ、対象の現居住地に移動します。
6. 対象を下車させた後、SCP-3020-JPはその場から移動し消失します。
以上の行為の後対象に心理テストを行った結果、概ね大きな満足感・幸福感を得ていることが分かりました。この作用は異常性ではなく、対象の心情に由来することが確認されています。対象はSCP-3020-JP-Aに感謝の意を示します。
SCP-3020-JP-Aは財団に対し協力的です。財団が対象に記憶処理を施すことを把握しているにも拘わらず幾度も呼び出しに応じ、対象の情報を提供します。ただし一般人への接触を停止させる交渉は全て拒絶しています。また、SCP-3020-JP内に撮影機材を設置する試みもSCP-3020-JP-Aの妨害により失敗しています。妨害行動に関してSCP-3020-JP-Aは対象の「プライバシーを守るため」だと証言しています。
SCP-3020-JP及びSCP-3020-JP-Aは人の不自然な移動を察知した財団により1989/10/10に発見されました。発見当時からプロトコル3020-JP.01は一部の一般人に水面下で広まっていると考えられています。そのためプロトコル3020-JP.01の完全な隠蔽は困難だと見積もられています。
以下はSCP-3020-JP及びSCP-3020-JP-Aの初期収容時のインタビュー記録です。
SCP-3020-JP インタビュー記録19891012.01
対象: SCP-3020-JP-A
インタビュアー: D-1720
付記: 危険性を考慮し、インタビュアー代理としてD-1720がSCP-3020-JPに乗車する。
<録音開始>
D-1720: 今からタクシーに乗車します。[SCP-3020-JPに乗車する]すみません乗りますね。
SCP-3020-JP-A: どうぞどうぞ遠慮せずに。
D-1720: 内装も普通のタクシーと変わらないですね。
SCP-3020-JP-A: お客さん面白いね。秘密結社? 財団? 初めてだよこんなの。[笑う]D-1720: 何故それを?
SCP-3020-JP-A: お客さんのことは何でも知っているよ。食べ物の好き嫌いや小学校好きだった女の子、黒子の数もね。まあ私には守秘義務があるから、同意してくれた内容しか他のお客さんに言わないよ。何か都合悪いかな?
D-1720: いえ大丈夫です。後で確認します。えーと運転手さん。突然ですけどいくつかインタビューをします。
SCP-3020-JP-A: いいよいいよ。それが財団とやらのためなら。
D-1720: では始めます。まず1つ目ですが、あなたは誰ですか?
SCP-3020-JP-A: 私の名前は大平だよ。玄田社2所属のしがないドライバーだね。
D-1720: このタクシーはどこで入手しましたか? またどのように製造しましたか?
SCP-3020-JP-A: 知らないな。会社の車だから。
D-1720: あなたは人を移動させていますが、目的は何ですか?
SCP-3020-JP-A: 会社に言われているからかな。[笑う]まあ本当のことを言うと、お客さんの幸福のためだね。お客さんの心を少しだけでも温めてあげるんだ。
D-1720: どういうことですか?
SCP-3020-JP-A: 私のお客さんはみんな心の拠り所を失ってる人なんだ。周囲に馴染めず孤独な人だったり、会社で悩みを相談できない人だったりする。そんな人たちの心休まる場所に連れて行って、少しだけ休んでもらうんだ。その場しのぎかもしれないけど、再出発の準備くらいはできるんじゃないかな。役に立って感謝してもらえれば嬉しいかな。あわよくば私のこと覚えてもらえたらいいね。[笑う]
D-1720: なるほど。
SCP-3020-JP-A: お客さんが行きたい場所は奥さんの家だね?
D-1720: え?
SCP-3020-JP-A: 事情に踏み込むようで申し訳ないが、お客さんはお子さんの手術費のために犯罪に手を染めたんだろう? そして財団に連れてこられたわけだ。訳も分からず1人で心細かっただろうね。もし良かったら話を聞くよ。そして奥さんの元に連れて行ってあげることもできるよ。
D-1720: [数秒の沈黙]いえ、大丈夫です。仕事ですから。
SCP-3020-JP-A: そうか。私も同じだ。
[省略]
<録音終了>
補遺01: 1991/05/03 財団で試験運用段階であった、CTIS(Comprehensive Telephone exchange Interception System:包括的電話交換機傍受システム)を用い、プロトコル3020-JP.01実施中の対象とSCP-3020-JP-Aの通話の傍受に成功しました。以下は会話内容の書き起こしです。
SCP-3020-JP 音声記録19910503.01
対話者: ██ ███(発信者)、SCP-3020-JP-A(応答者)
付記: 便宜上応答者はSCP-3020-JP-Aと表記。██氏には記憶処理済み。
<書き起こし開始>
[省略]
SCP-3020-JP-A:じゃあ、良ければ悩みを聞かせてくれないかな?
██氏: はい。私は最近大学に入りました。でも実家から遠い場所だったので一人暮らしを始めました。アルバイトとかも色々やっているんですけど……。
SCP-3020-JP-A: どうしたの?
██氏: 友達や相談できる人がいなくて辛いんです。元々1人でもあまり気にはしていませんでしたが、全く新しい生活が始まってから途端に心細さが募ってきたんです。お金のやり繰りだったり将来の不安だったり。悩みを相談できる人や頼れる人がいなくて抱え込んじゃうんです。
SCP-3020-JP-A: それは辛いね。分かるよ。
██氏: アルバイトと勉強の板挟みになって息抜きできる時間も少ないんです。……こんなこと話しても仕方ないですよね。この程度で弱音を吐く私が悪いんです。すみません。
SCP-3020-JP-A: いや、お客さんは悪くないよ。どれだけ年を重ねても孤独ってのは辛いものさ。ましてや初めての一人暮らしなんだろう? 家計の管理も家事も慣れずに大変だろうね。
██氏: そうですかね……。
SCP-3020-JP-A: それなのに勉強もアルバイトもしているの偉いよ。疲れているのにめげずに頑張ってすごいじゃないか。何の勉強をしているの?
██氏: 金融系です。
SCP-3020-JP-A: 金融? それはすごい。頭いいんだね。将来は頭取かな?
██氏: やめてくださいよ。[笑う]
SCP-3020-JP-A: 話していたらもっと話聞きたくなったな。良かったら直接会って話を聞けないかな?
██氏: 直接?
SCP-3020-JP-A: そうそう。私はタクシードライバーなんだ。どこへでも一っ飛びだしお客さんの望む場所にも連れていけるよ。あ、お金の心配はいらないよ。お代はいただかないからね。
██氏: ボランティアの方なんですか?
SCP-3020-JP-A: まあそんなものだね。
██氏: でも直接っていうのは……。
SCP-3020-JP-A: 怖いかい?
██氏: そんなことは……いえ、少し怖いです。
SCP-3020-JP-A: うーん何か信頼してもらえるようなことはないかなぁ。
██氏: 直接会うのは大丈夫です。お気遣いありがとうございます。
SCP-3020-JP-A: 本当に良いの? お父さんやお母さん、妹さんに会いたくない? すぐに忘れて2度とチャンスはなくなるよ?
██氏: 本当に大丈夫です。すみません。ご厚意を裏切るようなことしちゃって。
SCP-3020-JP-A: ……ごめんね詰め寄るような真似して。別に怖がらせるつもりはなかったんだ。私はせめて休んでもらって……いや、何でもない。他に話したいことはないかい?
██氏: 大丈夫です。話を聞いてくださってありがとうございました。気持ちが軽くなった気がします。ところで、大平さんも元気がないような声音ですね。電話の最初から。どうかしたんですか?
SCP-3020-JP-A: 何でもないよ。こちらこそありがとう。またね。
<書き起こし終了>
補遺02: 1992/09/29 特別収容プロトコルに基づいたSCP-3020-JP-Aのインタビュー後、インタビュアーであるD-1720はSCP-3020-JP-Aの様子の違いを証言しました。審議の結果、再度SCP-3020-JP-Aのインタビューを行うことが決定されました。以下は該当のインタビュー記録です。
SCP-3020-JP インタビュー記録19920929.02
対象: SCP-3020-JP-A
インタビュアー: D-1720付記: D-1720には業務円滑化のため、時間的記憶を処理するクラスA4記憶処理剤のみが恒常的に投与されている。
<録音開始>
D-1720: [SCP-3020-JPに乗車する]すみません大平さん。何度も呼び出してしまって。SCP-3020-JP-A: 一体何の用? 今日乗せたお客さんのことは話したと思うけど。
D-1720: 今日の大平さんとても疲れ切った顔をしています。何かあったんですか?SCP-3020-JP-A: 別に何もないよ。こんなことしてたら上司に怒られちゃうよ?
D-1720: 何か隠し事をしているんですか? 言うことも憚ることなんですか?SCP-3020-JP-A: だから何もないって。帰った帰った。
D-1720: 僕じゃ話し相手にもなれないんですか?[沈黙]
D-1720: 確かに知り合って日も浅いですけど、大平さんのこと何となく分かってきた気がします。大平さんは仕事に対してとても責任感が強い人だと思います。お客さんとの会話では私情は持ち込まない。お客さんの話を聞くことが肝要だから。でも、気晴らしも必要じゃないでしょうか。誰かに打ち明ければ気が楽になることだってあります。僕なんかがおこがましいと思いますが、話してもらえると嬉しいです。SCP-3020-JP-A: でも、話したところで意味ないでしょ?
D-1720: 意味ないなんてことはありません。誰かに打ち明ければ気が楽になることだってあります。
SCP-3020-JP-A: [沈黙]話したでしょ? 今日のお客さんのこと。
D-1720: ███さんでしたっけ?
SCP-3020-JP-A: そう、███さん。あのお客さんは特に孤独な人だった。家族からも邪険にされているし、職場にも馴染めていない。お客さんの心休まる場所が分からなかったんだ。
D-1720: 分からなかった。
SCP-3020-JP-A: そう、分からなかった。だからお客さんとじっくり話したよ。何時間も。何時間も。何かお客さんを救える糸口がないかと探した。必死に会話していたら、お客さんの顔が明るくなっているのに気付いたんだ。何でって聞いたら、私と話すのが楽しいって言うんだ。話も合うし安心するって。嬉しかったね。今まではお客さんに縁のある人に休憩場所の役目を担ってもらっていたから。私自身もお客さんの助けられるんだって思ったよ。私の力だけでもお客さんの役に立てるって。でも、はっと思い出したんだ。このお客さんも私のことを忘れるんだって。あんたたち財団に記憶を消されるって。
[沈黙]
SCP-3020-JP-A: 最近、私は何の為に仕事をしているのか分からなくなるんだ。お客さんを心休まる場所に連れて行って休憩してもらう。それをどれだけ繰り返しても私のことだけが綺麗に忘却される。私という過程は消されて結果だけが残るんだ。あんなにいい笑顔も、感謝の言葉も掻き消される。結果だけでも良いって自分に言い聞かせたさ。世の中には私より辛い思いをしている人がいっぱいいる。その人たちの助けになれたってね。でもね、やっぱり引っかかるんだよ。私だけがいないことにされるんだよ。
[沈黙]
SCP-3020-JP-A: ははっ。私がお客さんに打ち明け話なんてしてどうするんだってね。ごめんねつまらない話しちゃって。
D-1720: いえ。話していただいてありがとうございます。僕で良ければいつでも聞きますから。
SCP-3020-JP-A: ありがとね。あんたと話していると楽しいよ。
<録音終了>
補遺03: 1992/10/02 CTISの全テスト項目が終了し、正式に導入されることが決定されました。それに伴い特別収容プロトコルにおいてSCP-3020-JP-Aにインタビューを行う必要性が指摘されました。現在特別収容プロトコルの改定作業が進んでいます。改定後の特別収容プロトコルはSCP-3020-JP-Aへのインタビューを排し、CTISを含む監視ネットワークの運用を主とした内容となる予定です。



