アイテム番号: SCP-3031-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-3031-JPは、それを囲う形で仮設サイト-81██を建設することによって収容されます。収容以前にSCP-3031-JP-Aへ侵入した人物に対しては、クラスA記憶処理が実行されます。
説明: SCP-3031-JPは、埼玉県██市に存在するポータルです。SCP-3031-JPに接触した物体はSCP-3031-JP-Aの特定地点へと転移します。
SCP-3031-JP-Aは迷路様の入り組んだ構造物であり、道幅・高さともに2m程の通路によって構成されています。その壁・床・天井を破壊する試みは全て失敗しています。光源が確認できないにもかかわらず、SCP-3031-JP-A内部は一様に10lx程度1の照度を保っています。SCP-3031-JP-A内には、転移したものを除き、SCP-3031-JP-B以外に特筆すべき物体は存在しません。また、SCP-3031-JP-Aへ転移した物体は、約15分後にSCP-3031-JP付近へと戻ります。
空間としてのSCP-3031-JP-Aには、以下の性質が確認されています。
- 安定性。SCP-3031-JP-A内部の構造は変化しない。
- 平面性。SCP-3031-JP-Aの床は傾いておらず、段差も確認されていない。
- 冗長性。A地点からB地点まで移動する際、移動経路は必ずしも1通りではない。これより、迷路の解法として頻繁に用いられる、右手法/左手法が有効でない。
- 空間の歪曲。例えば、「北へ10m移動してから東へ10m移動した場合」と「東へ10m移動してから北へ10m移動した場合」において、必ずしも同じ位置に到達しない。
- ただし、A地点からB地点へ移動できる場合、道を逆にたどることで必ずB地点からA地点へ移動できる。
なお、空間が歪曲しているため、SCP-3031-JP-Aの地図を作成することは非常に困難です。
SCP-3031-JP-Aの一部には直径30cm程度の紐状の実体(SCP-3031-JP-B)が存在します。SCP-3031-JP-Bは黄色であり、柔らかく、表面はぬめり気を有しています。複数回の調査において、SCP-3031-JP-Bの位置が僅かに変化しているという証言が得られています。当該実体の詳細は不明です補遺を参照してください。
補遺: SCP-3031-JP-Bの一部を回収することに成功しました。解析の結果、SCP-3031-JP-Bには真性粘菌(Myxogastrea)、特にモジホコリ(Physarum polycephalum)との類似性が確認されました2。これらより、SCP-3031-JP-A、-Bと粘菌コンピュータの関連が指摘されました。
迷路の最短経路を繋ぐ粘菌のイメージ
粘菌コンピュータとは、真性粘菌の性質を利用した計算機です。
粘菌を迷路内に設置し、その2箇所(図右の赤色部分)に餌を置くと、粘菌は一旦は迷路全体に広がります(図左)が、最終的には餌を繋ぐ最短経路のみを残して衰退します(図右)。これは粘菌自体の本能的な性質ですが、餌をスタート/ゴール地点と考えれば、粘菌は当該迷路を最短経路で解いたこととなります。
一般的なコンピュータでは、経路の候補が複数ある迷路様の空間における最短経路を求める際、計算量が非常に膨大になります。また、SCP-3031-JP-Aにおいては、空間の歪曲などを理由に、そもそも求めることが困難である可能性もあります。一方、粘菌コンピュータにおいては、最短経路を比較的短時間で求めることが可能です。また、粘菌が侵入・生存可能な空間であれば、空間歪曲は経路を求める際に支障をきたしません。
以上より、何者かがSCP-3031-JP-Bを用いてSCP-3031-JP-Aの最短経路を求めようとしていたことが示唆されます。
なお、そうであった場合におけるスタート/ゴール地点は、SCP-3031-JP-A内に15分のみ滞在できるという性質より特定されていません。また、「餌」が何か、どのようにして調達・維持されていたのかも不明です。
更に、SCP-3031-JP-Aの最短経路は既に繋がれ判明している筈であり、経路を求めようとした人物が何らかの対応をしていない点が疑問視されています。当該人物がSCP-3031-JP-Bを維持・管理し続けていない可能性も指摘されており、仮に「餌」の供給が中断されていた場合、SCP-3031-JP-Bが子実体3へ移行し、異常性が変化・喪失することが危惧されます。
補遺2: 財団は、SCP-3031-JP-Aの構造を解明し、またSCP-3031-JP-Bの設置者についての情報を得るべく、███回に及ぶ潜入調査を実施しましたが、これらについての有力な情報は得られていません。
一方で、調査ごとにSCP-3031-JP-Bが大きく移動していることが報告されています。調査時にSCP-3031-JP-Bに遭遇する頻度や、遭遇時における体積が増加していることから、SCP-3031-JP-Bは「SCP-3031-JPから調査員が転移する位置」に近い位置へ移動してきていることが推測されます。また、SCP-3031-JP-Bのぬめり気が有意に増加していることも確認されています。当該変化についての詳細な調査が検討予定です。









