
封鎖前の地下道
アイテム番号: SCP-3039-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-3039-JPの存在する地下道は財団が管理し、出入り口部分は一部の開閉可能な機構を設置したうえで埋め立てられます。市役所職員や関係者、地域住人へは情報操作と記憶処理を施したうえで隠蔽を行ってください。
該当地点付近には交通監視署に偽装した監視施設を配置し、地下道内部は4台の監視カメラと音感知装置によって24時間体勢で監視されます。
地下道内部へは1か月に1回給餌の為に5羽の鶏を投入してください。現在、SCP-3039-JPの知能レベルの向上が確認されているため、経過観察とインタビューが継続されています。インタビューを行う際は女性職員を起用したうえで実施してください。
説明: SCP-3039-JPは██県██市███町に存在する地下道内で発生した空気振動由来の意識体です。SCP-3039-JPはその性質上、地下道内でのみ存続が可能でありかつ移送も困難であると判断されています。
SCP-3039-JPは地下道内で発生した環境音の反響を切っ掛けに発生したと推測されています。なお、それらの反響音が一定頻度で滞留しかつその振動数が人間の脳波信号と類似する反復数値を計測したことから、それらが長期間継続された事により空気振動その物が思考能力を獲得したと定義されています。
現在、同条件下での再現実験が行われており、一部の実験区画では微弱ながら同様の現象が確認されています。
SCP-3039-JPを構成している音風の音 | 地下道内では一定の感覚で空流が発生しており、外気の流入でない事から一種の呼吸に類似する現象であると推測されている。現在、SCP-3039-JPが生体的な呼吸活動をしているのかは判明していないが、地下道内の空気交換が生存に必要な要素であると予想されている。 |
裸足の音 | 時折地下道内で観測されている音。これはSCP-3039-JPの性質上、常に振動を継続させることで自身の存在を維持するために行われていると思われる。風の音と合わせ、SCP-3039-JPの生存には常に音が発生している事が必要であると推測される。 |
声音 | SCP-3039-JPとはある程度までの会話が可能であり、活性化時には職員と意思疎通を図る傾向が見える。なお、この構成音に関してはオブジェクトの発見から1か月経過した段階で発生し、それまでは明確な思考能力を有しているかも判別できていない状態だった。この事から、SCP-3039-JPはある程度の学習能力を有していると思われる。 |
金属音 | SCP-3039-JPが捕食活動を行う際に発生する。主に地下道内を刃物状の物でひっかいた様な音が発生する。 |
SCP-3039-JPは年間の大半を休眠状態で過ごしていますが、時折捕食を目的として活性化します。その際、前述した金属音を伴いながら地下道内で反響させ、高音域でかつ高音圧の環境を生み出すことで捕食対象を絶命させます。
捕食対象が絶命した後は肉体の有する固有振動数と同調する音を発生させ、細かく分解する事で遺体を消失させます。
これらの捕食行動はSCP-3039-JPが捕食対象の悲鳴や鳴き声を取得するための行動であると判明しています。これは前述したSCP-3039-JPの存在を維持するための音の供給であると思われ、SCP-3039-JPの活動の中で最も効率的な音響補給方法であると予想されています。なお、収容初期にはスピーカーを用いた給餌方法も実施しましたが、スピーカーからのノイズ音の混入によりSCP-3039-JPがこれを拒否したため生体を利用したプロトコルが再設定されました。
補遺1: SCP-3039-JPは2000年代から該当地点を含む周辺地域で流行していた噂を切っ掛けに発見されました。当初、財団は該当地域で広まっていた「地下道内に刃物を持った女の幽霊が現れる」という噂話を察知しており、1名のフィールドエージェントを派遣する事で実態調査を実施しました。しかし、その時点では何ら異常性および実体の出現等は観測されず、該当地点は異常性なしと報告されました。
現地調査が終了してから2年後、地下道内にて一般人の行方不明事案および死亡事案が発生。これにより再度該当地点の調査が行われ、分析の結果からSCP-3039-JPの発見に至りました。
なお、噂の発端は1995年に発生した地下道内での女性の自殺事案であると判明しており、現在も関連事象の調査が行われています。
補遺2: 以下は担当主任研究員である織戸態おとさま博士の提言です。
織戸態博士の提言
SCP-3039-JPの発生は偶発的要因が大半を占めているが、一部の再現実験においても人工的な同個体の生成には成功している。発生要因が揃えば新たなSCP-3039-JPが発生するという点で見れば、本オブジェクトの理想的な収容方法はSCP-3039-JP発生に関する詳細な情報を秘匿したうえで該当する要素を潰していくのが最善の対応だろう。
だが、私が今一番に懸念している点はSCP-3039-JPの学習能力の向上が余りにも急だという事だ。人工生成に成功した疑似オブジェクトに対して行った反応実験においても、何らかの刺激に対しての反応はするがコミュニケーションとは到底言える物では無かった。言ってしまえば、原始的生物の持つ反射と何ら変わらない初歩的な現象でしかなかったのだ。
にも関わらず、SCP-3039-JPだけは群を抜いた成長速度を実現している。発見から少し経っただけで我々の言語を理解し、未熟ながらも論理的思考力も身に着けつつある。これにSCP-3039-JPが発生した地点の規模なども起因しているのか、それともそれ以外の要因があるのか。今はまだ判明してはいないが、それの究明も以てこそSCP-3039-JPという存在の証明に繋がると私は確信している。
そこに、あの意識体への答えがある気がするのだ。‐織戸態 源三
補遺3: 以下は織戸態博士によって行われたSCP-3039-JPへのインタビュー記録です。
追記: 地下道内で自殺した女性の調査を進めた結果、以下の情報が判明しました。
██県██市自殺事案概要
発生時期: 1995年4月22日
概要: ██県██市███町地下道にて██ 誠子(32)氏が断ち切狭を使用し自身の頸動脈を切断した。
なお、同氏は事件発生の2週間前から頻繁に産婦人科へと赴いており、捜査報告書から身分証明書や保険証の不所持により受け入れを拒否されていた事が判明している。
検死報告書には体内から妊娠3カ月が経過している胎児の遺体も発見されたと記載されており、捜査資料には住居や職業に関する情報も発見されていないことから死亡時点までホームレスであったと記録されている。
現在、SCP-3039-JPとの関連性の調査が継続されています。