SCP-3052-JP

評価: +66+x
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№: 3052-JP
LEVEL5
収容クラス:
keter
副次クラス:
{$secondary-class}
確保クラス:
amida
保護クラス:
critical

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SCP-3052-JP-A。

特別収容プロトコル

異常生物を収容しているサイトは、収容中の生物がSCP-3052-JPの対象にならないか、その兆候を観察する必要があります。兆候が確認され次第、サイト管理官からSCP-3052-JP特別収容部にその情報が伝達される事となっています。

SCP-3052-JP-Aに指定された生物は特別収容部の監督下に置かれ、指定されたサイトに移送・収容されます。該当の収容エリアには現実凋落爆弾が備えられており、これは収容違反時にエリアごとSCP-3052-JP-Aを消滅させるために使用されます。

説明

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SCP-3052-JPの対象となった個体(上部赤枠)と、変容後の姿(下部赤枠)。

SCP-3052-JPは、異常な生物が黒色の人型実体へと変容する現象です。非異常な生物がSCP-3052-JPの対象となった例は存在しないものの、現象が全世界で発生している事が確認されています。

SCP-3052-JPの対象となる個体には、以下の様な生物学的共通点が確認されます。

  • 一定規模の集団を構成し、集団の習性に社会性が認められる。
  • 発話能力や言語処理能力を持ち、一定水準以上の知性が認められる。

黒色の人型実体に変容した実体はSCP-3052-JP-Aと定義されており、現在その数は増加傾向にあります。

補遺1 - 変容プロセスの詳細

SCP-3052-JPの対象となった生物は、1~3ヶ月の期間をかけて肉体が変容していきます。詳細なプロセスは以下の通りです。

第一段階
SCP-3052-JPに選出された対象は、初めに不明な実体から肉体の変化を提案されるイベントを経験する。この際、対象が変化の提案を受け入れると、対象は第二段階に移行する。当件の詳細は補遺2を参照されたし。

第二段階

sinsyoku.png

ある個体の皮膚侵食プロセスを可視化した図。

対象の肉体に黒色の斑点が現れ始める。斑点は時間経過と共に他の斑点と融合しながら拡大し、全身に侵食する。同時に体毛が脱落し、皮膚や筋肉が軟化して流動的になる。末期には臓器や骨にも侵食が及び、脳が侵食されて知性を喪失する。最終的には流動的な黒いスライム状の生命体となる。

第三段階
流動的な肉体が指向性を持って動き、約176cmの中性的な人型実体(SCP-3052-JP-A)へと変容する。この段階では肉体が硬化してヒトの外見に酷似するが、感覚器官は存在しない。

この状態の対象はほとんど意思的な行動をしないが、刺す・殴るなどの破壊的な刺激には反応し、肉体の歪曲と共に元の状態に回復する様子が確認される。


SCP-3052-JP-Aは異常な回復能力を備えていますが、これは無尽蔵ではなく、激甚な刺激を長時間加えられると回復しなくなります。この状態がSCP-3052-JP-Aの死と定義されており、放置すると肉体が液化し、最終的には霧散して消滅します。

それ以外の点での死亡は確認されていません。対象に寿命が存在するかに関しては研究が進行中です。

補遺2 - 提案を受けたアノマリーの所感

第一段階における「提案」イベントに関して、知性を持つ複数の対象に詳細を説明させた試みでは、共通した回答が得られています。以下は、その中でも特筆すべき対話の抜粋です。

その後、SCP-███-██は経過観察の下で、順当に段階を経て肉体が第三段階まで変容しました。知性を喪失するまでに対話が何度か行われましたが、特筆すべき情報は得られませんでした。

補遺3 - 同質化現象

幾つかの分析の結果、SCP-3052-JP-Aが一種の社会的圧力の影響下にある可能性が推定されました。以下はSCP-3052-JP研究セクターより提供された資料の抜粋です。

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同質化現象アイソモーフィズム

クロエ・カイ博士、研究主任
超常社会学


ここに5人のヒトと2本の線が書かれた紙がある。上の線は短く、下の線は長い。明白に。

紙を掲げた人は尋ねる、「どちらの線が短いですか?」。彼らは答える、4人連続で「下」と。最後の1人は明らかに下の線が長い事に気付いていながら、狼狽しつつこう答える ― 「下」と。

これはハーディング現象という社会現象である。社会では、集団心理により不合理な行動やブームが起きる事がある。これからそんな社会現象のうち、SCP-3052-JPに関する"同質化現象"について説明する。


この世の生物は実に多様である。弱肉強食の世界で淘汰されながら姿形を変えてきた彼らは、生存本能を備えている。そしてその中でも高い知能を持つ生物は明確に「生き残りたい」という意志を持ち合わせている。そんな中、強靭で何者にも脅かされない肉体を安易に得られる方法 ― 即ちSCP-3052-JPを突然何者かから提案されたら?

全員が提案を受け入れる訳ではないが、一部は喜んで受け入れるだろう。最初はブームにもならないだろうが、提案を受け入れた者が強靭な肉体を得て生存が確固になった様を見れば、他の生物も続々と提案に追従し始める。

そのようにして複数の個体が変化し、そしてその様を知った個体は、合理性ではなく「他の者もそうしているから私もそうすべきだ」という正当性で、同じ行動に出る ― つまり変化しようとする傾向が如実に現れ始めるのだ。

やがて、SCP-3052-JPを実行することが常識のようになっていく。この一連のプロセスを同質化現象と言う。尤もこの変容は異常なプロセスと作用によって成立しているが、ともかくSCP-3052-JPには、この同質化現象が関与している可能性が高い。

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同質化現象の過程。

前提として異常生物は何か包括的な社会フィールドに属している訳ではないが、提案者はそんな社会の存在をSCP-3052-JP-Aらに教え、自分がその社会の一員であると自覚させている。これにより、彼らは同質化しやすく流されやすい性格になるのだろう。

社会現象は時間と共に広がる。よってSCP-3052-JP-Aもこれから増加する可能性が高く、それは生態系の崩壊を招く。この事態を防ぐため、我々にはSCP-3052-JPの原因特定と制御が求められる。ただし特記すべき点として、提案者は異常生物らが変容する事を「たのしい」と述べているようだ。奇妙な事だが、これの研究も必要であろう。


補遺4 - 予期せぬ変化

SCP-3052-JP-Aの数は時間経過と共に増加していきましたが、その脅威性の低さから各サイトにて個別に収容されていました。その対応は適切でしたが、2022/08/04以降に発生した事態を鑑みて、対応が再評価される事となりました。

以下は当時SCP-3052-JP主要研究地であったサイト-1050から各サイトに送付された緊急通知の抜粋です。

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この通知はSCP-3052-JP対象を収容している全サイトに一斉送信されています。管理官の皆様は以下のメッセージを読み、必要に応じて対応をお願いします。

こちらはサイト-1050です。当サイトでは現在、多数のSCP-3052-JP-Aを収容していますが、第三段階に達した一部の対象に未知の変化が生じています。簡潔なリストは以下の通りです。

  • 対象の筋骨・腱の異常な高密度化による増強。
  • 物体生成能力の獲得。
  • 狂暴化。

これらの対象は現在、上記の変化により破格の膂力を獲得しており、狂暴化に伴って収容壁の破壊と職員への攻撃を試みています。そのため、高位の収容室に移送せざるを得ませんでした。

また、対象が獲得した物体生成能力は現時点でクラスⅠ程度ですが、増幅傾向にあります。このペースで進行すれば、対象の能力は15日以内にクラスⅢに達するでしょう。最も深刻な問題は、この能力が現実改変をベースとしているものの、SRAなどではそれを十全には抑止する事ができないという点です。多層構造になっている玄妙な改変は既存の手法で制御できない場合がありますが、この物体生成能力も同じ類いであると考えられます。仮に対象が能力を増幅させた状態で収容壁を破壊しようとすれば、我々はそれを抑止できません。

現在は封じ込められていますが、収容壁を突破する可能性が高まっています。幸い、対象に大きな損傷を与えると死亡することは判明していますから、収容突破の危険が迫ってきた場合、我々は起爆装置によって終了することを予定しています ― 対象の数が多いため、この終了による損失は財団の理念を脅かすものとは見做されません。

管理官の皆様には、SCP-3052-JP-Aの収容状況を鑑み、上記のリストに該当する変化が起きている事が確認された場合、適切な収容設備が整った以下のサイトのいずれかに対象を移送して下さるようお願い申し上げます。

移送サイト: 1050 / 502 / 8111 / 302 / 1125

SCP-3052-JP-Aの未知なる変化は、現象の「第四段階」として仮称され、要警戒事項として通知されました。各地に収容されていたSCP-3052-JP-Aのうち相当数が上記に示すサイトに移送・収容されました。

補遺5 - 収容違反

前述の通り、第四段階に達したSCP-3052-JP-Aの肉体増強および物体生成能力は日を追うごとに増幅傾向にありましたが、そのスピードは緩やかでした。しかしながら2022/08/21、サイト-1050、サイト-302、サイト-1125に収容されていた対象合計4体が突然に増幅スピードを極端に加速させ、同時多発的に予期せぬ収容違反を引き起こしました。

以下はサイト-1050で記録された収容違反記録の抜粋です。

上記の収容違反により、サイト-1050の70%近くが倒壊し、実質的に壊滅したと見なされました。財団の被害者数は[データ削除済]、被害額は[データ削除済]。

また、以上のような収容違反は前述の通りサイト-302、サイト-1125でも同様に発生し、財団でも前例のない激甚な被害をもたらしました。当件によりサイト-302、サイト-[データ削除済]、サイト-1125、暫定サイト-[データ削除済]が壊滅し、機動部隊[データ削除済]、[データ削除済]、[データ削除済]、[データ削除済]、[データ削除済]、[データ削除済]が、[データ削除済]名のレベル4職員を含む多数の職員が死亡しました。

以上のインシデントを受け、SCP-3052-JPの危険度や研究優先度は再評価されると共に、対応の大幅な変更と財団資源の投入などが行われました。

補遺6 - "たのしさ"という感情の発露

一連の大規模収容違反の終結後、リズ司令を含む複数の職員が「奇妙な感情に襲われた」と報告しました。当初、この感情は一過性の精神錯乱であると考えられていました。しかし、収容違反の様子を記録した映像を視聴した職員が次々に異常な感情を経験しました ― 職員らはその感情を、一貫して「たのしさ」と表現しました。

このため当現象は精神影響であると判断され、詳細調査が実施されました。以下はリズ司令の所感です。


補遺7 - 異常の根源と思われし世界の特定

職員らに影響を与えている「たのしさ」という感情に関する仮説が数多く提案されましたが、その中で特に職員の興味を惹いたのは、叡智圏の専門家であるソロモン・ケラー博士の仮説でした。彼の仮説は、叡智圏という上位次元に存在する何者かが、基底世界(下位次元)に干渉し、SCP-3052-JPに関与した生物に「たのしさ」という感情を伝えているというものでした。

以前からSCP-3052-JP-Aが何者かから干渉されている可能性は各所から指摘されていたほか、提案イベントを経験した直後の異常生物の脳内からは叡智圏からの干渉の残留物が確認されたため、何らかの存在から干渉を受けている事は明らかでした。

このため叡智圏研究者や異次元研究部門のスペシャリストが集められ、生物に影響を与えている何者かが存在する上位次元への侵入調査が計画されました。各部門が提供した異次元転送装置、形而上的上昇漏斗、存在固定装置などを利用し、上位次元へのアクセスを試みるための専用機器"ソロモン-ヴェイズ存在論的突破エンジン"が開発されました。

エンジンの完成後、速やかに上位次元侵入プロジェクト・オントゥブレイクは実行に移されました。以下は探査ログです。


補遺8 - 正式声明

上記調査において示された情報は関係者に強い衝撃を与えました。財団が同意を得ずに精神を操作していたという情報は、職員らの中で不信感を広めるのに充分な要因でした。必然的に、多くの関係者が上層部に真相となる情報の開示を請求する事態に発展しました。

当件について倫理委員会とO5評議会の間で慎重な議論が行われた結果、各所で発生している混乱と不信を収拾するため、公式の声明を出す事が決定されました。



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